こんにちは。マーケターのまこりーぬ(@makosaito214)です。このたびなんと、私が大学生の頃からずっとTwitterで追いかけていたマーケティング界の大先輩に、取材することに成功しました!!!
お相手は……
マーケティングメディア「ferret」創刊編集長で………
2019年1月にホットリンク社へ転職されたばかりの………
飯髙悠太さんです!
飯髙 悠太さん(@yutaiitaka)株式会社ホットリンク マーケティング本部 本部長。デジタルマーケティング領域で複数社渡り歩いたのち、株式会社ベーシックにて「ferret」を42万会員・月間500万PVのメディアへと育て上げた。2019年1月より現職。 |
目次
いま取り組むべきマーケティング施策とは?
まこりーぬ:「ferret編集長」「コンテンツマーケティング」という印象が強い飯髙さんですが、現職のホットリンク社では「Twitterマーケティング」という領域を担当されているんですよね。具体的には、どのようなお仕事なんでしょうか?
飯髙:マーケティング部門長として自社のマーケティング活動の戦略を立てつつ、クライアント先にも足を運んでデジタルマーケティング全体の支援をしています。その中でもTwitterマーケティング支援では、「SNSを活用してアテンション(認知)を広げましょう!」って提案をしています。イメージ図はこれかな。
飯髙:少子高齢化が加速しているいま、購入に近い比較検討ユーザーをリスティング広告などで刈り取るだけのマーケティングには限界がくる。だからこそアテンションを広げて、マーケティングファネル自体、潜在顧客群を大きくしていくことが非常に重要なんです。
これはリスティング広告がダメっていうことではなく、あくまで一つの手段としてやるべきで、もっとマーケティング全体を見た方がいいよねっていう話です。実際クライアントからは「現在リスティング広告をやっているけどこれ以上コンバージョンを獲得するのが厳しいから、SNSもしっかり力を入れていきたい」という依頼が多くなっていますね。
まこりーぬ:未来のためにしっかり認知を広げておくこと、大事ですよね。頭ではわかっているものの……なかなか……日常業務の中で優先順位が上がらず………(涙)。
飯髙:アテンションを広げるために企業として情報発信し続けるって、手間はかかるし、ネタも枯渇しますよね。そこで僕たちが提唱しているのは、ユーザーの購買行動のなかでアテンションが自動生成されるモデル「ULSSAS(ウルサス)」。
まこりーぬ:アテンションが自動生成……!?
UGCでアテンションの広がりを加速させる
飯髙:ULSSASはSNS時代の消費行動として提唱していて、ユーザーが商品を購入するまでのプロセスをモデル化したもの。ここで重要なのは、商品購入後に発生する口コミなどのユーザー投稿(User Generated Contents、以下UGC)が、次の購買行動を促すアテンションとなるところです。
最初のうちは起点となる情報を自社で発信する必要があるんですが、UGCが出てULSSASがぐるぐると循環し始めると、勝手にアテンションが途切れず広がるようになるんですよね。
たとえば僕たちがTwitterマーケティングを支援するとき、企業アカウントの中の人には「最初は1日5〜10ツイートがんばって投稿しましょう!」と伝えているんです。UGCが出始めると、それらを自分たちのアカウントで拾ってリツイートすることでアテンションを獲得できるので、自分たちでコンテンツを考えて投稿する手間もだんだんかからなくなっていきます。
まこりーぬ:なるほど! ネタに困ることなくアテンションを継続的に広げるポイントは、情報の発信者を増やして連鎖を起こすことなんですね。
飯髙:そう。だから、インフルエンサーにツイートしてもらって一度に大量のインプレッションを獲得するよりも、多くの人にツイートやリツイートしてもらうことの方が価値があると思っています。
キャンペーンやマスメディアへの露出って、一時的にUGCを増やせたとしても1週間経てばあっさり忘れ去られてしまう。それだとULSSASは回らないんですよね。僕たちは一過性のものよりも、継続的なUGCが生まれるということが重要だと思っています。
口コミ/指名検索/売上の相関性
まこりーぬ:すぐにでも自社のSNS運用体制を見直そう! っていうぐらい気持ちは高まっているんですが、正直、上司をうまく説得できるかどうか……。UGCを増やすことの費用対効果は普段どのように説明されていますか……?
