Technology部の能美です。
近年、AI(人工知能)技術は急速に発展し、企業や組織が業務効率化や意思決定のサポートに活用しています。
そのなかでも、Microsoft社の「Azure AI」(アジュールAI)は、AIとクラウドコンピューティングを組み合わせた新たなアプローチを提供しており、さまざまな分野で革命をもたらしています。たとえば私が携わっている運用監視の領域では、Azureのツールのひとつである「Azure Monitor」によって、大幅な業務効率化が可能となりました。
今回はAzure Monitorの概要や、AIOpsを導入することのメリットなど、運用監視の業務プロセス向上に役立つTipsをご紹介します。
目次
基礎知識:Azure AIと運用監視について
Azure AIとは?
Azure AIは、Microsoft Azureクラウドプラットフォーム上で提供されるAIソリューションの統合パートナーシップで、機械学習、自然言語処理、ビジョンAIなど、多くのAIテクノロジーにアクセスできるプラットフォームです。
これにより、企業は多様なAIツールを容易に導入し、さまざまな業務の効率化を図ることができます。
運用監視とは?
運用監視とは、企業や組織がシステム、ネットワーク、アプリケーション、データなどの運用状態をリアルタイムで監視し、問題を迅速に検出し、修正するためのプロセスを指します。
システムの可用性、性能、セキュリティの維持に不可欠であり、障害が発生した際に即座に対応することが重要です。したがって、AIでトラブルシューティングを自動化できるようなツールを導入すれば、より効果的な監視や問題解決の速度を高めることが可能となります。
Azure Monitorとは?
Azure AIの機能を利用しているのが、Microsoft Azureが提供する運用監視・分析ツールの「Azure Monitor」です。
Azure Monitorはアプリケーション、インフラストラクチャー、ユーザーエクスペリエンスの監視を支援する包括的なマネージドサービスで、主に以下のような機能があります。
- メトリクスの収集
- ログデータの収集
- アラートと自動対応
- アプリケーションパフォーマンスモニタリング
- ダッシュボードと視覚化
他のAzureサービスやカスタムアプリケーションからさまざまなメトリクスを収集します。たとえば、CPU使用率、ネットワークトラフィック、データベースパフォーマンスなどが対象です。
システムイベントやアプリケーションログなどのログデータを収集し、保存します。これにより、問題のトラブルシューティングやセキュリティの分析が容易になります。
ユーザーが設定した閾値を超えるとアラートを生成し、必要に応じて自動的な対応アクションを実行するよう設定できます。
Azure Monitorは「Azure Application Insights」と統合されているツールです。アプリケーションのパフォーマンスとエンドユーザーエクスペリエンスの追跡が可能で、問題の特定をサポートしてくれます。
データをダッシュボードやカスタムの視覚化ツールを通じて表示し、リアルタイムでシステムの状態を監視できるようにします。
Azure Monitorのメリット
Azure Monitorはクラウド環境における運用監視のための強力なツールで、実務にも多くの利点をもたらします。
- リアルタイムの可視化
- 効果的なトラブルシューティング
- 拡張性の高さ
リアルタイムのダッシュボードと視覚化ツールにより、システムの状態を迅速に把握できます。
ログデータの収集と分析により、問題の迅速な特定と解決が可能です。また、アラートと自動対応機能により、システムに問題が発生した際に即時かつ自動的に対策を行えます。
Azure Monitorは、Azureのさまざまなサービスと統合でき、多様な要件に対応しており、OpenAI社のChatGPTにアクセスするために必要なAzure OpenAI Serviceのパフォーマンス監視、データ収集、分析も行えます。
なお、Azure OpenAI Serviceで注目したい点として、「やり取りしたデータが人工知能の学習に利用されない」ということがあります。一般的に、人工知能へ提供したデータは改善のために利用されがちですが、Azureではそれがありません。そのため「社外秘」などのデータでも、比較的使いやすくなっています。
ネットワーク運用へのAIOpsの導入
ネットワーク運用は、現代のビジネスにおいて不可欠な要素であり、システムの可用性、パフォーマンス、セキュリティの維持に貢献します。しかし、ネットワーク環境は複雑で、数多くのデバイスとアプリケーションが統合されています。
この複雑性を解決し、効率を向上させるために、AIOps(人工知能を活用した運用)の導入が次世代のネットワーク運用の鍵を握っています。
Azureだけでは運用監視業務全般をカバーすることは難しいかもしれませんが、Azure Monitorに搭載された組み込みAIOps機能を活用することで、運用監視業務の効率化における新たな可能性を見出すこともできるでしょう。
AIOpsとは?
