ゲーム事業を買収しました。M&Aのポイントを財務目線で解説します

ゲーム事業を買収しました。M&Aのポイントを財務目線で解説します

Jo Yoneda

Jo Yoneda

LIGは、今年の3月に某ゲーム事業(ここでは仮にX社と呼びます)を買収しました。

私はLIGの財務経理部として買収の実務に関わったので、実務のあと、LIGのこれからのM&A戦略を考えてみました。

財務経理部の担当者としての意見ですので、異なる意見があるかもしれませんが、「LIGのこれからのM&A戦略」について、私見を整理していきます。

各組織の狙い・考え方

X社の狙い

  • X社社長として、ゲーム事業にすべての時間を集中させたい
  • LIGと組み、人事・総務・経理などの管理業務の時間を、ゲーム事業に注ぎたい

LIGの狙い

  • 早く、優秀なゲーム事業の人材を獲得したい
  • LIGの開発環境を活かし、ゲーム事業を立ち上げたい
  • デジタルクリエイティブな事業を通じて、Life is Goodを感じる人たちを増やしたい

財務経理部の考え方

  • X社社長と社員には、なるべく早くLIGに移籍し、LIGゲーム事業に集中してもらいたい
  • LIGのゲーム事業を早期に立ち上げるため、スムーズにX社の経営権を獲得したい
  • 株式全部取得により、スムーズに経営権獲得を進めたい
  • X社を100%子会社にした後に債権債務を整理・吸収合併し、LIGとX社の会計を統一したい

ゲーム事業の立ち上げまでの流れ

  • 以前より、LIGとX社の経営者同士の継続対話あり
  • 2020年12月下旬:秘密保持契約を締結
  • 2021年1月初旬:M&Aの実務スタート(デューデリジェンス)
  • 1月末:経営陣へフィードバック
  • 3月:株式全部取得
  • 新規事業開発室にてゲーム事業をインキュベート
  • 8月:吸収合併(X社が消滅会社になる)
  • 2022年2月:新企画リリース

ゲーム事業の新企画リリースまでの流れを見て、3月に新しくLIG社員となった元X社メンバーとLIG新規事業開発室メンバー(事業のインキュベート役であるLIG経営陣)が相互のノウハウを共有し足並みを揃えた結果、2月に新企画リリースが実現できることとなりました。

また、LIGゲーム事業マネージャーの企画力/推進力はもちろんですが、ゲーム事業を支えているLIGの開発環境(日本側やフィリピン側のゲームエンジニア・デザイナーの活躍)へのプラス影響も大きいと思います。

LIGのこれからのM&A戦略

LIGのM&Aは、新しい事業をLIGで立ち上げたいメンバーを集めるために有効であり、また、LIGの開発環境を活かして、収獲逓増(しゅうかくていぞう)型の事業を立ち上げるために有効です。

ただし、M&Aする事業は、「スモールビジネス」が良いと考えています。事業と経営者が一体となったスモールビジネスをM&Aするほうが、資金サイズだけでなく事業経営者との相性がわかりやすいからです。

今回も、LIGとX社の経営者同志の継続対話があったことが重要だったと思います。その対話の中で、人間性も含め、どんな人と一緒に仕事をしたいのか、確認をお互いに進めていくことができました。

LIGの代表者とともに新しい事業を立ち上げたいと考える、スモールビジネスの経営者の方がいれば、LIGの開発環境を活かして、スムーズに事業立ち上げる可能性がグッと広がると思われます。

一般的なM&A戦略からの考察

M&Aにはシナジーが必要

M&A戦略では、1+1がシナジー効果により3以上になることが必要と言われます。ですがシナジー効果をわかりやすく説明するためのフレームワークを使って、社内稟議(りんぎ)を取るが、PMI(M&Aのあとの事業統合)の局面で、うまくいかない事例が多いと聞きます。事業サイズが大きい場合は、特にそのリスクは増えます。

今回は「優秀な人材が、ゲーム事業に集中できる」「必要な資金・人材を集中投下できる」ところに共通のシナジーがあったと考えています。事業立ち上げに必要な「時間とノウハウを前倒しでお互いに共有する」ことが、お互いのメリットだと判断しました。

証券会社・銀行・M&A仲介会社では整えられないマッチングだったと思います。LIGの経営者が自ら、LIGのM&A案件を探すことに意味がありました

今回のM&Aは、「事業と人材が一体となったスモールビジネス」の成長にとっての、成功事例だと思っています。この手法が「LIGのこれからのM&A戦略」としてかなり重要です。また、スモールビジネスなので「リスク」も限定的です。

M&Aの手法は色々

今回は、よりスムーズに経営権を獲得するため、株式譲渡の手法を選びました。


参考文献:『この一冊で分かる!M&A実務のプロセスとポイント』日本M&Aアドバイザリー協会編 大原達朗 松原良太 早嶋聡史 著)p.53

M&Aする事業の選び方

収益逓減型の事業とは、市場シェアを伸ばすために投資/費用がかかり収益率が下がっていく事業ではなく、市場シェアを伸ばすために投資/費用がかかっても収益率が上がっていく事業です。

LIGの開発環境を活かし立ち上げる事業は、開発コストは増えるがそれ以上に収益があがる事業、つまりコストパフォーマンスが上昇していく事業を、M&Aするべきだと考えています。

これからが重要

M&Aが成功したかどうかの判断基準は、その事業がキャッシュフローを生み出せるかどうかです。投資した金額がどれくらいで回収できるか、またどれくらいまで回収できない状態を我慢できるか、を定点観測することが必要です。

以前、外部の専門家よりLIGの投資基準を決めておくべきとのアドバイスがありました。15項目ありましたが、「スモールビジネス×収獲逓増型のM&A戦略」であれば、下記の4つを決めておけば良いのだと思っています。

  1. 基本的な投資方針(どういった事業を展開する会社に投資するのか?)
  2. 買収前の調査項目(ビジネスDD、財務DD、税務DD、法務DD、株価算定の実施)
  3. 出資比率(原則としては100%子会社)
  4. 投資を解消するときの条件、買取方法/買取条件に関する事項

M&Aには、業務の提携も含まれます。

LIGの開発環境を活かしてデジタルクリエイティブな事業立ち上げたい経営者の方がいましたら、是非とも一度、お話をお聞かせください!

何かしらの、お役に立てるだろうと思っています。

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1975年兵庫県生まれ。銀行で3年営業を担当した後、百貨店にて18年経営管理を担当。経営戦略、中期経営計画、年度計画、投資計画、予算実績管理、銀行対応、取引先対応、内部監査業務、事業再生手続き、新規事業開発、M&A、など経営者が正しく判断できる経営企画・組織的運営に深く関わる。2019年LIGに入社し、財務経理機能を担う。経営と組織が正しい活動ができるよう算盤勘定をする毎日。

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