【セミナーレポート】『世界一やさしい フリーランスの教科書 1年生』高田ゲンキさんが語る「フリーランスの働き方」

【セミナーレポート】『世界一やさしい フリーランスの教科書 1年生』高田ゲンキさんが語る「フリーランスの働き方」

Shota Utsunomiya

Shota Utsunomiya

こんにちは! デジLIG運営のショウタです。

デジLIG(デジタルハリウッドSTUDIO by LIG)とは
株式会社LIGとデジタルハリウッドが業務提携をしてはじめたクリエイター養成スクールのこと。Webデザイナーや動画クリエイターを目指す方向けのカリキュラムを展開している。現在、上野・池袋・北千住・町田・川崎・大宮にて受講生を募集していて、無料説明会は毎日開催中!

デジLIGにはフリーランスを目指している受講生も多いのですが、仕事の受注方法や収入、キャリア形成についてよく相談を受けます。おそらくは、身近な環境にフリーランスのモデルケースがおらず、働き方が具体的にイメージできないのかと思います。

そこで、『フリーランスの教科書 1年生』の著者で、フリーのイラストレーター&漫画家として活躍されている高田ゲンキさんをお招きして「フリーランスの働き方」に関するセミナーを開催しました!

高田さんがフリーランスになった経緯や仕事獲得術など、超実践的&有料級のお話をたくさんいただいたので、今回はその内容の一部をご紹介します。
(開催は2022年12月19日20時〜、オンライン)

ゲスト紹介

イラストレーター/漫画家
高田ゲンキさん

1976年生、ベルリン在住。2004年にフリーランスイラストレーターとして活動開始。2012年に夫婦でドイツ移住。イラスト/漫画制作、書籍執筆、YouTube|ブログ/|SNSでの発信等メディアを問わず幅広く活動中。イラスト実績の近年の代表例は経済産業省 特許庁のオンライン特許庁見学など。著書2冊出版。一児の父として、フリーランスの仕事と育児の両立の限界に挑戦し続ける日々。

フリーランスとして働くのに必要な準備って?

フリーランス

本日は「フリーランスとして働くのに必要な準備」、「好きなことを仕事にしていくためのマインド」、「フリーランスのキャリアとは」という、3つのトピックスについてお話をさせていただきます。

まず「フリーランスとして働くのに必要な準備」には、次の6つがあると思います。

フリーランス

①スキル(独学か師事)

当然ですがスキルは必要です。具体的にはイラレ(Illustrator)などのデジタルスキル、画力、コミュニケーション能力などですね。スキルのつけ方は独学でもいいですし、デジLIGさんのようなスクールを活用するのもありだと思います。

②ビジネスの知識(独学推奨)

フリーランスの場合、高いスキルがあっても、それを売ってお金にする知識がないと稼げません。なのでマーケティングや営業などの知識はつけておくべきです。「スキル」と「ビジネス知識」は両輪だと考えてください。

ビジネス知識は独学で身につけるのがおすすめです。というのも、マーケティングって3年とか5年でどんどんトレンドが変わっていくんですよね。それをスクールで学ぶと、トレンドが変わるたびにまたお金を払って学び直さなければいけなくなりますし、もしかしたら時代に取り残されて淘汰されてしまうかもしれません。

ですが、独学でできるようになっておけば、すぐに最新の情報をキャッチアップできるはずです。

③制作機材(パソコンなど)

スペックの高いパソコン、アプリなどを準備しておくことも大事です。ただし、これらのツールはしっかりとしたデッサンスキルがベースにあってこそ活きてくるので、デッサン力も大事です。

④ポートフォリオ、⑤営業ツール

この二つは当たり前なので、割愛しますね(笑)。

⑤心の準備

心の準備については、相談を受けることが多いので少し深掘りしてお話します。

フリーランス

フリーランスは基本的に「すべて自己責任」です。会社員と違って、失敗したら全部自分で責任を負わなければいけないので、リスクがあります。SNSにキラキラした生活の様子をアップしているフリーランスもいますが、実際には「こんなはずじゃなかった……」と思っている方も少なくないと思います。

一方で良い面もあるんです。会社員の仕事での成功は会社の実績にしかなりませんが、フリーランスは自分の実績になります。

なので、フリーランスはハイリスクハイリターンとも言えるかもしれません。

あとは「後悔して生きるか、死ぬ覚悟で飛び込むか」というのは考えておくことが大事ですね。

僕も会社をやめて独立するときはめちゃくちゃ悩んだし、怖かった。でも、そのまま会社で働き続けていたら、「本当にやりたいことができていない」、「あのとき独立すればよかった」と後悔する気がしました。安定を取るよりも、フリーランスになってやりたいことを全部やって、それでダメだったとしても燃焼しきる生き方がいいって思ったんです。それに日本に住んでいる限り、独立に失敗したぐらいじゃ死にませんからね。

フリーランスに不安を感じる原因は?

