こんにちは! メディア事業部マネージャーのたくです。
突然ですが、Google アナリティクスを使ったサイト解析に苦労していませんか?
アクセスログを解析することはもちろん、報告用のレポート作成に時間がかかることってよくありますよね。見ることができる指標がありすぎて迷ってしまったり、山のようなデータから問題点を探すことにも一苦労。どうすれば短時間でサイトの課題を見つけ、改善策を実行することができるのでしょうか。
そこで今回お話を伺ったのは、株式会社クリエイターズネクストで代表取締役を務める窪田望さん。アクセス解析の専門家である窪田さんに、アナリティクスを使った分析の進め方やポイントについて教えていただきました。
人物紹介:窪田望さん わずか19歳で起業し、これまでに400以上のサイト解析・改善の実績をもつ。現在は株式会社クリエイターズネクスト代表取締役。上級ウェブ解析士という称号をもつ。 |
▼目次
- アナリティクス利用者の約60%は改善策を打てていない
- アナリティクスの鉄則は「インパクト・ファースト」
- 数値の「違和感」を見つけ出す感覚が改善スピードを上げる
- ペルソナ設定が改善策を決める
- 改善施の参考にしたい「グロースハック」
- 解析の作業に忙殺されないために考えるべきこと
アナリティクスを使っていても、約60%は改善策を打てていない
Google アナリティクスは非常に便利なツールですが、その分使いこなすには相当の時間がかかるものです。そもそも、どのくらいの人がアナリティクスを使いこなせているかご存知ですか?
参照元:アナリティクス アソシエーション2015年「アナリティクス意識調査アンケート」
データアナリストの支援やサポートを行っている団体『アナリティクス アソシエーション』による意識調査によれば、データの集計・加工は約8割の人が行っているものの、データから課題を抽出できているのは6割弱、改善施策の実施についてはわずか4割の人しかできていないようです。この調査はそもそもアナリティクスに対する関心が高い人が対象なので、一般的にはもっと低い割合になるでしょう。
データを取得することはできても、どのように解釈して課題を抽出すればいいのか、どのように改善していけばいいのか、わからない担当者が大勢いるということですね。そこで今回は、Google アナリティクスでサイト解析する際の基本的な考え方をご紹介していきます。
アナリティクスの鉄則は「インパクト・ファースト」。数値の大きな固まりから対処する
サイト解析で最初に行うのは、数値の大きな固まりを見つけることです。私はこれを“インパクト・ファースト”と呼んでいます。
クイズ: どちらの改善策を優先させる?
例えば、こういったサイトがあるとします。
このサイトのCV数を上げたいと思ったとき、考え得る改善策はこの2つ。
- 改善策
-
- 広告流入のCVRを平均の0.9%まで引き上げる(+0.1%)
- 検索エンジン流入のCVRを平均の0.9%まで引き上げる(+0.4%)
あなたなら、広告流入と検索エンジンからの流入のどちらを先に改善しますか?
答え: インパクトの大きいものから対処する
考えるべきなのは「どちらのほうがインパクトが大きいか」です。この事例では、改善策2ではCV+4件(1,000人×0.4%)が見込めますが、改善策1ではCV+10件(10,000×0.1%)が見込めます。つまり、改善策1を優先すべきだわかります。流入数の多い項目から改善していくべきということですね。すなわちこれが大きな固まりから対処していくという「インパクト・ファースト」という考え方です。
他に例を挙げるなら、10万MAUのサイトの閲覧デバイスが、PC3割・スマホ7割だとするならば、スマホ表示の最適化を考えるべきです。利用者の地域が東京と大阪が多いサイトで、大阪のCVRが東京の2倍あるならば、大阪の人々をより多くサイトに連れてくる施策を打つべき、といった具合です。
見るべき指標はサイトの内容や特徴によるので一概には言えません。ただ、取っかかりとして見るとよい指標は次の通りです。
-
- 流入経路
- デバイス
- 地域
- 時間帯
- 性別
- 年代
※詳しくは『Google アナリティクスパーフェクトガイド』に掲載。
数値の「違和感」を見つけ出す感覚が、改善のスピードを上げる
数値の固まりを抽出したら、その中で違和感のある部分を探しましょう。
クイズ: どの数値が良くて、どの数値が悪い?
こんなサイトがあるとします。
-
- CVR: 2%
- 直帰率: 55%
- リードからの営業転換率: 12%
あなたなら、どの数値が改善すべき悪い数値だと判断しますか?
