【セミナーレポート】PMFの道のりからチーム作りのコツまで!急成長SaaSの裏側を公開

【セミナーレポート】PMFの道のりからチーム作りのコツまで!急成長SaaSの裏側を公開

Mako Saito

Mako Saito

こんにちは、LIGのマーケターのまこりーぬです。

2022年11月、「SaaSビジネス」をテーマにスペシャルゲスト3名をお呼びしてイベントを開催しました! ご登壇いただいたのはこちらのみなさま。

  • フォーム作成ツール「formrun」を率いるベーシック執行役員 佐々木さん
  • 電話代行サービス「fondesk」を率いるうるる執行役員 脇村さん
  • 先日「PMFの教科書」を出版されたコンサルティング会社の才流代表 栗原さん

当記事ではそのイベントの様子をレポートします。SaaSビジネスに携わっている、あるいは興味をもっているみなさま、ぜひ参考にしてくださいね。

登壇者

株式会社ベーシック 執行役員 CSO PLG事業部長
佐々木 陽 氏

株式会社東急エージェンシー、株式会社リクルート、株式会社Kaizen Platformを経て、2015年株式会社Oneteamを創業。2019年に職場のコミュニケーションツール「Oneteam」事業を株式会社リンクアンドモチベーションへ譲渡。同年、それまでの経験を活かしSaaS企業発展のためのSaaS専門事業コンサルティング会社である株式会社deflagを創業し、代表取締役社長に就任。2020年にベーシック執行役員 CSOに就任し、PLG事業を管掌。
株式会社うるる 執行役員
脇村 瞬太 氏

2011年入社、シュフティ事業部長や事業戦略室室長などを歴任後、新規事業「fondesk(フォンデスク )」の立ち上げを担当。リリース後3年で3,000社を超える有料契約を獲得。クラウドワーカーを活用した「バックオフィス業務のDX化」を推進する。
株式会社才流 代表取締役社長
栗原 康太 氏

東京大学卒業。2011年に株式会社ガイアックスに入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。「メソッドカンパニー」をビジョンに掲げる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。著書に『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』(すばる舎)、『新規事業を成功させる PMFの教科書』(翔泳社)など。

モデレーター

モデレーター:株式会社LIG マーケター
齊藤麻子(まこりーぬ)

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。顧客のマーケティング支援、自社のマーケティング、オウンドメディア運営に広く携わる。2021年にLIGブログ編集長代理、デジタルマーケティング事業部マネージャーに就任。副業ではライターとして活動中。

はじめに:そもそもPMFとは?

まこりーぬ:はじめに「そもそもPMFとはなにか」について、才流の栗原さんよりお話しいただきます。

栗原:PMF(Product Market Fit)はアメリカの起業家であり投資家のマーク・アンドリーセン氏によって広められた概念であり、「顧客のニーズを満たす商品で、正しい市場(潜在的な顧客がたくさんいる市場)にいること」を指します。

資料

栗原:PMFを達成する前は、重い岩を押しながら山を登っているような感覚が生まれます。必死に頑張っているけど全然売れない、リードが全然とれない、顧客が満足していないといった状態ですね。

資料

栗原:一方でPMF達成後は、顧客からの問い合わせが殺到する、売上がグッと伸びる、人手が足りなくなるなど、転がっていく岩を追いかけるような感覚が生まれます。

また、才流ではPMF〜グロースまでのプロセスを「フィットジャーニー」というフレームワークに落とし込んでいます。

資料

栗原:ただ実際のところ、多くの新規事業は「顧客の課題やニーズ」ではなく「会社が掲げる理想論」から始まっているように感じます。成功企業15社にインタビューをおこなったところ、「顧客が増えない」「解約率が非常に高い」といった状況に直面してようやく顧客の課題やニーズと向き合うようになり、PMFを達成している会社がほとんどでした。

「ロマンとそろばん」という言葉がありますが、そのバランスが取れたとき、はじめて世の中に受け入れられるプロダクトが生まれるのではないかと思います。

さらに詳しい内容は著書『新規事業を成功させる PMFの教科書』(翔泳社)にまとめていますので、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。

PMF達成までの道のり:formrunの場合

まこりーぬ:それではここから本題に入ります。まずはフォーム作成ツール「formrun」がPMFを達成するまでのストーリーについて、ぜひ教えていただけますか?

