【正直にいいます。店を潰しちゃいました】 なかなか聞けない元飲食店経営者の覆面座談会

【正直にいいます。店を潰しちゃいました】 なかなか聞けない元飲食店経営者の覆面座談会

坂口 ナオ

坂口 ナオ

LIGではさまざまな事業をしていますが、飲食事業もそのひとつ。お客様とふれあえたり、直接ご意見をいただけたりと、Web制作事業とはひと味違った面白さのある事業です。

とはいえ飲食事業は、大半は1年以内に閉店してしまう、とても難しい側面もあります。今回は、過去に飲食事業を立ち上げ、さまざまな理由からお店を閉店させた経験がある方たちに集まっていただきました。

これから飲食事業に挑戦する人たちへむけたエールとして、自身の経験から「俺たちの失敗談」を赤裸々に話していただきます。

彼らはなぜ「閉店」を選んだのか、なぜ「閉店」せざるをえなかったのか。そして最後に、飲食事業の荒波を乗り切るためのアドバイスなどを伺います。

 

人物紹介
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Aさん:現在サラリーマンの元経営者。20代の頃から飲食業界で働き、独立して7年間、都内の繁華街にてバーを経営していた。
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Bさん:現在サラリーマンの元経営者。都内某所で一点突破のONEメニューでお店を展開。好評だったがお店を閉店。現在はバーを経営している。
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Cさん:音楽の知識を活かしたミュージックバーを運営していた。
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福田さん:飲食店経営のサポートや物件紹介サービスを手がける会社「ABC店舗」の担当者。

僕らがお店を閉店した理由

飲食店経営

福田さん:まず始めに、みなさんのお店が閉店に至った理由と背景を教えていただいてもいいですか?
 

Aさん:閉店のきっかけは、飲食じゃないことにチャレンジしたいと思ったからですね。長年この業界にいたので、別の世界も見てみたいと思って。
 

Bさん:僕は単純に、売上の伸び悩みが閉店を決めた理由です。場所とビジネスモデルが合っていなかったことと、固定費が抑えられない構造になっていたことが、売上が上がらない大きな要因になっていました。
 

福田さん:具体的には、どんな場所とビジネスモデル、構造になっていたんでしょうか。
 

Bさん:たとえば、店内はカウンターメインの設計で、おひとりさまをターゲットにして「低単価でたくさんのお客さんをゴリゴリ回す」ビジネスモデルだったんですが、場所柄、グループ客のほうが多かったんです。あとは、家賃が少し高かったのと、人件費を削りずらい動線設計になっていたのも痛かったですね。キッチンとホールが分かれていたので、最低2人はお店にいないと回せませんでした。
 

Cさん:僕も同じで、売上が上がらず閉店に至りました。それまで飲食店で働いた経験がなかったので、お店のコンセプトは、自分の強みである音楽の知識を活かせる「ミュージックバー」にしたんですが、深く考えずに下町の比較的駅が近くて安い物件を借りてしまいました。でも、ターゲットになるような人たちはみんな、渋谷や下北に行くんですよ。
 

福田さん:つまり、お店のコンセプトと開店する場所のミスマッチがあったんですね。
 

Cさん:そうです。イベントを開けば人は集まりましたけど、何もしなければ通ってもらえないし、周辺地域にも馴染めず、結局クローズしてしまいました。

 

飲食店経営

福田さん:場所を先に決めることでハマるパターンもあるとは思いますが、経験者でもハードルが高いと思います。基本は、自分がやりたいことを決めてから、その業態の顧客がいるエリアを探して物件を決める、という順番が安心ですね。
 

Aさん:僕の場合はバーをやりたかったので、バーに来るお客さんがいるエリアを探しました。物件選定だけでも1年くらいかけましたね。最初はなるべく費用をおさえたかったので、居抜きも全部調べてました。それこそABC店舗さんの会員にもなってましたね。
 