そもそもフリーランスになるのが「怖い」というのは、具体的に何が怖いんでしょうか? 僕は大体、次の4つのいずれかだと思っています。

フリーランス

①お金

やっぱりお金の不安は大きいですよね。この不安には「今はある程度貯金があるけど、フリーランスになっても会社員と同じくらい稼げるかわからない」か「来月生きていくためのお金がない」の二通りあると思うんですが、後者の場合、まず食べていくことが前提になるので、フリーランスという働き方にこだわる必要はないんじゃないでしょうか。

フリーランスになる際には、収入がなくても半年〜1年は生きていけるだけの蓄えをしておくのがベストですが、蓄えがないままに独立してしまった場合には、アルバイトをしたり、クラウドソーシングで仕事をしたりして蓄えをつくれば、金銭面の不安は乗り越えられると思います。

②職歴(履歴書)にキズがつくこと

「履歴書に空白ができるのが嫌だ」、「今の会社はまだ2年しかいない」といったことを気にする方がいますが、クリエイターとしてキャリアアップしていくなら、職歴よりも「何が作れるか」、「どんなスキルがあるか」のほうが大事だと考えています。

そもそも、職歴が重要視されるのは一流大学を卒業して大手企業で働いているようなごく一部の人に限られると思うんです。クリエイターとして独立や転職をするのであれば、あまり職歴は気にしなくていいと思います。

③失敗することがカッコ悪い

独立したものの食べていけず、挫折して再就職をすることになった場合、「人生の汚点」と思ってしまう方もいるかもしれません。

でもちょっと考えてみてください。もし知り合いに「失敗が怖いから何もしないAさん」と、「挑戦して、失敗することもあるけど頑張っているBさん」がいたら、Bさんのほうがカッコイイって思いませんか? 他人の挑戦をかっこいいと思うのであれば、自分の失敗も怖がらなくていいんじゃないでしょうか。

④周りからの目(居場所がなくなる)

「フリーランスになる」と宣言すると「何がんばっちゃってるの?」と揶揄してくる人もいるかもしれません。自分の居場所がなくなると不安になる方もいると思います。周りの目が気になる場合は、匿名で活動すればいいんです。今の時代、匿名でも仕事はできますからね。

好きなことを仕事にしていくためのマインドは

フリーランス
フリーランス

好きなことを仕事にしていくために必要なマインドは、ズバリ「『価値』より『感動』」です。

たとえば「この商品には価値がある」って思っても、それを買うかどうかは別問題ですよね。つまり価値があるからといって売れるわけじゃない。とはいえフリーランスの場合、買ってもらえなければ食べていけません。では、買ってもらうために何が必要なのか? それが「感動」です。

価値は客観的な尺度、感動は主観的な尺度です。自分が感動したものであれば、価値はどうあれ、お金を払いたいと思う人は多い。極端な話、1万人中10人しか感動しなくても、その10人が買ってくれればそれを作ったクリエイターは食べていけます。

「感動」というのは単純に泣かせることだけではなくて、「期待値を遥かに超えるクオリティに仕上がった」「締切は1週間後なのに依頼の翌日に納品された」といったケースもあります。

感動を与えられる人になるためには、自分がいわゆる「感動屋」になってはいけません。感動屋は感動のハードルが低いので、本当に良いものをたくさん見たり、経験したり、インプットしたりして目を養うことが大事です。肥えた目で見て「良い」と思えるものができれば、人に感動を与えられると思います。

フリーランスのキャリアアップの方法

フリーランス

会社員と違って、フリーランスのキャリアアップはイメージしづらいですよね。

「イラストレーターとして有名になる」、「大手企業と仕事をする」、「収入がアップする」といったケースがフリーランスのキャリアアップに該当すると思います。

フリーランス

あくまで僕の考えですが、フリーランスのキャリアアップには「王道派」と「戦略派」という二つのタイプがあると思います。

王道派とは「動画クリエイターといえば○○さん」など、業界のトップランナーの一人になることです。このレベルになると、自らマーケティングをしなくてもネームバリューだけで次々と仕事の依頼が舞い込んできますし、単価も高くなります。ただ、この領域にたどり着けるのはほんの一握りなんです。

