WACUL垣内氏が「尖ったコンテンツ」を生み出し続けられる理由

WACUL垣内氏が「尖ったコンテンツ」を生み出し続けられる理由

Mako Saito

Mako Saito

LIGブログ編集長のまこりーぬです。

『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』出版記念! ……と題しまして、いままで私にノウハウを叩き込んでくださった大先輩方に、「成果につながる “いいコンテンツ” とはなにか」を取材して回る企画をスタートいたします!

初回のゲストは、株式会社WACUL代表取締役の垣内勇威さん(@yuikakiuchi)。デジマ業界No.1のキレ味の持ち主である垣内さんから繰り出されるコンテンツには、いつもハッとする気づきがたくさん盛り込まれています。

ex.過去の取材記事

そんな垣内さんは常日頃から、「尖っていないコンテンツは、誰にも読まれないから意味がない」ときっぱり断言されています。いったいどうしたら垣内さんのような「尖ったコンテンツ」を生み出せるのでしょうか……? 今回じっくりとお話をうかがいました。ぜひご覧ください!

ico 株式会社WACUL 代表取締役 垣内 勇威さん東京大学卒。ビービットからWACULに入社。AIアナリストを立ち上げ、現在WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長及び代表取締役として新規事業や新機能の企画・開発、大企業とのPoCなど事業推進の責任者を務める。著書に『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』『BtoBマーケティングの定石 なぜ営業とマーケは衝突するのか?』『LTVの罠』がある。

「尖ったコンテンツ」の正体

まこりーぬ:垣内さんが出すコンテンツからは、たしかに「尖っている」という印象を受けます。「尖る」ためには、いったいどうしたらよいのでしょうか?

垣内:スタンスをとること、ですね。どっちつかずではなく、偏ること。偏るとはつまり、「なにかを捨てる」ことでもあります。

たとえば僕は、「めっちゃ楽に成果が出るコスパよい裏技」を見つけることが異常に好きなんです。その逆の「重厚長大でなんの役にも立っていない捨てるべき施策」を見つけてしまったときもめちゃめちゃテンションが上がります。

こうした趣味嗜好を持っているので、仕事においては「無駄なことは一切やらない」というスタンスをとっています。仮にお客様から「認知広告をやりたい」と言われたとしても、そのタイミングでやるべきことでないならば、一切認めません。

こういった経営者や会社のスタンスは、自社のコンテンツにそのまま表れます。つまり凡庸なコンテンツを出しているということは、「うちは凡庸な会社です」と発信しているようなものです。

まこりーぬ:なるほど……。「尖る」とは、「スタンスをとること」だったのですね。

垣内:世間から信頼されている大手企業であれば中道にやってもある程度稼げると思いますが、我々のような中小企業は、スタンスをとらないと市場で戦えませんからね。

一冊の書籍が生まれるまで

まこりーぬ:2023年に出版された新書『LTVの罠』も、「ゴールド会員なんて顧客は嬉しくない」「LTVの成功事例はサブスクの事例とツールの宣伝ばかり」など、垣内節が炸裂していると感じました。こちらの本はどのようにして生まれたのでしょうか?

垣内:そもそも、ここ数年間の自分のテーマが「LTV(顧客生涯価値)向上におけるデジタルの役割を定義すること」だったんです。「これを解き明かすぞ」という気持ちで日々コンサルティング活動をおこなっていました。そのなかで見つけた「新たな発見」を書き出して、構造化してできたものが『LTVの罠』です。

ただ、ふつうに並べるだけだと読み物としておもしろくないので、文章を書くときはいつも「いかに読者の予想を裏切れるか」を意識しています。そのためこの知見はどの常識を否定するものなのかを明示するようにしていますね。

まこりーぬ:「常識否定」は、垣内さんならではの編集方針ですね。ちなみに「LTV向上」に着目した背景もぜひ教えていただけますか。

垣内:「AIアナリスト(※)」を通じて、どうしたらコンバージョン率(CVR)が伸びるのか、どのくらい伸びるかがわかるようになって以来、「CVRは簡単にコントロールできる」「LTVまで見ないと意味がない」と強く思うようになったんですよ。

「AIアナリスト」:WACUL社が提供するマーケティングDXツール。約3万8,000サイトのGoogleアナリティクスのデータを保有している。

たとえばBtoB SaaSであれば、コンバージョンポイントを「無料デモ」から「資料請求」に変えればCVRはすぐに上がりますが、そのぶん営業の受注率が下がります。このように、CVRが改善しても成果につながるとは限りません。

本当にビジネスインパクトを出したいのなら、BtoBは営業、ECは商品仕入れに向き合い、お客様と中長期的にコミュニケーションをとる手段としてデジタルを活用すべきです。こうした自分の主張を検証するために、「LTV向上」を研究対象にしていました。

まこりーぬ:垣内さんと言えば以前は「CVR改善の鬼」という印象が強くありましたが、さまざまな経験を経て、主張が磨かれていったのですね。

「新たな発見」に執着する理由

まこりーぬ:また、垣内さんのコンテンツにはご自身の「新たな発見」が詰め込まれているからこそ、読者にとっても気づきがあり、「おもしろい」と感じるのだろうなと思いました。……業界歴15年以上の垣内さんでもいまだに新たな発見があるものなんですね。

垣内:たしかに、「LPのCVRを上げるだけのプロジェクト」であれば新たな発見はなく、なんのときめきもないでしょうね。ただ、「顧客理解」の領域はいまだに新しい発見ばかりです。これには際限がありません。

