こんにちは、エディターのきょうこです。SNSで「こんにちわ」と送ってくる人は速攻でブロックするほど、誤字脱字には敏感なところが自分でも職業病だと思います。
さて、Webメディアは「予算がない」という理由で、プロの校正者・校閲者に原稿チェックを依頼できないことがほとんどです。しかし、いくら内容がよくても、誤字脱字があると説得力が下がりますね。プロの編集者ならば注意したいところ。
というわけで、プロの編集者なら知っておきたい間違えやすい日本語表記を5つ選んでみました。
ちなみに、上記の写真は「長野県信濃町ライター講座」のアイキャッチのボツになったバージョンで、今回、再利用しました。スタジオでデザイナーが撮影してくれるとき、いろいろなポーズを試しているうちにスパイ映画風に撮影したもの。最良のアイキャッチを作る過程で、(こういう即興も入れつつ)いろいろなアイデアを試します。最終的にみんなで選び、公開されたアイキャッチはこちらです👇
長野×Webライティング→アップル🍎! デザイナーの花ちゃんの遊び心が光ってます!
目次
①❌ご存知ですか?→⭕️ご存じですか?
「ご存じ」は「存ずる」という動詞の連用形「存じ」に、尊敬の接頭語「ご」がついたもの。「存知」の「知」は当て字。
当て字だとわかったうえで、あえて著者が「文学的な表現」として使用するのはOK。ですが、「『ご存知』と書くのはあやまり」と説明する辞書もあり、(創作ではない一般的な文章で)「ご存知ですか?」と書くことで、「ああ、この人はリテラシーがないな」と相手に思われてしまうリスクがあるので、私はプロの編集者として「ご存じですか?」一択です。
- ▼参考記事
- 「ごぞんじ」「ご存じ」「ご存知」?
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/20180201_4.html
②❌にも関わらず→⭕️にもかかわらず
最近は「にも関わらず」と書く人が増えているのですが、漢字で書くなら、正しくは「にも拘わらず」です(もしくは「にも拘らず」)。
ただ漢字で「拘わらず」書くと、「こだわらず」と読みまちがえる可能性が出てくるので、「かかわらず」とひらいておくのが賢明です(註:「ひらく」とは「ひらがなにする」という意味です)。
- ▼参考記事
- なぜ「にも関わらず」は「にもかかわらず」と書くべきなのか
https://mainichi-kotoba.jp/blog-20190720
③❌基本を抑える→⭕️基本を押さえる
「初心者は基本を抑えておきましょう」と書いたら、「あなたこそ、基本を押さえておきなさい」と突っ込まれることをお忘れなく。
会議室も「抑える」のではなく「押さえる」です。これも間違いやすいようです。過日も弊社内のSlackに「4階の会議室を抑えさせていただきました」なる文章が流れてきて、「会議室は抑えるではなく、押さえるです」と赤ペン先生が発動しました。
意味を考えれば、正しい漢字を覚えられるはず。
- 抑える:「防ぐ、制限する」という意味。「出費を抑える」「喜びを抑える」など。
- 押さえる:「(物理的に)確保する、把握する」という意味。「要点を押さえる」など。
- ▼参考記事
- 「抑える」と「押さえる」の違い
https://mainichi.jp/articles/20141031/mul/00m/100/00800sc
④❌3年に渡る→⭕️3年にわたる
漢字で書くなら、正しくは「亘る」です。ただ「亘」は常用漢字ではないので、こちらもひらくことが多いです。
「渡」は、「フランスに渡る」「人手に渡る」など、いろいろな「わたる」に使われますが、「3日に亘る」「全種類に亘って」など「範囲、期間」の「わたる」は「亘」です。
- ▼参考記事
- 「渡る」と「わたる」
https://mainichi-kotoba.jp/photo-20161123
⑤❌文章の修行→⭕️文章の修業
「修行」は「修行僧」「武者修行」など仏法や武道などを修める場合で、職業・技芸・学問など一般的な意味では「修業」を使います。ですので、「文章修業」「花嫁修業」「板前修業」などは「修業」です。ただし、小説やエッセイなどで著者が意図的な表現として「修業」ではなく「修行」を使う場合はOKです。
- ▼参考記事
- 「修行」と「修業」
https://mainichi-kotoba.jp/photo-20160704
結論:人間は誰でもミスをする。だからダブルチェックは不可欠!
プロの編集者(と名乗るの)であれば、正しい表記を知っておきたいところ。今回の記事はあきらかにブーメランなので、私も注意します(汗)。
「勝てば官軍」で、誤用・俗用が定着して市民権を得ることもありますが、正しい表記を知っておいて損はありません。
もちろん誰でも誤字脱字を見逃すことはあり、それは人間だから仕方がないこと。「弘法にも筆の誤り」です(弘法大師のような書の名人でも、書き損じることがある、ということわざ)。自分で書いた原稿の誤字脱字に、自分ではなかなか気づけないもの。だからこそ、どんな出版社でも新聞社でも校正部・校閲部があるわけです。
紙の編集の仕事をしていると、(良識のある出版社であれば必ず)校正さんや校閲さんにゲラをチェックしてもらうので、日々の仕事を通して、自分のまちがいを「矯正」してもらえます。
がしかし、最近は、Webメディアの仕事しかしたことがない、校正者や校閲者と一緒に仕事をしていない人が増えています。
Webは紙とちがって、まちがえてもすぐに修正できる。それは利点ですが、編集者は油断しがち。
本来は、校正者や校閲者にチェックしてもらうのがベストですが、それができない場合、他の人にも読んでもらってダブルチェックして、誤字脱字のないようにしたいですね。
プロには厳しく指導しますが、信濃町ライター講座では、初心者の方にやさしくWebライティングを教えています。ではまたお会いしましょう!
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