飯髙:確かに、アテンションの広がりを評価するのって難しいんですよ。コンバージョン単価で一律に比較されたら絶対にリスティング広告の方が優秀だってことになってしまう。「SNSって費用対効果よくないじゃん!」って言われておしまい。
でもね、「『口コミ数』と『売上』に相関関係がある」ってデータはすでに取れているんですよ。
まこりーぬ:!!!それは、社内で話を通す上で頼もしすぎます!!!
飯髙:口コミが伸びるとなにが起こるって、指名検索(企業名や商材名など固有名詞での検索)が増えるんですよ。
「株式会社ホットリンク」という指名ワードで調べている人と、「Twitterマーケティング 支援会社」という一般ワードで調べている人がいるとして、どちらがコンバージョン率が高いかって、明確に前者ですよね。
さらに嬉しいことに、指名ワードはリスティング広告における入札価格の競り合いにも巻き込まれない。っていうより、指名ワードを入札すること自体僕はおすすめしません。競合が自社の指名ワードに入札してくることもありますが、気にしないです。だって指名ワードで検索しているけど競合にコンバージョンしちゃうユーザーって、まだ検討段階だったってだけじゃないですか。
まこりーぬ:確かに……! 指名検索の増加が売上を上げてくれるのは、とてもイメージしやすいです!
SNSのなかでなぜTwitterが優れているのか
まこりーぬ:ここから少し具体的な質問になりますが、アテンションを広げる、UGCを生み出すのに最適な場はやはりTwitterでしょうか? FacebookやInstagramって、実際のところどう思われますか?
飯髙:ポジショントークもありますが、Twitterがおすすめですね。Facebookは……広告が多くなっちゃってるし、ユーザーも気軽に投稿しなくなっています。Instagramは拡散の仕組みが弱い。
Twitterって、そのツイートにさえ魅力があれば、たとえフォロワーが少なくても、写真がイケてなくても、リツイートされるじゃないですか。それがおもしろいんですよね。
ユーザー数も圧倒的に多いです。最近InstagramがFacebookを超して2,900万人ユーザーを突破しましたが、Twitterはすでに4,500万ユーザーを抱えているわけですよ。
まこりーぬ:転職先としてホットリンク社を選んだのは、Twitterの可能性を感じて、なんですね。
飯髙:真面目に答えると、ホットリンクはデータもありグローバル展開もしているのが大きい。とはいえ、ただ単に僕がTwitter好きっていうのもあります(笑)。朝起きてすぐ、支度しながら、通勤しながらもTwitterを開いてて。楽しいから使うっていうよりも、息するように使ってる感じかな。
僕の日常の一つは、バズを見つけたらその要因をとことん調べまくって、立てた仮説を裏アカで実際に検証することです(笑)。
まこりーぬ:Twitterへの愛情と探究心に感動しました。。。(余談ですが、飯髙さんはTwitterのDMがいつも即レスです。。。)
「フォロワーが少なくツイート数の多い」フォロワーこそが重要!?
まこりーぬ:1日5〜10ツイート投稿することの他にも、TwitterでUGCを発生させるためのポイントをぜひ教えてください!
飯髙:もっとも重要なのは、自発的にUGCを出してくれるフォロワーを増やすこと。僕たちは過去のデータから、フォロワーの数が少なくてツイート数が多い人ほどUGCを出してくれやすいという傾向をつかんでいます。
フォロワーのほとんどがリアルな友人で構成されていて気軽にリツイートやメンションをしあっている、かつTwitterが好きでよくツイートしているような人がベストです。
まこりーぬ:なるほど! フォロワーが少ない人を狙うというのは意外でしたが、確かにUGCを出してくれそうなイメージが湧いてきました。
飯髙:次に重要なのは、フォロワーが出してくれたUGCをリツイートしていくこと。アテンションが広がるのはもちろんのこと、フォロワー同士がつながって相互フォロー関係になっていく効果もあります。ここまでくるともう、自社を一切経由せずにアテンションが起きまくるわけです。
公式アカウントがフォロワーの投稿をリツイートはダサい……とかなんとか言う人もいますけど、UGCを拾わない手はないと思いますね。普通に考えて、公式アカウントからリツイートがきたら嬉しくないです?
まこりーぬ:嬉しいです、テンション上がります(笑)。さっそくLIGのTwitterアカウントでもユーザーの声を拾ってきます!
BtoB企業がUGCを広げるポイント
まこりーぬ:UGCの出し方について理解が深まってきたところですが、ぶっちゃけ、UGCが出にくい商材って……ありますよね……?
