こんにちは、LIGブログ編集部です。こちらは「インターネット広告の基礎だけ確認しておきたい」と思っている人に向けての前後編の記事です。
さて、広告やWeb関係の仕事をしている人であれば、誰でも一度は耳にしたことがあるキーワードではないかと思われるのが「ネイティブアド」です。
2014年8月より日本におけるネイティブアドのガイドライン策定・普及啓発の促進を目的に、一般社団法人インターネット広告推進協議会による「ネイティブアド研究会」が発足するなど、ますます注目を集めています。
しかしその一方で、広告主にも媒体側にも、概念や定義については曖昧なままという人が多いのが現状です。
そこで本日は、ネイティブアドって何? という基本的な部分を、IAB(米ネット広告業界団体)が発表している「THE NATIVE ADVERTISEMENT PLAYBOOK」に記載されている事項などを参考にしながら紹介していきたいと思います。
▼参考
THE NATIVE ADVERTISEMENT PLAYBOOK
https://www.iab.net/media/file/IAB-Native-Advertising-Playbook2.pdf
▼目次
ネイティブアドって何?
正確な定義やガイドラインについては先述した「ネイティブアド研究会」などで今後決定されていくものと思われますが、現時点での一般的な解釈にもとづけば、ネイティブアドとはつまり「各媒体の中にあるネイティブアド枠に表示される広告」ということになります。
一瞬「え? ユーザーが広告にストレスを感じないとか、すばらしい体験ができるとか、そういう話じゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、ネイティブアドそれ自体は、シンプルに広告枠の位置とそこに表示される広告そのものを指します。
よく「記事広告と同じもの」というように見なされがちですが、「記事広告の中でネイティブアドに含められるものと、含められないものがある」というのが正確な分類になります。
つまり、ネイティブアドかどうかを決定するのは、表示位置やデザインといったいわゆる“広告の見せ方”が、ほかの通常コンテンツと同じかどうかという点なのです。
ただし、それはあくまでフォーマットとしての定義であって、本質的なものではありません。
以下、ネイティブアドの詳細についてみていきましょう。
ネイティブアドの6つのポイント
「THE NATIVE ADVERTISEMENT PLAYBOOK」によれば、ネイティブアドには主要な6つの評価軸があるとされています。
もちろんネイティブアドの種類によってその度合いに差は生じるのですが、従来のバナー広告などと比べ、サイトに対してネイティブ(自然)であろうとしていることがよくわかります。
それでは以下、その6つのポイント確認していきましょう。
1. FORM(形式)
配信される広告が、ページ全体のデザインにフィットしているかどうか。メディア本体のコンテンツと広告コンテンツが同じデザインとなっているか。フィードの動きにあっているかどうか。
2. FUNCTION(機能)
広告が、設置されたページ上の他の要素と同じように機能しているのか。同じようなコンテンツ体験を提供できているかどうか。たとえば動画サイトであればビデオ広告、記事サイト上であれば記事広告というように、コンテンツ機能にあっているかどうか。
3. INTEGRATION(統合)
広告の動きが、どの程度周囲のコンテンツと同じように動くのか。たとえばリンクを押したとき、同一サイト内のページにリンクするのか、サイト外へのリンクになるのか。
4. BUYING&TARGETING(バイイングとターゲティング)
広告の掲載位置が、特定のページ、セクション、またはサイトになっているか。アドネットワークを介して配信されているか。
5. MEASUREMENT(計測指標)
クリックやコンバージョンから、シェアなどのブランドエンゲージメントのものなど、どのような計測指標が用意されているか。
6. DISCLOSURE(広告の明示性)
ユーザーに対し、広告である旨が明確に示せているか。
以上を踏まえると、ユーザーから見た場合に、
- 広告によって、デザインや操作性といった部分でのサイト内の体験が邪魔されない
- どこに広告があり、どれが広告であるかが明らかにわかる
というあたりが、考慮しなければならないポイントになりそうだということがわかりますね。
ネイティブアドの6つの種類
「THE NATIVE ADVERTISEMENT PLAYBOOK」によれば、ネイティブアドの種類は全部で6つのタイプに分類されます。