答え: 直帰率は40%以下を理想とすべき
上記のような基本的な数字に関しては、直感的に「これはおかしいぞ」と気がつける感覚を身につけることが大切です。あくまで一般的な数値ではありますが、目指すべきと言われている数値はこちら。
-
- CVR: 1%以上
- 直帰率: 40%以下
- リードからの営業転換率: 10%以下
この水準よりも数値の悪い項目があれば、改善する余地があると考えるとよいでしょう。逆に、これよりも良好な数値の部分は新しい施策を打っても向上しない可能性もあります。これらの数値の感覚をもっておけば改善策を打つスピードが上がります。
もしCVRが0.5%しかないならば、LPに問題はないか、動線に問題はないか、流入キーワードが想定と異なっていないか、などを考えてみてください。その他にも、デバイスや地域の問題かもしれません。改善すべき項目を絞ったら、その後はひたすらに分析していきましょう。
ペルソナを設定することで、どのように改善すべきかが決まる
サイト内に違和感のある箇所を見つけたら、次はどう改善するかを考えます。そのときペルソナ像を詳細に設計することが重要になります。その理由についてご説明します。
質問: この人、どんな人?
あなたは、この写真の人がどんな名前で、どんな仕事をしていて、今どうして笑っていると思いますか?
答え: 人によって想定する人物は異なる
当然のことではありますが、この写真1枚では人によってそれぞれ異なった人物を想定することが予想されます。この点はペルソナも同じ。チーム内でペルソナ像がばらついていると、サイト解析をして問題点を洗い出したとしても、どのように改善すべきかの合意が取れません。
逆にいうと、ペルソナを共通に認識していれば、どのように改善するかを迷わず選べるということ。誰のための改善なのか、その人物像をしっかりと設定しましょう。
ただ、ペルソナをつくろうとすると、「年収1000万以上で都市部在住、自社商品に興味のある……」といったような、実際にはほとんど存在しないような理想的な人物を想定してしまいがち。理想の人物になりすぎていないか確認してください。
人は、何かを得る以上に、何かを失うことのほうを回避するという、「損益回避バイアス」という心理行動を起こします。理想的なペルソナを設計するのでなく、その人のコンプレックスや弱い部分など、感情が揺さぶられるポイントを盛り込んでいきましょう。
ここまで、Google アナリティクスを使った分析の基本についてご紹介してきました。もっと詳しく知りたいという方は、ぜひパーフェクトガイドをご覧になってください。
数値をどう改善する? お金をかけずに成果を上げる方法は「グロースハック」
続いてご紹介するのは「グロースハック」。グロースハックとは、インターネットの特性や群衆心理、ログデータなどを活用することで、効果的にプロダクトの中に成長できる(人をサイトに呼びこむ、コンバージョンさせる等)仕組みを組み込むことを指します。やみくもに仮説を立てて実行するのでなく、データなどの根拠をもって施策を練ることが肝になります。
身近な例としては、メールの署名にサイトのURLを記載することもグロースハックの一つ。非常に簡単、かつ効果的な施策ですね。
分析したアクセス数を増やそうと考えるとき、ただお金をかけて施策を増やすのでなく、知恵をしぼってアプローチすることで成果を上げることができます。その考え方の参考になるグロースハック事例をご紹介していきます。
グロースハックを学べる事例3選
グロースハックを知るには、まずは事例を学ぶことが大切。今回は代表的な事例についてご紹介します。
事例1: Uber
Uberが提供しているのはタクシー配車サービス。スマートフォンアプリから最寄りのタクシーやライドシェア(相乗り)を希望している人を検索し、呼び出すことができます。
▼グロースハック施策
創業地のサンフランシスコでは人気がありましたが、ボストンでは利用者数が増えないという課題がありました。そこでUberは、2013年に公共交通機関がストライキを起こした際に、公立学校の学生に無料で配車サービスを提供しました。そこで良いブランドイメージを獲得したUberは、ボストンでの利用者拡大を達成しました。
▼施策の狙いと成果
人は、困っているときに助けてもらうとそのイメージが大きく向上します。Uberはその人の心理に目を付け、日常生活に支障をきたすストライキを利用して利用者の支持を獲得しました。
この施策が功を奏し、Uberの売上高は2015年末に100億ドルになると予想されています。その成長率は年間300%といわれています。
事例2: Evernote
Evernoteは個人向け文書管理システムです。パソコンや携帯端末において、メモをとったり、画像やファイルを保存したりできるサービスを提供しています。
▼グロースハック施策
ユーザーの中から、「アンバサダー」を任命します。彼らには、Evernoteのサービスに加え、効果的な活用方法についてブログで発信してもらいます。
▼施策の狙いと成果
