こんにちは。ソウルドアウトの池亀です。
前回の「リスティング広告をする意味とは?運用のメリット・デメリットと初心者のための基礎知識」で「リスティング広告とは何か」を書かせていただきましたので、今回はその次のステップ「リターゲティング広告」についてです。
リスティング広告は、もちろんそれ単体でも効果を得ることはできますが、さらに「リターゲティング」という広告手法を併用することで、より大きな効果が期待できます。
そこで今回はリターゲティング広告とはなんなのか?どのように使うと効果的なのか?をご紹介します。なお、ここではリスティング広告からの流れで、Yahoo!とGoogleでのリターゲティング広告に絞ってお話ししたいと思います。
リターゲティング広告とは
端的にいうと、1度はサイトを訪問してくれたユーザに対して広告を出すことで、Yahoo!やGoogleでも実施可能です。そのユーザがYahoo!やGoogle、あるいはその提携しているパートナーサイトのコンテンツを見ているときにバナー広告やテキスト広告を表示させることができます。その特性から「Webマーケティングへの執念が生み出した産物」と呼ばれているという噂です。
※なお、厳密にはYahoo!では「サイトリターゲティング」、Googleでは「リマーケティング」と呼ばれています。また、Yahoo!においてはディスプレイ用(YDNといいます)のアカウントをリスティングとは別に開設する必要があります。
リターゲティングの流れ
リターゲティング広告を始めるべき理由
こうしてリターゲティング広告をおすすめするのには理由があります。
ユーザの9割は離脱している
すでにサイトを運用している方にお聞きしますが、自分のサイトの「コンバージョンレート」はわかりますか? 不要な補足かもしれませんが、コンバージョンレートというのは、サイトに来たユーザのうちの何人が、あなたの意図した行動(購買や予約など)をしてくれているかを表す数値です。略して「CVR」ということもあります。業界っぽいですね。
おそらく、このCVRが10%を超えているというサイトはほとんどないのではないかと思います。つまり、サイトに来たユーザのうちの90%以上の人は、何かを買うこともサービスの予約をすることもなく、離脱しているということです。
重要なのは離脱したあと
9割が離脱しているなんてものすごく無駄があるように思えますが、ユーザの中にはいろんなモチベーションの人がいますし、そもそもユーザというのは基本的に比較検討をしたいと考えています。
キャベツが5円安いスーパーがあれば、となり町まで自転車こいで行く主婦がいるくらいです。ましてネットならクリック2つくらいで別のサイトに行くことができるのですから、検討しないわけがありません。
だから離脱するのも当然といえば当然なのです。重要なのは、その離脱してしまったユーザに対してさらなるアプローチをどのようにおこなうかということ。
もちろん、何もしなくても戻ってきて商品やサービスを申し込んでくれる人もいるでしょうが、そのまま忘れてしまうユーザや、初回の閲覧時には気付かなかった情報を、改めて広告で知らせてあげれば申し込んでくれるユーザもいるかもしれません。「少なくとも一度は興味を持ってくれたユーザ」ですから、その人たちを放置してしまうことこそがもったいないですよね。
そこで、満を持してのリターゲティング広告の出番がやってくるわけです。
リターゲティングの仕組み
具体的にどのような設計でリターゲティング広告を出していくべきなのか?という話をするために、まずリターゲティング広告がどのような仕組みで配信されているのかを書いておきます。そんなことは知ってるよという方は読みとばしていただいても大丈夫です。
例えばこんなイメージ
よく漫画などで、追跡対象者に逃げられ、
「くそっ! 一足遅かったか! やつめまんまと盗みおって!」
「いいえ、あの人は何も盗らなかったし、なんなら彼のポケットに小型発信機を忍ばせていますので追跡可能です」
というような流れがありますが、大まかなイメージはそんな感じです。逃げてしまったユーザを追いかける仕組みがリターゲティング広告配信の裏側には存在しています。
タグとクッキーでユーザを追いかける
リターゲティングを開始するには、まずリターゲティング用の「タグ」をサイトに設置する必要があります。なお、これは「コンバージョンタグ」とはまた別のタグですので、注意してください。
リターゲティング用のタグが設置されたページをユーザが訪れると、サーバから「クッキー」というものがそのユーザのブラウザ(「IE」とか「Chrome」とか)に付与されます。先ほどのイメージでいうところの「小型発信機」のようなものが「クッキー」となるわけですが、それが付与されたブラウザを目印として、リターゲティング広告を配信するというわけです。
リターゲティングの流れ
ユーザがタグの設置されたサイトに来訪します。
タグの設置されたサイトに訪問した、ユーザ(のブラウザ)にはクッキーが付与されます。
クッキーの付与されたユーザを、広告主は追いかけることができます。
ユーザが見ているサイト内の広告枠に、広告主はリターゲティング広告を配信することができます。
※ユーザを特定して広告配信することはできません。
※実際には媒体のシステムを経由して配信されます。
リストを大切にしよう
リターゲティングを始める上でのもう一つの重要な概念として「リスト」というものがあります。これはその名前の通りで、リターゲティングで追いかける対象となるユーザの一覧のことです。先述のようにユーザがサイトに来て、そのユーザのブラウザにクッキーが付与されると、そのユーザ(ブラウザ)がこの「リスト」に蓄積されたことになります。
リストは組み合わせよう
