みなさんこんにちは。ライターの伊藤あきらです。
前編では、利島の魅力的なスポットや景観をご紹介しましたが、後編では東京宝島事業における利島のプロジェクト、特産品開発について取材してきました!
▼前編はこちら 【東京宝島体験レポート】利島編(前編)約300人が暮らす地形が美しい小さな里島を探索
※事前に検査で陰性結果取得のもと、感染拡大防止に努めて撮影・取材しています。
※2021年11月の取材時点の情報です。
目次
利島のプロジェクト「利島の明日葉椿油ソース」とは?
前編でも触れた通り、利島は島の80%が椿林に覆われていて、椿油の生産量は日本でもトップクラス。「利島といえば椿」と言われるほど椿が有名な島なんです。それ以外にも、ユリ科のさくゆりや明日葉、高級食材の伊勢海老、タカベなど自然の幸がとても豊富です。
東京宝島事業では、そんな自然に恵まれた利島の魅力をより多くの人に認知してもらうため、利島ならではの素材を使って特産品を開発するプロジェクトを2020年より行ってきました。そのプロジェクトを通して開発されたのが、利島の椿から製油された椿油と、伊豆諸島各地に自生する明日葉を使った「利島の明日葉椿油ソース」です。
今回は、この利島で開発されたソースについて、原料となる椿と明日葉の生産地や椿油を製造する製油センターを訪れて取材し、実食レポも行った様子をお届けします!
美しい椿林を所有する農家さんに取材
前編に続き、後編も利島村役場の長谷川竜介さんと利島農業協同組合の方々にご協力・ご案内いただきました。まず最初に向かったのは、利島で農家をしている前田千恵子さんの椿林です。こちらが前田さん。
利島の椿はヤブツバキという品種で、開花時期は12月から3月頃までと長く咲きます。前田さんいわく、特に2月あたりになると島中で椿が花開くそう。
「最近は温暖化の影響か、花が咲く時期が少し早くなっている気がしますね」とのこと。僕が訪れたのは11月末だったのですが、実際に木を見てみると、すでにちらほらと花が咲き始めていました。
秋ごろになると、こんな実が島中のあちこちに落ち始めます。
取材した時期は、ちょうど落ちている実を拾う時期ということで、前田さんの椿林ではすでにキレイに実が拾われており、拾った実は自宅の軒先で天日干しされていました。
前田さんに質の高い椿を育てるためのコツを伺うと、「やっぱり剪定が大事」との答え。椿は小枝が生えやすく成長も早いので、定期的に剪定して枯れそうな枝やいらない枝を切っていく必要があるのだとか。
上手に剪定することで、次の年に咲く椿の花が大きくなったり葉の開き具合が変わったりするなど、目に見える変化が出てくるから面白い、とお話しされていました。
前田さんがNPO法人国際ボランティア学生協会 (IVUSA)の学生ボランティアさんからもらった色紙。笑顔で説明してくれた
前田さんの畑では、農協を通じてワーキングホリデーの受け入れも定期的に行っていて、参加者に熊手で椿林の下草を掻いてもらっているそうです。
これは、秋以降から落ち始める椿の実を拾いやすくするための大切な作業とのこと。前田さんいわく「とても体力が必要な仕事」で、ワーキングホリデーで来るパワフルな若い方に手伝ってもらえるのは本当に助かる、と笑っていました。
島中どこにでも生える?明日葉畑を取材
続いて、前田さんが管理している明日葉畑にもお邪魔して取材しました。こちらがその畑で、足元に生えているのが明日葉です。
くきを切っても、次の日には新しい芽が生えてくると言われるほど生命力が強いことからその名が付いた明日葉。基本的にいつでも収穫できるとのことですが、春と秋が一番まとまった収穫ができるそうです。
「明日葉はどんどん成長してしまうので、ほったらかしにすると新芽が採れなくなるんです」と前田さん。「明日葉は島のどこにでも生えてますよ」と話していましたが、食用の柔らかい新芽を収穫するためには、定期的にくきを切って管理する必要があるそうです。