多くの方は「戦略派」だと思います。戦略派とは、分析と試行錯誤を繰り返して仕事の角度を上げていくビジネスマンタイプのことです。僕も超有名ではないものの、20年くらいこの仕事で食べることができています。

僕の経験を踏まえて、フリーランスとしてキャリアアップしていくためには具体的にどういった戦略をとればいいのか、一例をご紹介します。

フリーランス

①最初の数年は一極集中

まず独立した最初の数年間は一極集中しましょう。いろんなことに手を出してしまう方もいますが、自分の強みを見つけたら、そこをひたすら突き進んだほうがいい。僕もBtoB案件に集中しました。

BtoB案件は「フリーランスになったばかりで実績がないので取れない」と考えられがちですが、必ずしもそうではないんです。実際、僕はフリーランスになってすぐにBtoB案件を受注しました。

BtoB案件獲得のために意識しておきたいことが3つあります。

一つ目は当たり前かもしれませんが「スキル」です。高いスキルを証明できるサンプル(ポートフォリオ)を作っておけば、営業の資料として使えます。

二つ目は「相手のビジネスに貢献したい気持ちを伝えること」です。「商品の売上アップに貢献したい!」という熱い思いを伝えることで、相手は「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってくれるかもしれません。僕も毎回ちゃんと言葉にして伝えています。

三つ目は「スピード」です。もし同レベルのクリエイターが二人いれば、依頼する側は早く納品してくれるほうに仕事を任せますよね。メールに即レスするだけでもいいので、特に最初はスピード感を持った対応を意識するといいと思います。

ちなみに僕の場合、最初はとにかく営業をしました。本の奥付から出版社の編集部の連絡先を調べて、片っ端から電話して、ポートフォリオを持って行きました。1社目ではボロカスに言われたんですが、2社目、3社目で仕事をもらえましたね。

②特に最初の数年は目移りしやすいので注意

フリーランスになると、大体1年目は仕事を取るだけで精一杯です。2年目になると、仕事の依頼がいっぱい来るようになってうれしい反面、仕事のスピードやスキルが追いついていないので、徹夜で働くなことも出てきます。ただ、その過程でフリーランスとして成長できるので、3年目になると少し余裕が出てきます。

すると目移りして、本業以外のことをやり始める方が多いんです。僕も3年目に個展をやって大失敗しました(笑)。

なので、フリーランス3年目こそ本業を頑張ってほしいですね。ここを乗り越えると、フリーランスとしての生存率はアップします。

③BtoBで売上を伸ばし、徐々にSNS発信も

BtoB案件で売上が伸びてきたら、SNSで発信を始めましょう。フリーランスになってすぐSNSをやる方も少なくないんですが、僕はまずBtoB案件などで食べていけるだけの売上基盤をつくってからスタートするほうがいいと思います。

その理由は、ある程度実績があったほうがSNSで発信したときに認知されやすいからです。僕は特許庁の仕事をやりましたが、そういった大きい案件を実績としてツイートするだけで、フォロワーは増えます。

今はTwitter、YouTube、TikTok、Instagram、ブログをやっていますが、YouTubeは単体で収益化できていますし、その動画自体がポートフォリオになって勝手に営業活動をしてくれています。SNSで発信するうえで実績は説得力になるので、ベースを作っておくことは大事です。

僕は最初の10年ほどイラストの企業案件のみに集中してSNSはやらなかったですね。たまに独立して1年ほどでフリーランス論を説く方がいますが、そこに割けるリソースがあるなら、自分のスキルを高めること、売上を伸ばすことに使うべきです。

④ストック型収入源を育てる

イラストやWebサイトを作って納品し、報酬を得るのは「フロー型収入」です。キャリアが積み上がれば単価もアップしますが、働いた分しかお金をもらえません

それに対してブログアフィリエイトやYouTubeの広告収入、本の印税、ストックイラストなどは半永久的に報酬が得られる「ストック型収入」です。これを積み上げていくと、数年後に大事な収入になります。目先の仕事だけでなく、こういったストック型の収入源を育てていくことも大事です。

