こんにちは! デザイナーのたっつんです!
前回までの記事では、組織や事業とデザインがどう関わることができるかを説明してきましたが、今回は経営とデザインの関係についてお話しします。
「デザイン経営」というワードは、おそらく皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか?
デザイン経営とは?
デザイン経営宣言
2018年5⽉23⽇に経済産業省・特許庁「産業競争⼒とデザインを考える研究会」からデザイン経営宣⾔として発表されたものがあり、その内容の中でデザイン経営について下記のように定義されています。
「デザイン経営」とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営である。
それは、デザインを重要な経営資源として活⽤し、ブランド⼒とイノベーション⼒を向上させる経営の姿である。
引用:「デザイン経営」宣言
つまりデザイン経営とは、デザインの持つ力やプロセスを用いて経営を推進していくことで、
一貫性のある体験やメッセージよるブランドの価値の向上+顧客の潜在的な欲求の発見と、機会の創出によるイノベーション力を向上させることです。
なぜデザイン経営が必要なのか?
まだもの自体が不足していたり、機能にそれぞれ差があった時代では、良いものであれば売れていました。
しだいにものが溢れ、製品による差別化ができない時代に突入すると、ものが良いだけでは売れなくなり、企業のスタンスやメッセージ性への共感、また新しい体験や価値をもたらしてくれるものを選択する方向へ変化していきました。
ものを提供するという価値観のままでは、顧客側の変化を十分に捉え切れていません。ユーザーが変わるなかで経営も変わらなければいけないときの経営手法として、視点を顧客側に置く「デザイン思考」が受け入れられつつあるのだと思います。
具体的な取り組み
デザイン経営を推進する取り組みとしては下記の7つがあげられています。
1.デザイン責任者(CDO,CCO,CXO等)の経営チームへの参画
デザインを企業戦略の中核に関連付け、デザインについて経営メンバーと密なコミュケーションを取る。
2.事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザインが参画
デザイナーが最上流から計画に参加する。
3.「デザイン経営」の推進組織の設置
組織図の重要な位置にデザイン部⾨を位置付け、社内横断でデザインを実施する。
4.デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒
観察⼿法の導⼊により、顧客の潜在ニーズを発⾒する。
5.アジャイル型開発プロセスの実施
観察・仮説構築・試作・再仮説構築の反復により、質とスピードの両取りを ⾏う。
6.採⽤および⼈材の育成
デザイン⼈材の採⽤を強化する。また、ビジネス⼈材やテクノロジー⼈材に 対するデザイン⼿法の教育を⾏うことで、デザインマインドを向上させる。
7.デザインの結果指標・プロセス指標の設計を⼯夫
指標作成の難しいデザインについても、観察可能で⻑期的な企業価値を向上させるための指標策定を試みる。
引用:「デザイン経営」宣言
このなかでも1と2は特に必要な条件としてあがります。実際に、近年デザイナーを経営層や重要なポジションに置く企業も多くなってきています。
デザイン経営導入の壁
上であげたような取り組みを行っていく上で、まだまだ課題となる要因は多くあります。
特に多くあげれるのはこれらの8つです。
経営陣の理解不足
- 経営にデザインを用いることへの理解不足
- 会社トップまたは関係本部長とのベクトル合わせ
- 商品デザインに力を入れていくことへの社内理解の不足、コスト的な抵抗
- デザインの価値や役割の広がりを経営層に知ってもらう必要があった
効果を定量化できない
- デザインがどこまで寄与しているかわからないので、評価が定性的にならざるを得ない
- 費用対効果やROIを極度に求められる状態では、BtoBメーカーでのデザインの活用はなかなか進められない
- 外部の株主や経営陣に「効果を示せ」と言われる
- 定性的な価値の言語化
- 費用対効果を示しづらいので、新たな投資に対する意思決定をするのが難しい
組織体制・評価指標ができていない
- デザインの投資対効果をはかるKPIなどの共通指標の整備が遅れている
- デザイン決裁体制の整備・提案スピードの強化
- メンバー内での事例共有・デザイナー共有・メソドロジー策定・グローバルでのトレーニング提供など
- スピード感はあるが、社内への浸透・理解のギャップが懸念
- デザイン決定の基準が定まっていない
ビジネスとの両立
- デザインが経営にどういった影響があるかを明確にできなかった
- デザインがすべての取り組みにおいて重要だという認識をつくる必要があった
- 商品開発に関するコストがわかりにくい
- デザインの質が上がることがブランドの価値向上につながり、ブランド価値が上がることで最終的に売上にもつながることを明確にする
- <売れる商品>と<デザイン性を無視した製品>の落とし所の判断
- 各事業責任者からの信頼の得方
全社的な意識の不統一
- 関係部署やボードメンバーにおいても、デザインへの理解度、関心度などのレベルがバラバラ
- ブランディングを行っていく上で、全体戦略の策定が必要だった
- 前者を巻き込んで方針を合意形成する必要があった
- 事業やプロダクト開発にデザインが不可欠であるという意識は浸透しつつあるが、経営戦略や事業計画、また経営層が自社の強みとしてデザインを認識するまでにはまだ至っていない
人材・人事
- 人材不足による実行スピードの速さ
- デザイン責任者の選定に時間を要した
- 同業や異業種からの中途入社の幹部とのすり合わせには時間を要する
- デザイン活動の意義や理解が職位によって異なる
- 社外にUXデザインをできる人間が少ない
- デザイナーの育成と他セクションへのデザインの啓蒙
用語・理解の不統一
- デザインの力がどう影響するかを事業責任者に説明し、納得した上で意思決定してもらうこと
- ブランディングという言葉に対する解釈が、各異なる状態
- リテラシーの違いによる共通言語化の準備および実行
- もともとデザイン経営的なことは実践されていたが言語化されていなかった
既存プロセスへの組込
- 事業のミクロなKPIやリソースセンターとしては十分動いていたが、事業のマクロや経営レイヤーにおいてレスポンしビリティが発揮できていない
- 外観・操作性については、従前から経営層や技術者の理解・関心は高かった。一方、サービスやソリューションなどの造形以外の分野へのデザイン活用、課題解決の手段としてのデザインの活用、デザインのアウトプットの多面的活用による会社貢献に関しては、さほど認知されていなかった。
引用:デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための“デザイン経営”ハンドブック
まとめ
これらの内容を見ると、まだまだデザインを経営に活用するうえでの課題は多いようです。
ただ一方で、CDOなどを設置する企業が最近特に多くなってきていることなどから、徐々に浸透し始めている雰囲気を感じます。
この記事で少しでもデザイン経営の内容やデザインの可能性を感じてもらえたら幸いです。
ではまた!
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