先ほど説明した6つのポイントを、各々の範囲内でおさえているという前提で、それぞれがどのような内容になるのかを見ていきましょう。
1. In-Feed Units(インフィード型)
Webサイトにおける記事や投稿などの主要コンテンツが掲載される枠内に設置されている広告枠になります。
Facebookで、友人の投稿と広告の投稿が同じように並んでいる、というのが一番わかりやすい例でしょう。BuzzFeedやGIZMODEなどのメディアサイトで、記事と記事広告とが並んでいるのも同様です。
2. Paid Search Unit(ペイドサーチ型=検索連動型)
GoogleやYahoo!などに代表されるリスティング広告(検索連動広告)として表示される広告枠になります。
検索結果表示画面の上部や右側には広告が表示される枠がある、というのはもはや常識かもしれませんが、それを知らずに画面を眺めた場合「検索結果情報」と「検索連動広告」は確かに並んで表示されていますよね。
3. Recommendation Widgets(レコメンドウィジェット型/おすすめ枠)
「この記事を読んだ人におすすめの記事」「関連情報」といった枠に並列で表示させる広告枠になります。
通常のフィード内に差し込むのではなく、あくまでも枠内に表示される、ということになります。ただし、表示領域としてはフィード内とほぼ同様ですので、通常のコンテンツと見た目は同じになります。
4. Promoted Listings(プロモートリスティング型)
いわゆる商品リスト広告になります。ECサイトなどにおいて、特定のキーワードによって絞り込まれた結果に対し広告を表示するという、リスティング広告と同じ仕組みになります。
Amazonであれば「スポンサーのリンク」、食べログであれば「PR」という枠内で表示される広告です。
5. In-Ad (IAB Standard)with Native Element Units(ネイティブ要素を持つ、広告枠内への表示型/IABスタンダード)
特定の広告枠の中に広告をコンテンツとして表示させる方法で、文字通りIABはこれをスタンダードとしています。
他と比べより明確な広告枠内での表示となるので、デザインの親和性は低いですが、内容はサイトコンテンツと親和性が高いものとされます。
6. Custom /”Can’t Be Contained”(カスタム型/その他)
これまでの5つの類型にあてはまらない、各メディア固有のプラットフォームにあわせた広告の表示になります。
たとえばLINEのスポンサードスタンプであったり、TumberやFlipboardでの広告表示がこれにあたると考えられています。
ネイティブアドとコンテンツマーケティング
リターゲティング広告をはじめとするアドテクノロジーの台頭、あるいはスマホの普及による広告表示枠の減少(単純に画面が小さいため)の結果、メディアの持つ広告価値は下がり、メディアビジネスそのものが厳しくなっています。そんな状況だからこそ、注目を浴びているのがネイティブアドなのです。
特に、ブランドのストーリーを伝え、共感を呼ぶというコンテンツマーケティングの配信手法として、ネイティブアドを活用していくことは大変重要となります。そして、それらを実現するコンテンツを作成していくうえで、重視すべき点は2つあります。
掲載メディアの特性に合わせてコンテンツを作る
ネイティブアドのコンテンツにとって大切なのは、その掲載メディアのユーザーにとって興味深いものでなければならないことです。押しつけがましい広告コンテンツはもちろん、場違いのコンテンツであっても失敗してしまいます。
それぞれのメディアの読者を想定し、そのメディア上でメッセージを伝えられるコンテンツを開発することで、初めて広告が “企業からの一方的なメッセージ”ではなく、“ユーザーにとって読みたいコンテンツ”となるのです。
たとえば、同じ商品・サービスを紹介する場合であっても、掲載する媒体が異なれば、読者も全く別の人たちとなります。そうなると、当然コンテンツも全く別のものが好まれることになります。
そして媒体に合わせてコンテンツを作る必要があるということは、今まで使っていた素材をそのまま再利用しても、あまり効果がないということにもなります。なぜなら、それらはディスプレイ広告などのほかの広告用に既に最適化されてしまっているからです。
手間をかけても、良いコンテンツを作る
良いコンテンツを作るには、当然ながら相応の手間がかかってしまいます。しかし良いコンテンツができれば、「読まれる可能性」、そして「シェアされる可能性」が、格段に高くなります。
まず、企業からの直接的な発信ではなく、ユーザーが信頼するメディアを通し、そのメディアにおける通常の記事と同じフォーマットで配信されているため、情報への信頼度が高まります。
