毎週末、社長から全社員にメッセージを送る理由。ダイバーシティにおける組織マネジメント

毎週末、社長から全社員にメッセージを送る理由。ダイバーシティにおける組織マネジメント

Yu Mochizuki

Yu Mochizuki

昨今、ダイバーシティ(多様性)がさまざまな場面で取り入れられています。LIGでも長年大切にしてきた価値観であり、近年はグローバルメンバーが集うきっかけにもなってきました。

しかし、一口に多様性といっても、“なんでもあり”ではありません。組織や人によって、その解釈は違います。

今回、ダイバーシティを軸として組織づくりや事業を展開する株式会社SAKURUGの遠藤社長を迎え、代表の大山と対談を実施。双方の視点で、多様性のある組織づくりやマネジメントのポイントなどを伺いました。

株式会社SAKURUG 代表取締役
遠藤 洋之 氏
千葉県出身。株式会社GOOYAを経て2012年に株式会社SAKURUGを設立。DEIを推進する採用マッチングプラットフォーム「Sangoport」の運営、WEB制作・システム開発支援、人材事業のほか、ブロックチェーン領域での研究開発もおこなっている。世界的起業家ネットワークであるEO Tokyo理事、千葉イノベーションベース初代理事。ジャパンハートエバンジェリスト。PEAD/Famieeなどの団体にも参画。高校生インターンの受け入れなど、事業の枠を超えた若者支援にも取り組んでいる。
https://sakurug.co.jp/

“働きたくても働けない人”と企業をつなげる

遠藤さん

ーーSAKURUGさんは、ダイバーシティの視点をとても大切に企業経営をされています。具体的にどのような取り組みをおこなっているのか教えてください。

遠藤:SAKURUGは、「ひとの可能性を開花させる企業であり続ける」というビジョンのもと、Web制作やシステム開発、人材サービスなどの事業を展開しています。そして、組織内に『DEI推進室』を設置し、「広義での多様性を認めること」や「世界中の誰一人取り残さないこと」を目標として組織づくりや事業を推進しています。

DEIとは 「D:ダイバーシティ(多様性)」「E:エクイティ(公平性)」「I:インクルージョン(包括性)」の頭文字からなる略称。

具体的には、時短勤務社員の積極採用、正社員の育休延長制度の促進、LGBTQ+など性的マイノリティの方々にも配慮した採用活動など、さまざまな取り組みを実施。近年は、SAKURUGの全社員の約1/4が時短で働いていたり、インドネシアやウクライナ国籍のメンバーが働いているなど多様な組織になってきています。そんな取り組みが評価され、D&Iに取り組む企業を認定する『D&I アワード2022』にて、「D&Iアワード大賞」受賞と最高評価「ベストワークプレイス」に認定されました。

ーー受賞おめでとうございます! DEIの観点は、事業にも落とし込まれているのでしょうか。

遠藤:はい、「Sangoport」というDEIを推進する採用マッチングプラットフォームを運営しています。性別、年齢、出身地などの境遇に関係なく自分に合った仕事を探すサポートをしており、働くことに困っている人を対象としたサービスです。

大山:どういったきっかけでサービスが生まれたんですか?

遠藤:きっかけは、新卒社員の発案です。彼が出してくれたアイデアをもとに、どんどん進めていきました。また、自社での採用活動も参考になっています。

数年前に秘書を募集したとき、業務量や人件費などの関係から時短が良いなと思い募集をしました。そこで現在の秘書を採用したのですが、彼女から「大手の求人サイトでは、時短という条件だけで求人数は大幅に減り、困っている人がたくさんいる」ということを聞きました。働きたくても働けない人たちと企業をつなげることで、win-winになるだろうと思ったんです。

大山:働きたい人・スキルを持っている人がいても、住む環境や時間の制限によって、働く場所を見つけにくい状況は未だ完全には解決されてないですよね。

私が10年以上関わっているオフショア開発事業も同様に、海外に目を向けることで、現地の技術者の雇用を生み出すとともに、企業のエンジニア不足解消につなげてきました。

人と企業が抱える双方の課題に目を向けることが重要だと思います。

遠藤:労働力人口不足を解決するためのアプローチには、AIやDXなどさまざまな手法があります。もちろんそこも進めていくのですが、人がやったほうがいいこと、人にしかできないこともある。そこを「Sangoport」で支援していきたいんです。結果、労働人口の母数を増やしていければと思います。

大切なことは、俯瞰して見ること

ーーそもそも、遠藤さんがDEIに注目するきっかけはなんだったのでしょうか?

遠藤:僕はもともと片親に育てられて、決して裕福な家庭ではありませんでした。でも、世の中を見渡すと、何かをしたくてもできない人がたくさんいて、僕自身はとても恵まれているんだなと思ったんです。そんな経験を経て、大人になってアフリカを旅したときに、日本と現地の生活の違いを見て、価値観が大きく変わりました。

世の中には、自分で人生の選択をしたくてもできない人がたくさんいて、それによって不平等が起きている。それを解決したいと思うようになりました。

大山:僕も大学卒業時にはじめて東南アジアを旅したことで、日本との環境の違いに衝撃を受け、世の中のためになにかをしたいと思うようになりました。

遠藤:僕はたまたま今の時代の日本に生まれたから、今の生活ができています。でも、もしテクノロジーが進んでいない場所に生まれていたら、今の仕事をせず、スマホにも触れることなく人生を過ごしていたかもしれません。決して「テクノロジー=幸せ」ではありませんが、それによって、身の回りの課題を解決することができます。そんな状況を想像したときに、もっと社会のために生きていかなければと思いましたね。

最近は、「地球全体を見て、遠藤というコマをどこに配置するか」という視点で、世界を俯瞰して見ることを意識しています。

大山さん

大山:その考え、とても共感します。私の人生のテーマのひとつが「世の中を俯瞰する」ことなんです。常に広い視点から自分の姿を客観的に見ることで、グローバルな視点で物事を捉えるきっかけになると思っています。

多様性を推進するマネジメント

大山:ここまでお話を聞いていると、遠藤さんと私のルーツがとても似ているなと思いました。多様性を重視しているなかで、マネジメントで工夫していることはありますか?