前田さんによると、「利島の明日葉は他の島に比べると、苦味が弱い」そうです。「苦味の程度は好き嫌いによるけど、明日葉を食べ慣れていない内地の人は利島のものが食べやすいと思う」と話していました。
ちなみに僕は、内地では天ぷらでしか明日葉を食べたことがなかったのですが、利島ではかなりポピュラーな食材ということで、食卓に並ぶのも珍しくないのだとか。「磯魚の臭み消しなどにも使えるし、ツナ缶とマヨネーズで和えて食べても美味しいですよ」とのことでした。
もともとは、大島出身だという前田さん。利島で生まれ育った旦那さんと結婚し、利島に移ることになったのだそう。
島という点での生活のスタイルに大きな違いはなかったそうですが、島民の気質の違いはあるようで「大島育ちの私はこうやってちょっとうるさい感じで話すんですけど、利島の人は穏やかで言葉が優しいのよ」と話していました。
最後に、長年利島に住んでいる前田さんに島の魅力について尋ねると、「普段の生活から自然の中に溶け込めるのが魅力」とのこと。「利島は観光地じゃないから、それで保たれている自然の魅力があるんです」と話しているのが印象的でした。
日本トップクラスの生産量を誇る利島村椿油製油センターへ
畑を後にして、次は利島の椿油を製油しているセンターに伺いました。案内してくださったのは、利島村椿油製油センターの高橋一暢さん。
最初は少し緊張されていましたが、取材が始まり製油について質問をするとテキパキとわかりやすく説明してくれました。
利島の農家から製油センターに持ち込まれた椿の実は、まずは乾燥させて、そのあと選別作業を行います。実の選別はなんと人の目で行うそうで、油が出てしまい黒ずんだ実や石などを選別していくのだとか。
実際にセンターの女性が選別作業をしているところを見せていただくと、手際の良さがプロフェッショナル。一見シンプルに見える作業ですが、素人の僕から見ると何が原因で実が弾かれていくのかわかりません。
「機械だけでなくこうやって人の目を使うことで、より品質の高い油が作れるんです」。そう高橋さんは話します。
椿の実から油を搾油する機械
選別の工程を終えた実は、農家ごとに計量されてそのあとは搾油の工程に入ります。椿の実は、質量に対して大体37〜8%くらいが油として取れるそうです。そこから精製していき、最終的には30%前後が製品に。質量の3割が製品になるって、すごいですよね。椿の実ってたくさん油がつまっているんだな、とちょっと驚きました。
搾油された段階では、油の中にまだかなりの不純物が含まれているため、次にこの不純物を取り除いていく「精製」を行います。具体的にどのように精製するのか尋ねてみると「お湯を使って油を優しく洗うんです」と高橋さん。
もう少し詳しく話を聞くと「水と油が混ざらない性質を使って、油の中にあるゴミを水の中に落としていく」のだそう。「ただ、激しく攪拌すると水と油が混じってしまう乳化という現象が起きてしまうため、優しく洗うことが大切なんです」とのこと。
「なるほど!」と思いつつ、なんだか理科の授業を思い出しました。
最終的に不純物を取り除かれて精製の工程を終えた椿油は、この機械のフィルターで漉されていきます。この過程を経て、ようやく精油として完成し一斗缶に詰められ出荷されていきます。
椿油はオレイン酸がとても多く含まれていて、人の肌の成分に近いため、肌や髪などへの馴染みが良いことでも知られています。また化粧品としてだけでなく食用の油としても有用で、悪玉コレステロールを下げる可能性もあるそうです。
高橋さんに聞くと、この製油センターで出荷している椿油は化粧品としてだけでなく、そのまま食用としても使えるとのことで、利島の椿油の品質の高さを感じました。
センター内を案内していただいた後、これから「利島の明日葉椿油ソース」を試食すると話したところ、以前島内で試作品が配られたそうで、高橋さんはすでに実食済みとのこと。「明日葉の香りがしっかりと出ていて、パスタに使うととても美味しいですよ」と教えてくださいました。
「利島の明日葉椿油のソース」を調理してもらい、いざ実食!
