こんにちは、エディターのモッチーです!
長らくメディアの編集に携わっていると、誰もが共通して苦労する瞬間があると思います。
それは、“企画”を考えるとき。
世の中にたくさんの情報が溢れる現代、新しい企画を生み出すことが難しくなってきています。日夜、試行錯誤している編集者・メディア運営者は多いのではないでしょうか。
そこで、Webメディアの裏側に迫る連載企画vol.4は、コンテンツづくりの要である“企画”に注目。ロケットニュース24の編集長 GO羽鳥さんにインタビューをしました!
- ロケットニュース24とは
- あまり新しくないことを早く伝えたい、という気持ちだけは負けていないネットメディア。お金や知名度、人脈はないけれども、くだらなくて、おもしろい出来事などを、8割くらいの力で届けている。
ロケットニュース24
GO羽鳥 編集長 東京都出身。漫画もイラスト記事もコラムも書けるオールマイティー型。見た目は完全にアジア人だが、多少のマー語(マサイ語)を操る日本人。趣味は料理で、調理師免許も所持。迷惑メール評論家でありつつ、100均評論家でもありつつ、アイドル「レイちゃん」でもありつつ、世を忍ぶ仮の名前はマミヤ狂四郎。 |
AVのモザイク修正をしていた男が引き抜かれる
モッチー:本日はよろしくお願いします! まずはじめに、羽鳥編集者とロケットニュースの歩みについて教えてください。
GO 羽鳥編集長(以下、GO):私がロケットニュースに参画したのが2010年です。当時私は、漫画家をしながら、海外を旅したり、アダルトビデオのモザイク処理のアルバイトをしたり、フラフラとしていました。
当時の編集長とは、もともと知り合いで、あるとき連絡が来たんです。「よかったらロケットニュースに来ない? 会社員になれるよ!! 返事は今日中にね!」って。
モッチー:ものすごい急なお誘いですね!
GO:はい(笑)。後々聞いた話だと、僕に白羽の矢が立ったことについて、
- 出版業界にいたこと
- ネットに詳しいこと
- 記事も漫画も描ける
- どうやら貧乏な状況みたいだ
という理由から声をかけてくれたそうです。
当時私は、モザイク修正のアルバイトの最中で、すぐに上司に、この引き抜きの話を相談したところ……「GOくん、その話乗った方がいいよ!!!」と背中を押されたこともあり参画しました。
ポータルサイトと事業提携するための出向要員として入社しましたが、その後紆余曲折あり、ロケットニュースの副編集長として関わることになりました。
モッチー:寛容な上司だったんですね(笑)。当時のロケットニュースはどんなコンテンツを制作していたのでしょうか。
GO:当時は、海外のニュースサイトのネタやYouTubeのネタを記事として紹介するような、キュレーションメディアのような形で運営していましたね。オリジナルコンテンツもありながら、1日に20本ほど公開していましたね。
また、前編集長の時代は、話題性を求めて、2チャンネルで話題になるような炎上ネタを取り上げることもしばしばありました。
モッチー:その後、2014年に編集長になったそうですが、そこから記事作りはどう変わりましたか?
GO:私が編集長になってからは“炎上ネタNG”という方向性に変えて、コンテンツ内容は変わったと思います。人を傷つけるネタ、ネガティブな芸能ネタ、素人ネタも禁止としました。
モッチー:メディアにとって、印象的だった出来事を教えてください。
GO:手前味噌ですが、私がつくった、LINE乗っ取りの記事がバズったことです。
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公開直後、サイトがぶっ壊れるんじゃないかってほどのアクセスがあり、メディアの知名度は一気に広がっていきましたね。みなさんがロケットニュース24の名前を覚えてくれて、読者が増えていきました。
日常に潜むネタこそ、ヒットにつながる
モッチー:社会問題をロケットニュースだからこその切り口で発信していたように思います。編集会議はどうやってますか?
