こんにちは、LIGブログ編集部です。
近年、テクノロジーの進歩に合わせて、常にさまざまなプロダクトや商品が市場に出てきていますね。そして市場の成熟化が進む反面、商品の差別化が困難になってきていると言えます。そうなると、商品ブランディングの重要性はますます高まっていくでしょう。
そこで今回は、商品ブランディングなどを行っている株式会社アイデアビューローさんに、商品ブランディング成功の秘訣とその事例を教えていただきました。
秘訣は5つ。1つずつ、適宜事例を引きながら、確認していきたいと思います。
商品やサービスのブランディングに関係している方であれば、参考になるかと思います。ぜひ、ご一読ください。
目次
商品ブランディング成功の秘訣とは?
商品ブランディングと言えば、ロゴデザインやパッケージ、ネーミングやキャッチコピーなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かにこれらはブランディングのアウトプットとして重要ですが、一部の要素でしかありません。
商品ブランディングの核心は、顧客に商品を購入してもらうための「動機」をつくり、それを発信するプロセス全体を構築することにあります。
1. 市場全体を把握し、ターゲットを見定める
商品ブランディングではターゲットとなる顧客を明らかにし、その属性に応じた訴求を行うことが基本です。全ての顧客層を満足させる商品を作ることは困難であり、誰のための商品かを明らかにしないままブランディングを進めることは危険だからです。
まず考えたいのは、その商品の顧客が生活者なのか、企業なのかということ。
生活者であれば性別・年齢・家族構成・居住地域など、企業であれば部署・担当業務・役職・勤務年数など、特定の共通点を持った集団(セグメント)をできる限り詳細にし、ターゲットを絞り込んでいきます。顧客のセグメントを詳細に把握できれば、ピンポイントで強い訴求が可能になります。
このとき注意しなければならないのは、商品決定者が必ずしも顧客だけとは限らないことです。
たとえばスーパーやコンビニに置かれる商品であれば、顧客の目にとまるよう、仕入れ担当者を説得して商品スペースを確保しなければなりません。また、住宅設備のように、流通店や工務店などの中間事業者が商品の決定に深く関与する分野もあります。このような市場では、顧客(コアターゲット)への訴求と平行して中間事業者(サブターゲット)への訴求もブランディング施策に組み込んでおく必要があります。
ケーススタディ:「B to B to C」のブランディング
商品やサービスの販売形態は、そのターゲットに応じて「B to C」と「B to B」に区分されます。しかし一般に「B to C」とされるビジネスでも、実際には流通や販売店などの中間事業者が間に入る「B to B to C」という販売形態が多くを占めています。この販売形態では、誰が商品決定権を持っているかで3つのケースが考えられます。
- 「C」が商品決定者
一般的な消費財の販売形態で、中間事業者は主に商品の流通のみを担い、生活者が自己の判断で購入を決定する。 - 中間事業者の「B」が商品決定者
処方箋が必要な医薬品のように中間事業者が専門知識に基づき商品を決定し、生活者は購入のみを行う。 - 中間事業者の「B」と「C」の両方が商品決定者
住宅設備などの中間財やコンサルティング型の商品やサービス、売り場面積の少ないコンビニなどでは、中間事業者が商品の絞り込みを行い、生活者はその中から商品を選び決定する。
ここでの3の事例として、住宅設備でのブランディングのポイントをご紹介しましょう。
キッチンやバスルームなどの住宅設備は、住宅購入やリフォーム工事に付随する中間財として販売されます。工務店やリフォーム店は顧客の希望や予算に合わせて複数の商品を候補として提案し、顧客はその中から選びます。つまり、工務店やリフォーム店に推薦されなければその商品は検討対象に入りません。
そのため、住宅設備では顧客へのブランド訴求だけでは不十分であり、工務店やリフォーム店を「売る気にさせる」仕掛けが求められます。
商品カタログが数百ページになることも珍しくなく、提案から納品までのプロセスが複雑な住宅設備の場合、「一件の受注にかかる手間が少ない商品であること」が工務店やリフォーム店にとって大きなベネフィットとなります。特に数を売る必要がある普及価格帯の商品では、この傾向が顕著です。
そこで、これらの商品カタログをつくる際は、
- カタログの冒頭に、商品コンセプトや主要特長を一望できるページをつくり、商品説明をしやすくする。
- 商品の特長に加え、発注や施工時に必要な情報を1冊のカタログに集約し、必要な情報がすぐにリファレンスできる構成にする。
- 簡易発注コードをカタログに掲載し、商品発注の手間を軽減する。
など中間事業者の「業務の効率化」につながる工夫を用意し、工務店などに対して「手間がかからず売りやすい商品」というブランドイメージを醸成することが有効です。
2. ターゲットのペルソナを設定する
商品のターゲットとして理想的な人物像を「ペルソナ」と呼びます。
その人物の性格や生い立ち、生活スタイル、価値観、消費行動などを細かく肉付けしていくことで、ターゲットが「生きた人物像」へと変わります。完成した「ペルソナ」に名前やイメージに近い人物の写真などを加えるとターゲットへの親しみが深まり、スタッフ間でのイメージ共有もしやすくなります。
また、この「ペルソナ」を通して商品を見ることで、顧客視点で検証することが可能となり、ターゲットへの訴求ポイントが明らかになります。
ここで気をつけなければならないことは、メーカー側がこだわりを持って実現した性能や機能が、必ずしも評価されるとはかぎらないことです。
ターゲットが求めるのは「自分にどんなベネフィットをもたらしてくれるか」であって、どのように実現したかは重視されません。ペルソナ分析ではあくまでも顧客視点での評価を心がけましょう。
ケーススタディ:「B to B」ビジネスでも活用できるペルソナ分析
ペルソナ分析によるアプローチが有効なのは、生活者だけではありません。
