今マーケターが注目すべき「CXM」とは?導入のメリットや進め方、事例などを紹介

今マーケターが注目すべき「CXM」とは?導入のメリットや進め方、事例などを紹介

ヤン へウォン

ヤン へウォン

こんにちは。コンサルタントのヤン へウォンです。

変化の激しいマーケティングの世界で、現在注目されている考え方が「CXM」です。

今回はCXMの概要を説明したうえで、マーケターや経営層がどのようにCXMに取り組むべきなのか、CXMを実践することでどんなメリットが得られるのかについて解説します。また、実際にCXMで成果を挙げている企業の事例についても紹介します。

CXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)とは?

CXMとは「カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント(Customer Experience Management)」のことです。カスタマーは「顧客」、エクスペリエンスは「体験」、マネジメントは「管理」なので、CXMは「顧客体験管理」を表しています。

CXMを提唱したアメリカの経営学者であるB・シュミットの著書「経験価値マネジメント」によると、顧客体験とは企業または製品・サービスと顧客の関係性から生まれる一連の体験を指します。この顧客体験を戦略的にマネジメントするプロセスを顧客体験管理と呼ぶわけです。

顧客体験は製品やサービスから得られる体験に限定されません。製品を購入したりサービスを受けたりする前段階から顧客体験は始まっており、さらに製品を使用したりサービスを受けたりした後のアフターフォローまで続いています。

もともと、マーケティングの世界では2000年頃からCRM(顧客関係管理)という考え方が広まっていました。CRMとは、「顧客との関係を長期的に維持することが重要である」とする考え方です。CRMに基づき、企業は顧客との接点を保つことを重視するようになりましたが、一方で行き過ぎた一方的なアプローチにより、逆に顧客に不快感を抱かせるケースも見受けられるようになりました。

企業の独りよがりなアプローチではなく、何が顧客にとって本当に心地よい「体験」なのか。その点を見直したところから生まれたのがCXMだったのです。

CXMは特にここ数年、マーケティングのトレンドになっています。正しくCXMに取り組むことにより、企業と顧客の関係性は良好に保たれ、様々なメリットを得ることができます。

企業がCXMに取り組む流れと重要なポイント

では、具体的に企業はどのようにCXMに取り組めばいいのでしょうか。まずは、社内にCXMに取り組む体制を構築することです。専門の部署を設置して組織的にCXMに取り組むほど力を入れている企業もあります。

そのうえで重要なのが、「顧客を理解し、顧客の理解に応える」ことです。これは簡単なことではありません。自社の顧客について、理解しているようで、意外とできていない企業も多いのです。

ここからは、顧客を理解し、期待に応えるための流れを3つのステップで説明します。

①顧客のプロファイリング

まずは、顧客のプロファイリングを行います。自社の製品・サービスを利用してくれる顧客はどんな人なのかを言語化しましょう。自社に蓄積された顧客データを活用しながら、顧客像をできるだけ細かく描写します。

年代や性別だけでは不十分です。現在はスマートフォンなどを通じて、様々な情報が取得できます。たとえば、顧客が利用しているソーシャルメディアや位置情報なども、顧客のプロファイリングを行ううえで重要な情報です。

②顧客の個別対応

顧客像を描き出したら、次に顧客の個別対応を行います。このとき意識するのは、顧客ごとによりパーソナライズされた対応を行うことです。

ここで役立つのが、ステップ1で描き出した顧客像です。たとえば、自社のWebサイトを初めて訪問した顧客と、何度も商品を購入してくれている顧客とでは、当然届けるべき情報は異なります。「初回限定クーポン」を贈るべきは初訪問の顧客であって、常連の顧客ではありません。同様に、「雨の日クーポン」を贈るべきは梅雨入りした地域に在住の顧客であって、梅雨入り前の地域在住の顧客ではありません。

適切な顧客に適切な情報を届けるようにすれば、顧客の体験価値はどんどん向上します。結果として、顧客は製品や企業に対して好意的な印象を持ってくれるでしょう。

③施策の見直し

最後のステップでは、カスタマー・エクスペリエンスの視点でここまでに実施してきた施策の見直しを行いましょう。

ポイントは、顧客の行動段階に分けて分析することです。たとえば、顧客が製品・サービスを購入する前には、どんな体験があるでしょうか。売り場の雰囲気、SNSでの情報発信、広告やCMなど、様々な体験を経て顧客は自社の製品・サービスに触れるはずです。

こうした施策を一つひとつ見直し、課題を探します。たとえば、SNSの雰囲気と、実店舗の雰囲気にギャップはないでしょうか。店舗がカジュアルな雰囲気で気楽に来店してほしいのに、SNSの発言が堅苦しい口調になっていると、顧客体験がちぐはぐなものになってしまいます。

企業がCXMに取り組むうえで陥りやすい課題

前段で解説したステップでCXMに取り組む際、企業はどこでつまずきやすいのでしょうか。

まずは、ステップ1の顧客理解です。というのも、意外と自社の顧客について理解できていないことが多いからです。売れ筋の商品はなぜ売れているのか。売れると思ってつくったのに売れなかった商品はどうして売れなかったのか。顧客は自社にどんなイメージを抱いており、何を期待しているのか。そうした詳細な顧客像は、わかっているようでよくわかっていない場合も多くあります。

自社のことになると、バイアスがかかってしまうのも一因です。「うちの顧客はこうであるはずだ」という思い込みが、正確な顧客理解を妨げるのです。

こうした課題に対処するためには、いくつかの方法があります。まずは、デザイン思考などを用いて、見えていない部分の課題や価値を抽出するやり方です。この点については、LIGが行っているデザインコンサルティングがお役に立てるかと思います。

