こんにちは、LIGの小寺です。
AIの台頭により、さらにスピードが重視される世の中。スピード感を持ちつつクオリティも担保したい、そのような開発を実現することができるのが「デザインスプリント」です。
デザインスプリントとは、短期間でアイデアを形にし、イノベーションを加速させるための手法です。
この記事では、デザインスプリントとは何か、導入するメリット、開発現場でのデザインスプリント活用方法について詳しく解説します。
目次
デザインスプリントとは
デザインスプリントは、Google Ventures(現在のGV)が提唱した、5日間(40時間)の集中的なプロセスを通じて、アイデアからプロトタイプの完成までを目指す課題解決の手法です。主にスタートアップ企業や新しいサービスの開発に活用されています。
効果的なアイデア検証とプロトタイプ開発を実現するため、以下のようなさまざまな要素が取り入れられています。
デザイン思考
デザインスプリントは、デザイン思考の手法や原則を取り入れています。デザイン思考とは、ユーザー中心の視点から問題を捉え、クリエイティブな解決策を見つけるための思考プロセスのことです。デザインスプリントでは、参加者がユーザーのニーズや要求を理解し、それに基づいてアイデアを構築します。
アジャイル開発
デザインスプリントは、アジャイル開発の原則も取り入れています。アジャイル開発とは、大規模なプロジェクトを小さなタスクに分割し、迅速な反復を重ねながら開発を進める手法です。デザインスプリントでは、5日間という限られた時間内で、プロトタイプの作成やユーザーテストといったアジャイルな開発プロセスを実施します。
ハッカー・ウェイ
デザインスプリントは、ハッカー・ウェイの考え方も活用しています。ハッカー・ウェイは、改善を継続的に繰り返し、最良の結果を長期的に追求する手法です。デザインスプリントでは、一度で完璧なものを目指さず、短期間でもっとも効果的なプロトタイプを作成し、その後の改善や拡張につなげることを重視します。
デザインスプリントのプロセス
デザインスプリントのプロセスは、以下の5つのステップから構成されています。
- デザインスプリントのプロセス
-
- 問題定義
- アイデア出し
- 決定
- プロトタイプ
- 検証
1. 問題定義
最初のステップでは、解決すべき問題を明確にし、スプリントのスコープを設定します。チームで共通の理解を築き、目標や期待を明確にすることを目的とします。関係者や利害関係者との意見交換やユーザー調査を通じて、問題の本質や背景を把握していきましょう。
2. アイデア出し
次に、多くのアイデアを生み出すためのブレストセッションが行われます。参加者の自由な発想を促し、多様なアイデアを引き出しましょう。その後、チームは議論や投票を通じて、もっとも有望なアイデアを選択していきます。
3. 決定
選択したアイデアをさらに具体化するために、それぞれが個別にスケッチを作成します。スケッチによってアイデアが視覚化され、チーム内での共有が可能になります。スケッチにおいては、簡潔にコンセプトを伝えることに重点を置きます。
4. プロトタイプ
スケッチが完成したら、実用的なプロトタイプを作成します。プロトタイプは、問題解決のアイデアを具体化し、ユーザーが体験できる形にするためのものです。できるだけ短期間で形にするためにも、必要な機能や要素は作り込みすぎないことがポイントです。作成には、デザインツールやホワイトボード、プロトタイピングツールなどが使用されます。
5. 検証
最後のステップでは、作成したプロトタイプを実際のユーザーにテストしてもらいます。ユーザーのフィードバックを収集し考察することで、プロトタイプの改善点や修正点が見つかります。このフィードバックを次のフェーズや開発に反映することが重要です。
以上の5つのステップを通じて、デザインスプリントは迅速な開発と効果的な問題解決を実現します。短期間でのプロトタイプ作成とユーザーテストにより、市場にリリースする前に問題を洗い出し、品質やユーザビリティを向上させることができます。
デザインスプリントを導入するメリット
デザインスプリントを取り入れることには以下のようなメリットがあります。
迅速なアイデア創出と検証が可能
デザインスプリントは5日間の集中的なワークショップ形式で行われます。短期間でアイデアを出し合い、プロトタイプを作成し、ユーザーテストを行うことで、アイデアの優位性を素早く検証できます。これにより、時間とリソースを最小限に抑えながら、優れたアイデアを見つけ出すことができます。
ユーザー中心の設計につながる
デザインスプリントでは、ユーザーのニーズやフィードバックを重視します。参加者はユーザーの視点に立ち、ユーザーニーズや課題を深く理解していきます。ユーザーの声を取り入れながらアイデアを検証することで、ユーザーにとって有用なソリューションを生み出すことができます。
チームの結束力向上
異なるバックグラウンドや専門性を持つメンバーが集まりデザインスプリントを回すことで、多様なアイデアが生まれます。また、プロジェクト全体のビジョンや目標を共有し、協力してプロトタイプの開発やテストを進めることで、チームの結束力を高めることができます。
リスクの最小化
デザインスプリントは、ベースラインのアイデアやプロトタイプを短期で作成し、検証するものです。失敗する可能性があるアイデアを早期に特定し、修正や改善を行うことができるので、時間とコストの節約ができます。また、ユーザーのフィードバックを受けながら進めるため、無駄な開発を避け、効率的なプロセスを実現できます。
現場での活用方法
では、実際にデザインスプリントを自社でどのように取り入れているのかについてご紹介します。
LIGには、国内外のデザイナーやエンジニア、コンサルタントとさまざまなバックグラウンドやスキルを持つメンバーがそろっています。
各分野のプロフェッショナルがチームを結成してデザインスプリントを実施することで、多様な視点やアイデアがもたらされ、問題解決の幅が広がり、よりクリエイティブで効果的な結果を生み出すことができます。
デザイナーがユーザーエクスペリエンスやインタフェースの設計に関わり、エンジニアが技術的な実現可能性を考慮し、コンサルタントが市場や顧客のニーズを分析し、プロジェクトマネージャーがスケジュールやリソース管理を担当する……というふうに、各メンバーが役割を果たすことによって、デザインスプリントの成果の質とスピードを向上させることができます。
デザインスプリントと相性抜群のノーコードツール開発
ノーコードツールは、プログラミング知識がなくてもアプリやWebサイトを作成できるツールです。デザインスプリントの重要な要素の一つが「スピード」ですが、ノーコードツールを利用することでより迅速なプロトタイピングとデザインの実装が可能になります。
実際に自社でもノーコードツールを用いた開発を現在行っています。
ノーコードツールを使えば、コーディングをする必要がないので、スキルのないメンバーもアイデアをすぐに具現化し、視覚的に開発を進めることができます。たとえばデザイナー自身がデザインツールでボタンやテキストを配置していく感覚で、バックエンド側の実装までできてしまうのです。Baasと連携させればリアルなデータを組み込んでテストすることも容易に可能です。
逆にノーコードツールのデメリットとして、大規模な開発には向いていないことやテンプレートが豊富であるがゆえに細かいデザインの変更がやや難しいことなどが挙げられます。
しかし、なにより「スピード」を重視し、完成版ではなく「プロトタイプ」までを作り上げるデザインスプリントとの相性は抜群だといえます。
まとめ
デザインスプリントは、短期間でアイデアからプロトタイプの完成までを実現する課題解決方法です。ユーザーのニーズを重視し、チームのクリエイティブな思考を引き出すことで、より効果的に開発を進めることができます。
とくに新サービスの創出など、短期間で検証が必要なプロジェクトでの活用が有効です。ぜひチーム開発の際は取り入れてみてください。
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