印刷の制作現場に潜入!写真集『いなみん。』の裏側大公開

印刷の制作現場に潜入!写真集『いなみん。』の裏側大公開

おまめ

おまめ

はじめまして、デザイナーのおまめです!

2019年12月にLIGに入社して、社内制作チームでバナーやアイキャッチのデザイン業務を担当しています。普段は、Web上のクリエイティブのデザインを担当しているのですが、つい先日、紙媒体のデザインを初めて担当したんです……!

それが、11月9日に公開した記事で紹介している、いなみさんの写真集です。この本の写真撮影はゴウさん、レイアウトやデザインは私の担当でした。

DTPの知識がなく、これまで写真集の制作はもちろんのこと、印刷物の制作に携わったことはありません。今回の写真集では、レイアウトやデータ入稿に試行錯誤しながらも、印刷物をなんとかデザインできました。それを入稿したあと「あのデータは写真集になるまで、どんなふうに印刷や製本が進んでいくんだろう……?」と印刷の世界に興味を持つようになったんです。

写真集が完成するまでの過程を、この目で実際に見てみたい!!!!

その好奇心で気持ちがいっぱいになったので、写真集の印刷を手がけてくれたアルプスPPSさんに特別に許可をいただき、印刷工場にお邪魔させてもらうことに。

今回は初心者目線であれこれ質問しながら見学してきた、写真集が出来上がるまでの制作の裏側をお見せします。普段なかなか見ることのできない、印刷工場の様子は必見です……!

いざ、印刷会社アルプスPPSさんの現場に潜入!

ということでやってきました! こちらがアルプスPPSさんの印刷工場です!!

さっそく制作現場へ!……と行きたいところですが、その前に入稿から完成まで、全体の流れを一緒におさらいしましょう。

データ入稿から印刷物が出来上がるまでの工程

こちらが入稿から印刷物が納品されるまでのフローチャートです。

各工程は、大きく分けると【受付〜面付け】→【印刷・断裁】→【製本工程】→【発送工程】の順番に進んでいきます。作業全体には85人のスタッフさんが携わっているそう。

今回は、印刷の最終工程である「色合せ」から「製本(断裁→丁合→綴じ作業→カバー・帯掛け)」までの工程を主に見学させてもらうことになりました。

アルプスPPSでは断裁をしたあと、オプション加工として「穴あけ」や「PP加工(※1)」などのあらゆる加工にも対応しています。断裁が終わると「丁合」などの製本工程に移りますが、今回依頼した写真集の製本方法は「無線綴じ製本(※2)」で、そのほかにも「折り加工」や「中綴じ製本(※3)」など、あらゆる製本方法に対応しているんです。

※1:PP加工とは:Poly-Propylene加工。印刷用紙の表面を透明のフィルムで圧着コーティングして保護する、ラミネート加工の一種
※2:無線綴じ製本とは:丁合の完了した折丁の背に、糊を塗って表紙を貼り付ける方法
※3:中綴じ製本とは:本文と表紙を同時に丁合いして、表紙と内折りページの背の部分を2~3箇所、針金で綴じる方法

そのあとに続く「カバー・帯掛け」までの作業が終わったら、包装して指定先へ宅配便で発送する流れになっています。

写真集『いなみん。』が完成するまでを見学

工場を案内してくれるのは、アルプスPPSの仲間さんです。

ico 人物紹介:仲間さん大判出力事業部のインバウンド営業担当。好きな食べ物はソーキそば。

おまめ:仲間さん、本日はよろしくお願いします!

仲間:よろしくお願いします。

おまめ:今回の写真集では用紙の選定や仕様など、いろいろとご相談させてもらい助かりました。

仲間:それがアルプスPPSの強みなんです。今回は写真集としてのグレードをなるべく落とさず、かつコスト面でも予算内に納まるように制作しています。

おまめ:ありがとうございます!そのなかでも、たくさんこだわっていただいたそうですね。さっそく、そのこだわりが詰まった作業風景を見学させてください……!

1.色味の濃度を確認する「色合せ」

仲間:今回は20年以上のキャリアを積んだ職人が、すべてのページでいなみさんの「顔色」や「洋服のコントラスト」などの色調に統一感を出せるよう、最新のUV印刷機で表紙・本文・カバー・帯を一括印刷しています。

おまめ:なるほど。そうしないと、たとえば「本文」と「カバー」で顔色が違ったら、違和感がありますもんね。

仲間:そうなんです。アルプスPPSには、1時間に1万3千枚刷れる発色機があります。それで刷った印刷物が、指定どおりの色になっているかどうかを、印刷の最終工程である「色合せ」で確認していきます。それを担当するのが鈴木です。

鈴木:この工程では、出てきた印刷物を「色味台」と呼ばれる台にいったん置き、仕上がり領域外に印刷した「カラーバー(※)」をカメラで読み込み、カラーの濃度管理をしていきます。それだけではなく、色見本を参照しながら目視でも作業していくので、お客様の求める色合い品質に近づけることができるんですよ。

※カラーバー:正確に製版・印刷されているかを確認するためのカラーマークのこと。

おまめ:この作業には、何分くらいかかるんですか?