⑤5〜10年辺りから他の分野と掛け合わせる

僕はイラスト1本で10年ほど活動してある程度の評価を得られるようになってから、ブログを始めました。ブログ単体でも収益化できたのですが、ブログに載せた漫画がバズってWebメディアでの連載が決まりました。その連載が書籍化され、出版の実績ができたことで次の出版にもつながりました。

あとはイラレに特化したYouTubeも始めました。SNSで発信をはじめたことでクリエイター同士の横のつながりもできています。

ほかの分野と掛け合わせてこういったサイクルができてくると、仕事がしやすくなります。

フリーランス

ストック型収入とも関係してくるのですが、フリーランスはライフステージに合わせた柔軟な働き方ができるのが魅力の一つです。

僕はドイツ在住なのですが、国内でも海外でもどこにいても仕事ができます。さらにストック型収入があれば、妊娠や出産、子育て、家族の転勤など、ライフステージが変わって仕事が制限されるときでも安心です。

Q&A

Q:独学でビジネス知識をつける方法を教えてください。

クリエイターさんってツールの使い方の本は読んでも、ビジネス書は読まない人が多いんですよね。僕は昔から「ガイアの夜明け」などのビジネス系の番組が好きで、ここからたくさんのことを学びました。

たとえばトヨタの車と僕のイラストって、規模や商品は違うものの作って売るという部分では一緒です。だからトヨタの商品開発手法を自分のイラストのレベルアップに置き換えて考えてみる、とかはしていました。

YouTubeにもビジネス系のチャンネルがいっぱいあるので、それらをマーケティング視点で見てみるだけでも違ってくると思いますよ。ビジネスマネジメントができるクリエイターって強いですからね。

Q:独立のきっかけを教えてください。

一番大きかったのは僕の師匠であるイラストレーター・大寺聡さんとの出会いですね。あとは映画「スパイダーマン」です。劇中に主人公が伯父さんから「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉をかけられるんです。スパイダーマンは大いなる力を持っているので、主人公は普通の幸せは求めずに、その力を使って社会を良くする責任があるということに気づきます。

そこで思ったんです。「僕の絵のスキルも大いなる力だから、それを最大限発揮できる環境で働かなければ責任を果たせないんじゃないか」って。僕の場合、フリーランスにならないとそれができないと感じました。

Q:イラストレーターに必要なスキルは何ですか。

まずしっかりとしたデッサンスキルはつけておくべきだと思います。あとは今話題になっているものや名作映画などは、一通り見たり触ったりしておくことをおすすめします。その際には消費者ではなくクリエイター視点で見て、売れている理由の分析やマーケットの動向把握をしてみましょう。

手当たり次第いろんなものに触れていくことで、自分の「好き」の発見にもつながりますよ。

Q:自分の強みはどうやったらわかりますか。

段階的にいろいろ試してみるといいと思います。自分の強みって当たり前すぎて自分では気づいていないことも多いので、小さくていいのでどんどんPDCAを回してみると見えてくると思います。

Q:いろいろ目移してしまって一極集中できません。どうしたらいいですか。

目移りすることは悪いことではないと思いますよ。ただ、時間を使ってしまうので目移りするスピードを上げてみるといいんじゃないでしょうか。専門分野で迷っているときは、一番お金になるものを選ぶことをおすすめしますね。効率的に稼げれば、ほかのことにも効率的に取り組めるようになります。

さいごに

フリーランスに興味はあるものの「何を準備すればいいのか」「仕事は取れるのか」など心配で、なかなか一歩踏み出せない方は多いと思います。

スキルを磨いて、営業をして、実績を積み上げて次につなげる。高田さんの実体験に基づくアドバイスはどれも役に立つものばかりで、参加者からは「細かいところまで話してもらえてためになりました」、「漠然とした不安が何だったのか明確になりました」、「背中を押されました」など、前向きな感想がたくさん寄せられました!

デジLIGでは、今後も日々の授業やイベントを通して受講生さんの不安や悩みを解決できるようにサポートし続けます。興味がある方は、ぜひ個別説明会にご参加ください!

 
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Shota Utsunomiya
Shota Utsunomiya Digital Education / School Adviser / 宇都宮 翔太

愛媛大学を卒業後、地元の印刷会社にて、法人営業としてデザイナーと連携してパンフレットやカタログ・Webサイトの企画提案や進行管理などを担当。自身も写真を趣味としており、クリエイティブな分野に携わっていきたいと思いLIGに入社。現在はDigital Education部にてクリエイタースクール「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG」の営業、運営企画、受講生のサポートを行う。

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