東工大・地球生命の研究と一般消費者との接点を探る【ワークショップ事例紹介】

東工大・地球生命の研究と一般消費者との接点を探る【ワークショップ事例紹介】

あきほ

あきほ

こんにちは、デザインコンサルタントの佐藤です。

株式会社LIGのストラテジー&コンサルティング事業部では、デザイン思考に基づいたワークショップをお客様の課題に合わせ設計し、提供しています。

今回の記事では、東京工業大学地球生命研究所(EARTH-LIFE SCIENCE INSTITUTE、以下ELSI)でワークショップを行いましたので、その様子をお伝えします。

ワークショップの内容

ワークショップの目的

ELSIでは、産学連携していきたいという思いが以前からあるものの、研究内容が惑星地球の形成、初期地球生命系、地球生命進化、宇宙における生命と日常生活とは関連性がなく、企業や一般消費者との接点はあまりありませんでした。しかし、文部科学省からもらえる補助金交付の期待は下がり、定常的に資金を生むような事業アイデアの創出の必要がありました。

これまでもさまざまな取り組みを行ってきましたがなかなか結果が出ず個人単位でアイデアを出すのは難しかったこと、ニーズや実現性を考えてしまうとアイデアを出すのが難しいことから、今回は強制発想法を用いた、研究内容を活用できる一般消費者向けサービスのアイデア出しをテーマにワークショップを開催することになりました。

強制発想法についてはこのあと詳しく説明しますが、研究内容と、それとまったく関係ない事柄を掛け合わせることによって、これまで思いつかなかったような事業アイデアを引き出すことが目的です。

強制発想法とは

今回のワークショップでは狙ってニーズにマッチしたアイデアを発想するのではなく、偶発的に生まれる飛躍したアイデアを量産し、その後ニーズや可能性を考慮し収束させていく強制発想法という考え方に基づき、アイデア出しをしました。

研究内容に関連する要素✖️関連のない要素=アイデア

異質な情報を組み合わせ、それらを統合することで新たなアイデアを発想していきます。

また、アイデアを出していくにあたって下記を参加者に意識してもらいました。

  1. 質より量を重視しよう
  2. 大胆なアイデアを歓迎しよう
  3. ジャッジをしないようにしよう
  4. 実現可能性は忘れよう
  5. 正確性は忘れよう

ワークショップの流れ

ワークショップは5つの手順で行いました。

  1. キーワードの選定
  2. キーワードの構成要素を分解
  3. 統合
  4. アイデア収束
  5. 発表

キーワードの選定

研究内容に関連するワードと全く関連性のないワードを2つ用意します。

研究内容に関連する内容、例えば地球の起源と、関連のない要素、例えば夏を用意します。

キーワードの構成要素を分解

2つのワードについて、それぞれの構成要素、機能、特徴などのデザイン要素を抽出します。

例えば地球の起源だったら起源時の地質・水質、夏だったら祭り、プール、暑い、というように分解することができます。その分野の知識がない人でもわかるワードに分解することを意識します。

統合

抽出した各要素を強制的に結びつけることで、新たなデザイン要素(アイデア)を発想します。

例えば、起源時の地質・水質とプールを掛け合わせることによって、地球が誕生した当時の水質を再現したプールを発想します。

収束・発表

発散したアイデアの中から各グループが実現したいアイデアをピックアップ。コンセプトやシナリオを作成し、グループごとに発表します。

誰をターゲットにするのか、コンセプトは何にするのかなど細かく考えていきます。

今回の開催者井田茂先生にインタビュー

ワークショップ開催後に、今回のワークショップの開催者である東京工業大学 地球惑星科学専攻 井田研究室 井田茂先生にインタビューしました。

井田茂先生1984年京都大学・理学部物理系を卒業、1989年東京大学・院・地球物理学専攻を修了。東京大学・教養・助手、東京工業大学・地球惑星科学科・助教授、教授を経て、2012年から現職の東京工業大学・地球生命研究所・教授。

ビジネスへの転換が難しい分野

ーー産学連携していきたいということは課題としてお伺いしていましたが、ワークショップの前に感じていた課題感を改めてお伺いできますか。

我々の研究している分野が直接ビジネスと結びつく分野ではないんですね。だから会社のほうからニーズは当然ありませんでした。技術を提供することはできないので、モノの見方、コンセプト、視点をどこにおくか、発想などで連携できるかなとは思っていたのですが、やり方がわからない。ポテンシャルはあると思うけどやり方は全然検討もつかないという状態でした。

ーーこれまでアイデア発想にいき着くまでのプロセスはどういったものだったのでしょうか?

今回のように大勢でディスカッションするのではなく個人ベースで考えていました。具体的なアイデアもないまま企業訪問していたので、企業も「我が社にとってどういうメリットがあるんですか」となって門前払いされてしまっていました。

ーービジネスへの転換は難しいと思いますが、分野が発展していくメリットはなんだとお考えですか?

データを論理的に解析して本質を抜き出すスキルやはっきりした答えがない難問を解決するスキルなどは研究者が一般に得意としますが、我々の分野ならではというものはモノをどう見るかというところで、科学以外の分野にもいかせるのではないかと思っています。

宇宙について研究していますというと「そんな壮大なことを研究されているんですね」とよく言われるんですが、研究者はそのようには考えていないんですよね。宇宙について考えるときは視点が宇宙スケールになるし、十億年というスケールで考えたり、一方で化学反応を考えるときには10のマイナス6乗秒という短い時間で考えたりすることが自然になっています。

そのようなスケール変換する見方は企業活動にもあると思います。グローバルに見たり、一方でディテールを詰めなきゃいけないときは狭い視点で考えたり。視点を瞬時に変えてモノを考えることは色々な分野に役立つんだろうなと思いつつ、なかなかうまくできないなというところですね。

ーーワークショップに期待された効果はなんでしょうか?

