スタートアップ×開発のプロが「結局、エモさが大事」と語る理由

スタートアップ×開発のプロが「結局、エモさが大事」と語る理由

Mako Saito

Mako Saito

LIGブログ編集長代理のMakoです。

現在LIGはDX支援を加速させるべく、「サービス開発」に役立つ情報発信を強化しています。

今回はVC(ベンチャーキャピタル)のグローバル・ブレイン社にて投資先のサービス開発をハンズオンで支援している二宮啓聡さんをゲストにお招きし、お話をうかがいました。

  • 優秀なエンジニアを集めるためには?
  • ビジネス部門と開発部門、うまく連携するためには?
  • 外部の開発パートナーにはなにをお願いしたらいい? 

などなど、よくある疑問にたっぷり回答いただいています。スタートアップや新規事業の開発に携わるみなさん、ぜひご覧ください!

グローバル・ブレイン株式会社https://globalbrains.com/
独立系VC(ベンチャーキャピタル)。徹底したハンズオン支援、グローバルなエコシステム、ベンチャー企業と大企業のオープンイノベーションを通して、スタートアップ企業を支援するとともに、新たな産業の創出を目指す。
投資先▲過去の投資先(一部)

ゲスト:グローバル・ブレイン株式会社 Investment Group Director/Tech Talent
二宮 啓聡 氏

2013年、エンジニアとしてグリーに新卒入社。メガヒットタイトルの運営に携わる。グリーを退社してからは複数スタートアップでITエンジニアを経験した後、2020年にグローバル・ブレインへ参画。IT/Software領域のTech Talentとして投資検討時のシステムDDならびにIT DD、投資先のバリューアップ支援に従事。 支援は個社のフェーズやニーズに応じて柔軟に実施。認定スクラムマスター(CSM)、情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)の資格を保有。
インタビュアー:株式会社LIG 代表取締役社長 CEO
大山 智弘

新卒にて株式会社ユナイテッドアローズ入社。イギリス留学を経て、株式会社リクルートに入社。その後、ベトナム法人EVOLABLE ASIA Co., Ltd代表取締役社長に就任。退任後は株式会社リンクバル入社。IPOを経験後、株式会社ケアクル創業。2017年より株式会社LIGに参画。2021年10月より代表取締役。

口よりも手を動かす、希少な支援部隊

大山:VCの仕事といえばキャピタリスト(投資担当者)のイメージが強いものですが、二宮さんのミッションは投資先の開発支援とうかがいました。具体的にはどんな仕事内容なんでしょうか?

二宮さん

二宮:私が所属する「Value Up Team」は、投資先の事業に深く入り込んで支援するチームです。投資先が自分たちで事業をしっかりと回せるようになるまで、ただアドバイスするだけではなく、一緒に手を動かしながら伴走します。もちろん、費用をいただくことはありません。

たとえば開発担当である私の場合、投資先のスクラムイベントの運営や、バックログの整理といった細かな作業までお手伝いしてきました。同チームには、プロジェクトマネジメントやグロースの支援をおこなっているメンバーもいます。

大山:人材もノウハウもつねに不足しているスタートアップからすれば、そこまで無料で支援してくれるなんて非常に心強いですね。貴社のようなハンズオン型のVCは増えてきているのでしょうか?

二宮:弊社のように10名規模の支援チームを抱えている国内VCは、私の知る限りではありませんね。ほとんどのVCは少数精鋭組織なので、そこまで人数を割けないのが正直なところかと思います。

一方でアメリカの有名VCであるアンドリーセン・ホロウィッツ社は、キャピタリストの数と同等の支援メンバーを抱えていると聞きます。そんな彼らを参考に、弊社では約3年前に「Value Up Team」を立ち上げました。

大山:なるほど、国内VC市場においてはチャレンジングな試みなんですね。起業家からすれば最高のサービスなので、結果が出ることを心から願っています。

フェーズ別の “よくある” 開発課題

大山:ここからはスタートアップ企業の開発を間近で支援し続けている二宮さんに、開発成功のヒントをうかがいます。まずは、フェーズ別のよくある課題を教えていただけますか。

