認証プラットフォームAuth0とは?特徴や使用例を解説

認証プラットフォームAuth0とは?特徴や使用例を解説

Takara Ohata

Takara Ohata

Technology部の大畑です。

多くのWebサービスやアプリケーションにとって、安全で使いやすい認証システムの実装は重要な課題です。しかし、その開発には多くの時間とリソースが必要となり、とくに中小規模の企業にとっては大きな負担となります。

そこで今回は、短期間・低コストで高度な認証機能を実装できる「Auth0」について詳しく解説します。Auth0にどんな機能があり、どんな場面で活用できるのか知りたい、できるだけ費用を抑えて認証機能を開発したいという方にぜひ読んでいただければと思います。

Auth0とは

出典:https://auth0.com/jp

Auth0は、IDaaS(Identity as a Service)と呼ばれるクラウドベースの認証・認可プラットフォームです。

IDaaSとは、簡単に言うと「IDやパスワードを一元管理し、ユーザーがWebサイトやアプリケーションに安全にログインできる仕組み」を提供するサービスのことです。つまり企業はユーザー認証や認可を外部のサービスとして利用することで、自社での開発・運用コストを削減することができます

IDaaSの活用はとくに以下のようなケースで有用です。

  • アプリやWebサイトにユーザー認証や認可・ログイン機能を組み込みたいが、実装が難しい
  • パスワード使いまわしの防止やセキュリティを向上させたい
  • IDやパスワード、クレジットカードなど重要な情報の管理コストを抑えたい

Auth0はとくに開発者フレンドリーなプラットフォームとして知られており、豊富なAPIやドキュメントが提供されています。Auth0のほかにも、IDaaSの代表的なサービスとして「Okta」や「Amazon Cognito」などが挙げられます。これらのサービス比較については後述しています。

Oktaとの関係性や違い

Auth0とOktaはどちらもアイデンティティ管理ソリューションを提供する企業で、以下のようにそれぞれに特化した用途や強みがあります。

  • Auth0:エンドユーザーや顧客向けの機能に特化。開発者フレンドリーで、APIやSDKを通じて簡単にアプリケーションに統合できるように設計されている。
  • Okta:企業の内部ユーザー(従業員、パートナー)向けの機能に特化。エンタープライズ向けに標準化された統合が多い。

2021年にAuth0がOkta社に買収されたことで、現在、両者は一体となったサービスを提供しています

正確にいうと、Auth0の技術とサービスはOktaの「Customer Identity Cloud」として提供されつつも、Auth0としても利用可能な状態にあります。

Okta「Workforce Identity Cloud」 Oktaが提供するエンタープライズ向けのソリューション。
Okta「Customer Identity Cloud」 Oktaが提供するエンドユーザー向けのソリューション。詳細はAuth0のページにリダイレクトされるようになっている。
Auth0 Okta「Customer Identity Cloud」と同じ内容のサービス。

Auth0の特徴・メリット

Auth0の特徴や取り入れるメリットとしては、以下の4点が考えられます。

  • 段階的にセキュリティレベルを調整できる:企業の成長や需要に応じて、セキュリティ機能を段階的に追加可能。小規模ECサイトから大規模サービスまで、適切なセキュリティレベルを選択できる。基本的な認証から高度なeKYCまで幅広く対応。
  • 実績が豊富:日本の大手企業(SUBARU、マツダ、NTTドコモ、シャープなど)での導入実績があり、長期的な使用を想定したサービスとして信頼性が高い。
  • 金額が抑えられる:Auth0では常に最新版のプロダクトが使うことができ、ログイン機能や高度なセキュリティなどを最初から実装を行う必要がないため、支出を抑えることが可能。
  • 複雑な認証への対応:シングルサインオンや生体認証など、ユーザーに負担を与えない認証方法を導入することで、ユーザー体験の向上が期待できる。

このように、Auth0は、企業の規模や業種に関わらず、セキュリティニーズに柔軟に対応しながら、コスト効率と優れたユーザー体験を提供する認証・認可プラットフォームとして位置づけられます。

とくに、成長段階にある企業や、顧客情報を扱う企業にとって、導入の価値が高いサービスといえます。

各メリットについてより詳しく知りたい方は以下の記事でまとめていますので、ぜひご覧ください。
企業の認証プロセスを支援するIDaaS「Auth0」を導入するメリットとは

