風速25m、-10°の世界。青森・八甲田山スキー場でのバックカントリーが最高だった話

風速25m、-10°の世界。青森・八甲田山スキー場でのバックカントリーが最高だった話

ハダタロー

ハダタロー

こんにちは、スノーボーダー兼エディターのハダタローです。

いよいよスノボシーズン到来! ということで今回は、今年春にサンデープラニングのメンバーと行った青森県・八甲田山のスキー・スノーボードツアーの模様を(だいぶ遅くなりましたが)お届けしたいと思います。メンバーは、社長のゴウさん、サンデープラニング元校長のヨシさん、ガイドの遊さん、そして僕の4人です。

青森・八甲田山へ滑りに

その前に、みなさん八甲田山ってどこにあるかご存知ですか?

青森県のちょうど真ん中あたりです。

東京からだいたい車で700Km(車で8時間半〜9時間)、青森市から20km弱(車で50分くらい)の場所にあります。僕は青森までバスで行ったんですが、上野からだとなんと10時間かかりました……。青森、遠いぜ。

僕自身、これまでいろんなスキー場を巡ってきましたが、八甲田山に滑りに行くのは今回が初めてです。なにせ、遠いですからね。

ちなみに八甲田山って、名前からひとつの山(独立峰)だと思われがちなんですが、正確には八甲田連峰なんだとか。

那須火山帯の中の、八甲田火山群地域を八甲田連峰と称します。
そして、大岳(1,585m)を主峰として高田大岳、井戸岳、赤倉岳、前嶽、田茂萢岳、小岳、硫黄岳、石倉岳、雛岳と10の山々を北八甲田、櫛ヶ峰をはじめ6峰の山々を南八甲田といいます。
(引用:青森県観光情報サイト)

上記の通り、10の山々からなる北八甲田と6の山々からなる南八甲田の通称が八甲田山で、実は独立峰ではないんですね。

いざ八甲田山へ!


▲僕の身長が180cm程度なので積雪量は5mくらい

今回の目的は、八甲田山で広大なバックカントリー(人の手で整備されていないエリア)を滑ること。訪れたのは3月の中旬ですが、ご覧の通りの積雪量です。八甲田山の積雪おそるべし。冬になると最高積雪のニュースでよく放送される酸ヶ湯もこの近くにあります。

八甲田山への入り口は、八甲田ロープウェイ山麓駅です。

ここから10分程度で一気に田茂萢岳の山頂(1314m)まで登ります。平日だったんですが、多くの雪山愛好家たちから愛されている山とあって、ロープウェイはいっぱいでした。

冬の八甲田(特にハイシーズン)は晴れを当てるのが本当に難しい山です。また、風も強く、その豊富な積雪と広大なフィールドとは裏腹に、良いコンディションで滑走するのにはよっぽどの強運か長期滞在するかのどっちかしかありません。

僕の滞在期間はたったの2日間、いいコンディションに当たることを祈って、さっそく山へ上がりました。

そこはホワイトアウトの世界

山頂へ着いたのはいいものの、

なんも見えねえ……。

見てください、この視界。50m先、ホワイトアウト。コースらしきものに赤いポールが立っているだけ。

山頂付近は真っ白、目の前も真っ白、一寸先も白。

とにかく真っ白×強風のバッドコンディションです。全然ツイてない。せっかく10時間かけて青森まで来たのに……。「人間は自然に勝てない」という、当たり前の格言が身に沁みます。

笑顔で撮ってますが、この後滑りはじめたときには雪面はガリガリ、視界はほぼ0で恐怖しかありませんでした。生きててよかった。

念願の八甲田山でバックカントリー

結局1日目は、散々なコンディションで敗北という結果に。勝負をかけた2日目は、朝の時点で天気は曇り……。

こうなったらもうプロを頼るしかない。というわけでプライベートガイドツアーに参加し、ベテランガイドさんにとっておきの場所へ連れていってもらうことに。

バックカントリー準備編

バックカントリーにおいては、通常のゲレンデで滑るのとは異なりさまざまな装備が必要になります。

滑るのは人の手によって整備・管理されていないエリアです。基本的に自己責任で臨むアクティビティなので、しっかりと装備の使い方を理解した上で、詳しいガイドの人と一緒に行くのが安全に楽しむいちばんのコツ。

