DX・AIを解説!デジタルデータを今後どのように活用していくか?

DX・AIを解説!デジタルデータを今後どのように活用していくか?

Osamu Yamakami

Osamu Yamakami

昨今DX(Digital Transformation)AI(Artificial Intelligence / Applied Intelligence)についてよく耳にしますが、実際にどんなものなのかわからない方に向けて、具体的に説明します。

AIを導入するにあたって少しでも判断材料になれば嬉しいです。

DX台頭の背景

10年前にはDXという言葉はありませんでした。インターネットにしろデジタルデータにしろ、それらに対してまだ半信半疑であったのと、それらはおしなべて試験的な試みであったというわけです。旧来の電話回線とIP電話は混在していた時代であったし、インターネットは既存メディアの補佐的な役目しか担っていませんでした。

技術的にも電話回線からISDN、ADSL、そして現在の光回線と試行錯誤を繰り返してきました。PC端末やソフトも様々なアップデートを繰り返し発展します。なかでもオープンソースは素人が作った趣味のシステムであるという認識が大多数でした。

そして、現在に至りデジタルデータはやっと確信的な方向に向かって信頼できるシステムであるという認識になりました。全世界が国家をあげて行うプロジェクトに発展したというわけです。

この様々なデータ(新聞や雑誌、ラジオやテレビなどのデジタル配信、これまで会社で紙で処理してきた内容のペーパーレス化など)はデジタイゼーションとして、これから先もどんどん進んでゆきます。インターネットの発展、手元のデバイスの高性能化、クラウドシステムなど、デジタイゼーションを推進するにあたって心配事がますます減少してきました。

Kindleなどの電子書籍で読書をしている人も多いと思います。電車の中で新聞を広げている人は滅多にいなくなりました。コミュニケーションはLINEやSlackで行っている人が大多数でしょう。会議の度に資料を印刷して配布している企業は今はどれぐらいあるでしょう。DXの前半部分は自然と進んでいるのではないでしょうか。

さて後半部分はどうでしょうか。つまり、デジタルデータをどういうふうに活用していくかというデジタイゼーションの部分です。

もっとも簡単に理解する方法として、アナログ時代のワークフローをそのままデジタルの世界に持ち込むという方法があります。役員だけに向けて配布していた紙資料は、デジタル化された際には閲覧の権限設定を行うことになります。システムの不具合を発見したエンジニアがかつては緊急の電話をしていたならば、電話がIP化した現代では、サーバーアプリケーションが不具合を検知し指定の電話番号にコールすることができます。

デジタル化することでワークフローやサービスをデジタル環境に合わせて再構成・最適化していくことになります。これが後半部分のデジタイゼーションになります。ある教科書ではここまでがDXであるという説明をしているものもありますが、実際のところそうではありません。

AIによる合理化・最適化が大事

サービスや仕事はもとをたどると人間がやっていたものです。

つまりDXの中身は古来より人間が考えて実行してきた過程をデジタルで再現するというプロセスであると言っても過言ではありません。逆にいうと、人間が持っている能力外のことをデジタル化を推し進めることで実現することは今のところないということになります。

当たり前の話ですが、価値のないコンテンツは紙に印刷してもPDFにしても結局は売れません(デジタル化することでひょっとしたら売れる機会を増やすことはできるかもしれませんが)。

ここ、つまり、後半部分のデジタイゼーションで大切なのはそのデジタルデータの活用、つまり合理化と最適化です。

合理化と最適化となると非常に曖昧かつ抽象的な言葉になりますが、ここまでくると我々の気持ち的に様々な問題意識と課題が上がってくるはずです。ここのあたりがDXの核心の部分であると思うと間違いないと思います。

データの量と質によってできることとできないこと

我々が業務フローやお客さんの購入フローなどをデジタル化した際に様々な合理化と最適化をしたいと考えます。

例えばECサイトで過去の購入履歴を降順で並べるというのは、今となっては常套手段でしょう。ここで昇順で並べようと考える人はほとんどいません。私たちは直感的にここ最近で購入したものの履歴を見たいと思いますし、そうすることで便利になっているはずです。

しかしもっと最適化を進めようと考えたときにはどうでしょう。例えば購入履歴から購入の期間が比較的規則的なものがあるかもしれません。過去の購入履歴から定期的に購入しているものというパターンがあれば、ある人がECサイトを開いたときにその履歴をそのパターンで表示すれば購入される機会が増えると思います。またその商品には(商品の消耗や減価償却によって)特有の購入間隔がすでに存在するかもしれません。

