データを有効活用するために早めに取り組んでおきたい「マスターデータ管理(MDM)」とは?

データを有効活用するために早めに取り組んでおきたい「マスターデータ管理(MDM)」とは?

Michitoshi Kudo

Michitoshi Kudo

こんにちは、Technology部マネジャーの工藤です。

昨今、企業経営におけるデータ活用の重要性が広く認識されるようになってきたことに伴い、「マスターデータ管理(Master Data Management、通称MDM)」にも注目が集まっています。

「マスターデータ管理は大企業がやること」「今の運用で困っていないから大丈夫」という方もいらっしゃるかもしれませんが、マスターデータ管理に取り組むことでより正確なデータ分析が可能となるほか、マーケティングの強化や業務効率化にも役立ちます。

そこで今回は、実際に企業のマスターデータ管理をサポートした経験をもとに、マスターデータ管理のメリットや手順、取り組むべき企業の特徴などをご紹介します。

マスターデータ管理とは

企業は展開するサービスに応じて商品や顧客、従業員などに関する多種多様なデータを収集、活用しています。

一般的にデータは「顧客マスタ」「製品マスタ」「会計マスタ」「組織マスタ」など情報カテゴリーごとに構築、管理されています。また、部署によって導入しているシステムやアプリケーションが異なるため、同一カテゴリーのマスタでも、別のシステムで管理されていることがあります。

「マスターデータ管理」とは、それらのマスタを全社規模で統合し、一元管理することです。

マスターデータ管理が必要とされる背景

マスターデータは唯一無二のものであるため、本来は同一人物・顧客・商品に関するデータは、どのマスタでも同じでなければなりません。

ところが、部署ごとにSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)など導入しているシステムが異なると、それぞれのシステムごとにマスタが存在するため、データが散らばってしまい、必要な情報がどこにあって誰が管理しているのか、すぐに把握できないという事態が生じてしまいます。

また、各部署でマスタを管理していると、ひらがな、カタカナの入力形式が異なっていることなどが原因で、同一人物・顧客・商品であっても各マスタのデータが一致しないケースが多発していました。

その結果、いざデータを活用しようとしても「データが正確かどうか」を先に確認しなければならず、商品開発のスケジュールに遅れが生じたり、迅速な経営判断ができなかったりするなどの弊害が起きていました。

マスターデータ管理に取り組むメリット

マスターデータ管理を行うことで、主に次のようなメリットが期待できます。

1. スピーディーなビジネス判断

各部署が「縦串」で管理していたデータを、マスターデータ管理により「横串」でつなげて統合することで、データの整合性が確保されます。

各マスタのデータを突き合わせて正確性をチェックする必要がなくなるほか、他部署でマスタを管理する担当者に問い合わせなくてもデータにすぐにアクセスできるため、スピーディーかつ臨機応変な経営判断につながるでしょう。

BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールと連携させることでスムーズにデータ分析ができ、新商品・サービス発売までの時間短縮も期待できます。

2. マーケティングへの有効活用

マスターデータ管理を進めることで、顧客マスタと製品マスタなど、カテゴリーの異なるマスターデータから一気に情報を取得できます。

それにより顧客や製品をこれまでとは違った角度から見ることができ、新しいマーケティング活動やオペレーションの見直しなどに役立ちます。

たとえば、自部署のマスタにある顧客の名前と住所データに加えて、他部署のマスタにある売上データを組み合わせることで、ロイヤルカスタマーの把握や購買傾向の分析ができるようになります。そうなれば、より効果的なアプローチが可能となり、売上アップや顧客満足度アップにもつながるかもしれません。

3. 業務効率化

データが複数のマスタに点在している場合、「情報がどこにあるかわからない」「他部署が管理していて問い合わせる必要がある」「担当者が不在ですぐに対応してもらえない」といった事態が生じることがあります。

問い合わせる側にとっても、問い合わせを受ける側にとっても、手間と時間がかかっていました。

しかし、マスターデータ管理を達成することでマスタ管理者への問い合わせが不要となり、業務効率化につながります。

マスターデータ管理の具体的な手順

マスターデータ管理は一般的に次のような流れで進めます。

1. 目的の設定

まずマスターデータ管理を行う目的を確認します。

一元管理による業務効率化、データの整合性確保、データガバナンスの強化など、企業によってゴールは異なります。目的に応じて統合するデータの範囲やマッチするマスターデータ管理ソリューションも変わってくるため、マスターデータ管理を行う目的はできるだけ明確にしておくことが重要です。

2. データの収集・精査と実施範囲の検討

次に各マスタからデータを収集し、内容を精査します。

部署ごとにマスタの形式が異なることは珍しくありません。たとえば、Aのマスタでは顧客名をひらがなで、Bではカタカナで入力している場合、AとBのデータを統合するためにはどちらかに形式を揃えなければいけません。

また、マスタデータ管理では統合するデータ量が多ければ多いほど、時間とコストがかかります。

そのため、すべてのデータを洗い出して内容や量などを確認し、目的や予算に応じてデータを取捨選択し、統合する範囲や入力形式を決めていく必要があります。

3. 名寄せ・データクレンジング

マスタデータ管理の方針が決まったら、実際にデータを整理していきます。

ひらがな、カタカナ、全角半角などの入力形式を揃え、データの重複や入力ミスなどを修正するデータクレンジングも進めます。

マスタデータ管理にかかる時間

部署ごとに導入しているシステムやアプリケーションが異なり、それぞれでマスタが構築されているため、各マスタの内容に齟齬や重複、入力ミスがあることは珍しくありません。データの破損が見つかることもあります。

そのため、上記の手順のなかでも特にデータの精査、統合するデータの範囲の決定には時間を要します。

一般的にマスターデータ管理を完了させるためには、半年から1年程度はかかると考えておいてください。

マスターデータ管理に取り組むべき企業

マスターデータ管理は、金融、保険、レジャーなど、サービスを提供しているあらゆる企業に活用メリットがあります。

特に、ここ数年でユーザーが急増している、または今後拡大が期待されるサービスを提供している企業は、できるだけ早くマスターデータ管理に取り組みはじめることをおすすめします。

ユーザーが増加すれば、扱うデータ量も当然増加します。データがバラバラに管理され、相互に紐づいていない状態のまま事業を拡大していくと、新しい施策を始める際に情報の確認に時間がかかり、迅速な経営判断ができず、ビジネスの好機を逃しかねません。

また、データが増えてから一元管理をしようとすると、データ精査や統合作業に時間がかかります。

早い段階からマスタデータ管理を進めて基盤を整えておくことで、サービスが拡大時にも適切に対応できるようになるでしょう。

まとめ

マスターデータ管理は成長企業には不可欠です。とはいえ簡単にできるのものではなく、実施にはコストも時間もかかります。

また、統合したマスターデータを格納・管理するソリューションはさまざまなベンダーが提供しており、対応するカテゴリや価格などが異なるため、業務要件や予算に合わせて自社に合ったものを選ぶことが大事です。

LIGはマスターデータ管理のサポート実績があり、データ精査からソリューション選定、実施までトータルでお手伝い可能です。ご相談だけでも構いませんので、まずはお気軽にお問い合わせください。
 

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アクセンチュア株式会社にて、スクラッチ・パッケージ開発のデリバリー部隊に所属。100人規模のSIプロジェクトを多数経験。SI経験15年以上。経験領域はアプリ、IF、データ基盤、インフラ。クライアントファーストを信条にソリューションの提案からデリバリーまで幅広く実施。

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