GO:まず、みんなでシーズンネタや直近の時事ネタを言い合うんです。「◯月◯日は⚫️⚫️の日だね、あのイベントがあるね」というふうに。そのあと、担当者から様々なお店の新商品情報が共有されます。「マックからこんな商品が出ます、カップラーメンでます」とか。それら出てきたネタを、みんなで捻りながらブラシュアップしていくんです。編集会議はそんな感じですね。
それとは別に、編集会議では明かさないけれど、個々のライターが密かに温めているネタがあります。みんな隠しているけれど、あるとき、突然ぶっ込んでくる。
GO:「ウォーーー! こう来るかっ!」って盛り上がるんですよ。
みんな熱い思いを持ってやっていますね。仲間同士を驚かしてやろうっていう気持ちがあり、ライバルとして競争し合っていますね。
モッチー:それぞれの記事の裏側に熱い思いがあると思うと、読者としても応援したくなります。記事を制作する際にどんなことを意識していますか?
GO:身近なネタ、日常のネタを取り上げることですね。例えば、東京や大都市にしかない最新の商品やサービスばかりを取り上げても、地方の人にとっては身近ではないですよね?
キャンドゥで買った「スタンド付き卓球セット(330円)」でチョレイする羽鳥さん
それに比べて、コンビニや100円ショップは、全国どこでもあります。全国チェーンで販売している商品を取り上げれば、多くの人が身近に感じる記事になるんです。迷惑メールやLINEも地域関係なく、みんなに共通する話題ですし。
モッチー:具体的にどうやって身近なネタを探していますか?
GO:外に出て、足を使って探しています。Webでネタを探すことはほぼないですね。Webから得た情報ってあまりヒットしないんです。それは、すでに世の中に出ているから。足を使って見つけたネタのほうが当たりがデカいし、実際に数字としても現れています。
だからネットはあまり見ないほうがいいかも。ネットメディアやってるのに、ネット見るなっておかしいけど(笑)。
モッチー:実際に外に出て、街の状況を見たり人と話すことで世の中の“日常”がわかると。
GO:昔、スーパーで流れているBGMについての記事を書いたことがあります。
スーパーに行ったときに「このBGMいつも流れてるなぁ。どこでCD売ってるんだ?」って思い、店員さんに聞いて音楽の出所を調べていったんです。そしたら、群馬の会社が作っている『呼び込み君』という機械だとわかり、その会社に取材をした記事をつくりました。その記事は、公開後にバズり、TVにも取り上げられました。
モッチー:たしかに! スーパーといえばのBGMですね!
GO:きっと、みんな潜在的にあのBGMを聴いたことがあって、頭の片隅にあるんです。でもそれがどんな人が作って、どこから流れているかまではWebには載っていなかった。だからヒットしたんです。
自分が足を使って、何だろうって思っていることがネタになる。Webにない情報やネタを見つけることはヒットを生み出すコツだと思います。
モッチー:一方で、マサイ族のルカの記事のように思いもよらない人選の起用も特徴だと思います。
GO:マサイ族はキャラが立ってますからね。何を聞いてもエッジの聞いた答えが帰ってくるのでそれだけでネタになる。
それに比べて、カンバ族のチャオスっていうライターがいるんです。彼の本業はタクシードライバーなんですが、何か仕事ないかって相談されたことから始まったんです。初期の頃、いろいろなネタを取り上げて試行錯誤していたんですが、なかなか伸びなくて。
でも最近は、彼がポテトばかり食べているから、ポテト通信っていう企画をやってみたら見事にヒットしたんです。ポテトを食べることが彼らにとっての日常が、私たちの日常に重なりながらも異国の地から届く声のおもしろさがありますよね。
捻ることで生まれるおもしろさ
モッチー:ネタの見つけ方以外に、コンテンツの企画のポイントはありますか?