鈴木:印刷物の種類や扱う機械にもよりますが、平均すると15〜20分くらいですね。難しい色だと30分ぐらいかかるときもあります。僕はこの業界で23年ほど働いていますが、まだまだ極めていきたい仕事です。

おまめ:23年間も……! 作業中は、どんなことに注意していますか?

鈴木:1つは、不良品を出さないようにすることですね。不良品が出ると、後工程に迷惑がかかりますから。もう1つは、印刷機のメンテナンスです。それを怠ってしまうと、良いものが刷れないので。

おまめ:分業制だからこそ、一つひとつの工程が大事なんですね!

ico \おまめの見学めも/「カラーバーをカメラで読み取って測定する」という機械任せの工程でも、アルプスPPSではプロの印刷オペレーターが長年培ってきたセンスや感性を発揮して、目視でも確認しています。だからこそ、お客様の満足いくクオリティを実現できるそう。不良品が出ないように、印刷工程で見逃された誤植の確認もこの工程で徹底して心がけているのです!

2.印刷された紙を切り落とす「断裁」

仲間:次からは製本作業に入ります。まずは「断裁」の工程で、ここでは見開き(書籍や雑誌で、開いたとき向かい合う左右2ページのこと)がズレないように、細心の注意を払いつつ印刷物の余白を断裁していきます。これを担当するのが、入社7年目の薄井です。

おまめ:今見ていたら、1か所につき1分もかからないほどの早さで断裁されているんですね!

薄井:そうですね。まずは切る前に「紙揃機」という機械で微妙な振動を与え、印刷紙をきれいに揃えておきます。そして、機械で一気に断裁するだけのシンプルな作業なんです。ただ、これは使っている人の「人柄」が一番出る作業だと思っていて。

おまめ:人柄が出る作業……?

薄井:はい。切り方って作業する人ごとに違いますから。たとえば、「四方ある紙のどこを最初に切るか?」も人によって癖があるはずです。そもそもマニュアルがない機械ですし、全工程を知らないと「ここまで切り落として大丈夫なのか?」と怖くなって刃をおろせません。そんなふうに人柄が出る1番やっかいな機械なので、実は製本の中では誰もやりたがらない工程なんですよ。

おまめ:それほど緻密な計算と忍耐強さが必要なんですね! 今回の写真集で、特に工夫されたのはどこでしょう?

薄井:カバーと帯がうまく合わさるようにすることですね。それぞれを断裁するのは、かなり神経を使いました。実際にカバーと帯の両方を装丁したときに、なるべくピタリと合わせるにはどうしたらいいのか、各部署間で打ち合わせを重ねた上で作業に取り掛かっています。

おまめ:連携プレーも徹底されている……!

ico \おまめの見学めも/断裁は一見すると「機械で切って仕上げるだけ」という単純で簡単な作業に見えがちですが、実際は製本のなかでも特に肝心な工程です。ここ切断する位置が少しでもずれてしまえば、見開きの絵柄などもズレてしまうため、後工程に大きく影響するからです。そのためアルプスPPSでは、100分の1mmまで測れる機械を使い、「コンマ何mm」という世界で調整しながら断裁しています。まさに職人技ですね……!!

 

3.印刷された折丁をページ順に集める「丁合」

仲間:次が「丁合」で、ここでは「折丁(※)」をページ順に並べ、1つにまとめていきます。これを担当するのがシノセです。

※折丁:製本するために折りたたまれた印刷物のこと。

おまめ:シノセさんはこのお仕事を何年くらいされているんですか?

シノセ:もう30年以上になりますかね。「丁合機」と呼ばれる機械に、表紙以外の中身をセットしてスイッチを押すと、機械がそれを1つにまとめてくれるんです。ここにある丁合機では、一度に40枚まで1つにまとめることができて、それ以上の枚数をまとめたいときには分割しながら作業しています。

▲丁合機

おまめ:スイッチオンで、あっという間に1つにまとまりましたね……! どんなことに気を付けながら作業するんですか?

