こんにちは、テクノロジー部の山﨑です。
いきなりですが、クラウドコンピューティングサービスとは何かご存じでしょうか?
サーバーやネットワーク機器を自社で保有して運用するオンプレミス環境とは異なり、インターネットを通じてサーバやネットワークなどを利用することができるシステムのことを一般にクラウドコンピューティングサービスといいます。
近年、さまざまな企業で導入され、DX推進に欠かすことのできないクラウドコンピューティングサービスについて、その中のひとつである「Microsoft Azure(以下Azure)」についてわかりやすく解説していきます。
目次
Azureとは?
Azureとは、Microsoft社が提供するクラウドコンピューティングサービスです。さまざまなクラウドコンピューティングサービスがある中で、Azureは2023年のクラウドインフラ市場シェア率においてAWSに次ぐ2位と、世界中でシェアを拡大させています。
Azureは、仮想マシン、データベース、Webアプリ、AI・機械学習ツールなど、幅広いクラウドサービスを提供しています。ユーザーは必要に応じてこれらのサービスを選択し、利用することができます。
またこれらの多くのサービスが、Microsoft 365やWindows ServerなどのMicrosoft製品との親和性が高いことも魅力のひとつです。
Azureの主要な機能とサービス
Azureはさまざまな機能やサービスを提供していますが、ここでは主要なものに絞り、それぞれどんな場面で使われるのかをご紹介していきます。
Webアプリケーションの開発と運用
Azureには、プロジェクトの開発(Development)と運用(Operations)を行うために必要な環境やツールをそろえた「Azure DevOps」というプラットフォームがあります。
DevOpsとは、開発チームと運用チームが密接に連携し、開発からデプロイメント、運用、管理までを迅速かつ柔軟にできる仕組みづくりを推進する考え方を指します。
Azure DevOpsは、円滑なコミュニケーションを図れることに加え、ソースコードやライブラリをまとめたパッケージ管理など、以下のような多くのことを容易に実現することができます。
- 開発チームと運用チームの円滑なコミュニケーション
- プロジェクト管理
- オンプレミス環境との統合
- CI/CDの実行と管理
- テストの実行・分析
- アプリケーションの監視・分析
- セキュリティスキャン
- コードの品質管理
さらに「Azure App Service」を使うことで、サーバーのセットアップ、OSの管理、ミドルウェアの設定などの複雑な作業を行う必要がなく、開発作業に集中することができます。
データ分析とビッグデータ活用
Azureの「Azure Synapse Analytics」というデータ分析に優れたサービスを利用することで、ビッグデータを最大限活用することができます。
Azure Synapse Analyticsはデータの収集、抽出、加工、データウェアハウスへの保管、機械学習との連携など、一般的なデータ分析の機能を網羅しており、これひとつでデータ分析を実現することが可能です。
あらゆる規模のデータを容易に格納することができる「Azure Data Lake Storage」と組み合わせることで、構造化データや非構造データの分析をすることも可能になり、ビッグデータの分析の幅をより広げることができるでしょう。
セキュリティ強化とID管理
Azureはセキュリティを強化するためのサービスもさまざまあります。「Microsoft Entra ID(旧:Microsoft Azure Active Directory)」は、クラウド型のID・アカウント管理ツールで、安全で効率的にMicrosoft 365および関連するサービスをサポートします。
従業員や外部パートナーのアクセスを安全に管理できることはもちろんのこと、多要素認証や条件付きアクセスといった高度なセキュリティ機能を備えており、不正アクセス防止やアクセス権限の不備などのセキュリティ事故を未然に防ぐことができます。
さらに、セキュリティ監視ツールが実装されている「Microsoft Defender for Cloud(旧:Azure Security Center」を利用し、Azureのリソースやサービスを一元管理することで、日々進化し、高度化する攻撃からシステムを守り続け、効率よくかつ迅速にセキュリティのベストプラクティスを実現することができます。
AIおよび機械学習の導入
Azureは、AIおよび機械学習の導入を支援するサービスも多く提供しています。その中のひつとつである「Azure Machine Learning」は、サーバーが不要かついかなるサービスにも活用しやすくなっており、すぐに使用できるのが特徴です。
サンプルデータも用意されているため専門的な知識がなくても簡単にモデルを構築、トレーニング、デプロイできるように設計されており、難しい作業が不要なことも大きなポイントです。
また、「Azure Cognitive Services」を利用することで、事前に構築されたAIモデルを活用できるため、画像認識、音声解析、自然言語処理などの高度な機能をデータサイエンス等の知識を使わずにアプリケーションに組み込むことが可能です。
これにより、従来のようなAIの専門知識の習得、膨大な学習データの用意、処理モデルの構築の非常にコストのかかる作業が削減でき、大幅な工数削減を図ることができます。
Azureを選ぶメリットは?
