Creative or Performance? 急成長中の住信SBIネット銀行を支えるUXデザインチームの挑戦

Creative or Performance? 急成長中の住信SBIネット銀行を支えるUXデザインチームの挑戦

Hotaka Yamane

Hotaka Yamane

Strategy&Consulting事業部 コンサルタントの山根です。

アプリダウンロード数300万突破、2022年オリコン顧客満足度®調査「ネット銀行」第1位を誇る、住信SBIネット銀行。「サイトもアプリも使いやすい」「初めて使用したネットバンクだが、特に困ることもなくスムーズに使えた」などUI/UX周りのポジティブなクチコミが多く、顧客の支持を集めています。

実は我々LIGもUXデザインチームのお仕事を一部お手伝いしており、今回はそのご縁あって取材の機会をいただきました。顧客満足度の高いUI/UXはどのようにして生まれているのか、そこにどんな葛藤と挑戦があるのかを紐解きます。デザイナーのみなさん、そして事業を推進する経営者のみなさんも、ぜひご覧ください。

ico 住信SBIネット銀行株式会社 UXデザイン部長 半田 英二 さん駒澤大学文学部社会学科卒。ソフトバンク・ファイナンス(現SBIホールディングス)入社後、Gomezコンサルティングのクリエイティブディレクターとして金融・人材・EC分野中心にWEB構築・コンサルを多数実施し、住信SBIネット銀行の立ち上げプロジェクトにも参加。2012年7月住信SBIネット銀行入社、2016年5月より現職。
ico 住信SBIネット銀行株式会社 UXデザイン部 UXディレクター 関 衛介 さん武蔵野美術大学建築学科卒。モバイルサービス会社にて着メロ、アプリレビューサイトの企画運営に従事し、2013年住信SBIネット銀行入社。メールマーケティング、WEB改善を担当。2015年よりスマートフォンアプリの企画運営を担当し、ネオバンク事業をはじめとした各種サービスデザインをリード。

UXデザインの投資対効果は計測可能?

―― 貴社のUXデザインチームは業務委託も含め約20名体制と、規模が大きいですね。UXデザインには会社として力を入れているのでしょうか?

半田:経営陣はだいぶ理解を示してくれていますね。僕たちが入社した8〜10年前は「大規模なプロジェクトなのにデザインの予算がほとんどない」なんてこともありましたが、実績や仕事ぶりで信頼を重ねた結果、社内におけるUXデザインのプレゼンス(存在感)が着実に上がっていると感じます。

―― 具体的にはどのようにして信頼を積み上げていったのでしょうか。

半田:やはり、UXデザインの定量的な成果を示すことですね。なかでもインパクトが大きかったのは、アプリのユーザー数増加に貢献できたことです。

実はもともと、弊社サービスはWebシステムがメインで、アプリはオマケでした。しかし世の中的にアプリの利用率がどんどん伸びていましたし、なによりアプリであれば、生体認証でお客様のパスワード入力の手間を減らせます。そのため「アプリの利便性を高めればメインチャネルになるはず」と改善を重ねていった結果、無事にユーザー数を伸ばすことができました。

―― なるほど。UXを追求する一環として “アプリへの舵切り” を提案されたのですね。

半田:そうです。昔、とあるコンサルタントに「UXに投資対効果を求めるのはナンセンスだ」と言われたことがありました。たしかにUXの領域には “重要だけど定量的に成果が測れないこと” がたくさんあります。しかし弊社においては、「UXに投資対効果を求めない」という考え方はどうもフィットしないな、と感じます。経営陣はなんだかんだ売上利益を見て判断しますし、利益が出なければそもそもサービスを存続できませんからね。

だから僕らは、UXデザインによる定量的な成果をきちんとアピールする。そこで信頼を得てようやく “重要だけど定量的に成果が測れないこと” もやらせてもらえるようになると考えています。アプリダウンロード後の初期稼働率がアップしてお取引やお手続きにこれだけ誘導できたとか、迷わせないUIでカスタマーサポートへの問い合わせが減りリードタイムや経費コストを削減できたとか。すべてを測れるわけではありませんが、データで示せるものはいくつもあります。