シノセ:1つにまとめ終わったとき、ページが順番どおりになっているかどうかです。 それを確認するために、1ページずつ目視で確認しています。ここで間違えれば不用品になりますし、後工程にも迷惑がかかりますから。

おまめ:集中力が必要な作業なんですね。

シノセ:はい。1ページだけ取ってまとめたかったのに、2〜3枚一気に取れてしまうこともあるので、入念に確認してそれを防いでいます。それにさっきもお伝えしたとおり、大量の枚数をまとめるには分割作業が必要です。その分割してまとめた束を合わせるときにも、合わせ方にミスがないかどうかを確認しなければいけません。

おまめ:想像以上に注意しなければいけないことだらけですね!

ico \おまめの見学めも/機械に折丁をセットし、スイッチオンで一束にまとめるのは5分もかかりません。ただ、一瞬で各ページがまとまっていくとき、機械の中でキズや汚れが付いてしまい、不良品になる場合も稀にあるそう。それを発見するために、全ページの裏表を徹底して確認しているのだとか。さらに1人だけではなく、複数人の目を通してページ順や傷の汚れを確認することで、ミス防止に努めているそうです。

4.糊を塗布して表紙を付ける「背糊」と「表紙接着」

仲間:続いて「綴じの作業」に入っていきます。この綴じの機械で、丁合した印刷物の背部分に糊付けして、表紙を付けていくんです。ここからの担当は西川です。

西川:機械に写真集の表紙部分をセットしたら、中身となる先ほど丁合した印刷物をセットして、その2つをスイッチオンで合わせていきます。

おまめ:わわ、一瞬で表紙の付いた写真集が完成した……!

西川:機械のスイッチを押すと、機械にセットしてある糊が、中身の背部分に塗布されるんですよ。それによって表紙がくっつく仕組みですね。

おまめ:なるほど。今回の写真集では、どんなことに気をつけていただいたんですか?

西川:1つは、糊の入り具合です。糊の量が多すぎると、表紙と合わさったときに、背の部分から糊がはみ出てしまうので。糊の量は機械で調整できますから、ちょうどよい量に調整しています。

おまめ:糊ひとつ取っても、工夫が必要なんですね。すごい世界だな……。

西川:今回は背表紙(表紙の背部分)には文字がありませんでしたよね。一方、文字がある場合には、背表紙の真ん中に文字を配置できるように気をつけないといけなくて。これがなかなか神経を使うんですよ。

おまめ:想像しただけでも難しそうです。

ico \おまめの見学めも/この段階では、印刷物が指定の寸法よりも少し大きめのサイズになっています。そのため、この次の工程で、寸法どおりに断裁しなければいけません。綴じの作業で、1ページでも斜めにずらして綴じてしまえば、次の断裁作業で「切ってはいけない部分」が断裁されてしまうことに。そうならないように、集中して綴じる必要があるのです。

5.冊子の三方を断裁する「三方断裁」

西川:綴じの作業が終わったら、機械で冊子の天・地・小口を断裁する「三方断裁」に入っていきます。

おまめ:断裁した冊子を、この台に乗せていくんですか?

西川:そうです。機械に「断裁したい寸法」や「本の厚さ」など希望の仕上がりをセットしたら、この台に断裁したい冊子を10冊ぐらいずつ乗せていきます。見ていてくださいね。そこから、三方がカットされた冊子が出てきますから。

▲切り落とされた紙端

おまめ:ホントだ! カットされた冊子が一瞬で出てきた……!

西川:ここは、もう仕上げの一歩手前で、失敗すれば最初からまたやり直しです。とても気は抜けませんね。

ico \おまめの見学めも/三方断裁の工程では、機械が自動で断裁してくれるものの、冊子のセットを間違えると、機械の包丁が振り落とされたときに、冊子が意図しない方向に引っ張られて、紙が捲れあがってしまうそうです。そのため断裁に使用する包丁の圧力や、(台に乗せる印刷物の数量を調整することで)断裁する本の厚みを変えるなどの工夫をしています。そういったことも、経験がなければできませんよね。

6.最後の仕上げ「カバー・帯掛け」

西川:次が、製本の最後の工程となる「カバー・帯掛け」です。これを自動でやってくれる「トライオート」と呼ばれる機械もあるんですけど、今回の写真集をうまく包むには手作業のほうがいいと判断して、機械には任せませんでした。

おまめ:手間暇のかかる方法で対応してくれたんですね……!

