メタバースビジネスの現状とこれから

メタバースビジネスの現状とこれから

Teppei Maejima

Teppei Maejima

こんにちは、コンサルタントの前島です。

昨今、大きなトレンドとなっている「メタバース」。2021年にFacebookが社名を「Meta」に変えたことで、一層注目を集めるようになりました。

メタバースとは、一言で言うと「ネット上の仮想空間」のことです。「ちょっとした非日常体験で、お遊びにすぎない」と思っている方もいるかもしれませんが、すでにさまざまな企業がビジネスでの活用を始めています。

そこで今回は、メタバースビジネスの現状と活用のポイント、そして進出の際の注意点についてご説明します。

メタバースの活用が進んでいる業界

メタバースが話題になっているとはいえ、「まだメタバースを体験したことがない」「どんなビジネスがあるのかわからない」という方は多いと思います。そこでまずはメタバースの活用が進んでいる業界についてご紹介します。

メタバース×ゲーム業界

メタバースとの相性がよく、ビジネスでの活用が進んでいるのはゲーム領域です。

バーチャルグッズ販売、ショップ開設

世界で3億5000万人以上のユーザーがいて、日本でも大人気のオンラインバトルロイヤルゲーム「Fortnite(フォートナイト)」。高級ファッションブランド「バレンシアガ」は、バーチャルストアでキャラクターのスキン(コスチューム)などのデジタルファッションを販売しました。

オンラインゲームプラットフォームの「Roblox(ロブロックス)」では、「グッチ」がゲーム空間に期間限定のバーチャルスペースをオープン。NIKEもバーチャルワールドを開設しました。

こういったハイブランド・有名ブランドがメタバースに進出する理由としては、リアルでの商品販売が伸び悩むなか、若者に人気のあるゲームとコラボすることでブランドに触れるきっかけづくりや、新たなビジネスの可能性の模索があると考えられます。

メタバースの土地売買

メタバース上の土地は、リアルの土地と同じように売買可能です。ブロックチェーンゲーム「The Sandbox(サンドボックス)」や仮想空間プラットフォーム「Decentraland(ディセントラランド)」を中心に、さまざまなサービスで活発に取引がおこなわれています。

リアルの土地を売買するのと違って登記などさまざまな手続きが不要なほか、唯一無二であるという希少性などから人気に火が付き、土地価格は一時高騰。2022年2月に平均価格は1万6300ドルに達しました。ところがその後ブームは落ち着き、価格は下落。2022年6月には3300ドルと暴落しました。取引量もピーク時から90%以上減りました。

ただメタバース上の土地を活用したビジネスは今後活発になっていくと期待されています。すでに土地売買の仲介やメタバース内に設置する広告の代理店も登場しており、さまざまな関連ビジネスも生まれてきそうです。

メタバース黎明期と進化するウェアラブルデバイス

メタバースはバーチャルグッズや土地販売にとどまらず、バーチャルオフィスやイベント開催などさまざまな場面で活用され始めています。Fortnite上で、米津玄師や星野源など有名アーティストが音楽ライブを開催したことも話題になりました。

2025年まではこういったチャレンジを繰り返してメタバースの可能性を探る「黎明期」だといわれています。

それに並行する形でVR・ARゴーグル、アップルウォッチなどのウェアラブルデバイスの改良・開発も進んでいます。今は高価なこともあって使用している人は多くありませんが、2025年〜30年にかけては一般にかなり普及するでしょう。

電話からスケジュール管理、体温計測まであらゆることがウェアラブルデバイスに集約されれば、スマートフォンを使わなくなる日もくるはずです。

スマホが手放せない日々を考えると「そんなことあり得ない」と思うかもしれませんが、ガラケーからスマホに乗り換えが進んだ時期を思い出してみてください。電話やメール機能がメインだったガラケーと比べて、スケジュール管理や電子決済機能など便利機能が搭載されたスマホは便利で、いつの間にか自分も周囲もみんなスマホを利用するようになっていたと思います。

ウェアラブルデバイスがより使いやすく、手が届きやすくなれば、学校や仕事から帰ってきたらすぐにVRゴーグルを装着し、バーチャルの世界で友人との会話を楽しむといった生活が日常になるかもしれません。

これからメタバースの活用が進むといわれている業界

ではメタバースが当たり前となった時代に、どういった関連ビジネスが考えられるのでしょうか。活用が進むといわれている業界やビジネスを具体的にご紹介します。

医療業界

コロナ禍でオンライン診療がかなり普及し、離島に住んでいても、ネットをつないで東京などの病院の医師の診察を受けられるようになりました。

ウェアラブルデバイスを活用すれば、自宅療養する患者の心拍数をオンラインで継続的にウォッチし、診察の必要性の判断や食事指導などにつなげられます。

すでに病院によるメタバースの活用検討も進んでいます。順天堂大学と日本IBMは2022年4月、メディカル・メタバースの共同研究を始めると発表しました。メタバース上に「順天堂バーチャルホスピタル」を構築し、患者に仮想の病院を体験してもらったり、説明が難しい治療を疑似体験してもらったりすることで、患者さんの不安を取り除くことができるかといった検証をおこなっていくとのことです。

