皆さんこんにちは。ゲストハウスLAMP野尻湖でフィンランド式サウナ「The Sauna」を運営しております、カケルです。
突然ですが、僕の最近のマイブームは蒸留です。色々なハーブを摘んできては蒸留してサウナのアロマにしています。
え? こんなのが楽しいのかって? めちゃくちゃ楽しいんです!!
目次
そもそも蒸留の仕組みって?
蒸留の仕組みはシンプルです。
まず、蒸留の素材となるものと水を用意して、下から熱を加え蒸し上げます。すると、素材をくぐり抜けて芳香成分含んだ蒸気が出てきます。
出てきた蒸気を冷却して液化させるとアロマウォーターとエッセンシャルオイルに分かれて出てくる、というわけです。理科の実験みたいでめっちゃ楽しい!!
出てきたオイルはサウナのロウリュウとして使うのですが、たくさんの嬉しい反響をいただいております。
- ロウリュウとは
- 熱されたサウナストーンの上に水をかけて蒸気を発生させ、体感温度を上げるフィンランドの入浴方法。
ですが、今使っている蒸留機・蒸留方法は下記のような問題が発生しており、限界を感じております……。
- 現在の蒸留方法では時間がかかる
- 熱で素材の香りが飛んでしまう
これはもっと蒸留を勉強しなくては! と考え、今回とある場所へお邪魔しました。
蒸留をより学ぶために
今回、蒸留を深く学ぶために長野県でハードサイダーというお酒を作っているSon of The Smith HARD CIDERさん(以下サノバスミス)にお邪魔しました。
ハードサイダーって何?
りんごを原材料とした発泡酒。ビールのような口当たりなのに軽く、ゴクゴクと飲めてしまうめちゃくちゃ美味いお酒。アメリカのクラフトシーンで一躍人気となった。
サノバスミスさんは、2年前に長野県大町市に醸造所を構え、地元の果樹園でとれたリンゴとホップを原材料にハードサイダーを作っております。
一体どんな感じなのか! 早速いってみましょう!
醸造所に潜入!
今回、蒸留を教えてくれるのはこの方。
池内琢朗さん(通称:ハカセ)サノバスミスのサイエンティスト 兼 製造責任者。ポートランドの革命的醸造家「Reverend Nat’s Hard Cider」のNat Westに師事し、醸造研修・果樹栽培研修を繰り返し専門技術を習得。その知識の深さからハカセと愛称される。 |
カケル:ハカセ! 今日はよろしくお願い致します!
ハカセ:よろしく! まずはウチの醸造所を案内するよ
カケル:すげーー! かっこいい!
ハカセ:これが醸造設備だね。これでハードサイダーを作ってるよ。
ハカセ:できたものは樽に詰めて保管。製造から出荷まで全部ここでやってるんだ。
カケル:なるほど……!製造から販売まで全部自社でやるっていうこだわり、めちゃめちゃかっこいいっす。
ハカセ:ここが僕の研究室。いつもここで実験をやっているよ。
カケル:うおおおお。いかにも、The 研究室って感じだ! テンション上がってきた!
ハカセ:今日は減圧蒸留機を使って蒸留を勉強してみよう。
カケル:減圧蒸留機……?
ハカセ:簡単に仕組みを説明すると、まず蒸留機内の空気を抜いて真空状態にする。そうすると中の空気圧が低い状態になるから50~60度くらいの低い沸点で蒸留させることができるんだよ。
カケル:????????
ハカセ:うん、もっとわかりやすく説明するね。カケル君は山登りするよね?
カケル:はい! 山好きです!
ハカセ:山の上でお湯を沸かすと低い沸点でお湯が沸くのは知ってるよね?
カケル:あ〜〜たしかに! 山の上は気圧が低いからか! それと同じ現象を減圧蒸留機は作り出しているんですね。
ハカセ:そういうこと!
カケル:でもハカセ、沸点を低くさせることになんのメリットがあるんですか??
ハカセ:メリットしかないよ、カケルくん。まず香り成分は熱に弱いから、あまり加熱しすぎると匂いが飛んじゃったり、加熱処理したような雑っぽい香りがするんだ。だから低い沸点で蒸留したアロマは純度の高い香りがするんだよ。あと50~60度で沸騰するから早く蒸留できる。
カケル:なるほど! たしかにメリットしかないですね。自分がやっているのは常圧蒸留だから高い沸点じゃないと精油が抽出できないんですよね……。おまけに沸騰させるのに時間がかかるから他の仕事にも影響出ちゃって……。減圧蒸留器なら今の課題解決できそうです!
ハカセ:そうだね。とりあえず仕組みとメリットを理解できたところで、早速蒸留してみようか!
減圧蒸留機でアロマを抽出してみよう
ハカセ:今回はこれを蒸留してみよう!
カケル:ハカセ、これはなに?
ハカセ:カシスの葉っぱだよ。僕がこの前カシス農園の方からもらってきたんだ。
カケル:すげ!! 甘酸っぱくてめっちゃ良い匂いする!!
