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2015.12.24
第38話
漫画チャンネル

狡猾すぎるセックスの男『総理の椅子』【国友やすゆきと生きている。vol.2】

菊池良

こんにちは、ライターの菊池(@kossetsu)です。
ぼくらは国友やすゆきと生きている。

国友やすゆきとはどういう漫画家か

さまざまな漫画家がいる。心理ドラマを描く漫画家。バトルを描く漫画家。恋愛を描く漫画家、etc.

国友やすゆきはセックスを描く漫画家だ。

少なくともここ30年は一貫して取り入れている要素である。

前回取り上げた『社買い人岬悟』は仕事の合い間にセックスする男だった。その次に連載された『総理の椅子』(全9巻)は違う。

政治改革とセックス

総理の椅子(1) (ビッグコミックス)

総理の椅子(1) (ビッグコミックス)

  • 著者国友やすゆき
  • 出版日2009/01/30
  • 商品ランキング115,142位
  • Kindle版ページ
  • 出版社小学館

2008年のことだった。小泉純一郎の退陣のあと、短期政権が連続した。

そんなときに発表されたのが『総理の椅子』だ。

野望のためのセックス

青年・白鳥遥は政治家を志している。

政治家のボランティアに始まり、秘書を経て、選挙に立候補する。

彼には野望があった。総理大臣となり、日本を破滅させるという野望が。

白鳥は野望を達成するために、どんな手段も使う。

セックスもする。

銀座のママとセックスする。テレビ局のレポーターとセックスする。政治家の秘書とセックスする。野党の女性議員とセックスする。

『総理の椅子』はそんな物語だ。

シリアスとセックスの均衡が崩れるとき

「岬悟」の場合、仕事とセックスは別だった。『総理の椅子』は仕事とセックスが一致している。仕事の一部が、セックスなのだ。

この違いは作品の雰囲気にも大きく影響を与えている。『総理の椅子』はポリティカル・フィクションの度合いが高く、国友やすゆきにしてはシリアスな内容になっている。

以下、『総理の椅子』におけるセックス or Not セックスを表にしてみた。「●」がセックスのある話、「×」セックスのない話だ。

『総理の椅子』のセックス率

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物語の約1/3がセックスのある話に当てられている。興味深いのは、1〜3巻はバランスよくセックスが取り入られていることだ。シリアスのあとにセックス、セックスのあとにシリアス、と偏らないように配慮されている。

しかし、4巻の前半、連続的にシリアスが続く。後半はそれを取り戻すかのようにセックスが4連続でくる。そこからバランスを崩してしまう。

この漫画の連載中に出演した『西原理恵子の人生画力対決』で、国友やすゆきはこう発言している。

「結局総理もね〜ハメた回が一番人気が高くってさ」

シリアスを続けながら、カンフル剤のようにセックスを挟む。『総理の椅子』はそういう構成になっていく。

最終巻はほとんどセックスがない。終わることが決まってシリアスに振り切ったようだ。ここに国友やすゆきの特徴が出ている。彼は本質的にはシリアスを描きたいのだ。しかし幸か不幸か、彼はセックスを描くことに抜群の才能がある。

『社買い人岬悟』のセックス率

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ちなみに「岬悟」では1巻でシリアスを続けてから、 2巻で怒涛のようにセックスが続く。その後はバランスを取りながら、最後はセックスで終わる。会社の屋上でセックスする。

時代を反映させたセックス

『総理の椅子』は小泉改革が念頭に置かれたストーリーだ。主人公の白鳥遥には小泉純一郎が反映されており、後継者として指名された小泉進次郎のイメージも、途中から取り入れている。

新党を結成して与党を狙うところは、連載中に政権が民主党に移ったことが影響している。白鳥が中東へ視察に行き、現地のゲリラに襲われるところは、当時の国際情勢を組み込んでいるのだろう。

現実の政情は激しく移り変わっていき、国友やすゆきはそれを取り入れていった。

時代は変わる。だけど、変わらないものが1つだけある。

セックスだ。

「政治」というシリアスな題材でも、セックスを描く国友やすゆき。描かざるを得ない国友やすゆき。

国友やすゆきが同じ時代に生きて、時代を反映させたセックスを描く。そういう世界に、ぼくらは生きている。