みなさんこんにちは、LIGのマーケターのまこりーぬ(@makosaito214)です。
2020年は本当にたくさんのマーケターの大先輩を取材させていただき、コンテンツ作りの難しさやおもしろさを体感した1年でした。今回はそんな2020年の集大成ともいえる、年内最後のマーケター大先輩取材シリーズをお届けします!
テーマはずばり企業のマーケティング活動における「よいコンテンツの作り方」。取材相手はもちろんこの方! 株式会社ベイジ代表の枌谷さん(@sogitani_baigie)です!
株式会社ベイジ 代表/マーケター/デザイナー/ブロガー 枌谷 力 さん1997年にNTTデータに入社、4年間営業職を経験した後、2001年にデザイナーに転身。制作会社やフリーランスでキャリアを積み、2010年に株式会社ベイジ設立。BtoB領域を強みとするWeb制作会社の代表として、BtoBマーケティング、UX、デザイン、コンテンツ、組織デザイン、キャリア設計など、さまざまなテーマでイベント登壇、取材、寄稿等の活動を行っている。 |
何度も読み返したくなる、周りの人にもオススメしたくなる圧倒的なコンテンツを世に送り出し続ける枌谷さんに真っ向取材しました。企業としてコンテンツ作りに関わる全みなさま、ぜひご覧ください!!!
よいコンテンツの正体とは?
まこりーぬ:枌谷さん、本日はよろしくお願いいたします! 「よいコンテンツの正体とは?」という本題に入る前に、これから続く質問をぶらさないためにも一点すり合わせをさせてください。枌谷さんは、コンテンツ作りの目的を何に置かれていますか?
枌谷:企業としてお金と時間をかけてコンテンツを作る以上、やっぱり「事業に好影響を与える」っていうのが絶対条件ですよね。めちゃくちゃおもしろいし日本語としても美しいけど、事業になんの影響も与えないコンテンツだったら作る意味がない。
というか、オウンドメディアもWebサイトもホワイトペーパーもメルマガも、どんなマーケティング施策をやるにしても「よいコンテンツを作ることが大事」という結論に至ることは非常に多いですよね。もちろんそれぞれに一定の成功法則はありますが、よいコンテンツがなければなかなか機能しません。
まこりーぬ:おっしゃるとおりですね。それだけコンテンツはマーケティング活動のカギを握っているにもかかわらず、「よいコンテンツの定義」「よいコンテンツの作り方」は非常に曖昧で謎が多い領域です。本日はこれらを少しでも解き明かしていければと思います!
まこりーぬ:それでは枌谷さん、さっそくですが……事業に好影響を与える「よいコンテンツ」とは、ズバリどんなものでしょうか?
枌谷:定義するのはなかなか難しいところですが、私は2パターンあるかなと思っています。1つは、コンバージョン直結型。たとえば、制作会社を探すために「コーポレートサイト 制作」と検索するとベイジのコンテンツにたどり着き、求めていた情報と一致したので問い合わせる……といった、情報収集からコンバージョンに至るまでの一連の流れの中に組み込まれるコンテンツですね。この例の場合「よいコンテンツ」の条件とは、検索エンジンにきちんと引っかかってユーザーをコンバージョンへと導くことです。
もう1つは、長期記憶型。コンテンツを見た瞬間はなんのアクションも起きないけれども、数ヶ月後や数年後に「Webサイトが作りたい」となったときに、ベイジのことが思い出されてお問い合わせにつながるタイプのコンテンツです。この場合「よいコンテンツの条件」とは、記憶に残ることだといえます。あるいは、『ブランディングの科学』という書籍で使われている言葉を用いれば、「メンタルアベイラビリティを上げる」とも言えるかもしれません。
まこりーぬ:なるほど。前回の取材にもありましたが、ベイジさんはコーポレートサイトではコンバージョン直結型のコンテンツを、オウンドメディア『knowledge / baigie』では主に長期記憶型のコンテンツを発信されていらっしゃいますよね。コンテンツを作っているほとんどの企業は前者には取り組んでいるものの、後者はあまり作れていないように感じます。事業に好影響を与えるには、やはり長期記憶型コンテンツも作るべきなのでしょうか?
枌谷:もちろん、コンバージョンに結びつき、さらに競合が少なく上位が狙えそうなキーワードが存在する場合は、コンバージョン直結型コンテンツを優先して作ったほうがいいですよね。ただ多くのBtoBのように、そもそもコンバージョンに直結するキーワードの数が限られているケースや、わりと市場が成熟していて検索上位が簡単には狙えそうにないケースも存在します。そうなると長期記憶型コンテンツも並走して作る必要があると思います。
まこりーぬ:たしかに、どうがんばってもSEOで戦いづらい商材ってありますもんね。今回はせっかく枌谷さんにお時間をいただいていますし、まだまだ正攻法が未知数な「記憶に残るコンテンツ」について掘り下げてお聞きしたいと思います!
……まずは具体的なイメージを湧かせるために、多くの方にベイジさんのことを覚えてもらうきっかけとなったと思われるコンテンツの事例をいくつかご紹介いただけないでしょうか?
