「お客様の声からインサイトを見つけられない」根本の原因とは?JX通信社・松本健太郎氏インタビュー

「お客様の声からインサイトを見つけられない」根本の原因とは?JX通信社・松本健太郎氏インタビュー

Mako Saito

Mako Saito

こんにちは、LIGのマーケターのまこりーぬ(@makosaito214)です。

今回はJX通信社のマーケターであり、データの専門家である松本健太郎さん(@matsuken0716のもとへ再び取材にやってきました!

▼前回の記事

このたび、JX通信社さんがKAIZODE(カイゾード)」というソーシャルリスニングツールを新たに開発したとのことなんですが……。

「ソーシャルの声からお客様のインサイトって本当に見つかるんですか?」
「正しくお客様を理解する方法を教えてくださいよ!」

などなど、気になることをズバリ質問してきました。 商品開発やマーケティングに携わるみなさんは必見です! ぜひご覧ください。

松本さんとまこりーぬ

ico 株式会社JX通信社 マーケティングセールス局 マーケティングマネージャー 松本健太郎さん1984年生まれ。龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で”学び直し”。その後、デジタルマーケティング、消費者インサイト等の業務に携わり、現在は報道ベンチャーJX通信社にてマーケティング全般を担当している。政治、経済、文化など、さまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とし、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌にも登場している。著書多数、代表作に『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』

まこりーぬ:松本さん、新サービスのリリースおめでとうございます! そしてPR記事のご発注、ありがとうございます!(涙)

松本:新サービス「KAIZODE」では、あらゆる企業において消費者理解をもっと深め、売上につながる商品開発やマーケティング施策を促進させたいと考えています。まこりーぬさん、サービスを広めるためにぜひご協力をお願いします!

消費者理解、足りていますか?

まこりーぬ:「消費者理解をもっと深めて」とありますが、松本さんから見て、あらゆる企業の消費者理解はまだまだ足りていませんか? 「そこそこ理解しているよ!」なんて声が聞こえてきそうですが……。

松本:消費者理解って、お客様のニーズに対する仮説を発見する行為とも言えますよね。だとすると、消費者理解(仮説の発見):仮説の検証=1:1、あるいは2:1くらいのリソースをかけていいと思っています。しかし実際は、仮説の検証に多くの時間や費用が割かれているのではないでしょうか。

まこりーぬ:たしかに、検証のほうに時間かけちゃってますね……。

松本:釈迦に説法ではありますが、売上は商品サービスそのものではなく、お客様から生まれます。つまり売上を伸ばすためには、お客様に「そうそう、コレが欲しかったのよ」と言ってもらえるような商品サービスを作らなければなりませんよね。

「我々のプロダクトのポジショニングはここで競合がここ。この空いているエリアを攻めれば市場シェアが広がるはずだ!」みたいな机上の空論を並べるのではなく、お客様になにを届ければ喜んでもらえるのかを真摯に考える必要があると思います。

松本さん

松本:ちなみに市場が急成長・急拡大している場合、消費者理解の優先度は高くないかもしれません。営業やマーケティングに投資すればその分売上が伸びますからね。マネーゲームに近いです。

一方で、昨対比で市場の成長がマイナス〜数%プラスである場合、あるいは新しい市場を開拓しようとしている場合は、消費者理解の優先度はものすごく高いと考えます。自社の売上が伸びていないということは、つまりお客様のニーズに応えられていないわけですからね。

まこりーぬ:企業として消費者理解にきちんと向き合わないとヤバいよ! ということが非常によく伝わってきました。震えます。

「私はお客様を理解しています」という勘違い

松本:それに厄介なことに、多くの人が「私はお客様のことをちゃんとわかっています」と思い込んでしまっているんですよ。前回の取材でもお話ししましたが、人間は必ずバイアスを持っています。バイアスを持っている人がバイアスを持っている人を理解するのは簡単なことではありません。どうしたって自分たちにとって都合のいい消費者像ばかりを追いかけてしまうものです。

現に「お客様の声にもとづいて商品を開発したが全然売れない……」という状況が起きているのは、「自分は消費者を理解できている」と勘違いしてしまっているからですよね。4P(製品・価格・流通・販促)がしっかりお客様のストライクゾーンに入っているなら、それは売れているはずですから。

まこりーぬ:「お客様のことはわかっていますよ!」……って、もう簡単には言わないようにします。反省します。

松本:さらにモノが飽和している現代においては、「なにか困っていることはありませんか? 解決するのでお金ください!」と提案されても、「いやぁ、とくに困っていることはないです」ってなるじゃないですか。お客様自身が言語化できていないようなニーズ、すなわちインサイトを拾い上げることが、より一層企業に求められていますよね。

松本さん

松本:いやぁ、消費者理解って本当にめっちゃムズいんですよ。

まこりーぬ:そりゃリソースを割かざるを得ないわけですね……。「消費者理解ができている」とは、具体的にどういう状態を指すのでしょうか?