Auth0の機能

SSO(シングルサインオン)

ユーザーが一度ログインをおこなうと、複数のサービスをひとつのIDとパスワードでログインできるようにし、ユーザー情報を一元管理する機能です。SSOを行うことによって、従業員のアクセス管理を簡素化することができます。

一般的にSSOを備えたプラットフォームの実装は非常に難しく、通常半年以上かかってしまうのですが、Auth0を導入した多くの企業が、短期間でSSOの実装が可能になります。

多要素認証(MFA)

多要素認証は、99.9%のハッキングを抑止することが証明されていますが、多用するとUX(User Experience)を低下させる可能性があります。

そのため、Auth0ではアダプティブ多要素認証を導入し、危険であるユーザーにのみプロンプトを表示させることで、セキュリティを強固に保ちつつ、ユーザーのスムーズな操作も可能にしています。

信頼性の高いクラウド基盤

アクセスが急増したり、データのやり取りが多くなった場合でも、専用の対策やフェイルオーバー(障害が発生した際に自動的に代替システムに切り替える)機能によって認証システムを安定して稼働させることができます。

本番環境とテスト環境は完全に分離されているため、アップデートのタイミングを柔軟に管理できます。

パスワードレス認証

多くのユーザーがパスワードを再利用しているとされ、これがユーザーのセキュリティリスクを増幅させています。

そこでAuth0ではパスワードレス認証を導入し、パスキーやワンタイムパスワード、マジックリンク(SMS認証やメールアドレス認証)によるログインやサインアップを可能にしています。ユーザーはパスワードを覚える必要がなくなり、セキュリティリスクも軽減されます。

カスタマイズ可能なUI

ログイン画面やエラーメッセージなど、企業のブランドやスタイルに合わせてカスタマイズが可能です。コードを書かなくても、公式サイト上でカラーやフォント、線の色や太さ、横幅、ページの背景も操作できるので、完成時のイメージも湧きやすくなります。

ソーシャルログインに対応

FacebookやX、Google、LinkedInなどの既存のログイン情報を使用することで、Webアプリケーションにサインインすることができる、ソーシャルログインにも対応しています。

ソーシャルログイン機能によって、都度新しいアカウントを作成する必要がなく、ユーザーの登録とログインを簡素化することができます。

RBACによるユーザー管理

ユーザープロファイルの作成、更新、削除が可能です。また、ロールベースアクセス制御(RBAC)によるユーザーの権限管理ができるため、個人のロールの変更も迅速に実行できます。

Auth0の活用例

経済産業省「GビズID」

出典:https://services.digital.go.jp/gbizid/

「GビズID」とは、経済産業省が構築した認証基盤のことで、ひとつのアカウントでさまざまな行政手続を利用する際の認証を行えるようにするシステムです。

Auth0を導入することで、認証システムの効率化とセキュリティ強化を実現し、行政サービスのさらなる利便性向上を達成しています。

参考:Microsoft Word – METI-Auth0 Case Study Final.docx

「SUBARU ID」の認証

出典:https://www.subaru.jp/

SUBARUは、コミュニティーサイト「#スバコミ」や、公式ウェアやアクセサリーなどを販売している「SUBARU ONLINE SHOP」というサービスを展開しています。

しかし、サービスごとにパスワードが異なったり個別ログインが必要になったりするため、サービス間の移動がスムーズにできないなどの課題がありました。

そこでAuth0を採用することで、メールアドレスや電話番号、SNSをIDとして利用可能とし、サービス間の移動をスムーズにさせることで、顧客の利便性を向上させ、安心安全なID管理を実現することを可能にしました。

参考:https://japan.zdnet.com/article/35162020/

「Chatwork」ログイン機能の移行


出典:https://go.chatwork.com/ja/

以前は自社で実装していたログイン機能をAuth0に移行することで、CAPTCHAや多要素認証などの機能を自社で保守管理する必要がなくなりました

また、Bot検知や不審なIP検知、その他攻撃対策のセキュリティ面の対応もAuht0に任せることで、社内のリソースを他の開発に割くことができるようになりました。
参考:https://creators-note.chatwork.com/entry/2023/12/13/000000

電子機器メーカーでの導入事例(弊社実績)