ハカセ:おお……たしかにこれはやばいねカケル君。これでロウリュしたら確実に飛ぶよ。
ハカセ:あともう一つがこれ。ホップ、ビールの原材料だね。
カケル:ホップ!!? こんなのからもアロマ取れちゃうんですか?
ハカセ:取れるよ。ビールの香りがするロウリュウができるね。
カケル:ホップロウリュでととのった後に飲む生ビール……。
ハカセ:最高だね。やっちゃお!!
STEP1 素材をフラスコに詰めていく
ハカセ:じゃあ、まず、カシスの葉っぱをちぎりながらフラスコに詰めていこうか。
カケル:了解です!! ちなみにちぎる意味はなんでしょうか?
ハカセ:葉っぱのこの葉脈の部分に香り成分が入っているから、千切るとアロマの抽出量も良くなるんだよ。
カケル:なるほど! そういう意味があるんですね。
カケル:ハカセ!詰め終わりました!
ハカセ:よし!最後に水を少量加えたらOK! 次の行程に行こう。
STEP2 フラスコ内の空気圧を下げる
ハカセ:これが減圧機だね。これでフラスコ内の空気をこれから抜いていくよ。
カケル:山頂の状態に近づけていくというわけですね!
ハカセ:フラスコをセットして……
ハカセ:減圧スタート。見た目ではわからないけどしっかり空気が抜かれてるよ。
カケル:おおお!すごい!!
ハカセ:よし、次のステップに行こう!
STEP3 加熱と冷却
ハカセ:減圧できたら次は加熱していこう。
ハカセ:フラスコを沸騰したお湯につける。三分の一位つけたら、全体に熱が行き渡るようにこのフラスコを回転させるよ。
ハカセ:今回は1分間に60回転のスピードで調節しよう。
カケル:すごい!! もう蒸気が出始めてますね。
ハカセ:そう! これが減圧蒸留機のすごいところ。フラスコ内の空気圧が下がってるから低い沸点で早く蒸留できる。この出てきた蒸気にカシスの香り成分も含まれてる。それを冷却して液化させるとアロマ水になるんだ。
ハカセ:今回は流水で蒸気を冷やしてみよう。フラスコをみててごらん。
カケル:あ!! ハカセ! もうアロマが出てきてます!!!
ハカセ:良い感じに出てきたね。アロマが完全に出切るまで蒸留を続けよう。
〜さらに蒸留すること20分〜
カケル:ハカセ! できました!!
ハカセ:素晴らしい! 結構な量のアロマが取れたね。
カケル:いや〜〜〜、減圧蒸留器初めて触りましたがめちゃくちゃ楽しいですね! なんといっても蒸留のスピードが速いし、香りも加熱処理された雑味がないからめっちゃいい匂い!
ハカセ:減圧蒸留器のメリットをしっかり実感できてるね! この調子でホップも蒸留してみよう!
カケル:はい!!
〜さらに30分後〜
どん!!!!
ついにカシスとホップのアロマが完成。カシスの甘酸っぱい芳醇な香りのアロマとホップのほろ苦くも香ばしいアロマ……。
これは最高のロウリュウができる予感!! お客さんにもぜひ体験してもらいたいのでイベントを開こう!!
The Sauna × Son of The Smith ロウリュウイベント開催!
取れたてアロマをサノバスミスオリジナルと、ピッカーズディライトの瓶に詰めて、
いざロウリュウ!!!
じゅわああああああああ
めちゃくちゃ良い匂い!!
この記事を読んでくださっている皆さんに香りお届けできないのが残念なくらい、良い匂いだ……。カシスの甘酸っぱいがおりがサウナ室内に広がって最高。
目を瞑ればカシス農園が目の前に……。ホップはビールの香りそのまんま。ビールを浴びるように飲むとはまさにこのこと!!
まじで飲んでるみたいでした。ロウリュウイベントに参加してくださったお客様も大満足の様子。
嬉しいコメントもいただきました(泣)。手間暇かけて作った甲斐があります。
ハカセ、ありがとう……!!
手間をかけた分だけお客さんの反応は返ってくる
今回、蒸留の仕組みと流れを見てもらった通り、かなり手間がかかって面倒くさく思えますよね。
「アロマだったら市販の買えばいいんじゃない?」
そう思う人もいるかもしれませんが、僕は蒸留したアロマにこだわっていきたいです。
なぜなら、手間は愛だから。The Saunaでも市販のアロマを使ったときと、蒸留して作ったアロマのロウリュウとではお客様の反応は全然変わります。
ほとんどのお客様が遠方からお越しいただいてる中、自分たちも同じくらい時間と労力をかけてお客さんが満足して楽しんでいただけるように準備しないといけない。まだまだ蒸留に関しては知識不足で至らないですが、今回の経験を礎に引き続き学びを深めていきます!
son of The Smith Hard Ciderさん、ご協力ありがとうございました!
- 株式会社サノバスミスさんについて
- HP:http://www.hardcider.jp
住所:長野県大町市常盤4748-1