遠藤:まず、メンバーによって、コミュニケーションの方法を分けています。経営幹部には、自分の考えをあえて強い言葉で伝えたり、密接なコミュニケーションを意識しています。場所を変えて合宿をしたり、海外も含めて色んな場所の現地を見ながら相互理解の時間を設けることも。一方、家族とのイベントがある日は家族を優先するように、こちらもより強く求めることで、言葉や給与以外で感謝を表現することも大切にしています。

信頼関係を構築することで、僕から幹部へ考えやビジョンが伝わりやすくなる。そして、幹部から他のメンバーにも伝わるような状況をつくっています。

大山:幹部自身が、遠藤さんの言葉を現場に伝わりやすく変換してくれるんですね。現場とのコミュニケーションはどうですか?

遠藤:現場とのコミュニケーションは、“手触り感”を大切にしています。

たとえば、社内のコミュニケーションはほぼSlackなどのチャットなのですが、僕も様々な部署が運用しているチャンネルに入っています。ただ、僕が業務の中身に口出しすることはありません。状況に応じて、プロジェクトや業務全体が会社のビジョンに沿って進むよう、広い視点でコメントをするようにしています。

大山:入りすぎず、離れすぎず、絶妙な距離感を大切にしているんですね。会話が見えることで鮮明な状況が見えてきますし、社員にとってもいい意味で緊張感が生まれますよね。

遠藤:ほかにも、SAKURUGではほぼすべての社員が週報を出してくれていて、僕がすべての内容をチェックしてレスポンスするようにしています。まだ100名もいないのですが、スタンプなどではなく、3~4行ですが僕からの想いも込めてコメントを返信しています。

大山:全員にレスポンスすることも大変ですが、数百文字のコメントってすごいですね!

遠藤:週報への返信は社員との大切なコミュニケーションなんです。僕自身が、個々の職務の状況やプロジェクトの進捗状況を知ることができる。僕からは、業務のアドバイスではなく、返信を通じて僕の考えや思いを伝えるようにしています。それによって、理念を共有し、目線を合わせるきっかけになっています。

大山:幹部から現場、社長自身から現場、と異なるルートで遠藤さんの考えが浸透しているんですね。SAKURUGさんは時短社員も多いようですが、マネジメントで工夫していることはありますか?

遠藤:時短の社員に対しては、僕からは「働きすぎないように、無理をしないように」というメッセージを不定期に送ってます。みんな責任感が強いので頑張りすぎてしまわないようにですね。僕自身がダイバーシティに対してコミットする姿勢を見せるためです。

このようにいろいろな手法で社員と接していますが、僕は、社長の力はそんなに大きくないとは思っていて。みんなが主体的に動ける組織のほうが強いと考えてます。会社では「プレイスメント」と「意思決定」が自分の仕事と伝えてますが、方向性を決めてあとはメンバーに任せることを大事にしてます。

理念を通じて組織がひとつになる

大山さん遠藤さん

大山:社員との距離に一定の線を引きつつも、遠藤さん自身が目指す方向性に導いていることがわかりました。コミュニケーションをはじめ、現場との関わり方ひとつで社員の成長の機会を奪うことにもつながりますよね。

しかし、多様性は企業経営においてはとても難しい側面もあると思っています。人によって、いろいろな捉え方ができてしまうからこそ、思考をバラバラにさせることもあると思います。

遠藤:本当にその通りですよね。一歩間違えれば、無秩序にもなりかねない。そのために、理念がとても大切です。理念をベースに組織づくりをすることで、無秩序ではない、多様性ある組織ができるのだと思います。

週報のレスポンスをはじめ、朝礼などを通じて、多様性に沿った考えを何度も伝える。理念・思考の共有には、言い続けることが大切です。

大山:そうですね。現在のLIGは第二創業期であり、まさに今、理念をつくりなおしている真っ最中です。お話をしているなかで、理念をしっかり自分自身の言葉で伝えていかなければと思いました。

グローバルな関わりが広がると、国の違いを口実にしたネガティブな話を聞くことがあります。もちろん、文化の違いはありますが、それは局所的な捉え方でしょう。人間同士しっかり向き合って伝えることで、必ずお互いが理解できる。そういった考えのもとで新たな理念を共有し、多様性と秩序がある組織をつくっていきたいと思います。

本日はありがとうございました。

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アパレル企業にて販売員を経験後、編集プロダクションにて、エディターとしてのキャリアをスタート。雑誌編集、アパレルブランドや商業施設の販促物・Webコンテンツ・店頭装飾物・ビジュアル制作などに関わる。2020年7月にLIGに入社し、さまざまな企業のオウンドメディア支援に携わる。2022年7月より広報チーム所属。

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