単に産学連携ではなく、ビジネスの世界のおもしろい部分と繋がっていきたいと思っていました。大学にいる先生のほとんどが一般企業で働いたことがない人たちなので、ビジネス側の人で我々の立場をわかってくれる人がコーディネートしてくれたら、何か接点が作れるんじゃないかと期待していました。

ーー今まではこういった取り組みはやっていたのですか?

以前外資のコンサルティング会社に頼んで全部英語でやってもらったことがあります。普段自分たちが考えていないことを引き出してもらおうというのが目的だと思うのですが、英語だと日本人が発想を転換させるのが難しかったですね。ELSIには外国人の学生もたくさんいるので、参加したアメリカ人は楽しそうにやっていましたが。

あとは欧米的な考えなのかもしれませんが、今日のワークショップのように課題が与えられて解いていくというより、グループ内で主張をぶつけ合うようなフリーディスカッションが重視されていたんですよね。文化とか受けてきた教育の違いだと思うのですが、日本人にはフリーディスカッションになった途端に難しくなってしまう。発想方法を変えるというところまでいきつかなくて、同じワークショップを次の年もやりましょうということにはならなかったですね。

業界特有の問題に向き合ったワークショップ

ーそのようななかでこちらからお声がけさせていただいた際、LIGのワークショップをやってみようと思ったのはなぜでしょうか?

よくわからなくてもまず踏み出さないことには何も始まらないので、せっかくそういう機会を作ってもらったならやってみたいと思いました。

ーー本日ワークショップを受けてみていかがでしたか?

今日来てくれた学生は研究室の学生中心で、多くの人が「何をするのかわからないし、先生に誘われたから来た」という感じだったと思いますが、僕含め多くの人が楽しんでいた印象でした。普段使わない頭の部分を使った感じで、おもしろかったです。

一方で強制発想法のように、強制的にアイデアを出さなければ、企業の人とコネクション作ることができないんだなと思いました。我々だけで考えてもいつもありきたりなアイデアしか出ないので、発想を変えなければいけないんだということがわかりましたね。

ーー今日出たアイデアは先生の目にどう写りましたか?

自分たちだけで考えたらとても出ないアイデアだなとは思いましたね。アイデアを引き出してもらうだけでなく、違う形にしてもらったという感じがします。自分たちの研究はこんなふうにアレンジできるんだと感じました。

ーー先生方も学生さんもみなさんアイデアを出されていた印象でしたね。

学生のほうが積極的でしたね(笑)。柔軟な発想という点では教授よりも大学院生とか研究員とか若い人たちのほうができるんだなと感じました。

ーーワークショップのよかった点を教えてください。

我々の業界特有の問題をわかってもらったうえでワークショップを作ってもらったのがすごくよかったと思います。こちらの課題を次のMTGまでに必ずフィードバックしていただいたのもよかったですね。以前やったワークショップは型にはまったもので、今回はMTGを重ねるなかでどんどん求めていたものに近づいている感覚がありました。

ーーありがとうございます。一方で、もう少しこうして欲しかったという点はありますか。

もちろん最初は日本語でやるのがいいと思うのですが、外国人の研究者も多いので、次回は英語でもやっていただけると嬉しいです。ワークショップの実施について研究所内の全員に英語メールを流したのですが、興味があるから次は英語でもあるといいねというレスポンスをもらっています。

ーー英語もぜひやっていきたいですね。日本人が英語で発想するのは難しそうですけど、うまくできれば英語だとまた違った発想が出てきそうです。

「モノの見方」からビジネスとの接点を作りたい

ーー今後やっていきたい取り組みがあれば、ぜひ教えてください。

我々のここが役に立ちますよって押し売りするのではなく、研究とビジネスとの接点を作っていきたいです。

今、文学部がSDGsやデザイン思考という観点でどんどん企業と連携していっているんですよね。普段のビジネスと少し異なる哲学や宗教学、民俗学の視点が求められているのだと思うので、私たちも接点を作っていきたいと考えています。

ーー最後に、今後LIGでワークショップをやろうか検討している方にメッセージをいただけますか。

文科省は研究機関に対し、国からの予算を減らして産学連携をして自立していってほしいと考えているので、大学や研究所はおそらく同じ悩みを抱えているのではないかと思います。

産学連携が難しい分野では、自分たちの今までのやり方では企業にアプローチするのが難しく、自分たちのほうから変わっていかざるを得ません。発想方法を変えるようなワークショップは受ける価値があると思います。

さいごに

井田先生、ELSIのみなさん、ありがとうございました! 以上、株式会社LIGが提供しているワークショップの内容をご紹介いたしました。

LIGにはコンサルタントとデザインコンサルタントが在籍しており、デザイン思考の知見があることが強みです。パッケージ化されたワークショップを提供するだけでなく、課題や参加者に合わせた設計もしています。また、ワークショップの先の、アイデアの実現性やビジネスモデルの検討も行っています。

普段のアイデアの出し方でいきづまってしまっている方、新しいアイデアを出したい方、既存のモノの見方にとらわれない発想ができるようになりたい方はぜひLIGにお問合せください!

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あきほ
あきほ / 佐藤 暁帆