「え?僕がモテないのって仕様だったんですか!?」どうも、ヨシキです。
僕は普段、非Web系の一般企業でWebマーケティング担当として働いているのですが、わりと大きな会社に勤務していることもあり、日々いろんな提案を頂戴しています。
本日は、そういう日々の経験をもとに、クライアント側担当者の立場から見て「コンテンツマーケティングの提案をおこなう前に予め知っておいたほうがいい事項」について書いてみたいと思います。
提案する側にいる皆さまは、ぜひ何かの参考にしていただければ幸いです。
知っておくべきはWebマーケティング担当者の「生態」
本題に入る前に、まずは現状のおさらいから。2013年は「コンテンツ・イズ・キング」というスローガンのもと、コンテンツマーケティング・ブームが吹き荒れた1年だったように思います。
Web界隈を席捲した一連のムーブメントは、オウンドメディアのコンテンツ増強という新たな市場ニーズをも生み出し、ライター・エディター・デザイナーなどあらゆるクリエイティブ人材の価値を飛躍的に高める結果となりました。Webクリエイティブに携わる者全てにとって夢のような時代が到来したといえるでしょう。
このように超売り手市場と化した感のあるコンテンツマーケティングですが、買い手側である一般企業のWebマーケティング担当者としては、日々思っていることがあります。それは「この売り手(提案者)は買い手(担当者)のことを理解しようと努力しているのだろうか?」という根本的な疑問です。
モノを売るために買い手のことを知ろうとするのは基本中の基本ですが、正直「自分がイイと思うものを作れば(勝手に)売れる」と信じ込んでいる人たちも、まだまだ多いように思えます。これではいくらマーケットの追い風があっても、(特に知名度が低い売り手は)コンテンツをなかなか売れません。
「クリエイティブには自信があるのに、どうも売れないな…」と思っている人は、もしかすると直接の交渉窓口である一般企業のWebマーケティング担当者の生態について、理解が足りないのではないでしょうか。
そのあたりを以下5つの項目で、実体験を踏まえつつ大真面目に解説していきたいと思います。
勿論、あなたの会社にとって一番大切なのは、コンテンツ自体のクオリティを高めていくことでしょう。しかし、目の前の担当者を攻略しないことには、案件自体がスタートしないことも忘れてはいけません。
※以下、あまり本格的にWebに力を入れていない一般企業の担当者のみを想定していますのでご注意ください
生態1. コンテンツマーケティングに対する知識は意外と深い
「コンテンツマーケティングにまだ取り組めていないが、強い興味がある」という担当者は、一見攻略しやすい相手のように思うかもしれません。しかし彼等は、コンテンツマーケティングに関しては童貞です。だからこそ、半端ではない知識と有り得ないほど高い理想を抱いている可能性も高いのです。
中学時代を思い出してください。「性への強い興味を持った童貞」の、アダルトなビデオから培ったであろう尋常ではない知識を。四十八手の名称が全部言えるからといって実生活では何の意味もありませんが、その知識を誇りにしていたクラスメイトも確かに存在したはずです。そして、あまりにもレベルの高い女優の作品を見すぎたせいで、クラスの女子(現実)に何の興味も持てなくなった友人も存在したはずです。
あなたの目の前の担当者も、そういうタイプかもしれません。特に面白系のコンテンツを提案する場合は注意してください。童貞の中には、パッケージを見ただけで「ハズレ」を見抜く嗅覚を備えた者もいます。それ以上に中途半端な面白系コンテンツがどんなに悲惨な結果を招くかということも知っています。
だからこそ最初は、ロジック説明や事例紹介で提案を押し通そうとするのではなく、担当者が何をこじらせた童貞なのかしっかり見極めるよう努力しましょう。相手の知識と理想に見合った提案でなければ、コンテンツは採用されません。
生態2. SEOに関しては全てGoogleのせいにしている
一般企業のWebマーケティング担当者にとって、Google先生の検索アルゴリズム変化は驚異であるとともに、強い味方でもあります。なぜならここ2年、何かあれば上司にはこう報告すれば許されたからです。
「ぜんぶGoogleのせいだ」と。
『パンダ』と『ペンギン』の登場以前の世界は、外部リンクSEO費用と検索順位は基本的に一致という明朗会計システムでした。しかしコンテンツが主役となってからは、順位決定のロジックが(「こうすべき」という標準的な対策を除き)誰にもわからなくなりました。『ハミングバード』という青い鳥が飛び交う新世界は、担当者以外が誰も口出しできない絶対領域となったのです。
たとえ「なぜ我が社は検索順位が8位なんだ!キミが無能だからではないかね!?」と偉い人から叱られても「いえ、私の対策が万全だからこそこの順位で踏みとどまっていられるのです!」と言い返せる度胸さえあれば、担当者は毎月安定したサラリーが貰えるのです。
もしかするとゼブラ・バク・ダルメシアンなど白黒模様の動物の名前を勝手に冠し、「パンダやペンギンに続く新しい○○アップデートが実施されたかもしれません!だからまた順位が変動しました!」と世界に一つだけのオリジナルアップデートの報告までおこなっている可能性があります。そんな鉄のハートを持つ相手に、最新のSEO事情などを語っても効果は薄いでしょう。
担当者の多くは「マット・カッツが言ってた」といえば何でも許されると思っています。だからあなたも「ユーザーに有益なコンテンツの提供こそ、最高のSEOですよね!」と、マット・カッツっぽい切り口で提案しましょう。
生態3. 海外の最新Webトレンド情報をインプットしている
Web系企業で働いている人は見落としがちですが、一般企業では仕事中にネットサーフィンをしてはいけません。SNSなどもってのほかです。