先日も「これは意味ないでしょう」と思っていたイベントが、ユーザにはめちゃめちゃ刺さっていて驚きました。「同じコンテンツであっても人によって刺さり方が全然違っておもしろいな」とつくづく感じましたね。

具体的には、クライアントである読売ジャイアンツ様の「DASH CHALLENGE」という、子どもがかけっこする姿が球場のメインビジョンに映し出されるイベントなんですが、正直なところ僕は「もっとアップセルにつながるコンテンツを企画すればいいのに」と感じていました。

しかしとあるユーザにインタビューしてみたところ、「いままで野球に興味がなかった子どもが、このイベントに参加したいがために球場に前向きに足を運ぶようになり、そのうち野球を好きになってくれた」と言うんです。一つのコンテンツでファン度が上がるって、すごいことですよね。

垣内:こういったお客様も僕自身も気づいていなかった「新たな発見」が見つかれば、いままで以上の成果を生み出すことにつながります。得られた知見は、他のクライアントにバリューを提供するときのネタにもなります。

正直なところ僕は「仕事好き」ではないし、働かなくてもいいなら極力働きたくありません。でもプロなので当然バリューを提供しなきゃいけないし、どうせなら「あいつは微妙なコンサルだった」と思われたくない。だから新たな発見を増やすことに、情熱を注がざるを得ないっていう感覚なんですよね。

あとは単純に、新たな発見がないと飽きちゃうという側面もあります。趣味だったダイビングも、カメラが進化して誰でも同じ写真が撮れるようになってからは、作業のように感じられてすっかり行かなくなってしまいました。

だから自分を飽きさせないために、溺れたくないんだけど「溺れそうな環境」に無理やり飛び込んでいってる。これをずっと繰り返している人生です。

まこりーぬ:垣内さんが代表取締役に就任されたとき、「もっと人生攻めなきゃいけないと思って……」とお話しされていたことをふと思い出しました。自分を飽きさせない工夫、大切ですよね。

ライターは “思想” を持て

まこりーぬ:今日のお話を踏まえると、みな「スタンスをとらなきゃ」と考えるはずですが……スタンスって、誰でもとれるものだと思われますか?

垣内:むしろスタンスや思想は後天的にしか育たないと思いますよ。

いまでこそ僕は自分のことを「ほぼ宗教家」だと思っていますが(笑)、若いころはここまでハッキリとした思想を持っていませんでした。主張が強い人を見かけるたびに「この人どこから主張が湧いているんだろう、すごいな」と思っていたほどです。

自分の思想を持つようになったのは、あらゆる経験を積み重ねるなかで、周囲の意見を噛み砕いて自分のものにしたり、自分の意見を発信するなかでより思考が整理されたりするようになってからです。

なので意図すればスタンスはとれると思います。ですが、自分の意見を持つことなくただ周りに流されて生きているだけなら、当然思想は育ちません。尖ったコンテンツも一生作れないでしょうね。

まこりーぬ:なるほど。「自分の思想やスタンスを持とう」とまずは意識すること、そしてさまざまな経験をしながら言語化していくことが、尖ったコンテンツを生み出すはじめの一歩と言えそうですね。

垣内:そうですね。「目の前の情報に対して、自分はどう思うのか」を問うことからまずはスタートしてみるといいかもしれません。

それから、自分が言いたいことを記事のなかでもっと自由に主張したらいいと思います。会社やメディア全体のスタンスを現場から変えることは難しくとも、1つのコンテンツに勝手に情熱を注ぎ、スタンスをとることならできるはずですから。

まこりーぬ:おっしゃるとおりですね。仕事としてこなすのではなく「自分の考えを広めるんだ」という気持ちで、コンテンツ作りに向き合っていきたいと感じました。垣内さん、本日は本質的で貴重なお話をありがとうございました!                

さいごに

垣内さん流の尖ったコンテンツの作り方

「めっちゃ楽に成果が出るコスパよい裏技」を見つけることが異常に好き
仕事においては「無駄なことは一切やらない」というスタンス
 ↓
この思想やスタンスを持ったうえで
日々コンサルティング活動をおこない「新たな発見」を見つけ続ける
 ↓
コンテンツ作りは、ふだんの仕事を通じて得た発見をまとめるだけ
このとき、自分の知見はどの常識を否定するものなのかを明示する

「尖ったコンテンツ」とは編集の技法から生まれるわけではなく、自分はなにが大切だと思うのか、世の中はどうあるべきだと思うのか、作り手の思想やスタンスから生まれるものである。……という答えにたどりついた取材でした。

副業ライターを始めたころ、私はただ漠然と「専業ライターになったらおもしろいものを書けなくなる気がする」と感じていました。これは、マーケティングの現場にいたほうが自分の思想やスタンスを磨く経験を得やすいからだったんだなと、垣内さんのお話を聞いてようやく腹落ちした次第です。

いいコンテンツの作り手になるべく、これからも自分の思想やスタンスを磨いていきたいですね。

以上、まこりーぬがお届けしました!

 
→垣内さんの書籍
『LTVの罠』
『デジタルマーケティングの定石』
『BtoBマーケティングの定石』

→私まこりーぬの書籍
『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』

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Mako Saito
Mako Saito In-house Marketing / Manager / Marketer / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2021年にマネージャー、2023年にLIGブログ編集長に就任し、現在は自社のマーケティング、オウンドメディア運営に携わる。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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