日本文学史上で第二位の発行部数を誇る、日本人ならほとんどの人が知っている太宰治の『人間失格』。
この物語のストーリーを読んだことがある人ならば誰でも知っているとおり、主人公の葉蔵は複数人の女性を虜にしてしまうというモテっぷり。挙句の果てには、女がいないところに行きたいと、モテることについて、もはや自身が望まないほどのモテっぷり! いわゆるダメンズの類ですが、物語に登場する多くの女性が葉蔵に惹かれ、そして不幸になっていきます(ダメですね)。
『人間失格』については、みなさんさまざまな感想があると思いますが、今回は「自他共に破滅するほど異性を引きつける葉蔵の魅力はなんなのか」に焦点を当ててみました。女性にモテたい男性諸君! これを見ればワンランク上の男になれる!? かもしれない(笑)。
『人間失格』とは
『人間失格』とは太宰治の半生を描いた作品といわれており、この作品が完成して数日後に太宰治が自殺してしまいます。
どういった経緯でこの作品ができ上がったかについては、蜷川実花監督作品で小栗旬さん主演の映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』もあるのでぜひご覧になってみてください。映画のタイトルのとおり、太宰治自身も複数人の女性を虜にするほどのモテっぷりです(笑)。
簡単にあらすじまとめ
東北の裕福な家庭に生まれた葉蔵が、自身の人間不信に対する思いとそれに救いを求めて、複数人の女性と関係を持つようになる。しかしさまざまなトラブルが発生し、やがて酒と薬に溺れるように。狂人であり人間失格として烙印が押されてしまうというストーリーです。
複数の女性を虜にする葉蔵のモテっぷり
葉蔵は複数の女性で関係を持つようになります。
ツネ子
カフェの女給。夫は刑務所。カフェに訪れた葉蔵の雰囲気に惹かれ関係を持つようになる。やがて葉蔵と入水心中(葉蔵は生き残る)。
シヅ子
雑誌記者の5歳の娘を持つシングルマザー。葉蔵は彼女と同棲しヒモ状態の生活を送る。
マダム
バーの主人で、葉蔵を男妾としてバーに匿う。
ヨウ子
葉蔵の妻。無垢な女性で葉蔵は初めて心から愛した女性ではあるが、あることがキッカケで破綻。
薬屋の奥さん
酒ばかりのみで衰弱する葉蔵と出会い、薬を処方するのですが、やがて関係を結ぶに至る。
葉蔵がモテる要素とは?
葉蔵がモテる要素はなにかについて考察してみました。その結果は以下なのではないかと思います。
1. 美男子
作中で葉蔵は「美男子」として描かれています。どんな時代でもイケメンや美男子であることはモテる第一の要素みたいですね。こんなことを書いてしまうと「俺はイケメンじゃないから無理」みたいなお話にもなってしまいますが、こればかりは髪型や体型や服装などを整えて、自分を磨いていくしかないのではないでしょうか。
第二葉の写真の顔は、これはまた、びっくりするくらいひどく変貌していた。学生の姿である。高等学校時代の写真か、大学時代の写真か、はっきりしないけれども、とにかく、おそろしく美貌の学生である。(出典:太宰治『人間失格』第157版、新潮文庫、2006年)
2. 女性の気持ちがわかる
作中で葉蔵は女性のことをこのように評しています。
用を言いつけるというのは、決して女をしょげさせる事ではなく、かえって女は、男に用事をたのまれると喜ぶものだという事も、自分はちゃんと知っている(出典:太宰治『人間失格』第157版、新潮文庫、2006年)
頼まれごとをして喜ぶということは、自分は誰かから必要とされている、役に立っている、喜ばれることをしている、愛されていることを確認できて自己重要感を満たされている……このように感じるということなのでしょうか。たしかに好きな異性から急に頼まれごとをされたら、「相手も気があるんじゃないか!?」と、なおさら嬉しい気持ちになりますよね(ただしやりすぎには注意です)。
意中の異性を口説くときは、適度なタイミングで適度にお願いごとをすることも一つの手かもしれません。
3. 近寄り易さ
幼少期の葉蔵と女性とのやり取りでこんな一幕がありました。
女は適度という事を知らず、いつまでもいつまでも、自分にお道化を要求し、自分はその限りないアンコールに応じて、へとへとになるのでした。実に、よく笑うのです。いったいに、女は、男よりも快楽をよけいに頬張る事が出来るようです。(出典:太宰治『人間失格』第157版、新潮文庫、2006年)
真っ先に思いついたのは、女性同士の他愛のないトーク。腹を割って話ができる仲間内であればいつまでも話を続けることができる、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。葉蔵のお道化を見た女性からしてみたら、こいつだったらなにを要求しても良いと感じてしまい、心を開いてしまうのかもしれません。さらに葉蔵もそのリクエストに答え続けてしまうサービス精神。結果的には女性との距離感を縮めることになったのでしょうね。
4. 時より見せる別面で女心を揺さぶる
シングルマザーのシヅ子と葉蔵とのやり取りで、以下のようなことがありました。
あなたを見ると、たいていの女のひとは、何かしてあげたくて、たまらなくなる。……いつも、おどおどしていて、それでいて、滑稽家なんだもの。……時たま、ひとりで、ひどく沈んでいるけれども、そのさまが、いっそう女のひとの心を、かゆがらせる。(出典:太宰治『人間失格』第157版、新潮文庫、2006年)
葉蔵が単なる「面白い人」であれば、女性からしてみては近寄りやすい人で終わっていたかもしれません。しかし、おどおどしているとか、酷く沈んでいるとか、別面(ギャップ)を見せつけられると、心が揺さぶられて注目してしまうのでしょうね。とくに時たまというところが、なおさらインパクトを残してしまい、酷く落ち込んでいる葉蔵は、母性本能をくすぐられることになっているのではないでしょうか。
まとめ
葉蔵のように魅力的な男性になるためには、外見の良さ(努力含む)も大きな要素のひとつになってきます。しかしそれだけでなく、巧みに女性との距離を縮めたり揺さぶったりすることで、初めてモテ男になれるということです。これであなたも葉蔵になれること間違いなし。
ただ気を付けるべきことは、葉蔵は破滅型のモテ男ということ。必ずしも女性を幸せにしているわけではないので、完全に模範とするのはおすすめしません(笑)。良いところだけをヒントにしましょう。モテ過ぎて失敗した太宰治のようにならないことをお祈りいたします。