製油センターを後にして、次に向かったのは利島農業協同組合。
僕が知っている農協とはちょっと違い、購買が併設されていました。生活雑貨をはじめ、飲料品や食品、お菓子などが販売されています。さながらコンビニのような雰囲気。入り口にはお土産コーナーもあり、椿油の商品が並んでいました。
そしてこちらは今日、役場の長谷川さんと一緒にずっと取材に同行してくださっている、利島農業協同組合の五十嵐安結さん。利島はIターン移住者が多いこともあり、意外にも若い人がたくさんいるのも特徴です。
五十嵐さんに案内されて、利島農協の裏手にあるキッチンへ。ついに「利島の明日葉椿油ソース」を実食できるときがやってきました。キッチンでは食品加工をしているようで、購買に美味しそうなお弁当があるなと見ていたのですが、どうやらお弁当もここで作っている模様。
今回ソースを作ってくださるのは、食品加工担当の早見さん。さっそく早見さんにソースの作り方について、教えていただくことになりました。
用意する材料は、明日葉、椿油、米油、塩、味噌(出汁が入っていないもの)、にんにくのみ。材料自体はかなりシンプルです。「これらの食材を、そのままミキサーにかけるだけなんです」と早見さん。
テキパキと材料をミキサーに入れ……
ウィーンと混ぜるだけで……
はい、出来上がり。
「工程はこれだけですか?」と聞き返したくなるくらいに超イージー。「材料があれば、誰でも作れるやん」と思うかもしれませんが、利島の質の高い明日葉と椿油を使っている、というところが肝心要ですからね、みなさん。
ということで、さっそく実食!!
……なにこれ、美味しい!
明日葉の風味が引き立てられていて、かといって苦味は一切なく、後味がさっぱり。なんというか、めちゃくちゃオシャレな味がします。同行していたディレクターも「オシャレな味」と形容していたので、たぶん間違ってない。
見た目は少しジェノベーゼに似ていますが、明日葉の香りや食感、味噌の風味などで、ジェノベーゼとはまた違う美味しさがあります。和の食材を使っているのに、味が洋風になっているのも面白い。
作ってくださった早見さんいわく、「白身魚とかにつけて食べると美味しいですよ」とのこと。僕が実食した感想としては、焼肉やステーキにこのソースをつけて食べても美味しいんじゃないかと思いました。
さっぱりとしつつ味がしっかりしているので、パスタや魚、肉のほかにサラダのドレッシングにも使えそう。あらゆる料理で活躍する万能ソースですね。
東京宝島事業の利島のプロジェクトメンバーに取材
ソースを味わったところで、最後は東京宝島事業における利島の取組について、プロジェクトメンバーにインタビュー。利島村役場の長谷川竜介さんと荻野了さん、利島農業協同組合の加藤大樹さんに、利島の魅力や今後のプロジェクトの展開について話を伺いました。
最初にみなさんに利島に来たきっかけを伺ってみると、3人ともIターン移住者とのこと。みなさん、転職を機に利島にやってきたのだそうです。
利島村役場 産業観光課 課長補佐の荻野了さん
「利島の20〜40代のだいたい8割がIターン移住者で、地元の方が多いイメージのある役場や農協なども、実はほとんどが島外から転職されてきた方で構成されています」と話す荻野さん。
荻野さん自身も、28歳のときに広告代理店から利島村役場に転職したのを機に利島に来たとのこと。「最初に面接で来たとき、強風で船が利島に着けなくて大島からヘリで来たんです。高いところが苦手なので、なんでこんな思いまでして面接に来なきゃいけないのかと思いました(笑)」と、利島ならではの自然の洗礼(?)を受けたことについて、笑いながら話してくれました。
利島村役場の長谷川竜介さん
みなさんに東京宝島事業の取組について尋ねたところ、「利島はもともと、そこまで観光に力を入れてきた島ではないんです」と長谷川さん。そのため、ブランド化を進めるにあたり、島内で何かするよりも島の外に向けて何か活動ができればと島民の方々みんなで考えたのだそう。
「最初は、都心にアンテナショップを持つのはどうか、という案もあがった」と長谷川さんは話します。ただ、店を持つには売るものがないと始まらないという話になり、利島で安定供給できる素材で何か開発できないか、と試行錯誤してできたのが、先ほどご紹介した「利島の明日葉椿油ソース」だったのだそうです。
利島農業協同組合のJA利島理事で利島村農業委員会会長の加藤大樹さん