リストは一定の条件を指定して作成することができ、さらに異なる条件のリストを組み合わせて新たなリストを作ることも可能です。たとえば、「サイトのトップページ(あるいは指定のURLのページ)に来たユーザ」や「コンバージョンに至らなかったユーザ」というリストも作成することができますし、それらを組み合わせて「サイトのトップページには来た」けれど「コンバージョンには至らなかった」ユーザというリストも作成可能です。
リターゲティングでできる7つのこと
タグとリストについて簡単に説明してきましたが、リターゲティング戦略を設計する上で最も大事なのは、「どのようなリストを作成していくか」ですので、ここからは主要なリスト作成パターンを7つご紹介します。
1. CVしなかったユーザを追いかける
上述の通り、「何らかの理由で離脱してしまったユーザ」を追いかけられるのがリターゲティングの最大の利点ですので、使い方としてはこれが一番オーソドックスな形になると思います。「サイトに来たユーザ」リストから「コンバージョンに至ったユーザ」リストを除外することで、このリストを作成可能です。
2. サイト来訪後の期間によってリストを分ける
ブラウザに付与するクッキーには「有効期間」を定めることが可能です。つまりそのクッキーを付与されたユーザ(ブラウザ)を何日間追い続けるか、ということです。デフォルトでは30日、最大540日まで追いかけることが可能ですが、一般的にユーザのモチベーションはサイトを訪れた日から日ごとに下がっていくものです。
そのため、サイトに来てから「3日間」以内のユーザと「30日間」以内のユーザのリストを分けて作成し、それぞれのユーザに広告を配信して比較した場合、「3日間」以内のリストのほうが効果がよくなる可能性が高いです。
長期間追い続けるほど無駄な表示やクリックが増えるリスクがありますので、全体の効率と広告予算を鑑みつつ、どのくらいの期間までユーザを追っていくかを考える必要があります。
3. どのページを見たのかによってリストを分ける
英会話スクールのサイトを見ているユーザがいたとして、その目的は「ビジネス英会話を学びたい」「子どもに早いうちから英語を学ばせたい」など、人それぞれですよね。
この場合には「ビジネス英会話のページを見た人」「子ども英会話のページを見た人」というリストを作成し、それぞれのリストに適した広告を出し分けてあげれば、広告のクリック率や申込率も改善すると思われます。
商品Aを見た人と商品Bを見た人のリストを分け、それぞれのリストに合わせたバナーを配信して、見ていた商品のページに戻ってくるように設定することなどもできます。
4. 離脱した階層によってリストを分ける
たとえば何らかのECサイトで、「TOPページで離脱したユーザ」と、「商品をカートに入れて入力フォームまで到達してから離脱したユーザ」とでは、購入に対するモチベーションは後者のほうが高いと推測できます。
そんなときには、「トップページ離脱ユーザ」と「フォーム離脱ユーザ」のそれぞれのリストを作成しておき、入力フォームのページまで来たユーザに対して優先的に配信したり、あるいはそのユーザにのみ「今なら10%OFF」などの異なる訴求の広告を出したりすることで、その後のコンバージョンにつながる可能性も高くなるはずです。
5. 一度買った人にもう一度同じ商品を紹介できる
「コンバージョンに至らなかったユーザ」に対して配信することのほうが多いリターゲティングですが、商品を購入してくれたユーザに対してリターゲティング広告を出すことが有効な場合もあります。
たとえば、30日分のサプリメントを一度買ったユーザに対しては、購入後25日が経過したあたりから「そろそろ新しいものを買ったほうがいいんじゃないですか?」という広告を出せば、次もリピートして買ってくれるかもしれません。
6. 商品を買ってくれた人に、別の商品を紹介できる
4-5.の応用になりますが、使うリストは同じでも、紹介する商品(広告・リンク先)を変更することはできます。いろいろな商品を扱っているECサイトであれば、最初に買ってもらった商品に近しいものをリターゲティング広告で紹介することで、クロスセルを狙えるかもしれません。
7. 流入元・流入キーワードによってリストを分ける
同じランディングページでも、たとえばリスティングに使うURLと、アフィリエイトに使うURLを分けておくことで、流入経路別(URL別)のリストを作成することができます。同様に、キーワードのカテゴリごとにURLを分けておけば、特定のキーワードから来たユーザのリストを作成することも可能です。
※少しややこしくなるので割愛しますが、わざわざURLをいくつも用意しなくても、流入経路ごとに「パラメータ」というものを用意して、URLの最後に設定すれば、流入やキーワードごとのリスト作成は可能です。
まとめ
リスティング広告を始めたのにリターゲティングには手をつけないなんて、種を蒔いても収穫しない農家のようなものですので、まずは始めてみてください。
リターゲティングの要となるリストについては、今回ご紹介したもの以外にも、アイデア次第でいろいろな組み合わせを作ることができます。大切なのは、それぞれのリストごとに、その中のユーザが何を求めているのかを考えて広告を配信することです。
「おもしろみのない人」といわれて愛想を尽かされたのに「じゃあこれからは部屋の掃除をきちんとするから!」と追いかけても相手には何も響きません。数字には表れない部分までユーザのことを想像して、リターゲティングの設計を考えてみてください。
もし、この記事で「リターゲティングってなんかいいかも」と少しでも思ってもらえたなら、手前味噌ですがこちらのサイトもどうぞ。そこはかとなく役に立ちます。
リスティング広告を始めたのにリターゲティングには手をつけないなんて、種をまいても収穫しない農家くらいにもったいないことです。ぜひ、リターゲティングにもチャレンジしてみてほしいなと思う今日このごろです。