どうしてこう、日本人はゴッホとかマチュピチュとか、儚いものが好きなんでしょうか。
1911年にハイラム・ビンガムがマチュピチュを発見して100年が経過。
当時は「謎の空中都市が発見された!」と世界中で評判になりました。
未だ謎多きインカ帝国の展示会が、上野の国立科学博物館で開催しています。
4月末には来場者20万人を突破した「インカ帝国展」。
行列必至!突撃してきました。
重量感のあるスクラッチタイルが使用されている、国立科学博物館。
4月の平日お昼、天気は雨。
遠足で来たと思われる小学生、中学生がたくさん!
(こういうのって大抵、大人になってからの方が楽しいんですよね)
行列ではなかったものの、やはり中には来場者がたくさんいらっしゃいました。
入場料は大人1400円、〜高校生500円。
音声ガイドは500円でレンタルできます。
杉本るみさんの音声が一層ミステリアスなインカを引き立てます。
(ご存知ない人に説明するとすれば…「中井正広のブラックバラエティ」のナレーターさんです)
このインカ帝国展は「考古学」「人類学」「歴史学」3つの観点からインカ帝国を紐解いていきます。
音声ガイドの中には日本が誇る3人の学者さんの話が録音されているので、
それぞれ違う学問から「インカ帝国へのアプローチ」への情熱や方法を聞くことができますよ。
インカ帝国は、15世紀から16世紀前半にかけて反映したアンデス文明最後の国家。
アンデス文明上、最大の領土を持ち、北はコロンビア、エクアドル国道地帯から、
南はチリ中部にまで勢力を伸ばした。
恥ずかしながら、私は「インカ帝国っていつどこにあったんだろう」という状態でした。
その基本的な部分から、会場内で説明書きがしてあります。インカ初心者にも安心。
会場は4部に分けられていて、順番に進んでいきます。
1部は「帝国の始まりとその本質」。
インカ帝国の衣食住、いつどこで誰がどうしての基本情報があります。
インカ帝国は近代以前の旧大陸の国家と同様、農業を基盤とした経済を持ち、
たとえば、実験農場とも言われるモライ遺跡でもわかるように、自然と調和した雄大な自然改造をこころみた。
インカ王とは、巨大国家の政治機構と宗教・自然という2つの力を生きながらにして束ねた神聖王だった。ここではインカ王と彼が統治した国家がどのようなものであったかを、さまざまな遺物を使って探求していきます。
インカ帝国はなぜ謎に包まれているかご存知ですか?
それはなんと「文字が存在しなかった」からだそうです。
そ…そりゃわかんねーわ…!
インカ帝国の首都はクスコ。現在のペルー南東部に位置します。
展示物は当時の農耕道具や職人の作った布製品や壷など、生活用品でした。
鮮やかな模様が描かれたアリバロやケロは必見!
ケロとは2個で1セットのコップで、儀式のときによく用いたそうです。
注目すべきはインカにおけるアクリャの存在。
インカの領土中から集められたとても美しい処女の呼び名です。
彼女たちは国に引き取られ、一生かけて布を織って生きていきます。
アクリャに手を出すと処刑されるとかされないとか…切ないですね。
(音声ガイドの杉本るみさんが「あなたが今、目にしている布製品も、もしかしたらアクリャが作ったものかもしれません」と脅します。)
布製品にはカラフルで美しい幾何学模様が描かれています。
茶色と赤と紺とベージュとアイボリーのコントラストに興奮!
1部の終盤には、手術が施されたあとの頭蓋骨がいくつか展示されています。
インカには意図的に頭蓋骨を変形する文化があったり、外科手術の中には開頭術があったとのこと。
2部は「インカ帝国の統治」。政治経済的な面からインカを見ていきましょう。
インカ帝国には統一した制度がなく、地方の実情に合わせて行政を組み立てていた。その結果、複数の制度が並び立つという、モザイク状国家であったらしい。また、こうした南北に長くさまざまな制度を併せ持つ帝国を統治するために「インカ道(カパック・ニャン)」と呼ばれる道路網が利用された。
ここでは、謎多く解明半ばのインカ帝国の統治システムについて考えます。
先ほど「インカには文字がなかった」と言いましたが、ではどのような方法で情報伝達をしていたのでしょうか。
それは上の写真の右下、ロープに秘密があります。
キープと呼ばれるそれは、縄の結び目で情報を伝えていました。
日本でいう飛脚(チャスキ)がキープを持って4万キロにもなるインカの道を走り回っていたそうです。
こちらではチャチャポヤ族というインカに抵抗した部族や、
政治的ライバルだったチムー王国について触れています。
来場者が特に注目していたのは当時のミイラ。4,5体ほど展示してあります。
中には眼球が残ったもの、頭髪が残ったものなども!