「ソース、とても美味しかったです」と感想を伝えると、みなさんの表情が緩やかに。「シンプルな素材で、あそこまで絶妙な味に整えていくのは大変だったのでは?」と尋ねると、何度も微調整を重ねて1年くらいかけて完成させたとのこと。
加藤さんが、「ソース作りはチームをつくってしていたのですが、思っていたよりもいろいろな意見が出てきて、建設的な形で進められました。それがとてもよかったなと思っています」と経緯を振り返りながら話してくださいました。
一方で、ソースが美味しくできあがっただけでは、まだ足りないとみなさんは話します。「島の人が日常的に食べるようになってほしいというか、ソースが島に根付いてほしいですよね」と荻野さん。島の人が愛着を持っていない商品を島外で売っても、それでは意味がないとみなさん考えている様子。
「商品としてどんどん売れていくというよりも、島民の家庭の中でソースのレシピや味が残っていくことがプロジェクトとして成功かなと思います」と長谷川さんも続けます。ソースはまだ試作品の段階で販売はしていないということで、実際に販売が始まったらどのように島にソースが根付いていくのか、しっかりと見守っていきたいと3人とも話していました。
今後の東京宝島事業について
今後の利島でのプロジェクトの展開について尋ねると、「まずは1月23日に内地で開催されるイベントでソース販売を行うのと、2月11日からECサイトでも販売を始めていきます」と加藤さん。「そうして少しずつ露出を増やしながら、開発製品が増えてきたら、将来は実店舗をつくって展開していくことになると思います」とのこと。
「なので、ソースを開発してそれでおしまいではなく、今回のプロジェクトを通して改めて島民たちの間で協議の場が生まれ、そこからさらに新しいものができる形になっていけば理想的ですね」とも言っていました。
長谷川さんも、「実店舗は商品を開発していくなかで、本当に利島らしいものが出そろってきてからですね」と答えます。
「実は、今までこうして島民みんなで何かプロジェクトに取り組む機会がなかったんです。なので、みんなでプロジェクトを進めていくこと自体が、島の活性化につながっていくのではないかと思っています」と、長谷川さんが今回のプロジェクトについて総括をしてくれました。
島外に住む僕としては、「利島の明日葉椿油ソース」が一般販売されて、また味わえるのを楽しみにしています!
まとめ
今回は前後編にわたって、利島の美しい景観や集落の様子、特産品に、東京宝島事業における利島の取組について取材しました。僕が取材して感じたことは、利島には観光に力を入れていないからこその魅力があるということでした。
観光客向けにつくられた魅力ではなく、利島の自然や産業、文化、人のつながりがありのままの独自の魅力を持っていました。また、取材していくなかで、島民の方々それぞれが島に愛着を持っていて、しっかりと島のことを考えている、という印象を受けました。
この取材をするまでは「利島」はまったく知らない離島……でしたが、この2日間を通してすっかりこの島が好きになりました。ありがとう利島! 今度はプライベートで遊びに行きます!
さて、記事を通して利島村やプロジェクトについて興味を持ってくださった方は、ぜひ下記のサイトをのぞいてみてください。
おまけ:利島の海の幸・伊勢海老を実食!
利島は海の幸も豊富で、高級食材の伊勢海老やタカベなども獲れます。そして今回、利島周辺で獲れた伊勢海老を宿でいただけることになりました。
こちらが、調理してもらった伊勢海老です! じゃーん!!
こんなに立派な伊勢海老、みなさん食べたことはありますか? 僕はないです。まさに海に囲まれた利島ならではの幸ですね。
手前は伊勢海老を茹でて明日葉を添えたもので、奥は伊勢海老と明日葉のお味噌汁です。こちらはすべて、宿泊したかねに荘の女将さんが作ってくださいました。
では、まずはお味噌汁から実食!
食べてみると、海老の身は締まっていて旨味もしっかりとあります。そして弾力がすごい! プリプリでした。お味噌汁は海老の旨味が溶け出していて、とてもコクがありました。最高です! 仕事ということは一旦忘れて、至福の時間を過ごしました。
茹でたままの伊勢海老のほうは、取材の際にもらった「利島の明日葉椿油ソース」をつけて食べたところ、めちゃくちゃ美味しかったです。スタッフ一同、無心になってソースをつけながら食べてました(笑)。
利島の自然の幸を、これでもかというくらいに堪能させていただきました。ごちそうさまでした!