松本:お客様が朝起きてから夜眠るまでどういう生活をしているのか、一人ひとりのストーリーを把握できている状態、でしょうか。

たとえば複数のお客様が「この商品の上質なところが好き」と言った場合、その上質の定義って人によって異なるじゃないですか。にもかかわらず、みんな「上質=◯◯である」というたった一つの答えを見つけようとしがちなんですよね。ある人にとっては「上質=京都のお寺の侘び寂びの雰囲気」であり、ある人にとっては「上質=都内の高級ホテルのきらびやかな雰囲気」である。この振れ幅を理解することがとても重要だと思います。

まこりーぬ:な、なるほど……! ついついお客様をパターン化して言語化しようとしがちでしたが、消費者理解とは「こんなお客様もあんなお客様もいるよね」という振れ幅を知ることなんですね……!!!

松本:商品開発やマーケティング施策をチームで円滑に進めるために代表的なお客様像を社内へ共有することに価値はありますが、平均的なお客様像を作り上げることにはまったく意味がありませんよね。それは事実ではありませんから。

定性データを定量的に分析すると失敗する

まこりーぬ

まこりーぬ:いざ消費者理解を深めるために、私たちは具体的になにをしたらよいのでしょうか?

松本:消費者を理解する手がかりとなるデータを「定量」と「定性」に大きく分けた場合、どちらもバランスよく見ていく必要があると考えます。

というのも、定量データでわかるのは “What” だけ。たとえば「お中元になにを贈りましたか?」という調査に対して「1位はスイカ」という結果は出せても、「なぜスイカが1位なのか」はわからない。一方で、定性データでわかるのは “Why” 。「なぜあなたはお中元にスイカを贈るのか」はわかっても、「お中元にスイカを贈る人がどれだけいるのか」はわかりません。

まわりを見ていると、定量データばかり重んじられているケースが多いと感じます。「私たちはお客様のことをちゃんと理解できている」という思い込みのもと、定性データの調査分析は後回しにされがちです。

まこりーぬ:たしかに……。定性データって、インタビューするにしてもソーシャルリスニングするにしても労力がかかるので、とっつきにくいんですよね。ついついパッと出せる定量データからWhyを推察してしまっていました(涙)。

松本:そうそう、そうなんですよ。ソーシャルの声を拾おうとしても、膨大な投稿を一つひとつ見るのってめちゃくちゃ面倒ですよね。しかもノイズデータも多い。私も過去に何度かやってきましたが、3時間も経てば「もっとパッとわからへんの!?」と限界を感じます。そうしてみんなキーワードをおおまかにマッピングし出すわけです。

残念ながら、お客様の貴重なインサイトは出現頻度が決して多くありません。定性データを定量的におおまかに捉えようとすると、インサイトは埋もれてしまい、いつまでたっても見つからないんです。

まこりーぬ:私たちがなかなかお客様のインサイトを見つけられない根本の原因は、Whyを知れる定性データの調査分析を後回しにしがちだから、そして定性データを定量的に把握しようとして貴重な声を見逃してしまっているからなんですね……!

松本:……ということで、そんな課題を解決するためにJX通信社ではソーシャルリスニングツール「KAIZODE」を開発しています。

まこりーぬ:大変おまたせしました、ここからは「KAIZODE」について質問してまいります!(笑)

「KAIZODE」が優れている3つのポイント

まこりーぬ:さてさて、ソーシャルリスニングツールというとすでにさまざまなプロダクトがあると思いますが、「KAIZODE」はいったい他となにが違うのでしょうか?

①「投稿」ではなく「人」を分析する

松本さん

松本:第一に、一般的なソーシャルリスニングツールは「投稿」を分析しますよね。もちろん投稿数をウォッチすることも大切です。しかし商品開発やマーケティング施策に落とし込むためには、その人がどんなストーリーのもとで商品サービスに触れているのかを分析することが欠かせません。

たとえば、某モビリティサービスの乗車体験について調査分析したところ、こんな投稿を見つけました。

ツイートのイラスト

松本:投稿自体に移動手段を特定するようなキーワードは入っていませんが、前後の投稿から乗車中の体験であると検知しました。さらにはアカウントの情報から、この投稿者は「大人の女性でぬいぐるみをおともにして出かける趣向を持っていること」を特定しています。投稿だけでなく、人を分析している事例ですね。

まこりーぬ:すごい。こんなことまでわかっちゃうんですか。

松本:消費者が自発的にSNS上で実況中継しているストーリーを垣間見れて、しかも自社の商品サービスに触れているタイミングをしっかりと抽出できます。また、購入前なのか購入後なのか、消費者の購買フェーズ別にデータをチェックできる機能も備えているのが「KAIZODE」の特徴です。先日、この機能についてはプレスリリースを出させていただきました。お客様からも好評いただいております。

「ソーシャルリスニングツールから得たデータを施策に落とし込めていない……」という課題の原因は、「投稿」の分析に留まってしまっているからではないか、と個人的には考えています。そのため、我々のツールは「人」の分析に徹底的にこだわっていますね。

②ブランド名が入っていない画像まで検知する

まこりーぬ:人を分析するってたしかにすばらしい考え方だと思うのですが、実現するためには相当な技術力が必要なのでは……?