―― 現場の臨場感がひしひしと伝わってきます。「成果なんて測れない」と投げ出すのではなく、定量的に示せるものはきちんと示すべき、ですね。

美しいものを作ろう < お客様を幸せにしよう

―― UXデザインチームは、具体的にどのような仕事を担っているのでしょうか。

半田:大きく2つあります。1つは、振込や残高照会、ATMでの入出金といった銀行機能のUX改善です。セキュリティレベルを維持しながらどれだけお客様の手間を減らせるか社内で検証したり、お客様が本来どんなことを実現したいのかインタビューしながらインサイトを見つけたりと、時間をかけて丁寧に取り組んでいます。

もう1つは、銀行サービス自体のアップデートです。弊社は「NEOBANK」というブランドでBaaS(Banking as a Service)に取り組んでおり、あらゆる企業様とコラボした金融サービスをたびたびリリースしています。

BaaSとは、金融機関が提供する「預金」「為替」「融資」といったサービスを金融機関以外の事業者にAPIを使って提供すること。直近は高島屋様とコラボしました。通常の銀行機能はもちろんのこと、お得な積立サービス「スゴ積み」を利用できます。

https://www.takashimaya.co.jp/neobank/index.html

―― 日々の業務のなかでは、どんなことを心がけていますか?

関:事業部から言われたとおりに作るのではなく、全体最適の観点をもって提案することですね。「全体がこうなので、このサービスはアプリではなくWebシステムにしてはどうですか?」と、ちゃぶ台を返したこともありました。

あと新機能のラフスケッチは、事業部から相談がきた翌日には出すくらいのスピード感で取り組んでいます。既存のパーツを組み合わせながら、まずはとにかく絵にしちゃう。そうすることで関係者間のぼんやりとしたイメージにピントが合い、プロジェクトの本気度が高まっていくように感じます。

―― 非常にスピーディーですね。プロトタイピングを重んじていらっしゃることが伝わってきます。

半田:新機能は単純に「締切が決まっているからクイックにやらざるを得ない」という側面も強いんですけどね。僕たちの後ろには開発部隊が待っているので、「もう少し絵柄やディテールにこだわりたいので提出を1週間延ばしたい」なんて安易には言えません。1週間粘ったおかげで成果が大きく伸びるのであれば話は別ですけどね。そうなることはめずらしいと思います。

10年にわたってお客様のリアルな声を浴び続けていると、「これ以上こだわって作っても伝わるお客様は少なそうだな」「結構反響がありそうだな」というポイントがある程度予測できるようになります。ですので、お客様が迷うことなく目的を達成できるデザインになっていれば、それ以上作り込んだとしても成果はそこまで変わらない。であれば、まずは合格ラインの70点で世の中に出す。その後お客様の声を聞きながら、100点を目指して作り込んでいこう、というのが現在の弊社のスタンスです。

もちろん、これはあくまでアプリのUI/UXデザインにおける話です。広告やアートの世界であれば最初から100点にこだわり抜くことが大きな成果につながることも多いでしょうね。

関:ネイティブアプリとWebアプリなんかはわかりやすい例ですよね。ネイティブアプリであれば、美しいレイアウトや気持ちのいい動作をより追求できる。でも実際のところは、認証機能さえ最高のものを提供できれば、あとはWebビューを読み込むだけでユーザーにとっては十分だったりする。膨大なメンテナンスコストをかけてまでネイティブアプリを運用する意味があるのか? と考えさせられます。

―― こだわりをもって作り込みたいクリエイターからすると耳の痛い話ですね……。しかし、事実として知っておくべきことだと強く感じます。

半田:弊社は事業会社ということもあり、どうしてもクリエイティブよりパフォーマンスの志向が強いと思います。どれだけ美しいものが作れたかより、どれだけお客様を幸せにできたか。その結果として、会社に収益貢献できたかが重要です。

―― お客様を幸せにするUXデザインを実現するため、お客様の声はどのように拾っているのでしょうか?

