こんにちは。デザイナーのほそです。
今日はデザイナーの描いた絵本を、デザインワークとともに紹介します。
以前から、絵本を見るたびに気になっていました。著名なグラフィックデザイナーの作品が多いなと。
絵本を先に知っていた場合もあれば、デザイナーを先に知っていた場合もあります。ただ、両方を並べて紹介していることが、あまりありません。
今回は、そんな興味から、絵本とデザインの仕事、両方をならべて見てみたいと思います。
目次
ディック・ブルーナ / ちいさなうさこちゃん
引用元:https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=21
ブルーナの最初の絵本です。デザインのお仕事をされている方は、小さいころに読み、物心ついてからそのデザインとしての完成度の高さを改めて知り、感動した方も多いのではないでしょうか。
デザインのお仕事 – 2,000冊以上のブックデザイン
引用元:https://www.assiston.co.jp/1788
ミッフィーを知らない人はいないと思いますが、一方で、ブルーナは2,000冊以上の本の表紙を手がけています。しかし、なかなかブックデザインの仕事をまとめて見る機会は少ないです。
一見して、シンプル、ダイレクト、フラットな印象を受けますが、「これがミッフィーの作者なの?」と思うほど、尖った印象を受けるものも多いです。
引用元:https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/matisse2023-la-chapelle-du-rosaire-4k-news-202303
こちらは、画家アンリ・マティスによる「ロザリオ礼拝堂」という作品です。どことなくブルーナの作品に似ていますね。
ブルーナは、インタビューで自分の作風について、「ロザリオ礼拝堂」に影響を受けたと語っています。青や黄色の原色に近い鮮烈なイメージ、シンプルかつ存在感のある線のストロークなど、たしかに繋がりを感じます。
美術とデザインから絵本へ、という文脈の流れを感じますし、ブルーナはマティスの絵画の中から何を受け取ったのか、どうオリジナルの表現に昇華していったのか、ということを考えさせられますね。
ソール・バス / アンリくん、パリへいく
引用元:https://amzn.asia/d/8TgUQX2
ソール・バスは、特に映画のタイトルデザイナーとして知られた方です。ヒッチコックの映画『北北西に進路を取れ』(North by Northwest)や『サイコ』(Psycho)などが有名です。
こちらは、彼の手がけた絵本ですが、タイポグラフィとグラフィックが融合している表紙が、とても気持ちよいなと感じます。どのページも、同じように絵と言葉が融合しているデザインの真髄が楽しめる一冊となっています。
デザインのお仕事 – 革新的なムービータイトル
引用元:https://www.artofthetitle.com/title/north-by-northwest/
アルフレッド・ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』という作品のタイトルクレジットです。こちらのページでは、映像をみることができます。
緊張感あるグリッドの構図とタイポグラフィのアニメーションが融合し、わくわくしながら観ていくと、グリッドは実はビルの窓を模していたことが分かる……という映像です。
こちらは大人向けのサスペンス映画ですが、タイポグラフィとグラフィックの融合、遊び心のある空間の使い方など、共通する作風が見て取れます。
ポール・ランド / ぼくはいろいろ知ってるよ
引用元:https://amzn.asia/d/iWKEp9B
巨匠ポールランド。彼はアメリカの著名なグラフィックデザイナーで、アイコニックなロゴや企業ブランディングで知られています。IBM、UPS、Westinghouse、Ford、ABCなどのロゴ制作が有名です。
こちらの絵本は、彼のユニークな造形感覚、「かたち」の自由さと気持ちよさを味わえる絵本だなあと思います。男の子のネコ目っぽい形が印象的です。
デザインのお仕事 – 大企業のアイデンティティ
ユニクロのTシャツにもなっていました、有名なIBMのロゴです。IがEYEになっていて、BがBee=蜂になっていますね。遊び心が感じられるロゴですが、幾何学と有機的な形のあわいのようなせめぎ合いがとても美しいなと思います。
ブルーノ・ムナーリ / きりのなかのサーカス
引用元:https://amzn.asia/d/h7bpmUr
教育のための本なども多く残したムナーリ。彼は、イタリアのアーティスト、デザイナー、発明家でした。
ムナーリは形状や色の革新的な使用で知られています。こちらは、トレーシングペーパーを幾層にも用いて霧の中をすすんでいく様子が表現されていたり、紙をくり抜き絵を重ねたりすることで、サーカスの楽しさを表現している絵本です。
デザインのお仕事 – 既成概念を覆す芸術
引用元:https://bijutsutecho.com/magazine/interview/14950/pictures/10
すみません、ムナーリはそもそも教育書・児童書の業績が多いため、こちらの彫刻作品を紹介します。『旅行のための彫刻』とされており、原型は1958年に厚紙で製作されたもの。詳しくはこちらで見ることができます。
彫刻を「軽くて折りたたむことができ、スーツケースに入れて出発時に持ち運べる」ものにすることで、彫刻とは重くて固定され、動かないものであるという固定観念を覆すことを狙った作品とされています。コンセプチュアルでかっこいいですね。
上記で紹介しているものは、1965年の制作。生涯にわたって、様々な素材でバリエーションが作られたそうです。
サンタ・アンヌッカ / 雪の女王
引用元:https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=110281
マリメッコのデザイナーでもある、Sanna Annukka。彼女の手がけた絵本のデザインは、アンデルセンの『もみの木』や『雪の女王』、『くるみ割り人形』といった古い物語。幾何学を組みあわせたグラフィックからは、確かにテキスタイルの遺伝子を感じます。
デザインのお仕事 – マリメッコのテキスタイル
引用元:https://marimekko.cms01.d-head.biz/the-brand/designers/sanna-annukka
こうらは、”Hauki”というテキスタイルのデザインです。ハウキとは、カワカマス属の1種の淡水魚・汽水魚のことだそう。なんとなく、生活の中にあったモチーフなのかなと思いますし、前出の絵本も、彼女の人生の中で印象深かったものなのかな、と思います。デザインから人生を感じられて、とても好きです。
番外編 モリー・バング / 絵には何が描かれているのか ─絵本から学ぶイメージとデザインの基本原則─
引用元:https://amzn.asia/d/8QyQWwZ
絵本をもとに私たちが絵やデザインからどのようにイメージを受け取っているのか、原則を紐解いていく本。「なぜ、水平には安定を感じるのか?」「なぜ、私たちの目は画面の中央に惹きつけられるのか?」といった疑問に丁寧に向き合い、考察されています。
引用元:https://amzn.asia/d/8QyQWwZ
『赤ずきんちゃん』を例にとって、徐々に構図やイメージというものができあがっていく課程を知ることができ、非常に勉強になる本です。
終わりに
今回の記事は、著名なデザイナーによる絵本の「子供向け」というフォーマットの優しさや自由さと、いわゆる「大人向け」であるグラフィックデザインのクライアントワーク、その背景に共通するデザイナーとしての鋭い美意識のようなものを、並べることで考察してみたいと思い書きました。
ポール・ランドやソール・バスなど著名なデザイナーについては、関連する情報が山ほどありますので、今回は詳細な業績の紹介などは割愛いたしました。また、他にもエリック・カールや、レオ・レオーニなど、デザイナーとして活躍しつつ、有名な絵本を残している方がたくさんいます。
参考リンクは、なるべく購入できるものを選びましたので、興味があったらぜひ読んでみてくださいね。
では。
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