オペレーション分野

業界ではありませんが、メタバースはオペレーションの変革につながると期待されています

たとえば新人研修では、一般的に紙のマニュアルや映像を使って学んだり、現場で先輩社員の動きを見たりして、オペレーションを覚えていきます。ですがこれは「知った」「見た」「やってみた」にとどまり、これだけで現場ですぐに使えるスキルが身につくわけではありません。

メタバースの特性を活かしてメタバース上で研修をおこなえば、この状況が大きく変わります。
VRゴーグルをつけてメタバース上で先輩の作業をマネして材料を加工したり料理をしたりすれば、作業を“実体験”できます。たとえ失敗しても材料は無駄にならず、ケガをすることもありません。

工場作業や飲食店の調理のほか、原子炉内の作業や火山の調査などの危険が伴う現場、医者の手術の練習などにも活用できると期待されています。

メタバースを活用して「座学」や「体験」ではなく、「経験」でオペレーションを学べるようになれば、より効率的・実践的にスキルが身につくはずです

メタバースをビジネスで活用する際のポイントと注意点

若者はFortniteやMinecraftなどのゲームを通じて、リアルとバーチャルを行き来することに慣れてきており、メタバースが普及する“土台”はできつつあります。

メタバースを活用したビジネスは、企業がこれからの時代を生き残っていくための一つの手段です。ただ、その際には以下の点を頭に入れておいていただきたいと思っています。

メタバースビジネス創出のポイント

二次元の世界とメタバースのもっとも大きな違いは「体験の有無」です。

たとえばWeb広告は、今はサイトやアプリに掲載して見てもらうだけですが、メタバース上では広告そのものをバーチャルで再現し、商品などを今まさに手で触っているような仕掛けができるかもしれません。これまで得られなかった、体験です。

今やっているビジネスを単純にメタバースに置き換えるだけでは、最初は注目されても、短期間で忘れられてしまうでしょう。

メタバースでビジネスをおこなう際には二次元とは違う、メタバースならではの新しい体験を消費者・利用者に提供することが大事です。自社ではどのようなメタバースの新体験を生み出せるのか、ぜひ考えてみてください。

メタバースビジネスの注意点

メタバースを活用するうえで、気をつけなければいけないのが、法整備が追いついていないという点です。

メタバース内の経済では、基本的に仮想通貨が使われます。グッズ購入や収益の現金化のためには、仮想通貨と円やドルの交換が必要です。手間や手数料がかかるうえに、税金なども不透明な部分が多く、どの事業者も手探りの状況です。

またメタバースの土地価格が大暴落したことからもわかるように、ボラティリティはかなり高いといえます。企業が取り組む際には、一定のリスクがあることは理解しておくべき点です。

まとめ

メタバース関連ビジネスはまだまだ立ち上がったばかりですが、大きな可能性を秘めています。単純に便利・面白いというだけでなく、二次元で生じていたさまざまな制限を取り払えるという期待もあります。

たとえばメタバース上では、原則として性別や年齢、国籍、身体的特徴は関係ありません。例えばかわいいものが好きな男性が女性のアバターを選択して女性の服を着ていても、白い目で見られることはありません。障害があって歩けない人がVRゴーグルをつけてメタバースの世界を疑似体験し、自分の脚で走り回ることもできるでしょう。

メタバースで本来の自分を表現したり、やりたかったことを実現したりすることで、現実世界でも前向きになれるかもしれません。

距離の制限もなくなります。世界的アーティストのメタバースライブで、地方の町工場が作ったアーティストのグッズを販売することもできるのです。ビジネスの芽もたくさんあるのです。

「メタバースをまだ理解できていない」「自分たちのビジネスでどう活用できるのかわからない」という企業の方は、どうぞLIGにお問い合わせください。一緒に考えていきましょう。
 

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Teppei Maejima
Teppei Maejima Strategy&Consulting / Consultant / Partner / 前島 哲平

アクセンチュア株式会社にて、通信・メディア・エンタメ業界を中心に、営業改革(SFA/CRM)、CX(カスタマーエクスペリエンス)、デジタルマーケティング、分析基盤、個人情報の匿名加工、ERP/BPRなど約10年間に渡り、デジタル化戦略 & コンサルティングに従事。LIG入社後は、DX推進によるデジタル化戦略を支援している。

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