Evernoteが目をつけたのは、口コミの効果でした。自社からの発信ではなく、ブログという形式で第三者による情報発信により、サービスの認知や好感度が高まることを目的としました。
この施策の魅力は、アンバサダー自身にもメリットがあることです。彼らのブログがEvernoteのホームページに掲載されるため、ブログのアクセス数が増えたり、ブログの知名度が向上することが期待されます。そのメリットにより、Evernoteは無償でアンバサダーによる協力を得ることに成功しました。
こうしてEvernoteは約450万人の利用者(2010年9月時点)から、1250万人(2011年8月時点)へと急成長を遂げました。
事例3: Tesco
Tescoは、欧米やアジアでスーパーマーケットやコンビニエンスストアを展開するイギリスの会社です。
▼グロースハック施策
韓国の地下鉄の駅構内に、「バーチャルストア」と呼ばれる食料品陳列棚を壁に設置しました。消費者は、スマートフォンを用いて壁に映し出された食料品のQRコードを読み取り、アプリ内の買い物カゴに商品を追加します。アプリ上で決済を行うと、商品が自宅に届くという画期的サービスです。
▼施策の狙いと成果
スーパーに行く時間がない人や、レジに並ぶ時間がもったいないと思うような顧客心理に応えるグロースハック。さらに、地下鉄の駅という人通りの多いところで展開しているため、多くの通行人の目に触れます。サービスの展開自体が見込み顧客に対して宣伝効果があると考えられます。店舗設置のリスクをとることなく、またネット通販と直接競合することもなく、新たな販売チャネルを築くことができたということです。韓国地下鉄構内のバーチャルストアが成功し、イギリスの空港においても展開されました。
グロースハックについてもっと詳しく知りたい方は、グロースハックガイドをご覧ください。国内外のグロースハック成功事例58選に加え、具体的なグロースハックのやり方をご紹介しています。
「本当にその人がすべきだったのか?」作業に忙殺されないために考えるべきこと
サイト解析のコツやグロースハックをご紹介してきましたが、そもそもログ解析とは手間ひまのかかる作業。1つのサイトを細かく解析するには3日間ほどかかるのが一般的です。
しかし実務では数時間でレポートを仕上げることも求められることもあり、徹夜で作業している担当者が多いはず。そんな短時間では数値を表にまとめるので精一杯で、とても改善策を考える時間を十分に取れません。悲しむべきは、分析とよりもレポートとして整える作業に時間が取られていることです。
本来なら数値を分析して次の施策を考えることに時間を使うべきなのに、単なる作業に忙殺されているのはもったいない。マーケターのはずなのに、マーケティングの仕事ができていないわけですから。
「その作業は、本当にその人がすべきだったのか?」と、一度立ち止まって考え直すことも大切だと思います。経営者や管理職であればなおさらです。メンバーがやるべき仕事に手が回っているのか、確認してみてください。頭を使わない単純作業はなるべく自動化して業務効率化を図ったほうが絶対に良いですからね。
アクセス解析の作業を2分で終わらせて、戦略立案に時間を割くなら『kobit』
単純作業を自動化するといっても、その仕組みを自社開発するにはそれでけでノウハウもリソースも取られて一苦労。そこでおすすめしたいのが、クリエイターズネクストが提供する解析レポート自動生成ツール『kobit』です。
kobitは、Google アナリティクスのデータを自動で解析してレポートを作成。インパクトの大きな部分を自動で抽出してくれるのに加え、データの特徴を分析して改善案まで提案してくれます。これまで約2日もかかっていたアクセス解析が、ほんの2〜3分まで短縮化できます。
kobitが生成したレポートはパワーポイント形式でダウンロードできるため、担当者が自由に図表に手を加えてレポートに組み込めます。ぜひ利用してみてください。
お話を伺って
サイト解析はツール導入によって簡略化することができますが、自分の手を動かして一つ一つ数値を見ていくことが解析力を身に付ける上で大切なのでは? そう窪田さんに聞いてみると、こんな返答がありました。
「kobitが提供しているのはあくまで仮説を立てるための材料です。kobitのレポートを見ることでサイト解析の道筋を知り、そこから仮説を立て、その上でもう一度Google アナリティクスの数値をご自身で確認し、分析を深めてもらう。そんなサービスになっています」
Google アナリティクスはあまりに多くのデータを取得できるので、何を見るべきか、どこから手をつけるべきか、迷ってしまうことがよくあります。やみくもにそのデータと対峙して時間を無駄に過ごすのでなく、効率的に分析をする手立てとして、ツールを活用していくのが良さそうですね。
作業に忙殺される日々とは、これでおさらば! 無駄な作業はできるだけ自動化してしまって、頭の使う本当のマーケティング業務に時間をかけましょう。
それでは、また!