飯髙:ありますね、それは事実です。手にとれるもの、写真を撮ってシェアしたくなるものは口コミが生まれやすい反面、BtoBサービスは正直難しい。でも、BtoBにあったやり方はありますね。
まこりーぬ:ぜひ、BtoBの戦い方をご教示ください!!!(涙)
飯髙:やり方は2つ。1つは、企業アカウントではなくて社長や社員にフォロワーをつけること。LIGが勢いよく伸びた時代って、メンバーを前面に押し出してオウンドメディアを運営してましたよね。「LIGのWeb制作って最高!」とツイートしてくれる人はなかなかいないと思うけど、「LIGの◯◯さんってステキ!」と思いフォローしてくれる人はいるはずです。
まこりーぬ:確かに。LIGの場合、すでにベースができてたんですね……!
飯髙:もう1つは、コンテンツマーケティングをおこなうこと。僕がいま意図的にたくさんの取材を受けるようにしているのは、メディアに出していただくことで「株式会社ホットリンク」を知ってもらうため。
退職エントリにも書きましたが、ぶっちゃけホットリンクってなんの会社か知ってました? でもこのコンテンツを通してどんな会社なのか・何をやってる会社なのかを知ってもらえますよね。もちろん、やっていることが本当に素晴らしいからこそ取材してもらえるっていう前提はありますが。
僕はこれまで多くのメディア運営に関わってきたし、記事広告なども多くの企業に提供してきたので、メディアに出ることの価値をより理解をしているのかもしれません。メディアを運営していたときに「なんでもっと多くの企業がメディア出稿を取り入れないのかな?」って思ってましたし。CPAで見るといまいちでも、アテンションで見ればすごく効果的ですからね。
理想のマーケターってどんな人?
まこりーぬ:ここまでいろいろとお話をうかがい、実践したいこともたくさん出てきましたが、果たしてどれだけ理想に近づけるか……。私たち中小企業は、一体どんなマーケティング体制を敷くべきでしょうか?
飯髙:うーん、マーケティング全体を俯瞰して見れる人を立てることが重要かな。目の前の売上をつくるのはもちろんのこと、その裏で将来の売上を仕込んでいく。そういう人がいないと、アテンションを広げる施策になかなか注力できないと思う。
でもマーケティング全体を俯瞰してみれる人って本当に少なくて。マーケティングは「SNSならこの人」「SEOならこの人」とすごく部分最適化されているせいで、日々業務に追われているとなかなか全体を把握する機会がないんですよね。
さらにタチが悪いことに、日本には「代理店に任せっきりで自分で実務をやったことがないマーケター」がたくさんいる。それの何がいけないって、自分で経験したことがないと、CPAとかCPCとか目に見える数字でしかマーケティング施策を評価できないんですよ。
まこりーぬ:グ、グサリ……! 確かに代理店にお願いして広告出稿していた頃よりも、自分でクリエイティブを0から考えて出稿している今の方が、断然マーケット感覚が身についている気がします。
飯髙:僕は今までリスティング広告、Facebookマーケティング、コンテンツマーケティング、MA、それからTwitterマーケティングと、実際に手を動かしてきた経験があるからこそ、目の前の課題に対してそれぞれの手段をどう活かせるのか、全体を俯瞰して見ることができるようになったと思っています。自分でやってみることって、すごく大事。
まこりーぬ:日々の慌ただしい業務が、なんだか貴重な経験のように思えました。うーん、明日からもがんばります!
UGCを生み出すために、大事にしたいこと
飯髙:で、ここまで散々マーケティングの、すなわち手段の話をしてきたんだけど、結局のところ、サービスがよければ絶対売れるし、口コミは勝手に生まれるんですよ。感動するサービスに出会ったときって友だちに紹介するじゃないですか。「え、そんなにいいなら私も買ってみよう!」って、なりますよね(笑)。
コンテンツマーケティングをやっていると、ついつい「いいコンテンツ」を作ることに注力してしまいがちなんですが、「いいサービス」を作ることに磨きをかけるのが本質。これを忘れないようにしたいですよね。
まこりーぬ:手段ではなく、本質を見る。最後の最後まではっとさせられるお話を、本当にありがとうございました!
おわりに
「どうしたら飯髙さんのようなマーケターになれますか?」
という質問も準備していたのですが、約1時間半お話をうかがう中でその答えは自ずと見えてきました。
圧倒的な経験値。それによって体得されたマーケティング感覚。本質への強いこだわり。そして向上心。
まだまだ遠く憧れの存在ですが、飯髙さんのようなカッコいいマーケターになれるようこれからも精進していこうと思います!
以上、まこりーぬがお届けしました!