バックカントリーの装備で忘れてはいけないのが3種の神器が、ビーコン、プローブ、ショベルです。

ビーコン
ビーコンは、受信機兼送信機で雪崩に埋まってしまったときなど、救援が必要な場合に使うものです。基本的には、滑走するときは送信モードで滑走し、誰かを捜索するときは受信モードに切り替えて使用します。自分でも持ってはいるものの、これを使う機会は来て欲しくはないなと思います(でも、いざというときに使えないと困るので使い方はきちんと勉強しておきましょう)。
プローブ
プローブは、埋まってしまった人の位置を特定するものです。この袋の中に3mくらいに伸びる棒が収納されています。ビーコンだけでは雪に埋まってしまった人の正確な位置を見つけられないので、この長めの棒を雪に突き刺して捜索します。これで刺されるのは痛いかもしれませんが、痛いだけで命が助かるならいさぎよく刺されたいです。
ショベル
最後が、ショベル。これは雪に埋まってしまった人を掘り起こすためのものです。

あとは、今回ハイクアップ(山を登ること)もあるので、スノーシューとポールも持っていきます。これがないと、3歩ほど歩いただけで雪に埋まって動けなくなります。

これらの道具に加えて行動食や飲み物などをザックに詰めたらいざ、出発です!

「八甲田山ガイドくらぶ」へ

今回ガイドをお願いしたのは「八甲田山ガイドくらぶ」さん。

僕らをガイドしてくれるのは、八甲田山をガイドして10年以上のベテランガイドのチュウヘイさんです。手続きを済ませて、いざ!!!!!!!






と思ったらココで、まさかの衝撃の事実が発覚。な、な、なんと……。

ロープウェイが強風で運休。

嘘だろ……。このガイドツアーを楽しみに東京からはるばるやって来たっていうのに……。

せっかくここまで来たのに諦めるわけにはいきません。

ガイドのチュウヘイさんに相談してみたところ、ロープウェイを使わずとも、短いペアリフトを使ってそこから山頂までハイクアップするという方法もあるそう。

もうここまで来たんだ。登るしかない。何がなんでも八甲田のバックカントリーを滑るんだッッ!

そう決意して、山頂までのハイクアップを決めました。

リフトを降りたら、汗をかかないようにジャケットを脱ぎ、ザックにスノーボードを付けて、スノーシューを履きます。

いよいよ山頂目指してハイクアップスタートです!

ひたすら山頂へ、歩く、歩く……

山頂ははるか先ですが、僕らの足音以外何も聞こえない空間は気持ちがいい。澄んだ空気の中、森を歩くのは意外に苦じゃありませんでした。

1列になって森の中をひたすら歩きます。だんだん木の本数が減ってきて、はるか向こうには日本海の絶景が!!!!

ロープウェイが動いていない日に、わざわざ登って滑る物好きは僕らくらいみたいです。山頂までほとんど誰とも会わず、貸切状態。

1時間半〜2時間くらいハイクアップしてようやくロープウェイの山頂駅に到着。

写真だと伝わらないと思うのですが、ここがもう爆風状態。普通に突っ立っていたら飛ばされそうなくらいの風が吹き荒れています。風速計で測ってみたらなんと25m! エグくないですか? 科学館くらいでしか体験できないような強風ぶりでした。

すべては極上の一本のために

そこからまた少しハイクアップをしてついに来ました。念願のバックカントリー!!!

ロープウェイに乗ったら10分でつくのに、そこを1時間半もハイクして登ってきたんです(ぶっちゃけしんどかった)。いきましょう!滑りましょう!僕らだけしかいない、この天国を!

気持ちいい〜!!!!!!

大変なハイクを乗り越えた先にある極上の1本。この瞬間があるから、スノーボードはやめられないんですよね。

ヨシさんはテレマークスキーで。

遊さんはGo Proで自撮りしながら。

滑った本数は少なかったけれど、そのどれもが貴重な1本でした。来年はこの写真のゴウさんの奥にある斜面を狙いたいと思います。

まとめ

仕事でもなんでも同じですが、苦しい思いを乗り越えたその先にある楽しさやおもしろさはクセになったらやめられません。スノーボードも最初はたくさん転ぶし、痛いです。でも、それを乗り越えた先におもしろさがあります。そして続けていけば、こんな素晴らしいフィールドにだって挑戦できる。

そんなことを実感した、いい旅になりました。

それでは今シーズンも豊雪を祈って! ハダタローでした。

この記事のシェア数

エディターのハダタローです。 前職は、スノーボード専門誌の編集とWebサイトのディレクションを担当。夏は東京、冬は雪山の生活をかれこれ7年ほど続けてきました。大学では考古学の勉強をしていましたが、いままで役に立ったことは1度もありません。 FREE BEERのパーティーが好きなので、お誘いお待ちしております。 ああ、はやく雪降らないかな〜。

このメンバーの記事をもっと読む