そのミイラの迫力とその神聖な雰囲気に、圧倒されること間違いなしです。
インカ独特の死生観にぜひ触れてみましょう。
3部は「滅びるインカ、よみがえるインカ」。
このインカ帝国展の見どころは、「スペイン人に侵略された後のインカがわかる!」という点だそうです。
世界中で開催されている「インカ帝国展」ですが、スペイン人侵略後はなかなか取り上げられないそう。
国家としてのインカは、1533年のスペイン人による「最後の皇帝」アタワルパの処刑をもって終わるとされるが、その後もインカの人々は主に3つの方法で、抵抗と自己主張をする。
武力を行使した抵抗としては、スペイン人が擁立した傀儡王マンコ・カパックが首都クスコから逃れてアンデス山中ビルカバンバに立てこもった例が有名だ。
この「新インカ帝国」の抵抗運動も、1572年には、最後の王トゥパック・アマルが捕えられ終息する。ここでは、植民地期にインカのイメージがどのように生き残り、植民地統治に影響を与えていったかを考察します。
こちらではスペイン人に処刑された皇帝や反逆者の絵が並びます。
その中にも独特なインカの神話が含まれていたり、とても興味深い!
インカ帝国への予備知識がない方には、やっぱり音声ガイドをお勧めします。
南北4000kmに渡るインカ帝国は、たった160名のスペイン人によって滅ぼされてしまいます。
強制労働を強いられるアンデス民衆は、無くなってしまったインカ帝国を理想とするようになります。
現在も残るインカ文化やインカの末裔だと名乗る住民がいるのは、きっとそのためでしょう。
4部はいよいよ「マチュピチュへの旅」。
1911年7月24日米国人探検家ハイラム・ビンガムは、マチュピチュを「発見」した時のことをこう記している。
謎に満ちたマチュピチュが「発見」されたことで、インカ帝国の名は世界に瞬く間に広がった。ここでは、マチュピチュから最近発掘された遺物から、マチュピチュに住んでいた人々の生活の様子を見る。
王の離宮だったと考えられているマチュピチュの内部構造が模型として展示されています。
このインカ帝国展のとっておきが、この向こうに!
そう!
マ チ ュ ピ チ ュ 3 D ス カ イ シ ア タ ー
ナレーションに玉木宏を迎え、マチュピチュの空中を飛び回るコンドルと一緒によりリアルなマチュピチュを体感します。
映像がとても洗練されていて15分程度と短いので、みなさまぜひ見てみてください。
会場から出ると、有名な写真家たちのインカ写真展示や当時の毛織物が触れるブースなどがあります。
な、南米いきてえええ
それらを抜けるとお土産コーナーに出ます。
いわゆる可愛いエスニック系の布製品がたくさん。女子発狂。
端のほうにはインカの文字「キープ」で来場者数を示すものが…
これを見ていると平日で2000〜5000人、休日だと7000人以上の方が来場してますね!
ゴールデンウィークとか大変な混雑だっただろうなあ。
そんなわけで、大満足のインカ帝国展でした。
見学にきていた高校生同士が「インターネットで調べられるようなことじゃないよね。見ないとわからない」と喋っていましたが、
まさにその通りだと思います。
百聞は一見にしかず。
ぜひ皆様、混雑してなさそうな日時に足を運んでみてください。
インカ帝国展のチケットを購入すると国立科学博物館の常設展にも入ることができるので、
こんなド迫力な恐竜さんにも(しかもついでに)会えちゃいますよー!
インカ帝国展は6月24日まで!
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国立科学博物館「インカ帝国展」
開催期間:2012年3月10日〜6月24日
開館時間:午前9時〜午後5時(休館日:毎月曜日)
詳しくは公式HPをご覧ください。