ここでは、大手IT企業の「B to B」商品のDMプロモーションにペルソナ分析を応用することで、DMの開封率を倍増させた事例をご紹介します。
クライアントが抱えていた問題は、せっかくDMを送っても開封されることなく捨てられてしまうということでした。
この問題を解決するために、DMを受け取る側の視点で「なぜDMを開封しないのか」「どのようなDMであれば開封する気になるのか」を分析。“過去のDMで時間を無駄にした経験が心理的障壁となっている”という仮説を立て、そのストレスを解消するカタチを探りました。
まず、開封せずに内容を確認できる透明封筒を採用。DM自体は訴求ポイントをひとつに絞り、コストダウンの提案であれば「がま口」、診断機能の提案であれば「聴診器」というように感覚的に理解できるモノをモチーフにしたDMを制作しました。
そうすることで開封しなくても内容物が分かり、詳しく読み込まなくても自分に必要な商品かどうか判断できるDMを実現。開封率が約200%ほど向上し、アポイントの獲得件数も増加しました。
3. ブランドコンセプトを決定し、全体で共有する
ターゲットが共感するポイントを抽出したら、それに応じて訴求ポイントを選び出し、軸となるブランドコンセプトを構築します。先行する競合商品がある場合は、それらと明確な差別化が可能かを検証。うまく差別化できないときは、商品の訴求ポイントやターゲットのペルソナを再検討することが必要です。
また、ブランドコンセプトは必ず文書化して、社内関連部署はもちろん広告や販促、流通、小売店などのパートナー企業とも共有しましょう。意識の統一を図ることが重要です。ブランドコンセプトの策定にあたっては、コンセプトを凝縮した簡潔なキーワードを用意しておくと、読み手の解釈によるブレのない訴求ができます。
ケーススタディ:コンセプトブックによるインナーブランディング
企業ブランディングの分野では、顧客や社会に向けて訴求するアウターブランディングだけでなく、社員やパートナー企業に向けたインナーブランディングの重要性が再認識されています。
このインナーブランディングは商品ブランディングにおいても有効な手段。新ブランドの早期浸透を検討している場合は、インナーブランディングのツールとしてコンセプトブックの制作がおすすめです。
ブランドコンセプトや訴求ポイントをまとめたコンセプトブックは、簡潔で強い訴求が行えるため、カタログよりも要点がわかりやすくなります。これにより、社員はもちろんパートナー企業にもスムーズに共有することが可能です。全員が同じ言葉で発信していくことで、より早く正確にブランドを浸透させることができます。
4. 顧客のブランド体験をシナリオ化する
顧客が商品を「認知」したときから「関心」し、「共感」し、「購入」するプロセスを経て「ファン」として定着するまでの、理想的なブランド体験の流れをシナリオ化します。この際にも「ペルソナ」を使用することで、顧客の心理を具体的に把握することができます。
各種広告やWebサイト、販促ツール、イベントなど、想定できる顧客接点のどこにタッチポイントを置き、それぞれの段階でどう感じてもらいたいかを明確にすることができれば、効果的なブランド表現やプロモーションプランの実現につながります。
サブターゲットを設定している場合は、そちらのシナリオも合わせて検討しましょう。
ケーススタディ:顧客を次の行動へ向かわせるステップをつくる
シナリオづくりで最も大切なことは、顧客を次の行動に踏み切らせることです。ここでは先にご紹介した住宅設備の事例からシステムキッチンのセールスプロモーションを例にご紹介します。
中級クラス以上のシステムキッチンは、商品検討のためにショールームに来場してもらい、コンサルティングを行います。また、最新のシステムキッチンは実際に商品を動かしてみることで初めてベネフィットが理解できる特長を多く備えているため、ショールームへの来場客を増やすことが課題でした。
そこで、顧客に渡すカタログにWeb動画へアクセスするQRコードを掲載。写真では伝わりにくい使用感を動画で擬似体験することで、実物を確かめたいという動機付けを強化しました。実際のショールームでは動画で紹介したアイテムに操作を促すPOPを設置することで、商品体験へのステップをつくっています。
5. 「統一性」と「継続性」がブランドを育てる
人の記憶は認知を繰り返すことでより深く定着していきます。商品ブランドもすべてのタッチポイントで統一性のあるブランドイメージを提示するとともに、できるかぎり継続していくことが必要です。
商品のモデルチェンジや市場の変化で訴求ポイントが移り変わっても、ブランドを維持するかぎり、核となるアイデンティティは維持すること。これがブランドへの信頼を育て、顧客を「ファン」として定着させる最も確実な方法なのです。
さいごに
いかがでしたか?
商品ブランディングに関わっている方は参考にしていただけますと幸いです。
今回お話を伺った株式会社アイデアビューローさんでは、商品ブランディングの受託サービスを展開しています。
商品ブランディングならアイデアビューロー
アイデアビューローさんについて
住まいと暮らしの総合住生活企業「株式会社LIXIL」などをクライアントに抱え、商品の特長をいかに伝えるか、業界の中で優位性を出すにはどうすべきかを半世紀にわたり考え続けてきたアイデアビューローさん。
「これ!」という答えがなかなか出ない時代の中、時とともに変容する生活者のコアな目線に気を配り、他メーカーにはない「何か」を創り続けています。そんな生活者視点でのブランディングを柱に、住宅関連(50年以上の継続実績)から地域振興の新しいサービスまで、幅広い分野で実績を蓄積。
また、変化がめまぐるしいIT領域でも、システム開発を得意とするグループ会社「株式会社テンダ」とコラボレーションし、クラウドサービスのブランディング全般からUI/UXまでの共同開発を担当するなど、ブランディングビジネスも強化しています。
商品ブランディングにお困りの方は、一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。