二宮さん

二宮:立ち上げ時によくあるのは、「エンジニアのツテがなく、どうやって開発メンバーを探したらいいのかわからない」というお悩みです。また、仮にエンジニアが見つかったとしても「任せても大丈夫な人なのか見極められない」といった課題が発生します。これはもう、昔の同僚や知り合いの経営者、投資家全員に相談して、信頼できるエンジニアをなんとか見つけるしかありません。

続いてPMF前後においては、個人ではなくチームで開発を進める体制に移行する必要があります。このとき「エンジニアの数を2倍にしたからといって開発スピードは2倍に上がらない」といった開発の事情をビジネス側が理解していないと、スケジュールやコストを見誤りがちです。ビジネスと開発、互いに歩み寄る姿勢が欠かせません。

その先のグロース期に入ると個社ごとに課題はさまざまですが、BtoB SaaS企業でたびたび見かけるのは「大手企業に導入してもらうためにセキュリティ要件の見直しが必要」「外部ツールとのAPI連携が必要」といった課題です。いままでまったく考慮していなかった開発要件が出てきたり、技術的な難易度が上がったりで、対応に追われる企業が一定数存在します。

さらには、プリセールスやソリューションアーキテクト、CRE(Customer Reliability Engineering)といったビジネス側やお客様との間に立つ開発メンバーを増やすことも求められるようになりますね。

Q.優秀なエンジニアを集めるためには?

大山:「エンジニア採用」は、立ち上げ期に限らずどのフェーズにおいてもつきまとう難題かと思います。二宮さんはどのような施策が有効だと思われますか?

二宮:積極的な情報発信や福利厚生の充実はもちろん必要だと思いますが、中長期的にエンジニア組織を拡大するためには、やはりエンジニアカルチャーを構築していくほかないと思いますね。

たとえば、「技術力をより高めたい」「プロダクトを作りたい」など、エンジニアは総じて高い成長意欲を持っています。そのためエンジニアが継続的に成長できる環境を作ることができれば、魅力に感じてもらえるのではないでしょうか。

大山:おっしゃるとおりですね。弊社にも「グローバルな開発体制」に成長の可能性を感じ入社してくれたエンジニアが複数います。

加えて私は、「採用上の競合はフリーランスだ」と考えています。大規模案件に携われる機会、つねに案件にアサインされる安心感といった、フリーランスでは得られない仕事の魅力を提供していかなければならないと感じていますね。

大山さん

大山:優秀なエンジニアを “見極める” ポイントも、あわせて教えていただけますか?

二宮:どれだけAI技術が発展してもエンジニアとしてやっていける人が理想だと思います。つまりは、ただコードを書くだけではなく、課題解決ができる人。売上利益へ貢献しようという意識がある人こそが優秀なエンジニアだと思いますね。

大山:大事な観点ですね。面接の場でしっかり探っていきたいと感じました。

Q.ビジネスと開発、うまく連携するためには?

大山:続いて、社内間の連携についてお聞きします。前提として、ビジネス側と開発側はどのようなパワーバランスであることが多いのでしょうか?

二宮さん

二宮:「ビジネス側が強いケース」が圧倒的に多いですね。90年代にSIerが急増した日本では「考える人」と「作る人」の間に受発注の関係が生まれていることが多く、令和5年になったいまでも「自分たちが考えたものを言われたとおりに作ってください」といった空気がどこか残ってしまっているように感じます。

また一方で、少数派ではありますが、開発のことがまったくわからない経営者が開発部門を極端に祭り上げてしまっているようなパターンも見受けられます。

大山:なるほど。そんな状態からチーム一丸となりサービスを前進させるためには、どのようなアクションが必要だと思われますか?