さてここで大きな問題となるのが、解析や分析に値するデータの量とその質です。つまるところデジタル化されたとしてもデータが少ない時期には最適化が非常に難しいということになります。サービスインして間もないもの、データが少ないもの、これからの予測がしがたいものに対しては、DX/AIは非常に適用しづらいのです。

また、その解析や分析に使うデータは構造化されたデータである必要があります。構造化されたデータとは、例えば人物Aに対応する趣味A’があるとき、人物Bに対してもB’の趣味が対応しているというデータでなくてはなりません。Aが趣味について散文的に語ってくれた音声ファイル、Bも同様に自分の趣味についてインプロビゼーション的に語ってくれた音声ファイルは、その中身が構造化されていないことから学習データの質としては劣ってしまうのです。このデータ郡から何かを解析するのは非常に難しいのです。

しかしある人間の会話の音声データに対してその音声をテキストに書き起こしたデータが1対1で保存されているとしたら、どの音声に対してどのテキストが対応しているのかを解析できます。これは構造化されたデータだからです。この学習を繰り返すといずれは音声データを自動的にテキストに書き起こすことができます。

作業を効率化する際にデータを効率的に取り出すという戦略が必要になります。これは収集するデータによって最適化の結果が大きく変わるということなのです。

遊園地の来場者データがあったとします。データを収集する際、まず遊園地という特性から大人か子供であるか、年齢を収集するでしょう。日時や日付来場した時間帯も収集するでしょう。曜日や時間帯で何歳の人たちが来るのかある程度予想できるようになります。ここで更に自動車で来場した人、電車で来場した人などの情報が必要になるかもしれません。しかしここが屋内遊園地なのか屋外遊園地なのかで戦略はさらに変わります。ここではその日の天気という情報を収集する必要があるかもしれません。

このように解析するデータ、最適化するデータはその取得するものに対してどのようなデータを蓄積するかという戦略を練る必要があるわけです。

デジタルデータとAIの得意、不得意

DX&AIを理解するにあたって現在に技術ではまだまだ得意なことと不得意なことがあります。

大雑把にいうと、大量のデータから1つの結果を導き出すことには優れていますが、1つの結果から多数の選択肢を考え出すということはまだまだできません。また多数の情報から(例えば風景画像を解析して)詩を詠んだりすることはできません。AIが得意とすることは1つの結果を出すということです。

昨今では将棋のAIが次々と上段棋士を負かしてしまったニュースが話題になりました。これは次の一手という最良手をAIがニューラルネットワークを通じて出力したという結果になります。

またこれらのAIのタスクは「人間にとって判断が1秒もかからないもの」であるという側面があります。現在のAIが賢く機能するには、普段人間が簡単に判断できるものなのです。

ある書籍が現在のあなたにとって有用な情報であるかの判断は人間でも1秒ではできません。これはAIも同じなのです。彼等は人間と同様にパターン化されていないテキストデータを読むことは不得意です。

一方で人物の顔写真を見てそれが笑っているのか否かの判断は人間でも1秒以内で可能です。これはAIでも十分に判断が可能なのです。これは写真ではなくて音声データでも可能です。笑っている声なのか、そうではないのかの判断がAIにはできます。

ちょっと難しい言葉でいうと汎用人工知能はまだまだ未発達で、特化型の教師あり学習を通した人工知能が現在においてはもっとも実用性のあるものということになります。今すぐにでもAIを導入したいと考える場合には現在では教師あり学習を選択するのがベストプラクティスです。

さて教師あり学習では何が必要なのかということですが、インプットA(上記の例では人物の顔写真)に対して、アウトプットB(笑っているか否か)の正しいラベリングデータです。AIが顔写真を見るときに結果として出力しなければならないものに対して、正しいラベリングをしてあげるという人間の作業が必要になります。有効な結果を出すためには正しい教師データが必要になるというわけです。

ニューラルネットワーク、ディープラーニング

ニューラルネットワーク、ディープラーニングという用語は現在ではほぼ同じ概念を示していると考えて問題ありません。今現在ではディープラーニングという言葉のほうが優勢でしょうか。

いずれにしろ同じ概念ではありますが、そもそもは人間の脳の構造から由来してニューラルネットワークという言葉を使っていました。ニューロンの発火とその神経系の回路の全体をニューラルネットワークという言葉で医学的にすでに使われていたからです。機械学習を学ぶにはそういった意味でニューラルネットワークのほうがイメージしやすいと思うので、ここではニューラルネットワークという言葉を使います。

機会が学習する際に大切なのは構造化されたデータであるというお話をしました。これらのデータは、同様に構造化されたAIアルゴリズムによって解析されます。この解析をマッピングといいます。ある音声データが「A」と発しているものが「A」というテキストデータに対応しているということを発見して、それらをマッピングしてゆくわけです。

