「要件定義」という言葉、耳にしたことがあるという人は多いと思います。では、要件定義とはそもそも何か、具体的にどうすればいいか答えられますか? 本連載では、Webサイト制作の要ともいうべき要件定義について掘り下げていきます。LIGブログでは制作サイドの視点から解説します(発注サイドの視点でまとめた記事はつなweBで公開中)。
本記事の監修者
株式会社LIG Webディレクター 因幡 祐香(Yuka_Inaba) Webディレクター歴12年。システム開発を伴うプロジェクトの要件定義やディレクション、長期にわたる安定運用と事業展開を想定した情報管理や体制構築を得意とする。Webディレクター・PM向けのセミナーも実施するなど、メンバー教育にも力を入れている。 |
コストと見積もりの考え方
Webサイトの見積もりに含まれる項目や費用の根拠を確認しよう
LIGでは、要件定義フェーズと制作フェーズの見積もりを分けて作成することが多いです。プロジェクトの内容によっては、さらにその前段階である戦略設計から見積もりを行う場合もあります
今回は、Webサイトの費用についての考え方と、見積書の依頼方法/作成方法について述べていきます。
見積もりの内容やフォーマットは制作会社によってさまざまですが、LIGの場合、Webサイトの要件定義費と制作費を別々にお見積りすることが多いです。要件定義を通してプロジェクトの目的に応じた最適な実施内容・制作物を見極めた結果、制作費を再算出する可能性があるためです。
制作費の見積書には、デザイン費やコーディング費といった内訳が並びます。これらはWebサイトのページ枚数や、各ページの内容量・仕様の複雑さなどによって算出されます。
一方、少々イメージしにくい項目に「ディレクション費」というものがあります。この項目に当たる内容は、進行管理、チーム内の情報共有、内容や品質のチェックなど多岐にわたります。目に見えにくい部分ですが、プロジェクトを進める上で欠かせない項目です。
ディレクション費は、必ずしもページ数だけを元に算出されるものではありません。見積書でディレクション費について触れるときには、具体的な業務内容やドキュメントなどの成果物を記載しておくと混乱を招かずに済むでしょう。
社内スタッフにヒアリングをおこない、作業量を正確に反映した見積書をつくろう
見積書をつくるときは、クライアントと社内スタッフの両方の声に耳を傾けることが大切です。実際の作業量に見合わない見積もりが通ってしまうと、制作会社内で余計な軋轢を生む火種にもなります
見積もりは、実際の作業内容を適切に反映した内容にする必要があります。そのためには先入観にとらわれず「何が求められているのか」を洞察することが肝心です。
たとえば、ECサイトの制作だけを依頼されたと思って見積もりをしたら、実は既存の在庫管理システムとの自動連携機能まで望んでいた……といった話もあります。相手の言葉をそのまま鵜呑みにするのではなく、ビジネス全体を俯瞰して考えることが重要です。
また、適切な見積もりを作成するには、デザイナーやエンジニアなどの意見を聞くことも重要です。Webの技術は進化が早いので、1つの機能を実装するための作業方法がどんどん変わっていきます。以前の見積もり金額をもとにすると、工数が見合わなくなることもあるのです。提出前に社内で見積もりを確認してもらうのがいいでしょう。
もし費用の交渉が発生した場合、「デザインは別で頼むのでその分を削ってほしい」と頼まれるケースもあるでしょう。しかし、蓋を開けてみると要件に沿わないデザインが届き大幅な調整が必要になるかもしれません。そのため、単にデザイン費を削るのではなく、要件定義の主導者や進め方をはっきりさせる必要があるでしょう。
本記事は、マイナビ出版が発行する雑誌「Web Designing 2023年10月号(8月18日発売)」を元にしています(編集・執筆:小平淳一)。本誌では、2人のキャラクターが登場し、発注側と制作側の双方の視点でノウハウを解説。Web Designing編集部が運営する『つなweB』では、「発注側の視点」の記事を公開中です!