AIOpsは、AIと機械学習を用いて、さまざまな業務の自動化や効率化を図る運用手法のことです。
AIOpsを導入することで、ルーチンタスクの自動化による業務効率化、障害が発生した際の対応の自動化、人的リソース削減にともなうコスト削減などさまざまなメリットがあります。
運用監視においては、障害検知から原因切り分け、要因調査、対処指示など人的リソースが必要な業務を自動化することにより、運用管理全体の作業負荷を軽減することが期待できます。
AIOpsと運用監視の組み合わせ
Azure Monitorには、ログ内のデータに対して操作するための独自の機械学習パイプラインを作成できるツールも用意されています。AIOps機能をうまく活用することで、運用監視の業務効率化にも役立てられます。
異常検出
Azure AIの機械学習モデルは、運用監視のデータから異常を検出するために活用可能です。通常の監視ルールでは見逃すかもしれない異常を迅速に検出し、素早い問題解決が図れます。
予測分析
Azure AIはシステムに将来発生しうる障害や問題を予測する能力も持っています。これにより、予防措置を講じるための時間的余裕が生まれ、システムの安定性が向上します。
自動化
運用中のシステムに特定の問題が発生した際、自動的に修正することが可能です。例えば、サーバーの負荷が高い場合、自動的にリソースを調整してパフォーマンスを最適化できます。
ダッシュボードと視覚化
Azure AIは、データをダッシュボードや視覚化ツールを通じて可視化できます。監視運用においては担当者が状況を迅速に把握できるようになるでしょう。
AIOpsの導入について
AIOpsの導入は、ネットワーク運用を向上させ、リアルタイムで問題に対処し、効率を向上させるための鍵となります。導入には以下のステップを踏む必要がありますので、ご参考になさってください。
- データの収集:ネットワークデータを収集し、クラウドまたはオンプレミスのリソースに統合します。
- モデルのトレーニング:AIOpsモデルをトレーニングし、異常検出や予測分析のためのアルゴリズムを開発します。
- 展開と統合:AIOpsソリューションを運用環境に展開し、既存の運用ツールと統合します。
- 監視とチューニング:AIOpsの性能を監視し、必要に応じてモデルを調整します。
補足:Azureによるデータ解析運用事例
ネットワーク運用とは異なりますが、F1のエンジンデータ解析にもAzureが使われてる事例があります。
創業者である本田宗一郎氏の名言「走る実験室」(レースが技術を磨く)の考えの下、自動車やオートバイを問わず、これまで数多くのレースに参戦してきた本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)。2013年に表明した新たな挑戦が、パワーユニット(PU)の提供を通じた4度目となる世界最高峰のフォーミュラカーレースへの参戦です。
ホンダでこのレースのPU開発を担う株式会社本田技術研究所 HRD Sakuraでは、新コンセプトのPU開発の着手を機にシミュレーションの処理件数が急増したことで、既存のオンプレミス環境のリソース容量不足から計算の“完了待ち”の問題が顕在化。その解消に向け、HRD SakuraはMicrosoft Azureの利用を決断。システムの利便性向上に向けたマイクロソフトの技術的な支援もあり、問題は抜本的に解消され、開発スピードの大幅な向上を実現しました。
出典:PU開発を支えるホンダのシミュレーション基盤にAzureを採用
膨大なデータの解析においてAzureは非常に親和性が高いです。Redbullパワートレインに変わったとはいえ、Hondaエンジンが3年連続コンストラクターチャンピオンを生み出したことからも、解析に非常に有効な手段だと理解できます(写真は私が個人的に撮影したものです)。
さいごに
今回はAzure Monitorの概要やメリット、AIOpsとの組み合わせについてご紹介しました。
ネットワーク運用においてはAIOpsを導入することで、より効果的な運用監視と管理が図れます。ルーティンタスクを自動化することで、メンバーが本来取り組むべき業務に集中できるようになれば、チーム全体の生産性向上も期待できますので、ご参考になれば幸いです。
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