弊社LIGの開発実績をご紹介させていただきます。電子機器メーカーの新規サービス開発において、Auth0を導入しました。

このサービスは利用者層の幅が広いため、Auth0を活用してパスワードレスでのログインを可能にすることで、ユーザーに負荷をかけないログイン方法を実現しました。また、ログインを行わず他のサービスへのスムーズな移動を可能にしたことで、ユーザー体験の向上を図りました。

さらに、ユーザーデータの管理においても、Auth0の導入により低コストで高いセキュリティの運用を行うことができました。

この事例では、Auth0の柔軟性と高度な機能を活用することで、クライアントの多様なニーズに応えつつ、セキュリティと使いやすさを両立させることに成功しています。

Auth0を活用した開発サービスのご案内
Auth0の導入やカスタマイズでお悩みではありませんか? LIGではAuth0に関する幅広い支援サービスを提供しています。

導入のサポートから、お客様のニーズに合わせたカスタマイズ、さらには運用サポートまで、Auth0に関するあらゆる課題に対応いたします。

お客様のビジネスに最適な認証ソリューションの実現に向けて、私たちがお手伝いいたします。Auth0の導入や最適化についてのご相談は、以下のリンクからお問い合わせください。

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Auth0の料金プラン

Auth0には、Freeプラン、Essentialsプラン、Professionalプラン、Enterpriseプランの4つの料金形態があります。

エンドユーザー向けのサービスに特化しているということで、開発者や小規模プロジェクト向けに無料プランを提供しているのが特徴です。7,500人のアクティブユーザまではFreeプランが使えるため、試しに使ってみるだけであれば、Freeプランでも十分でしょう。

プランによって、管理者数やテナント数、ログ保持の期間が主に異なってきます。

B2C B2B
Free 無料 無料
Essentials $35/月 $150/月
Professional $240/月 $800/月
Enterprise お問い合わせが必要 お問い合わせが必要

※月間のアクティブユーザーが500人の場合の料金プランです。
※2024年8月時点の情報です。最新の情報については公式サイトをご確認ください。

他の認証プラットフォームとAuth0の比較

それぞれ異なる料金体系を採用しているため単純比較は難しいですが、以下にそれぞれの特徴をまとめました。

特徴 料金
Auth0(Okta「Customer Identity Cloud」) 規模によって4つのプランを提供している。無料プランは7,500人の月間アクティブユーザー(MAU)まで利用可能。
  • Essentials(B2C):$35/月
  • Professional(B2C):$240/月
  • Essentials(B2B):$150/月
  • Professional(B2B):$800/月
Okta「Workforce Identity Cloud」 エンタープライズ向けに特化しており、各機能ごとに料金が設定されている。無料プランはなし。
  • シングルサインオン(SSO):$2〜/ユーザー/月
  • 多要素認証(MFA):$3〜/ユーザー/月
  • ユニバーサルディレクトリ:$2〜/ユーザー/月
  • など

AWS Cognito AWSリソースとの連携が楽であり、親和性が高い。月間アクティブユーザー(MAU)ベースの従量課金制なので小規模なプロジェクトでもコスト効率が良い。
  • 〜50,000MAU:無料
  • 50,001 ~ 100,000MAU:$0.0055/MAU
  • 次の 90万MAU:$0.0046/MAU

※2024年8月時点の料金です。最新の情報については各公式サイトをご確認ください。

よくある質問

Auth0は小規模なプロジェクトにも適していますか?

はい、Freeプランは7,500人のアクティブユーザーまで無料で利用可能です。

Auth0の導入にはどれくらいの時間がかかりますか?

多くの企業が1〜2週間程度で基本的な導入を完了しています。複雑な要件がある場合は、さらに時間がかかる可能性があります。

Auth0はGDPRに準拠していますか?

はい、Auth0はGDPRを含む主要な法令や規制に準拠しています。

まとめ

今回は、Auth0の特徴や使用例をご紹介しました。Auth0は実績が豊富であり、支出を抑えながらセキュリティ対策が可能です。また、シングルサインオン(SSO)やソーシャルログイン、パスワードレスなどユーザーに負担を与えない認証方法を導入することで、UXを向上させることが期待できます。

今回ご紹介したポイントが、認証プラットフォーム選びの参考になれば幸いです。

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Consultingチームに所属し、プロジェクトの戦略立案や実行を担当。大学在学中は、フリーランスとして個人や企業からの依頼を受けていた。プログラミング学習サービスの運営やHTML、CSS、JavaScript、WordPressのスキルを独学で習得した経験を持つ。

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