先ほど多数のデータに対して1つの結果を出すというお話をしました。人間の顔という要素、目や鼻や耳や口や年齢や男女、インプットには様々なデータがあります。笑っているという結果を導くためには、おそらく目や口に注目するに違いありません。目と口の形に注目し結果を導こうとするには少なくとも2つのデータを抽出し1つの結果を導こうとしています。これがニューラルネットワークの基本的な構造です。

そして同時に怒っているという顔を解析するAIがあったとしても同様の部分、つまり目と口に注目するかもしれません。もしかしたら耳が赤いなど、他の要素をデータとして取り込むかもしれません。こういった解析が一層目の解析になるわけです。

これらの解析をして例えばその人は幸せそうか、それとも苦労してそうか……などを判断します。一回層目の結果を次の複数のデータとして次の解析をはじめるのです。このネットワークと層の重なりがAIの実態です。

そしてこのAIのモデルは人間の脳、人間の神経系の発火装置を模して作られたものなので、小さな脳そのもののようです(それゆえにこれらの夢が広がっているわけです)。もちろん現在では実用に耐えられる機能はまだまだ限定的です。

AIの実践と適用

せっかくデジタル化した大量のデータがあり、実際に我々の業務にAIの実践をしようとしたとき具体的にどんなことをすればよいのでしょうか。ポイントは下記の3つです。

  • データ
  • パイロットプロジェクトの実施
  • トレーニング

データ

すでに私たちは様々なデータを持っています。

しかし、それらのデータはシステムもバラバラで形式もバラバラかもしれません。共有ストレージにエクセルで保存してあるもの、クラウドのRDBに格納してあるもの、jsonデータとしてAPIから取り出せるもの、あるいはオープンになっているものや権限設定で限定された人しか参照できないものなど、様々です。

それらを有用なデータとして統合する作業が必要です。先ほどの遊園地の来場者データは社内で保持しているものです。しかし天気のデータは気象庁などのAPIなど外部から取り出すものになるかもしれません(実際に気象庁はお天気APIを提供しています。130000の部分を都道府県コードに変更するとそれぞれの都道府県別の天気を取得できます)。

多くの企業はこれらのデータの統合に力を注いでいます。場合によっては巨額の投資をしている企業もあるようです。

パイロットプロジェクトの実施

とはいえ、データの収集に力を注ぐあまり、データ収集のみに注力すると本末転倒になります。そこで必要なのが、AIにできることとできないことをテストするためのパイロットプロジェクトです。ここではある程度揃ったデータを投入し何ができるのかを検証してみる必要があるでしょう。

例えば画像解析の際には、解析ができる種類の分析とできないものがあります。画像を解析するとき、大きく手を振っている人物が何をしているのか、何を求めているのかを解析するのは現在のAIは非常に不得意です。それは「さようなら」と大きく手を振っているのか、助けを呼んでいるのか、万歳をして喜んでいるのか、画像から解析するのは困難なのです。

これらを直感的に判断できる、つまりAIに何をさせるのか、何をさせると効率よく働いてくれるのかという判断を我々が知る必要があります。そのためにもAIを実際に使ってみて様々な試みをする必要があるでしょう。

コードを書かなくてもAIがGUIで使えるサービスがあります。AI Dynamics社が開発しているNeoPulseは、パイロットプロジェクトに使ってみることができます。もちろん本格的に使うこともできます。NeoPuluse Managerはデータモデルを作成することができるすぐれものです。

トレーニング

DX/AIを実現するためには、非常にたくさんのアイデアやテストが必要です。そして、非常に実践的な話に落とし込むには、あなたのアイディアをAIで実現させるのではなくて、AIで今現在実現できることとあなたのアイディアを照らし合わせて、どんなことがもっとも有効であるのかを考えるということが必要です。

そのためにはトレーニングが必要です。例えばAI For Everyone(すべての人のためのAIリテラシー講座)など優れた教材があります。

本当に実現するためには、より実践的な訓練が必要になります。その中で夢物語ではない実質的なディスカッションができるようになります。

少しでもDX/AIの正しい知識を身につけて、手元で何かしらを実現してみるというのが最良の方法です。

AI時代がはじまったばかりの今ですが、非常に興味深い分野だと思いますので是非挑戦してみてください。

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Osamu Yamakami
Osamu Yamakami DX / Application Development / Technical Director / 山上 修

武蔵野美術大学卒業後、デザイナーとして活動。徐々にWeb制作に関わるようになり現在はインフラ・バックエンドエンジニア。Web広告事業や大手ECサイト、大手旅行会社のシステムエンジニアを経てLIG入社。入社後はTech事業のマネジメントに従事。

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