しかし、例外的な存在がWebマーケティング担当者です。リサーチだと言い張れば、どんなサイトを見ても怒られることはありません。但し仕事として見ている設定になっている以上、いかにも事情通らしい知識を会議などで披露しておく必要があります。そんな彼らにとって欠かせないのは、海外の最新Webトレンド情報のインプットです。
『TechCrunch』あたりを流し読みして仕入れた情報を定期的に発表しておけば、そのうちの何割かはいずれ日本でも実現します。そのときに「ほら、僕が仕入れた情報どおりだったでしょ?」と堂々と言えるようになれば、一流の担当者の仲間入りです。「アイツは最新のWeb事情に精通しているな。さすがだ。」という個人ブランディングが完成。もう、ネットサーフィンし放題です。
だから今、たとえばFacebookを使った広告提案などを通そうとするのは、ちょっと難しいかもしれません。なぜなら担当者は既に「オバマ大統領もFacebookはもはやクールではないと言ってるんですよね。」と会議でドヤ顔で語っているかもしれないからです。事情通と思わせるためなら、必要とあらば「これが欧米では最先端なんですよ!」とGoogleGlassをかけて社内をウロウロすることだってやりかねません。
そんな担当者と友好関係を築くには、やはり海外Webトレンドの話をするのが一番です。相手が知らないような話をすれば「へぇー!向こうでは今そんな感じなんですね!」と食いついてくることでしょう。次の会議で話すネタとしてインプットするために。
生態4. 意外にビッグデータには踊らされない
『ハーバード・ビジネス・レビュー』において「21世紀で最もセクシーな職業はデータ・サイエンティストだ」と取り上げられたように、データ解析が世界的な注目を集めているのは間違いありません。特に最近は、とにかく何でもビッグデータ!という風潮が強いようです。
それゆえデータ解析とセットでコンテンツを提案すれば、全てが上手くいくように思えるかもしれませんが、実際はそうでもありません。なぜならWebマーケティングの担当者の多くは、「有料データ解析ツールを導入するも使い方がよくわからず1年ぐらいで挫折して解約」という苦い過去を持っているからです。
さらに「ウチは解析までカバーしてますから!」というWebサイト制作会社の提案を信じて発注したのに、結局GoogleAnalyticsのデフォルト項目が毎月届くだけだったという挫折を経験し、すっかり冷めた大人になっているかもしれません。
そういう担当者ほど、データ解析の重要性自体は認識しつつも、解析ツールそのものを推してくる相手は最初から信用しない、という傾向が強くなります。まして本当の意味でのビッグデータとは、ビッグダディと同じくらい自社と関係がないと知っています。ここを説得するのは相当難しいでしょう。
「ビールと紙おむつを一緒に買うというマーケティングデータが、いかに自社に適さないか」を肌で理解している実務屋こそが、一般企業のWebマーケティング担当者なのです。無難にGoogleAnalyticsのタグ設置あたりから話を始めるようにしましょう。
生態5. 発注権限者を説得できる特殊なスペックを持っている
一度OKが出たから案件を進めたのに「上司(発注権限者)からNGが出たのでやり直してください!」と担当者から泣きつかれる事態は、“クリエイティブ系あるある”の1つでしょう。もちろんこれは担当者側が悪いです。ホント、やっちゃダメです。
しかし実際のところ、その上司が一度OKを出したからこそGOになっていたというケースはとても多く、担当者自身は急な変更を申し訳なく思っている気持ちが非常に強かったりします。
「担当者、いる意味なくない?」「直接その責任者と話させろ!」という怒りも至極もっともですが、それでも「クリエイティブに関して全く理解の無い発注権限者を説得する」のは、外国語通訳などと同様の超特殊スペックだったりします。それを持っている貴重な人材だからこそ、担当者というポストに就いているとも言えます。
そもそも外部の専門家(あなた)から話を聞いて全て納得できるほどクリエイティブに精通し、かつ一度言ったことを気分でひっくり返さないほど成熟した人たちが上層部に揃っているなら、その会社はすでに、売り手に提案の余地のないクリエイティブ先進企業になっていることでしょう。
正月にしか会わないおじいちゃんに「フィギュアスケートの採点方法」を噛み砕いて説明するレベルでの無茶な説得を上司相手に試みているのが、一般企業のWebマーケティング担当者なのです。そしてその担当者は、あなたの作ったカタカナ英語だらけでゴール設定が曖昧な提案資料を、上司がハンコを押しやすいように実施効果だけが明示された数値資料へ徹夜で作り変えてくれているかもしれないのです。
あなたにとってのパートナーであり、小人の妖精的な存在がクライアント側の担当者なのかもしれないな、と少しだけ優しい目で見てあげるようにしましょう。その眼差しこそが、提案のときに彼等の心を掴むかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。もちろんWebマーケティング担当者の中には立派な人もたくさんいます。その一方で「所詮コイツら何もわかっていないからな」と、見下した態度や言動をとる提案者たちも意外に多いように感じます。
担当者はコトラーのような全能のマーケターではないので、あなたのクリエイティブの素晴らしさを理解する能力に欠けているかもしれません。しかし残念なことに、恐らくあなたもジョブズではないのです。
現在のコンテンツマーケティングブームの火を絶やさないためには、(クライアントの予算で)次々と優良コンテンツを世に送り出してもらう他ありません。だからこそWebクリエイティブ界隈の皆さまには、上記5つの生態などを意識しながら、どんどん担当者を攻略してほしいのです。
コンテンツマーケティングをやりたくてしかたない担当者は、きっとあなたに口説かれるのを待っていますよ!
※繰り返しますが、本格的にWebに力を入れている一般企業の担当者に全く当てはまらない生態なので、ご注意ください。