資料
https://form.run/home

佐々木:ベーシックが買収した当時、formrunはまだほとんど売上がたっていませんでした。しかしながら、広告費ゼロで毎日50件ほど新規登録が発生していたんですよ。その数字を見て「このプロダクトは磨けば絶対に育つな」と思い、プロダクトオーナーに就任しました。

最初に着手したのは、お客様に解約されないプロダクトにすることです。バケツの水漏れがある状態で事業を拡張してもいいことはありません。「なぜ解約されるのか」を週次で定量分析し、一つひとつ紐解いていきました。

続いて取り組んだのは、バイラルポイントを作ることです。たとえば、某出版社がプレゼントキャンペーンをおこなう場合、フォーム送信者は100万人規模に膨れ上がります。そこに「このフォームはformrunで作られています」というメッセージがあるだけで露出が増え、お客様がフォームを作りたいときに「formrun」を想起していただけるようになりますよね。

このように徹底的にデータを取得・分析し、導き出された施策を愚直にやってきた結果として、現在は月間ユーザー登録が1万を超え、ローンチから2年半で成長率950%と、PMFを達成することができました。

まこりーぬ:成長率950%とは、すさまじい数値ですね……!

PMF達成までの道のり:fondeskの場合

まこりーぬ:続いて脇村さん、電話代行サービス「fondesk」のPMF達成までの道のりについてぜひお聞かせください。

資料
https://www.fondesk.jp/

脇村:fondeskの前身となるサービスは2017年に生まれました。オペレーターが電話を受け、それをChatworkに打ち込みユーザーにお知らせするという仕組みです。Chatworkユーザー限定のサービスにもかかわらずどんどん登録者が増えていったので、このサービスが顧客のニーズにフィットしていることはセルフチェックできていました。

ただ、今だから言えることですが、オペレーターがメッセージを一件一件手入力していたので、時折メッセージの誤送信が発生してしまっていました。人の手を介さずシステムで送れるようプロダクトを見直し、SlackやLINE WORKSにも通知できるよう拡張させたものが現在のfondeskです。

そんなfondeskが「PMFを達成した」と感じられた節目は3つありました。

1つ目は、毎月オーガニックで10〜20社契約が増え、200社を超えはじめたときです。「成長スピードを上げるためにより挑戦しよう」と思うきっかけになりました。

2つ目は、「電話代行」というサービスの認知が広がったときです。世間一般的に「電話代行」というと「ECのコールセンター代行」や「アウトバウンドコール代行」のイメージが強く、fondeskもそれらと混同して理解されていました。

そこで我々はサービスを正しく理解してもらうために、fondeskの魅力をアピールできる、アイコンとなるような事例コンテンツをたくさん作りました。才流の栗原さんにもユーザーインタビューをして、記事にもバナーにも登場してもらいましたね。こうした事例コンテンツを通じて問い合わせは増えていきました。

3つ目は、新型コロナウイルスのまん延です。2020年3月時点では340社だったユーザー数が、緊急事態宣言が出された4月は単月で400社増え、年間で見ると約7倍も増えたんです。このときはオペレーターが足りなくなり、人材確保が喫緊の課題になりました。

まこりーぬ:まさに「転がっていく岩を追いかける」状態ですね。現場はパニックになったのではないかと想像しますが、脇村さんはどのようにチームを率いていったのでしょうか?

脇村:僕もパニックに陥りましたよ(笑)。ただ世界的な未曾有の事態ということもあり、幸いにもお客様側が寛容でしたね。

いつまでに何人オペレーターを増やす必要があるのかが算出できれば、あとは行動するだけ。それまでは自社のクラウドソーシングでのみ採用していましたが、社外のサービスも活用することで、必要なオペレーター数を確保していきました。

栗原:脇村さんに質問です。新規事業を推進する際、「電話代行」のように未知のカテゴリだと社内説得が難しそうだなと思ったのですが、どのように経営層を説得していったのでしょうか?

脇村:fondeskは、前身となるサービスですでにデータが溜まっていた、という点で恵まれていました。「Chatworkユーザーだけでこの数値なので、他のチャットツールに展開するとこれくらいの成長が見込めます」と数字で示すことができたんです。

一方で、電話代行はハッキリ言って市場規模が小さく、あまり魅力的ではないマーケットです。そのため電話代行から派生して考えられる事業を2〜3提案し、「大きなマーケットとして成長できる」ことを経営層に伝えていきました。

結果として、5年後の売上目標を3年で達成することができました。

SaaSのチーム作り:formrunの場合

まこりーぬ:続いて、現在のチーム体制とチーム作りのポイントをうかがっていきます。まず、formrunの体制図はこちら。

佐々木:事業の根幹を担うデータチームには社員2名と業務委託が10名在籍し、データウェアハウスを構築しながら全部署からのオーダーを受け取り、検証して、仮説を立て、未来予測もおこなっています。スーパーマンの集まりですね。