Microsoft製品やサービスとの親和性が高い
AzureはMicrosoft社が提供しているため、Microsoft製品やサービスとの親和性が非常に高いことが最大のメリットと言えるでしょう。
Microsoft 365やDynamics 365といった他のMicrosoft製品と簡単に連携することが可能で、環境を一貫性を保つことができます。そのため、OSにWindowsを採用しているオンプレミスサーバーからの移行が簡単に行えます。
Microsoft 365アプリやWindowsと操作性が似ていることで親しみやすいことも利点として挙げられます。
また、Visual Studioや.NETなど、Microsoftの開発ツールや技術を使う開発者にとっても、使いやすい環境を提供しています。
高いセキュティと国内の法律に準拠
一般的に、海外の法人が提供するサービスは、準拠法が日本ではないことや、支払いがドル単位で為替を考慮する必要があったりと、何かと面倒なことがあります。
しかし、Azureはアメリカの法人でありながら、日本の法律に準拠しており、裁判管轄も東京地方裁判所であるため、問題が発生しても対応がスムーズにできるため安心して利用することができます。
グローバルなインフラとデータセンターに強み
データセンターの所在地を表す「リージョン」はクラウドサービスの選定にとって非常に重要な要素になります。
リージョンを各地に分散させ、冗長化させることは、一箇所のリージョンの障害が他のリージョンに与える影響を小さくするため、高い可用性が期待できます。
Azureは世界各地に60以上のリージョンを設置し、同じクラウドコンピューティングサービスであるAmazonのAWSやGoogleのGoogle Cloudと比較してももっとも多く、また、世界中に300以上のデータセンターを展開していることや、データセンター間で280,000km以上の広範なネットワークを確保しているため、低遅延で効率的なデータ転送を実現しています。
オンプレミスとの連携に強い
Azureにはクラウド化をサポートする「Azure Database Migration Service」やオンプレミスとハイブリッド運用をサポートする「Azure Security Center」などが充実しており、既存のオンプレミスサーバーを単にクラウド化するだけでなく、ハイブリッドで運用する際もおすすめできます。
オンプレミスのOSがWindowsであればより連携がしやすく、オンプレミスとクラウドの強みを両方活かしたシステムの導入を考えている方にはAzureが向いていると言えます。
従量課金制なのでコスト効率が高い
Azureは「使ったぶんだけ支払う」従量課金制を採用しており、使用したリソースの量や時間に応じて料金が変わります。つまり、必要なときに必要なだけ使うことができるのです。
この柔軟な料金体系により、大規模な初期投資の必要がなく、予算を効率的に管理できるため、コストを抑えることが可能です。
さらに、Azureはスケーラビリティに優れており、リソースを自由に拡張または縮小できるため、コストの最適化が図れます。
一方で各サービスの料金や使用時間を計算し把握していないと、クラウド破産と呼ばれる予期せぬ高額な請求が来てしまう可能性があります。公式の料金計算ツールを使用したり、「Azure Portal」を用いてリソースを管理することをおすすめします。
Azureの導入手順を3ステップで紹介
1. Microsoftアカウントの作成
Microsoft公式サイトからアカウントを作成します。ガイダンスに従って、作成してください。
2. Azure無料アカウントの作成
Azure公式サイトからAzureアカウントを作成します。
「Azureを無料で試す」をクリックし、無料アカウントにサインアップすることで、コストをかけずに始めることができます。
ガイドラインに沿って進めてください。途中でSMSで本人確認をする必要があるので忘れないように注意しましょう。
クレジットカードの情報を登録する必要がありますが、従量課金制価格に移行しない限りは無料ですので、ご安心ください。
3. Azureのポータルに移動
「Azure Portalに移動する」をクリックします。
こちらの画面が表示されたらAzureの導入完了です。
「クイックスタートセンター」→「プロジェクトとガイド」へ進むとセットアップガイドを見ることができるため、最初に見ておくと良いでしょう。
まとめ
今回は、初心者向けにAzureの概要と導入するメリットをまとめました。
Azureはサービスを理解し、使いこなすことができれば数え切れないほどのメリットが存在します。
もちろん、オンプレミスや他のサービスにも特有のメリットやデメリットが存在しますので、ニーズに合っているかの判断が重要になります。その手がかりにこの記事を参考にしていただけると幸いです。