松本:手前味噌ながら、JX通信社のSNSデータ分析の技術は日本トップクラスだと思っています。私自身も入社後何度も驚いていているんですよ(笑)。

技術的な優位性の一つは、画像検知能力の高さ。事前にロゴデータなどを学習させておけば、ブランド名がキーワードに含まれない投稿もしっかりと検知します

ツイートのイラスト

松本:ちなみに、某飲料メーカー社の依頼で商品に関する投稿を洗い出したところ、商品名を含む投稿と、商品名を含まない画像のみの投稿は、同じくらいの数がありました。

まこりーぬ:同数! キーワードを含まない投稿を見逃してしまっていると、めちゃくちゃもったいないですね。

松本:また、さきほど例を出した某モビリティサービスの乗車体験調査では、「アンケートやインタビューを通じて得た情報よりも、こうして乗車中の写真つきの投稿を見たほうがよっぽど生々しく、示唆が得られますね」というコメントをお客様からいただきました。こうした側面でも画像検知に魅力を感じてもらっています。

まこりーぬ:たしかにテキストと画像では情報量がグッと異なりますもんね。より臨場感を持ってお客様の声を聞けそうです。

③圧倒的な精度でノイズデータを除去できる

松本さん

松本:技術的な優位性のもう1つは、ノイズデータを除去する精度の高さです。

ソーシャルリスニングツールをすでに利用している人のお悩みとして多いのは、ノイズデータのクレンジングなんですよ。アフィリエイトやニュース、自社と関係のない投稿がどうしても混ざってしまうのですが、弊社はこれらノイズデータを除去する精度にかなり自信があります。

まこりーぬ:そこまで断言できるなんて、相当な自信ではないですか……!

松本:我々は「FASTALERT(ファストアラート)」という、AIを用いてSNSからリスク情報を報道機関や自治体へ届けるサービスを以前より提供してきました。自然災害や事件・事故に関する膨大な投稿の中からいかに重要な投稿をAIで速く見つけられるか、徹底して取り組んできたんですよね。

このデータ分析資産をマーケティングやPRに転用できないか、と生まれたのがこのサービスなんです。これが技術が優れている背景ですね。

まこりーぬ:なるほど、非常に説得力があります。圧倒的に強そうですね……!

お客様のささいな声から市場を広げよ

まこりーぬ:この「KAIZODE」は、お客様にどのように使ってほしいですか?

松本さん

松本:たとえば、「マスキングテープ」ってもともと工業用じゃないですか。しかしとある女性たちの「デコレーションテープとして使うとかわいい」という意見を取り入れた結果大ヒットしました。あとは「マウンテンバイク」も、普通の自転車を山道でも乗り回したいというニーズから生まれ、いまやオリンピックの競技にもなっています。どちらも「通常とはちょっと違う使い方をしているお客様の声」を起点に開発が進み、見事に売れた商品です。

お客様の声に対して「ふーん、なんだか珍しい使い方をしているんですね」で終わっていたら、これらの商品は生まれなかったでしょう。ささいな声を発見し、「こういう使い方をするっていうことはこんなニーズあるのでは?」と仮説検証していったからこそ、市場は広げられたんです。

コロナ禍において、売上マイナス30%なんて業界もあります。そんなときだからこそ、闇雲にゼロから売上を作ろうとするのではなく、いま抱えているお客様の声に改めて耳を傾けることに、もう少しだけリソースを投下していいんじゃないかな、と思っています。そこに「KAIZODE」が役立てると幸いです。

まこりーぬ:売上を伸ばすためにお客様の声を聞け、ですね。松本さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

まとめ:お客様の声に集中できる画期的なソーシャルリスニングツール

 

「KAIZODE」とは

https://kaizode.jp/
定性データからお客様のインサイトを見つけ、商品開発やマーケティング施策に活かすことを目指したソーシャルリスニングツール。投稿ではなく消費者のストーリーに焦点をあてた分析を重視しており、購買フェーズ別のデータも抽出できる。また、防災分野で培ってきたSNSデータ分析技術を活かし、高精度の画像検知とノイズ除去を実現。
 
▼こんな人におすすめ

  • SNSで口コミが発生するBtoC事業者さま
  • 売上を伸ばすために再度お客様のニーズを正しく理解したい企業さま
  • ソーシャルリスニングツールを使いこなせていない企業さま

ソーシャルリスニングツールって、Must(なくてはならないもの)ではなくNice to have(あったらいいもの)に当たると思っていたのですが……ことBtoC事業者様においては、もはやなくてはならないツールなのかもしれないな、と松本さんのお話を聞いて思いました。

お問い合わせすると自社のサンプルデータを抽出してくれるとのことなので、気になる方はぜひ試してみてくださいね!!!

「KAIZODE」について問い合わせる

さて、消費者理解という終わりなき旅にでましょうか……。

以上、まこりーぬがお届けしました!

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Mako Saito
Mako Saito LIGブログ編集長 / 人事部長 / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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