西川:精度を高くしたかったものですから。今回は冊子の厚みがなかったので、カバーや帯掛けをしたときに、本自体が反り返ってしまう可能性がありました。それに見開き合わせを正確に行なうためにも、まずは仕込みとして、カバーと帯には事前に機械で「両袖折り加工」を施しています。

西川:その下準備をしてから、写真集の中身を包んでいきました。このとき、カバーに傷や汚れが付かないように実際には手袋をしています。

おまめ:細かな配慮も完璧ですね。

西川:それに、カバーと帯は絵柄をぴったり合わせないと、ぱっと見たときに「あれ? なんかズレてるな」と思って、完成品が台無しになってしまいます。だから今回は、カバーと帯に連続で映っている「いなみさんの服の縦線」をピッタリと合わせることにも集中しましたね。

おまめ:そんなに細かなところまで……!ややこしい表紙にしてすみません(笑)

仲間:ちなみに、カバーと帯が見開きの状態にもなりますから、重なったときに色の段差が出ないよう、いずれにもPP加工を施しました。

おまめ:こだわりがどんどん出てくる……!!!

ico \おまめの見学めも/実は入稿データのカバーと帯の画像の張り位置がズレていたようで、装丁をしたときに、絵柄の位置がズレてしまったそうです。そこで急遽、刷り直しをして修正対応してくれました。柔軟な対応に頭が下がる思い……。今回はカバーと帯とで、いなみさんの「細めの縦線が入った洋服の模様」をぴったりと合わせることが難しく、アルプスPPSは「もしかしてLIGに試されてる……?」と思ったそう(笑)。偶然でしたが、アルプスさんのこだわりと技術力の高さがわかったので、いなみさんグッジョブです!

そして出来上がった写真集がこちら

おまめ:わあ〜、書店で売っている写真集と同じ仕上がりですね! 肌色や服の色がくすんでなくて、色鮮やかできれい……! それに無駄な余白もないし、カバーや帯がぴったりとかかっています。色の段差が出ないように施してもらったPP加工のおかげで、光沢感も増しました。

おまめ:印刷物って、きれいに仕上がることが当たり前だと思っていたんですけど、よく考えたら、これを何千冊、何万冊と再現するのって難しいことですよね……?

仲間:経験がないと難しいかもしれません。アルプスPPSで働くスタッフのほとんどは、他社でかなり経験を積んできた人ばかりなんです。それに印刷物のクオリティにこだわる風土なので、そういうスタッフしか残りません。

おまめ:なるほど……! 完成までの工程一つひとつに、いろいろなこだわりが詰まっていると実感しました。

仲間:ネット印刷で「安さ」を売りにするだけでは、お客様から満足していただけないので。こだわりもなく、データに不備があってもそのまま印刷してしまえば、完成品を見たお客様が「あ、失敗したな」と思うかもしれません。アルプスPPSではそれをしたくないので、お客様をケアする「まごころ印刷」を心がけています。

おまめ:コストが安くても質がよくなかったら、またリピートしたいと思えませんもんね。

仲間:そうだと思います。アルプスPPSでは、ギリギリのできる範囲まで品質にこだわり、お客様に満足していただけるものをご提供しています。その結果、8割ぐらいのお客様がリピーターになってくださいますね。しかも、そのほとんどが印刷会社さんやデザイン会社さんなど、印刷を生業としている方々なんです。

おまめ:まさに、それがクオリティの証明になっていますね!

まとめ

今回、アルプスPPSさんの工場を見学させていただいて、安心してお任せできるネット印刷会社だと改めて実感しました!今回は、写真集のデータ入稿の段階から、いろいろと相談に乗っていただいています。

たとえば、「背幅は何センチにすればいいのか?」と悩んでメールで質問したのですが、「こちらで合わせますから、大体で大丈夫ですよ」と返信が。紙のサイズによって、背幅は正確な数字が必要なのだそう。それをアルプスPPSさんが計算して、ジャストサイズに合わせてくれたんです。社内にいる先輩デザイナーからは「アルプスさんだから、どうにかしてくれるよ」と言われていましたが、まさにそのとおりでした。ほかにも、紙質の選定や予算にあわせた部数などの相談にも親身になって乗っていただき助かりました。

ネット印刷では、「塗り足しやトンボがない」といったデータ不備がある場合、「お客様が修正して再入稿してください」と返されることがほとんどだと思います。一方、アルプスPPSはそうではなく「弊社で対応します」と言ってくれるので、入稿から仕上がりまで相談に乗って欲しい人には最適なネット印刷会社でしょう。

それにアルプスPPSでは、各工程の熟練スタッフが最善を尽くして印刷物を扱う「信頼」のサービスを提供しています。失敗できないこだわりたい印刷物がある人は、安心して依頼できるアルプスPPSに、まずはお見積りを出してみてはいかがでしょうか。

熟練技のアルプスPPSに相談してみる

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デザイナー、フォトグラファーのおまめです。好奇心が尽きません。 ギターとバイクと青春と旅が好きです。何かを作り出すことに喜びを感じます。 古代文明を研究するメディアを作っています。 このまま好きなことに夢中になる人生を送りたいです。

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