こんにちは、エディターのさんぺーです。
みなさん、花札をやったことはありますか? 花札とは、名前のとおりさまざまな花の絵柄が描かれている札のことで、「かるた」のようなカードゲームです。事実、花札はかるたの一種で別名「花かるた」とも呼ばれています。
ある日、花札のゲームアプリで遊んでいてふと思ったのですが……
「なんだこれ」
実はこれ、柳の素札(すふだ)という種類。しかし、どう見ても柳の要素がありません。
花札は、日本の四季や花鳥風月をテーマとして絵柄が描かれているもの。日本人たるもの、花札に描かれているものがどんな意味なのか知っておかなければいけません。そこで今回、花札の絵柄について調べてみました。
花札にはどんな花が描かれているの?
花札は、12ヶ月×4枚の全48枚で構成されています。

花札の花の絵柄は、実は数字の代わり。12ヶ月それぞれに花を割り振ることで、1〜12の数字を表しています。
また、札の種類は下記のとおり。
- 光札(ひかりふだ)
- 種札(たねふだ)
- 短冊札(たんざくふだ)
- 素札(カス札とも呼ばれる)
高得点順で、光札が20点、種札が10点、短冊札が5点、素札が1点となっています。
また、札は4種あるのですが、4枚の分配が月ごとによって異なるのも特徴の1つです。
- 例:1月の松の札
- 光札1枚、種札0枚、短冊札1枚、素札2枚
さて、月ごとに絵柄の意味や札の種類を見てみましょう。
1月は【松に鶴】! めっちゃ縁起いい!

日本の縁起物を象徴する松。光札は、松と同じく縁起の良い「鶴」です。
短冊札には「あかよろし」と書かれており、「明らかに良い、たいへん良い」といった意味だと考えられています。
2月の【梅に鶯(うぐいす)】と思いきや、本当はメジロだった
万葉集などでは梅の花について詠われたものが多く、昔は花見と言えば桜ではなく梅だったので、日本を象徴する美しい花の1つとされています。
種札では、鶯が梅の木に止まっていますが、本来の鶯はうすい茶色。花札に描かれているような緑色の鳥はメジロだそう。しかし、花札では緑色の鳥で鶯とされています。
3月の【桜に幕】は、お花見の象徴
日本を代表する花「桜」。光札の【桜に幕】は、お花見の席を表現されていると考えられています。
また、短冊札にある「みよしの」を漢字で表記すると「美吉野」となります。これは奈良の吉野山を指しており、今も昔も、吉野山の美しい桜は変わらないことが伺えます。
4月の【藤に不如帰(ふじにほととぎす)】
花札の用語として、青豆(あおまめ)や黒豆(くろまめ)とも呼ばれる藤。可憐なツル性の植物として、昔から日本人に親しまれてきました。
種札の【藤に不如帰】は、古今和歌集にある和歌が由来していると考えられています。しかし、花札のメーカーによっては絵柄が少し異なってくるため、どの和歌が由来しているか定かではないそう。
5月の【菖蒲に八橋(あやめにやつはし)】、実は菖蒲じゃない?!
5月は菖蒲の花が割り振られています。しかし、種札の【菖蒲に八橋】で描かれている花は、菖蒲(あやめ)ではなく杜若(かきつばた)という花。「いずれ菖蒲か杜若(※1)」という故事ことわざがあるように、花はよく似ているのですが、水辺に咲くのは菖蒲ではなく杜若なのだそう。
また、八橋とは『三河(みかわ・現在の愛知県)の八橋』という杜若の名所のこと。
在原業平が詠んだ和歌が有名で、一語それぞれの頭文字を取ると「かきつはた」となることからも、【菖蒲に八橋】で描かれている花は杜若だと言われています。
6月は、花の王と呼ばれる牡丹(ぼたん)
牡丹は「百花の王」とも呼ばれるくらい、美しい花とされています。
花札を知らない人でも“猪鹿蝶(いのしかちょう)”という言葉はご存知かと思います。この言葉は花札の役の1つで、【牡丹に蝶】と【萩に猪】、【紅葉に鹿】の3枚の種札を集めることで、役(※2)が完成します。
猪鹿蝶に元々意味があったわけではなく、花札の役が出来てから縁起物として知られるようになったそうです。
7月の【萩に猪(はぎにいのしし)】は、対照美が表現されている
赤豆(あかまめ)とも呼ばれる萩。「黒豆・青豆」と呼ばれている藤の2つの総称として、「豆」と呼ばれることもあります。
萩の花は昔から「臥す猪の床(ふすゐのとこ)」と言い、猪の寝床でもあるそう。種札の【萩に猪】は、萩という優美な花と、猪という荒々しい動物との対照美が表現されています。
8月の芒(すすき)は、坊主とも呼ばれる
芒は、札の絵柄の下側が坊主に見えることから、「坊主」とも呼ばれています。
名月の夜と言われる8月15日の十五夜では、月見団子を盛ったり芒を飾ったりして月を祭ってきました。ですから、光札では縁起物として【芒に月】が描かれています。また、【芒に満月】と言うことも。
種札の鳥は、雁(かり)という渡り鳥。秋に日本にやってくるため、秋の風物詩とされています。
9月の【菊に盃(さかずき)】は不老長寿のお祝い?