二宮:はじめの一歩としては、やはり事業全体を推進する立場であるビジネス側が「開発とはどういうものか」を学んでいただくのがベストではないかと思っています。ソフトウェア開発は、携わったことのない方にとっては直感に反することが多いのです。開発をスピードアップしたい時にブルックスの法則(※)を背景も含めて知っているだけでも、ある程度トラブルを防ぎ打ち手の幅を広げられますからね。

※「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせるだけである」という、プロジェクトマネジメントに関する法則

大山:私は営業畑の人間なんですが、実はプログラミングスクールに通っていたことがあるんですよ。「やっぱり自分はエンジニアに向いていないな」と再認識するとともに、エンジニアに対するリスペクトがさらに強まりました。

リスペクトの有無って、ふだんの言葉遣いにも現れるじゃないですか。なので気持ちよくコミュニケーションをとるためにも、ビジネス側が開発を学ぶことは重要だと思いますね。

二宮:すばらしいですね。経営者自身が学ぶ姿勢を見せることは、歩み寄る空気を作るうえでとても大切だと思います。ちなみに最近は「ノーコード開発ツール」を活用して、社長自らMVPを作ってしまうスタートアップ企業も増えていますね。

Q.外部パートナーにはなにをお願いする?

大山さん

大山:開発の規模を拡大したい、あるいは開発の難易度が上がり知見が不足している場合は外部パートナーの活用を検討すべきかと思いますが、「なにをお願いしたらいいのかわからない」といった声をよく聞きます。内製と外注、二宮さんはどのように業務を切り分けるべきだと思われますか?

二宮:「仮にその会社と取り引きがなくなったとしても自社でリカバリーできるかどうか」が委託のOKラインになると思っています。なので前回の記事にあった「テックリードは内製化すべき」という意見には私も賛成です。

外部パートナーに依頼する際に注意いただきたいのは、「開発なんてどこに委託しても一緒でしょう」といろんな会社に発注してしまうことです。その結果ツギハギのプロダクトが生まれ完成が遠のいてしまった、なんて事態をしばしば見かけます。パートナー会社とは、ぜひ膝を突き合わせてコミュニケーションをとってもらいたいですね。

大山:膝を突き合わせられる、信頼できる開発パートナーを見極めるポイントはありますか?

二宮:正直なところ実際にプロジェクトを進めてみないとわからないことが多いため、発注前は実績や業界内での評判を参考にするしかないとは思います。

ただし最近は、「リソースがなくてお引き受けできません」「そういう条件であれば降ります」と開発会社から断られるケースも多いと聞いています。大前提としてコスト感があうかどうかでも候補先は絞られますし、「相談できる開発会社は意外と少ない」と覚悟しておいたほうがいいかもしれませんね。

大山:弊社としては極力開発リソースを迅速にご提供できるよう、海外拠点と連携した支援に努めていこうと思います。

Q.開発にもっとも大切なものは?

大山:最後に総括として、開発を成功させるために大切なことをぜひ教えていただけますか。

二宮:サービスに対する想い、“サービス愛” を持っていただくことがもっとも大切だと思っています。というのも、冒頭で申し上げたよくある課題の原因を深く探っていくと、「結局はサービスに対する無関心が起因しているんじゃないか」って思うんですよ。

「こんな課題を解決したい」という想いをもって創業したはずなのに、生き残るためにピボットを繰り返していると、気がつけば「売上が最重要」になってしまっていることが少なくありません。しかし足元の利益だけを追求していると、どこかで成長が頭打ちになってしまうことが多いように感じます。

こういった観点においても、サービス愛を持つことは最終的には割に合うと考えています。

二宮さん

二宮:もしみなさんが開発や組織の課題に向きあっているのであれば、それはサービスが次のフェーズに向かっている証拠です。だからこそ、今一度「なぜそのサービスを開発するのか」に立ち返ってもらいたい。エモさを忘れないでいてほしいですね。

大山:結局は愛を持つべきというお話、グッときました。二宮さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

さいごに

集合写真

グローバル・ブレイン社の「Value Up Team」は絶賛採用強化中とのことなので、ご興味ある方はぜひ採用情報をチェックしてみてくださいね。

 
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また、弊社LIGもスタートアップ企業様の開発支援もおこなっています。「これからサービスを成長させていきたいのに、エンジニアが足りない」とお悩みの企業様、ぜひ気軽にご相談ください。

 
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Mako Saito
Mako Saito LIGブログ編集長 / 人事部長 / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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