そして、通常の広告の場合は不特定多数のユーザーをバナー広告などから該当ページへ誘導しますが、ネイティブアドは各メディアのファンに対してコンテンツを届ける形になるため、次のアクションに結びつく可能性が高くなります。
バナー広告などの直接的な誘導は、KPIは管理しやすい分、出稿をやめたら広告効果はゼロになってしまいます。一方、コンテンツとしての広告を制作する場合は、ネイティブアドとしての出稿を停止しても、制作したコンテンツが検索結果やソーシャル上に残ることで、継続的に広告効果を発揮することになります。
だからこそ、広告という基準ではなく、“読みたいコンテンツ”という基準でユーザーに選んでもらうことは、現在のWeb上での情報取得のスタイルにとても適した手法といえるのです。
ネイティブアドの課題
もちろんネイティブアドは、全てを解決する魔法の施策というわけではありません。その構造上、以下の2つの課題を常に抱えることになります。
1. そもそも広告であること
記事と広告が混在する状況に対し、ユーザーからは反発が起こる可能性があります。もちろん広告であることは明記されているものの、ユーザーから見れば、同じようなフォーマットで記事の中に広告が紛れ込む形になります。
「広告」と「情報(記事やコンテンツ)」というのは全く異なる場所にある、というのがこれまでのメディアの基本構造だったため、「普通のコンテンツだと思ってみたら実は広告だった」という、ステマのような印象を与えかねません。
そのように感じられるような、質の低い、または押し付けがましい記事広告を掲載することは、メディアにとってもサイトの価値を落とすことになってしまいます。
それらの事態を避ける意味でも、やはりネイディブアドのコンテンツは、ユーザーにとって興味深いものを作らなければなりません。
2. 通常の広告よりも制作に多くの時間とお金がかかること
ネイティブアドがその効果を発揮し、ユーザーの共感を得て、行動され、共有されるには、以下の4つが必須条件となります。
- ユーザーに信頼されているメディアであること
- 企業目線ではなくユーザー目線でのコンテンツであること
- その他のコンテンツと同じフォーマットでの記事であること
- コンテンツが面白いこと
ネイティブアドが流行しているから、と手法だけ同じようにしても、結局は従来の手法から抜け切れてない広告になってしまいがちです。
とはいえ、そこから脱却したコンテンツを作るのは、やはり簡単なことではありません。
企業目線の従来のタイアップ広告ではなく、ユーザー目線で、かつ各々のメディアに最適なコンテンツを作るということは、当然多くの時間とお金とが必要になってしまいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ネイティブアドの実施には、まず前提として掲載先のメディアが「ターゲットとなるユーザーに信頼されたメディア」である必要があり、出稿先がかなり厳選されてしまいます。
そして、掲載にあたっては、コンテンツ(広告)がそのメディアの信頼を損ねない内容でなければなりません。メディア側から「この広告はウチにふさわしくないから」と、掲載を断られることだってあるのです。
これは、定義としてのネイティブアドとは「見た目の問題」であるものの、結局のところ「読者に喜ばれるコンテンツを提供する」という部分を追求していけば、見た目だけじゃなく内容もそのメディアにとって「自然になじんだもの」となっていくことを意味しています。
このように考えていくと、ネ イティブアドとは、インバウンドマーケティングやコンテンツマーケティングの観点からも、非常に重要な広告形式だということがわかります。
ネイティブアドをフォーマット(広告枠)だけで考えてしまうのは、あくまでも広告主側の目線の話であって、ユーザー目線で考えれば、やはりコンテンツがどれだけ興味深いものか、という点に尽きるのです。
いくらネイティブアド風に見せかけていても、中身が伴わないコンテンツが多く、がっかりしてしまうユーザーも多いのが現状でしょう。
だからこそ「ネイティブアドとは何か」ということを広告主と媒体側がお互い認識し、それにふさわしいコンテンツを提供することで、Web上でユーザーは興味深いコンテンツを広告であるかどうかに関わらず体験できるようになるのです。
これこそまさに、ネイティブアドだからこそ構築できる、三者にとっての良い関係性といえるのではないでしょうか。
以上、最後までお付き合いいただきありがとうございました。それでは、また!
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