そのほか、プロダクトアウト型のPMが5名とマーケットイン型のPMが2名。デザイナーも同じ数いて、小さなユニットを組み開発を進めています。サポートメンバーはインシデントやユーザーからの改善要望に対応してもらいつつ、ジュニアPdMとして育てていきます。

栗原:佐々木さんは「データ」にかなり強いこだわりをお持ちですが、改めてその背景を教えていただけますか。

佐々木:僕は「formrunで世界に出たい」という思いを持っています。そのためには、「馴れ合いの集団」ではなく「知らない人とも働けるプロの集団」でなければならない。そうした集団を機能させるために、共通言語であり羅針盤となる「データ」を事業の中心に置くべきだと考えています。

SaaSのチーム作り:fondeskの場合

まこりーぬ:続いて脇村さん、fondeskの組織について教えていただけますか。

資料

脇村:fondeskは僕を含めて15名で運営しています。「カスタマーリレーション」はCS・マーケティング・セールスを幅広く担うチーム。「オペレーション」は在宅オペレーター200名の採用や管理をおこなっています。小さなチームなので、お互いの役割を明確化し過ぎず、越境をしながら仕事をしています。

現在fondeskは月に約5,000万円くらいの売上があり、それを15人で回しているので、一般的に考えると小規模な組織です。というのも僕自身、「小さなチームで大きな仕事」という言葉が好きなんですよ。数億人のユーザーを抱えるInstagramがFacebookに買収されるときに13名の小さな組織だったのは有名な話ですが、そういうチームにすごく憧れています。

まこりーぬ:越境しあう空気を作るために、なにか工夫していることはありますか?

脇村:「ずっと新規事業である」という意識を大切にしていますね。新規事業って「1人3役やるのが楽しい」みたいな組織でないと、急に伸びるタイミングを乗り超えられないんですよ。「目の前のボールしか拾わない」というメンタルの持ち主だと対応できません。そのため、お互いの仕事に興味を持ち、垣根を超えることを是とする空気づくりに取り組んでいます。

いいチームを作るために取り組んでいること

まこりーぬ:「いいチーム」を作るために、佐々木さん・脇村さんがプロダクトオーナーとして取り組んでいることをぜひ教えていただけますか?

佐々木:僕がオーナーとして大事にしているのは、 “プロダクトの未来” を誰よりも考え続けることです。「2〜3年後にどんなマーケットを作りたいのか」を常に考え、チームに発信するのが僕の役割だと思っていますね。

脇村:僕はfondeskのリリース当初から変わらずにやっている習慣が2つあります。1つは、新規で契約いただいた企業様をウォッチすること。毎日契約が発生しますが、どんな業種・規模の企業様なのかをホームページまで飛んで確認しています。

もう1つは、Twitterでfondeskに関するつぶやきをチェックすること。良い口コミも悪い口コミも、ほぼすべてに返事しています。こうしてコミュニケーションをとることで、一人の顧客を深く理解する感覚を忘れないよう心がけています。事業が大きくなって、お客様が “ただの数字” に見えてきたら終わりだなと思っていますね。

もう一度新規事業をやるならどう進める?

まこりーぬ:最後に、3名それぞれにうかがいます。もう一度新規事業を立ち上げる場合、「これだけは欠かさずやる」ことはいったいなんでしょうか?

佐々木:やはり立ち上げ初期からデータを取っておくことですね。formrunは約2年でPMFを達成できましたが、「2年かかってしまった」というシビアな見方もできます。初めからきちんとデータを取っていれば、よりスピーディーに軌道修正できたかもしれません。

脇村:僕はプライシング戦略を練り直したいですね。どのタイミングで値上げをするのか想定はしていましたが、実際は2年ほど遅れてしまいました。プライスアップって、かなり前もって準備しないと進まないんですよ。ロードマップのなかで、プライスアップをするときの状態を明文化すべきでした。

栗原:私は解約顧客へのインタビューに早めに取り組むことが有効ではないかと考えています。「成長はストレスに対する過剰補填から生まれる」という言葉の通り、ほとんどの企業は「このままでは預金残高ゼロになる」という危機感を得てようやく顧客に向き合っています。

しかし当然ながら、ダメージが少ない段階で立て直せたほうがいい。解約したお客様に会いに行くことで、より早くPMF達成に近づけるのではないでしょうか。

まこりーぬ:佐々木さん、脇村さん、栗原さん、とても参考になるお話をありがとうございました!

さいごに

当内容が、SaaSに携わるみなさまにとって少しでも参考になれば幸いです。

また、弊社LIGは「システム開発」の側面からクライアントのSaaSビジネスを支援しています。ご興味ある方は、ぜひ事業紹介ページをご覧ください!

 
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Mako Saito
Mako Saito LIGブログ編集長 / 人事部長 / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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