もう1つは、デジタルツールを用いるやり方です。顧客の行動データを集積して客観的な分析を行い、施策にフィードバックしていくのです。データを集約するためのシステムとしては、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)や、プライベートDMPなどが代表的です。

CXMを導入することで得られるメリット

CXMを導入することで、企業には様々なメリットがあります。まずは、ロイヤルカスタマーを獲得できることです。ロイヤルカスタマーは、単なる顧客ではありません。体験を通して自社のファンになり、長く製品やサービスを購入し続けてくれる重要な顧客です。ロイヤルカスタマーを増やすことで、売上の長期的な安定化が期待できます。

さらに、「口コミ」が期待できるというメリットもあります。口コミを投稿してくれるのは、先ほど説明したロイヤルカスタマーです。ロイヤルカスタマーは自社のファンですから、企業から依頼するまでもなく自発的に口コミを書いて製品やサービスの宣伝をしてくれます。

現代における口コミの重要性については説明するまでもないでしょう。良い内容の口コミが増えると、さらに多くの人に自社の製品・サービスを認知してもらえます。口コミが新規の顧客を呼び込み、良質な体験を経てロイヤルカスタマーがさらに増えていくというポジティブなサイクルが生まれます。

また、CXMにより顧客離れを抑制する効果も期待できます。顧客が離れてしまうのは、製品・サービスの質が低下することだけが原因ではありません。製品・サービスを購入する前後におけるちょっとした体験も、重要なポイントとなります。CXMにより顧客体験をしっかりと向上させれば、顧客の満足度を常に高く保つことができ、顧客離れを抑制できるのです。

競合との差別化にもつながります。現代はあらゆるものがコモディティ化しており、製品やサービスそのもので差別化するのは難しい場合も多いです。一方で、企業が提供する「体験」については、コピーすることは簡単ではありません。製品・サービスが優れていることは前提としたうえで、体験価値を高めることこそが、競合との差別化の重要なポイントとなるのです。

体験で差別化ができると、競合との価格競争に巻き込まれずに済むメリットもあります。製品・サービスがコモディティ化して横並びになると、あとは価格を下げることでしか魅力を打ち出せませんが、製品・サービス以外も含めた体験全体で差別化できれば、顧客はその体験を求めてお金を出しますから、価格競争しなくてもいいのです。

CXMで成功している企業の事例

ここからは、CXMに取り組み成功を収めている企業の事例について紹介します。

スターバックス

スターバックスは単なるコーヒーショップではありません。同社は自社の店舗を「サードプレイス」と位置づけており、内装、コーヒーの匂い、店内に流れるBGM、スタッフの接客など店舗で得られるすべての体験を「スターバックスの価値」として提供しています。

スターバックスのコーヒーを「安いから」という理由だけで購入する人はまずいないでしょう。そうではなく、多くの人は「スターバックスだから」コーヒーを購入するのです。だからこそ、スターバックスは価格競争に巻き込まれることもなく、利益を上げ続けられるのです。

Netflix

NetflixもCXMで成功した例として有名です。多数の動画配信プラットフォームがある中でNetflixが勝てるのは、顧客体験を徹底的に高めているからです。その核となるのが、ユーザーの視聴データなどを活用したレコメンド機能です。Netflixを使っていると、ユーザーの好みにマッチする作品をNetflixがどんどんレコメンドしてくれます。単にシリーズの続編や、似た傾向の作品というだけでなく、意外な作品がレコメンドされることもあり、しかも見てみるとたしかに自分の好みだったというケースも珍しくありません。

この高精度なレコメンド機能がNetflixのユーザー体験を高め、顧客離れの防止につながっています。映画を見るだけなら、他にもいろいろな配信サービスがあります。しかし、Netflixにレコメンドしてほしいなら、Netflixを使うしかありません。だからこそ、顧客はNetflixに留まるのです。

東京ガス

最後に、意外なところで東京ガスもCXMで成功した企業といえます。東京ガスは近年Webサイトをリニューアルし、見やすく使いやすいサイトになりました。それだけでなく、キャンペーン情報を顧客の属性に合わせて出し分けたり、たまったポイントを使って買い物できるECサービスを用意したりと、顧客にできるだけ心地よい体験をしてほしいという意気込みが伺えます。このCXMの実施により、東京ガスのユーザー数は約6倍にまで増加したそうです。インフラ系という差別化しにくい業種だからこそ、CXMの効果が大きく表れた例といえます。

CXMに関してLIGがお手伝いできること

近年CXMの重要度は増しており、これからのビジネスにおいては必須ともいえる考え方になっています。一方で、これまで取り組んだことがないと、どこから手を付けていいかわからなかったり、最初のステップである「顧客理解」でつまずいたりすることもあるでしょう。

LIGは、そんなCXMの入り口からコンサルティングすることが可能です。デザイン思考や様々なデジタルツールを活用し、CXMの導入を支援いたします。CXMの導入をご検討の際は、ぜひLIGにお声がけください。

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ヤン へウォン
ヤン へウォン / ヤン へウォン

韓・証券大手のリサーチアナリストを経て、日本では矢野経済研究所(2016‐2020)で製造業向けのリサーチ・コンサルティングに従事、海外の新規顧客開拓を経験。以降、コンサルタントとしてエネルギー分野の実証事業及びエンタメ分野のDX支援に従事。