9月は菊の節句とも呼ばれる重陽(ちょうよう)の節句があります。陰陽(いんよう)思想では、奇数は縁起が良く偶数は縁起が悪いと考えられていました。1番大きい1桁の奇数である9が重なる日、つまり9月9日は、お祝いをするとともに厄払いもされてきたそう。
菊は、別名「翁草(おきなぐさ)」や「齢草(よわいぐざ)」、「千代見草(ちよみぐさ)」とも言われ、不老長寿としての薬効があると考えられていました。ですから、重陽の節句のときに、邪気払いや長寿願いとして菊の花を酒に浮かべて飲むなどされていたそう。朱色の盃には「壽(ことぶき)」と書かれており、祝い事に使う盃だとわかります。
「しかと」の由来となった10月の【紅葉(もみじ)に鹿】
無視を意味する「しかと」は、10月の【紅葉の鹿】の絵柄に由来しています。
札を見てわかるとおり、鹿は横を向いています。そっぽを向いて無視をするということで、「しかと(=鹿十)」という言葉ができたそう。
11月の柳は全種類あってちょっと特別!
11月は柳で、他の月と異なり4種の札1枚ずつで構成されています。
光札の【柳に小野道風(おののみちかぜ)】は、書道家の小野道風が柳につかまろうとしている蛙(かわず)を眺めている様子が描かれています。これは、小野道風がスランプに陥ったときに、柳につかまろうとして何度も失敗している蛙を見て「自分はまだまだ努力不足だ」と思い直し、ものすごく努力するきっかけになったという言い伝えのある話が由来しています。
また、冒頭でもご紹介した何かよくわからない柳の素札は、【柳の鬼の手】と呼ばれています。どうやら「鬼」や「雷」が表現されているよう。インパクトを受ける絵柄ですが、あまり縁起の良い絵柄ではないため素札であると考えられます。
12月の桐(きり)は、ピンキリのキリ?
12月に桐が選ばれた理由は、ピンキリの「キリ(=最後)」や「これっきり」のきりという説があるそう。
光札の【桐に鳳凰(ほうおう)】に伝説の霊鳥である鳳凰が描かれているのは、唯一鳳凰が止まる木が青桐と言い伝えられているからです。桐は歴史的に見ても「高貴な花」とされています。ピンキリのキリから派生して桐となり、組み合わせで縁起の良いものとして鳳凰が描かれたのかもしれませんね。
まとめ
数字やスート(トランプでいう、ハートやダイヤなどのマーク)の代わりに、日本の四季と花鳥風月の絵柄があしらわれている花札。いまでもその絵柄は、決して古びず美しいものだとも言われています。日本の四季にちなみ、さまざまな意味が込められている素晴らしいカードゲームなので、ぜひ遊んでみてください。
ブラウザで遊べる『花札Flash』
http://www.gamedesign.jp/flash/hanafuda/hanafuda.html
花札には、2人用の「こいこい」と3人用の「花合わせ」、3〜7人で遊ぶ「八八」といった遊び方がありますが、こちらで遊べるのは「こいこい」です。
次回は、なぜ花札には数字やスートがないのか。花札の歴史を振り返ってみたいと思います。(ゲームのルール説明もするよ!)
それでは、また!