皆さんはストックオプションという言葉を、聞いたことがあるでしょうか?
取締役や従業員などが将来決まった条件で自分の会社の株式を手に入れられる権利を、ストックオプションと言います。もちろん権利なので、自分の会社の株式がいらなければ、ストックオプションをもらったとしても使わなくてもいい、そんな金融商品です。
ご存じの通り、会社の業績が良く、どんどん成長していけばその会社の株式の価値も高まります。もし、皆さんが持っているストックオプションを行使して、安く株式が手に入れて、売却をすれば大きな利益を得ることができます。
ストックオプションの条件
ストックオプションは、決まった条件で株式を手に入れられる権利とお伝えしましたが、それでは主にどんな条件があるのでしょうか?
- 発行価格
- 権利行使価格
- 権利行使期間
ストックオプションを手に入れるために必要な金額
ストックオプションを使ったときに、交換する株式をいくらで買えるのか
ストックオプションを、いつからいつまでの期間使えるのか
ストックオプションを設計するために、最低限必要な条件はこういったものなのですが、ストックオプションは割と自由に条件を加えることができます。
先ほど、手に入れた株式を売買することで利益を得ることができて、金銭的なメリットがあることをご説明しましたが、実は条件を加えることで、皆さんにストックオプションを渡す会社側にも、メリットが生まれます。
- ストックオプション条件例
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- 売上や利益が一定の金額に達しないと、ストックオプションを行使できない
- 会社が上場企業にならないと、ストックオプションを行使できない
- ストックオプションを行使できるのは、1年間でもっている量の三分の一しかできない
- 退職したら、与えたストックオプションは行使できない
1と2の条件は、会社がある一定規模まで成長しないとストックオプションを使えないことになります。3と4は、ストックオプションを使って利益を最大限得るためには、従業員は少なくとも一定の期間働かないといけないということになります。
会社としては、ストックオプションによる金銭的なメリットを従業員に与える一方、上記のような条件のしばりをつけることで、優秀な従業員の獲得や従業員に長期的に働いてもらえるというようなメリットがあるのです。
ストックオプションの種類
実はストックオプションには色々な種類があり、基本的には次の3つに分けられます。
- 無償ストックオプション
- 有償ストックオプション
- 信託型ストックオプション
無償ストックオプション
その名の通り、ストックオプションを手に入れるときに費用がかからないストックオプションになります。
従業員にとってはタダでもらえるので良さそうに見えるのですが、ストックオプションを行使して株式を手に入れ、売却して利益を出したときには総合課税になるので、税率が他のストックオプションよりも高くなりがちで、不利に働きます。
有償ストックオプションは
有償ストックオプションは、手に入れるときにお金がかかる一方、ストックオプションを行使して株式を手に入れ、売却して利益を出したときには源泉分離課税になるので、総合課税になる無償ストックオプションよりも税率が低くなることが多く、有利に働きます。
信託型ストックオプション
別名タイムカプセルストックオプションと言うように、ストックオプションの行使価格の条件を、将来まで凍結しておけるストックオプションになります。
何が言いたいかと言うと、一般的なストックオプションは、今日発行されたストックオプションの行使価格の条件が、今日の会社の価値で決まり、1年後に発行されたストックオプションの行使価格の条件が、1年後の会社の価値で決まります。つまり、いつストックオプションを発行するかで、行使価格の条件が変動をするのです。
もう少し突っ込んで説明をすると、会社は時間とともに成長していくことが一般的なので、今のストックオプションの行使価格の条件よりも、将来のストックオプションの行使価格の条件の方が高くなります。つまり、皆さんは早くストックオプションをもらえれば、より安く株式を手に入れられる機会に恵まれ、大きな利益を得ることができます。逆に、ストックオプションをもらうのが遅くなれば遅くなるほど、利益の幅は小さくなると言うことです。
この問題を解決したのが、信託型のストックオプションなのですが、今日ストックオプションの条件を決めて作っておき、将来皆さんに渡すときは今日決めた条件のままでストックオプションを渡すことができる、まさにタイムカプセルのようなストックオプションなのです。
ここまで聞くと信託型ストックオプションがすごく良さそうに聞こえるのですが、このストックオプションのスキームが、信託を活用するなどけっこう複雑です。
手間がかかったり資金が必要になること、また上場を目指して上場準備をしている会社だと、監査法人が信託型ストックオプションを行うことを嫌がる(信託型ストックオプションを行っている企業だと、上場準備のために必要な監査契約を結んでもらえないケースもある)場合もあるので、注意が必要です。
税制適格ストックオプションとは
ストックオプションには種類があり、それぞれにメリット、デメリットがあることをご説明しました。当社も今回初めてストックオプションを発行したのですが、実は無償ストックオプションの進化系である、税制適格ストックオプションというものを発行しました。
税制適格ストックオプションとは、無償ストックオプションの一種で、ストックオプションを手に入れるときにはお金がかかりません。
通常の無償ストックオプションの場合は、ストックオプションを行使して株式を手に入れ、売却して利益を出したときには総合課税になり、税率が高くなりがちであることを説明しましたが、税制適格ストックオプションは源泉分離課税になり、通常の無償ストックオプションより有利な条件にすることができます。
ただし、税制適格ストックオプションはいくつか追加で要件を満たす必要があり、通常の無償ストックオプションよりは複雑な条件が付与されたストックオプションになります。
ここでは詳しい説明は割愛しますが、もしどんな要件を満たす必要があるのか気になった人は、検索して調べてみてください。
最後に
当社の従業員に一番メリットのある形で、ストックオプションを発行したいという思いがありました。日頃仕事を頑張っている従業員に少しでもインセンティブになるように、今回は税制適格ストックオプションを選択したわけなのですが、様々な配慮が必要で、実は設計するのにかなり時間がかかったんです。
皆さんも働いている会社でストックオプションをもらうこともあると思いますが、ストックオプションを従業員に渡そうと考える経営陣は、熱い思いを持ってストックオプションを発行しようと決断していることを、少しでも知ってもらえるとうれしいです。