福田さん:そうだったんですね、ありがとうございます。開店前からのリサーチや物件選びは、開店してからの売上にも大きく影響するので、焦らず、しっかり検討したほうがいいですよね。
 

Aさん:そうですね。開店前の準備で言うと、僕の場合、家賃は絶対に安いところで探しました。変動費はあとからなんとでもできるけど、固定費は変えられないので。あと、業態も、原価管理のしやすいお酒に比重を置きました。それに、カウンター商売にすれば、ひとりでテーブルメンタリティも広がるので、カウンターを設置して、なるべく人を入れなくても営業できるように……っていうのを最初はやりましたね。

 

飲食店閉店経験者の教え
  • お店を始めるときは、まず自分がやりたいことを決めてから、その業態の顧客がいるエリアを探し、予算を鑑みつつ物件を決めるべし。順番が逆になると、一気にハードモードになりがち。
  • お店の場所と家賃は、一度決まるとなかなか変えられない。売上にも大きく影響するので、焦らず、時間をかけて決めるべし。

 

日々の悩みは、山積みの事務作業と手が回らないプロモーション業務

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福田さん:開店してから、大変だったこと、苦労したことは何ですか?
 

Bさん:ぶっちゃけ、人のミスマッチはしんどかったですね。正社員として採用すると、簡単にはやめさせられないですし……。もし次に雇うなら、まずはバイトからはじめてもらい、お互いミスマッチがないか検討してから正社員にしたいと思っています。
 

Cさん:人は難しいですよね。
 

Aさん:僕は、再来店してくれるお客様、つまり、リピーターを作るのに苦労しましたね。
 

Bさん:リピーターがいないと売上が安定しないですからね。片道30分とか1時間かけて来るお客さんがヘビーユーザーになってくれるのは難しいので、お店の近くに住んでいたり、働いていたりする人に、どれだけファンになってもらえるかが大切だと思います。

 

飲食店経営

福田さん:Bさんも、リピーター作りで苦労したんですか?
 

Bさん:逆にうちのお店は、ほぼリピーターしかいない状態でした。リピーターを増やすには人とコンテンツが大事で、新規を増やすには立地が大事だと言われているので、ソフト面に関しては比較的評価していただけたのかな、と捉えています。でもそれだと、売上は安定するけど、上がっていかないんですよね。売上を上げるには、やっぱり新規のお客さんを増やさないといけません。
 

福田さん:さらにBさんのお店は立地とコンセプトのミスマッチがあったとのことなので、新規獲得には苦戦されたのでしょうね。リピーターだけだと売り上げが伸び悩みますし、新規だけだと売り上げが安定しないので、新規とリピーターの両方がバランスよく増やしていける状況が理想的ですよね。
 

Aさん:BさんCさん:そうですね〜〜。

 

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Cさん:そのためにはマーケティングやプロモーションが欠かせないんですけど、実際飲食店経営を始めてみて驚いたのが、こまごました事務作業の多さ。プロモーションなどに割く時間がなかなか作れないんです。
 

Aさん:仕入れとか大変ですよね。お酒は腐らないからそんなに気を遣わなくていいけど、生鮮食品とかは足も早いし、コントロールして取らなきゃいけないし。
 

Bさん:うちはロスが出ないようにかなり仕入れの数をしぼってました。でも、正直それじゃたいした売り上げにならないんですよね。本当は、これでもかっていうぐらい仕入れて、ぜんぶ売り切れにしないと利益が出ない状態でした。
 

福田さん:食材を無駄にしないために工夫できることってあるんですか?
 

Bさん:完全に予想するしかないので、どうしようもないですね。お店始めたばかりの頃で経験値も少ないときは、少なめに見積もって売り切れにするか、腐らないものを多めに仕入れとくと安心なんじゃないでしょうか。
 

Aさん:今はかなり質の良い冷凍庫もあるので、そういうのもうまく使いながらやるといいですよね。

 

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Aさん:あと、月末月初の棚卸とか、胃が痛くなりませんでした? 飲食店って、かかえてる食材も資産になるので、売上管理するときには食材の余りも計上しないと、正確な利益が出ないんですよ。
 

福田さん:お酒の棚卸とかどうするんですか? ミリリットル単位で測るんですか?
 