GO:次に大切なことは、オリジナリティを出すこと。そのために、ネタや情報を捻ることにこだわっています。
モッチー:捻るとは?
GO:例えば、回転寿司の寿司をテーマに企画を考えるとします。
あるライターは回転寿司の新しいお店にフォーカスするー新しさに注目する。
別のライターは、ネギトロだけを様々な店舗で食べ比べてみるー比較する。
私だったら、海老に関するあらゆる寿司を取り上げるー特化する。
モッチー:物の見方次第でいろいろな切り口が生まれますね。
GO:まだまだ、捻り方はありますよ。
以前、コンビニのサンドイッチの中身が少なくなったという声を聞くことがありました。
そこで、全コンビニチェーンの全サンドイッチを買ってきて比較するーやり切り系。
他には、新商品の辛いお菓子をネタに企画するときに、それを食べてどれだけ汗をかいたかを検証するんですー別の指標を設ける。
モッチー:慣れないうちは難しいところだと思いますが、捻り方を生み出すコツはありますか?
GO:メンバー同士で話すことが大切だと思います。捻り方は人によって違うので、バカ話していて生まれることもあります。野球で言えば、それぞれ打ち方が違うように、ライターもそれぞれ捻り方が違います。
例えば、あひるねこというライターは、どんなネタであろうとも美しく打ってかっ飛ばす。佐藤英典というライターは、打ち方は荒っぽいけど、ちゃんと点数は取る。ロケットニュースのライターは、みんなそれぞれの打ち方でホームランを打ちますよ。
ワクワクが最高潮に達する瞬間、バズる記事が生まれる
モッチー:その人がどんな経験をしてきたか、どんな風に日常を見ているか、で捻り方は変わってきますよね。では、実際に、羽鳥編集長が記事を書く際に意識していることはありますか?
GO:自分がワクワクしたり、気持ちをアゲること。「これめっちゃおもしれー!!」って思うこと。気分がアガるシチュエーションでなければ、おもしろい記事は書けないので。そのために、そういう場面を意図的につくることもあります。
例えば、新商品をネタに記事を書くときには、開封の儀が重要。
GO:商品のパッケージはすぐに開けず、ワクワクが最高潮に達するまで待つ。
GO:我慢して。
GO:我慢して。
GO:我慢して。
GO:開けた瞬間……
GO:「うわー!! キターーって!!!」
モッチー:まさに、おもちゃの箱を開ける子供の気持ちですね(笑)。そういう気持ちは誰もが持っているでしょうし、羽鳥編集長のワクワクが共感につながりますね。
GO:その「うわー!!」って気持ちを意図的につくることが大事ですね。忙しさに任せて事務的にやっていたらイイ記事(企画)は生まれません。
他メディアの記事を見ていると、「楽しんでないなぁー、仕事でやらされてるでしょ」って思うことがあります。制作者(書き手)が楽しんでいなければ、おもしろい記事にはならないと思っているので。
そのために『くだらないことをまじめにやる、まじめにバカをやる』ことを大切にしています。「スベることを恐れるな! やりたいことをやろう!」と常に言っています。
真面目にバカをやろう
モッチー:今多くの企業さんがオウンドメディアで発信をしています。コンテンツを発信していく上でアドバイスやメッセージをお願いします。
GO:真面目にバカをやってほしいですね。世の中の企業さんはお客さんを満足させるために、それぞれのサービスを真面目に提供していると思います。その真面目さ・真摯な気持ちを持ちながら、バカなことを全力でやる。そうすれば、企業のサービスがもっと世の中に伝わると思います。
モッチー:真面目にバカをやる、簡単なようで難しいですよね。
GO:私たちも油断すると、バカネタがなくなっていくんです。バカネタを記事にするってパワーがいるんです。でも、メッセージを届けるには必要なこと。
これからもみなさんと一緒にバカをしながら記事を作り、社会を揺るがすようなネタをぶち込んでいきたいですね。