取締役COO兼CFOの龍﨑です。
私はいま、「地方創生」という事業を担当しております。
地方での行政の皆さまと一緒にお仕事をさせていただく中で、上がってくる課題は、人口減少、若者の定住促進、そして地域の高齢化です。今回は、私が「地方創生」として活動する中で日本における地域の何が課題で、どのような問題を解決することが地方創生につながるのか、ということをお話したいと思います。
地域おこし協力隊という制度
地域おこし協力隊という制度は、平成21年から総務省が中心となって発足した制度で、都市部から過疎地域へと人材を受け入れ、その地域に居住し、地域ブランドのPRなどの地域おこし支援や第1次産業への従事など地域活動をしながらその地域への定住を図るプロジェクトです。
平成21年度開始当初は地域おこし協力隊89人、取組団体31団体だったのに対し、28年度では3,978人、886団体と大きく拡充しており、総務省の発表では、地域おこし協力隊の最大3年任期終了後の約6割が同じ地域に定住しています(※1)。
地域おこし協力隊の給与は、制度によって定められていて1人あたり最大400万円を上限とした特別交付税により地方公共団体へ財政支援されます。(うち200〜250万円が報酬費、うち200万円がその他の経費として与えられる)
地域おこし協力隊の問題点
前章で、地域おこし協力隊の任期終了後の約6割が同じ地域に定住しているというデータを紹介しました。
しかし、実際はどうでしょうか。
いま実際に地方創生事業で行政の方々とご一緒させていただく中で、私たちが目指す「地方創生」、地域おこし協力隊という制度がうまく機能していないことが多く感じられます。地域おこし協力隊でいる3年間は給料出ますが、その地域を手伝いして盛り上げ、4年目からはその地域で自ら食べていかねばなりません。
正直我々経営をする立場からしても、初めの3年で大抵の起業した人は消えていきます。それを地域で、しかも3年で自分が食べていけるようにするというのは相当難しいはずなのです。
では、地域おこし協力隊の抱える課題は、どこにあるのでしょうか。それは、地域おこし協力隊員が抱いている田舎暮らしの可能性と地域コミュニティとのギャップにあります。そしてそれらを繋げ、解決する支援がないことです。良くも悪くも行政とは縦割りの構造になっていて、総務省、県、市町村と縦構造でできています。地域おこし協力隊とは、横で皆を繋げるための制度だと考えています。しかし隊員自体は横になるべき方法を知りません。なぜなら、地域おこし協力隊員の管理を行う市町村役場が縦割りだからです。この現状が、今の地域おこし協力隊の大きな課題なのかもしれません。
これら課題に対して答えを一つ一つ出さなければ、地域おこし協力隊という制度自体がうまく機能していきません。実際に地域おこし協力隊の課題は多くありますが、この制度自体はとても良いものです。
まずその理由として、お試しとして地方で働きながら生活ができることが一つ挙げられます。しかも3年間は、食いはぐれることがありません。
二つ目として普通に移住した人に比べ、行政の立場でコミュニティに入っていくので、心を開かれるのは間違いなく早い、ということです。ある意味、地元に戻って就職するようなことです。
三つ目は、移住を考えている人に対しての大きな後押しとなっていることです。正直、若い世代が地方に移住するというのは地方から都心に引っ越すよりハードルが高いです。なぜ地方から都心へは移住と言わず、都心から地方は移住という言葉を使用するのでしょうか。この言葉の選定からも都心から地方へ拠点を代えるということは相当なハードルが高いあらわれです。私が知る限り、若い人で移住に成功している方は意外に気軽に拠点を移してきた方たちが多いように見受けられます。一番のおすすめはダメだったら帰ればいいという気持ちの余裕が移住を成功させる術なのかもしれません。
良い制度を良く使う。
国の想いと市町村の想い。
残念ながら国も含む市町村の地方公共団体は、私たち民間のように柔軟に動くことはできません。だからこそ、その役割を行なわないといけないと考えています。
地域問題に対するLIG流の新たな解決法
この問題を解決するために、我々LIGでは今年度より新しい取り組みとして、大分県豊後大野市の山奥でゲストハウスLAMP豊後大野をはじめました。ここの建物は豊後大野市の指定管理物件であり、我々はあまりにも山奥のために、管理する人がいなくなっていた場所で、指定管理者として管理を行なっています。
では、このプロジェクトの何が新しいのでしょうか。
地域おこし協力隊の採用過程は、我々LIGと豊後大野市の2者で面接を行なっています。LAMP豊後大野では、ゲストハウスで働きながら情報発信を行なっています。我々と一緒に働く地域おこし協力隊員は3年間でライティング、映像カメラマン、WEBデザイナー、エンジニアなどWebに従事する者として独り立ちしてもらうことが目標です。
そして3年後、この豊後大野市で一人でも生きていけるように、またはLIGに入社してもらい、豊後大野市で生活をしてもらうという設計になっているのです。
行政とお仕事をさせていただく上で重要なことは、補助金をルールの中のみで利用しようとするのではなく、事業全体の一部に補助金や制度を利用しないといけないことなのです。
今回のプロジェクトは、実は2016年の夏から動いており、まずLAMP豊後大野の指定管理業者としてLIGが立候補し、事業者としての面談をしてもらい、3月の議会で可決後、2017年4月1日から正式にLAMP豊後大野の指定管理業者となりました。
そして6月の補正予算で地域おこし協力隊の予算を確保してもらい、LAMP豊後大野のスタッフ募集、面接、採用という流れで進めてきました。行政の仕事を公募でやったことのある企業ならばわかると思いますが、これはとても骨の折れる作業なのです。一つのことが崩れるとすべて崩れてしまうプロジェクトでもあります。民間でも十分ありますが、一緒に事業を進めていく中で担当者が変わることにより、すべての方針が変わることはよく起こります。4月になると役場の担当者の異動もある、数年に一度は市長選、議員選挙がある、それによって方針が変わることが日常茶飯事ということを理解した上で、地方創生事業を進めていかないといけません。
それでも一つ一つ着実に進め、今回のLAMP豊後大野のスタッフ清の記事に至ります。
大分県庁並びに豊後大野市役所の方々の全面的な協力の上で、このモデルが成り立っているのです。
最後に
では、なぜ我々LIGが地方創生事業を行うのでしょうか。
それは、役場に本気で地元を変えたいという人がいるからです。
なぜこのモデルを公開したのでしょうか。
地方創生はとても時間のかかるもので、我々LIGが全エリアを網羅するのは不可能だからです。
私が考える地方創生の答えは、地域に根付いた事業を展開し、地域を巻き込むことです。我々は地方創生事業として現在進んでいる市町村と来年度からスタートする予定の市町村を全力で盛り上げていこうと考えています。しかし、我々のような取り組みが日本全国で進んでいけば地域おこし協力隊の制度は必ず成功で終わると確信してます。
地方創生事業とは、我々日本人が日本のために何かするというきっかけであると思うのは私だけでしょうか。