Aさん:いや僕は目分量ですね、0.6とか0.8とか。
 

Cさん:とにかくそんな感じで、事務関係が忙しいんですよ。現場でめちゃくちゃ動いてくれるスタッフさんがいて、ようやく自分がやらなきゃいけないことができるくらいの感じですね。

 

飲食店閉店経験者の教え
  • 人のミスマッチはしんどい。育てがいはあるがリスクの大きい正社員で採るか、リスクを抑えたバイトで採るかもよく考えるべし。
  • 新規のお客さんを増やすには、お店の場所が重要。リピーター客を増やすには、お店のコンテンツと人が重要。新規が多ければ売上が上がるし、リピーターが多ければ売上は安定する。両方をバランスよく増やすためにも、プロモーションは欠かせない。

想像以上の費用がかさむ「内装工事」は、かしこく乗り切るべし

飲食店経営

福田さん:費用の面で、想定していたよりもお金がかかったモノ・コトはありましたか?
 

Aさん:内装ですかね。
 

Bさん:内装すげーかかりましたね。
 

Aさん:こんぐらいっしょ、って思ってた額の1.5倍くらいいきましたね。資金繰りが大変でした。
たとえば、施工が始まって、ある程度形ができてくると、「もうちょっとここをこうしたいな」っていうのが見えてくるじゃないですか。でも、それを追加しようとすると数十万とかかかるので、自分たちでやれるところはやりました。ただ、慣れてないから時間もかかるし仕上がりも悪かったです。次からはお金払ってプロにお願いして、自分はメニュー作りとかソフトの部分に時間かけようと思いましたね。
 

Cさん:僕も、壁の塗装を自分でやったんですけど、予想以上に時間がかかってしまって、「これさえやらなきゃ、あれもこれもできたのに」と悔やみましたね。
 

Bさん:僕も今のお店開くとき壁とか自分で塗りましたけど、めちゃくちゃしんどいですよね。朝から晩までシンナー臭い空間で、ペンキだらけになりながら……。「俺何やってるんだろう」って思います。
 

Cさん:そうそう、靴とかドロドロになるし。自分のお店ができていくのは楽しくもあるんですけどね。

 

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Bさん:次お店を作ることがあったら気をつけたいのは、内装工事の中でも、水道とか電気とか床上げとか、インフラ周りの工事費用ですね。そこの見込みが甘かったので、最初に用意した費用をその工事だけで全部使い切っちゃったんです。それで、あとの装飾とか壁とかを自分たちでやらざるを得なくなっちゃったので。
 

福田さん:その見込み違いって、防ぐ方法ってあるんですかね?
 

Bさん:経験してないと難しいですよね。
 

Aさん:だから居抜きがいいんですよ。やっぱり。
 

Cさん:そういう基礎工事がひと通り終わってますからね。内装にだけお金をかけられる。

 

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Aさん:あと、業者選びも重要ですよね。聞いた話なんですけど、知り合いの内装業者に安くお願いしたら、かなり安っぽく見える資材が使われちゃったらしく、そこを修正してもらうための交渉が大変で精神的に辛かった、って言ってました。
 

Bさん:僕の知人は、内装業者に1年の分割払いで支払う予定だったのが、終わった途端「3ヶ月以内に払ってくれ」って言われて、毎晩毎晩集金にこられて、レジの金持ってかれたりしてツラかったって話してました。
 