半田:定期的なユーザーインタビューはもちろんのこと、Web上に「目安箱」を設置して、いつでもお客様が声を挙げられる仕組みをとっています。SNSやストアレビュー上のクチコミもよくチェックしていて、通勤時間はずっとエゴサーチしていますね。大きな新機能をリリースしたあとはかなり神経質にチェックしているので、ポジティブなコメントが多いとすごく活力をもらえます(笑)。こうしたお客様の声は週次で取りまとめてチームに共有し、必要あれば改善策を打って、データを見ながら検証しています。

なお、僕たちUXデザインチームがとくに重視しているデータは、「初期稼働率(入会直後の利用率)」です。一般的なEC同様、最初にアクションしてもらえるかどうかで継続率が大きく変わりますからね。いかに最初のつまずきポイントをなくし「お得だから使おう」と思ってもらえるか、つねに試行錯誤しています。

普遍的で、生活とともにあるデザインを

―― ここまでビジネスにシビアな一面をお話しいただきましたが、貴社のUXデザインチームとして働く魅力もぜひ教えていただけますか。

関:僕はもともと着メロの会社で働いていたんですが、iPhoneが登場したことで着メロは廃れてしまいました。次はデコメの会社で働きましたが、LINEが登場したことでデコメも廃れてしまった。こうした経験を通じて「流行り廃りがある業界だと、がんばって作っても結局あとに残らないな」と思ったんですよね。だからこそ今、お客様にずっと使い続けてもらえるデザインを考えることに、とてもやりがいを感じています

半田:世の中にまだない新しい表現を探求したい、自分のデザイン力を披露したい、と考えるデザイナーさんには少々物足りないかもしれませんが、「生活に寄り添って社会課題を解決するデザインに挑戦したい」と考えるデザイナーさんであれば、とても相性がいいと思います。時代柄なのか、最近はこうした思考をお持ちの方が以前よりも増えているような印象ですね。

―― 長く生活に寄り添うデザインに携われることはまさに貴社ならではの魅力ですね。最後に、これからUXデザインチームではどんなチャレンジをしていきたいですか?

関:昨今決済方法が多様化していますが、最終的にはおそらくお客様にとってもっともラクな方法が支持されるんだろうな、と思っています。そうなったときに、一番使われる銀行になっていたい。他でできてうちでできないことは極力なくして、「住信SBIネット銀行だけあれば十分」という状況を作っていきたいですね。

半田:加えて、“将来必要なお金の準備を始めるきっかけ” を提供していけるといいな、なんて考えています。お金って意外といままでの人生で向き合えていなくて、あとになって「すごく必要なんだな」と直面する人が多いじゃないですか。だからこそ、うちのサービスをきっかけに「デビットカードで買い物をしてみた」とか「投資を始めてみた」とか、新たな金融体験の一歩を踏み出してもらえると嬉しいですね。

あと社内に対しては、UXデザインが経営や各部署にもっと入り込めると、お客様に一層価値を提供できるんじゃないかという可能性を感じています。評価制度の整備などまだまだ課題は多いですが、なにかしらジョブローテーションのような仕組みを設けて、デザインの視点をもったビジネスパーソンを増やしていけると理想ですね。

―― 半田さん・関さんを中心に、貴社ではまだまだUXデザインへの投資が加速しそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!

さいごに

「ビジネスに貢献したい」「社会課題を解決したい」という思いで仕事を探しているデザイナーさんがもしいらっしゃったら、住信SBIネット銀行UXデザインチームは絶賛採用募集中とのことなので、ぜひ門戸を叩いてみてください!

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また、弊社LIGではUI/UXデザインのコンサルティングもおこなっています。「これからUI/UXデザインに力を入れていきたい」とお考えの企業様がいらっしゃれば、気軽にご相談ください。

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Hotaka Yamane
Hotaka Yamane Strategy&Consulting / Consultant / 山根 穂高

日系コンサルティング会社を経て現職。金融/メディア/通信業を中心に企業間アライアンス推進、新規サービス企画、マーケティング戦略立案、販売管理システム導入等のプロジェクトに従事。

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