Cさん:内装業者を選ぶときは、実際に利用した人から安心できる業者を紹介してもらうのが一番安心ですよね。
 

福田さん:飲食店の開業時には物件の取得費や内装工事などの設備投資のほか、初期の仕入費、人材の採用費など、軌道に乗るまでの必要経費が想定以上にかかりますから、それはおツラいでしょうね。ABC店舗なら、開業時の融資のサポートもしており、民間で融資を断られた方にもご利用いただきやすくなっているので、ぜひ困ったら検討していただきたいです。

 

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飲食店閉店経験者の教え
  • 内装工事は見積もりを超過しやすい。装飾にこだわりたいなら、費用のかさむインフラ部分の工事がすべて終わっている、居抜き物件も狙い目。
  • 内装業者は当たり外れの差が大きい。実際に利用した人から安心できる業者を紹介してもらうのが安心。

 

これから飲食店経営をするあなたへ

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福田さん:飲食店経営って、経営の中でも一番大変だって言われることもあるんですよね。マーケティングや不動産から、会計、広告、もちろん料理やお酒、接客のことも勉強しないといけないし、やらなきゃいけないことの幅がとにかく広いから。その中でも、お三方が実際に飲食店経営をして「こんな人は飲食店経営に向いている」と思うのはどんな人ですか?
 

Aさん:ベタですけど、目配り気配りができる人だと思います。奥のテーブルで箸が落ちた音に気づけるとか、グラスの「カン」て音がしたら、「もう飲み終わったんだな」と気づけるとか。これって、教えられてできるようになるものじゃないと思うんですよね。
 

Bさん:気配りは絶対必要ですよね。それに加えるとするなら、コミュニケーション能力です。さっき話した通り、人にお客さんがつくと思うので、ちゃんとお話しができたり、人を不快にさせないというのは大事ですね。
 

Cさん:僕は、整理整頓ができる人が向いていると思います。お店がごちゃついてるとオペレーションがスムーズにいかないと思うし、お客さんの居心地も良くないですよね。ボトルが見やすいようにキレイに並べられているだけでも、気持ちがいいものだと思います。
 

Bさん:極論だけど、本当に好きじゃないとやってられない職業ですよね。薄利だし、やることめちゃくちゃあるし、1年とか2年で成果でるような業界じゃないので、この業界で5年10年やるんだって思いがないとできないと思います。
 

Cさん:1000円を100人に売って1日10万の世界ですからね。
 

Bさん:まあでもそれ以上に、面白さもありますね。ダイレクトにお客さまの反応が見られる仕事なので。「美味しかった」「楽しかった、また来ます」とか言ってもらえるのはやっぱり嬉しいですよね。

 

飲食店経営

福田さん:最後に、今飲食店経営をされている方、これから挑戦しようと思っている方へ向けてメッセージをお願いします。
 

Aさん:今、飲食離れが進んでるって言われてますけど、そのなかで飲食を選んでやろうとしている方はとても貴重な存在だと思うので、一緒に日本の外食産業を盛り上げていきたいな、と思います。食って絶対なくならないものだし、日本にはいい食材もあるし、文化もあると思うので。ツラいこともたくさんあると思いますけど、我々みたいにならず……ですね(笑)
 

Bさん:もし、これから飲食店経営に挑戦しようとしている人がいたら、「自分を信じて、思いっきりやってほしい」と言いたいですね。飲食って、ほかの業界に比べてめちゃくちゃハードだと思うんです。売上上がらないし、時間もかかるし……。体力的にも精神的にも大変なので、モチベーションの維持が大変です。そのモチベーションを維持するには、自分の熱量をどれだけ注ぎ込めるかが大切なんじゃないかな、と。だから、誰かに言われたからやったとか、他責の理由を作らないほうがいいと思います。
 

Cさん:僕も同じような感じで、自分がやりたいことがまず最初にあって、そこに対してどうしていくか、ってなるべきで、コンセプトが一番先にくる、というところをブラしちゃいけないと思います。安い物件を見つけると気が焦ってしまいがちですけど、そこが本当に自分のやりたいことを叶えられる場所なのか? をきちんと考えることをオススメします。
 

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