枌谷:「多くの採用サイトが間違っていると私が思う理由」というタイトルそのままの記事は、ありがたいことに「この記事を読んだことがあって問い合わせしました」と言っていただける採用担当者さんが少なくありません。最近はこのコンテンツをきっかけにIndeed社主催のイベントに登壇したり、採用サイトコンテストの審査員に任命されたりもしました。一番の成功事例と言えるかもしれません。
「未経験でも1カ月で即戦力クラスの知識が身に付く『webデザインドリル』公開」も実は長期記憶型コンテンツといえます。未経験からWebデザインをマスターするとなると1〜2年かかるのがふつうだよね……という前提があるなかで、「1ヶ月で身につく」と謳ったところが印象に残っているんだと思います。
あと、PVはそれほどでもないのですが、お会いするBtoBマーケターさんにはよく話題に上げていただくのは「BtoBの購買活動は本当に論理的・合理的か?」という記事です。BtoB=論理的な購買行動がおこなわれる……と思われがちですが、エモーショナルな側面も必要だという話をしています。
それと先日公開してバズった「成功法則が詰まったBtoBサイトの標準ワイヤーフレーム」はお役立ちコンテンツに見えると思うんですが、「ベイジってこんなコンテンツを無料で出してくれるんだ!」と長期記憶化させることを意識して作っていますね。
まこりーぬ:私が枌谷さんファンであることもありますが、ぜんぶ覚えています。すごいです……! これらの事例の共通点はいったいなんでしょうか?
枌谷:「読み手の固定観念を壊し、エピソード記憶化していること」でしょうか。今年一番多くの方に読んでいただけた「伝わる提案書の書き方」という記事を例に説明すると、まず「提案書作成には時間がかかる」「提案書ってどう作ったらいいのか調べてもわからない」と思っている人がいます。その人があの記事に出会うと、無料とは思えないほどみっちり体系立てて書かれたノウハウが学べ、さらには「提案書に時間を使うのは無駄だ」と中に書かれており、その固定観念まで壊されます。結果、その人の提案書の作り方が変わります。……このようにコンテンツがきっかけとなり考え方や行動が変わると、コンテンツに触れる前後の体験込みで、エピソードとなって長く記憶されるんですよね。
そしてこのレベルに至ると、コンテンツ単体のみで消費されないんですよ。「こんなにすばらしいコンテンツを作ってくれた人って誰なんだろう?」と、コンテンツ制作者にも興味関心が向くような気がしています。
まこりーぬ:なるほど……! 非常にイメージが湧きます! 私は「BtoBサイトを成功に導く180のチェックリスト」で行動が変わった人間の一人なんですが、いまだにいろんな人にオススメしますし、「こんなにありがたいコンテンツを提供してくれている人たちって、誰!? すごい! 好き!!!」ってなりましたもんね。私が枌谷さんとWACUL垣内さんと才流栗原さんを「BtoBマーケティングの三大天」と崇めているきっかけでもあります……!
枌谷:ありがとうございます。ちなみに、脳科学的にも「エピソードは記憶に残りやすい」と言われているんですよ。私も専門家ではないので簡単な説明にはなりますが、人間の記憶は「数秒しか残らない感覚記憶」「数分〜1時間程度しか残らない短期記憶」「長く覚えている長期記憶」という3つに分類されます。さらに長期記憶は「意味記憶」「エピソード記憶」「手続き記憶」※などに分けられるんですが、Web上のコンテンツで会社名やサービス名を覚えてもらうために転用できるのはエピソード記憶だけだと思います。
※意味記憶……知識として覚えていること。言葉の意味など。
エピソード記憶……体験として覚えていること。学生時代の体育祭の思い出など。
手続き記憶……体が覚えていること。自転車の乗り方やスケートの滑り方など。
エピソード記憶をコンテンツ作りに取り入れる方法として、「エピソードそのものをコンテンツ化する」という超どストレートなものもあります。ドキュメンタリーのような、ストーリー性の高いコンテンツですね。しかしビジネス系のコンテンツをなんでもかんでも物語のように語るわけにはいかないので、やっぱりコンテンツに触れる前後の体験込みでエピソード記憶化する方法が有効だと思います。
まこりーぬ:大変勉強になります! ……ちなみに、弊社の場合社長を砂浜に埋めるコンテンツがLIGのことを覚えていただく大きなきっかけとなったのですが、こういったおもしろエピソードコンテンツについてはどう思われますか……?
枌谷:おもしろコンテンツやストーリーコンテンツを作る才能をもった人がいるなら、めちゃくちゃアリだと思いますよ。「コンテンツは商材と結びつけなければならない」とよく言われていますが、社名を覚えてもらう役割のコンテンツと、商材を理解してもらうコンテンツが別でもいいんじゃないかなと私は思います。実際のところうちも提案書の記事をきっかけにWeb制作のお問い合わせをいただいていますしね。
まこりーぬ:安心しました。LIGとしてはおもしろコンテンツだけでなく、しっかり商材理解につながるコンテンツも作っていきます!!!
記憶に残るコンテンツの作り方
まこりーぬ:さてさて、ここからは「記憶に残るコンテンツを作り方」をうかがってまいります。て、手順のようなものって、ございますか!?
枌谷:言葉で説明するとごくごくふつうのことなんですが、まずはターゲットを明確にすることです。次はそのターゲットがどんな不安や不満を感じているのか、インサイトを深掘りします。そうして見えてきた不安や不満をなぞるだけのコンテンツだと「うんそうだよね〜」でおしまいなので、その不安や不満の前提となっているよくある固定観念が何かを考え、どう説得すればその固定観念を鮮やかに壊せるかまで考えます。
実は来年コンテンツ制作支援のサービスを始めようと思ってて、その中でコンテンツを作るための「コンテンツシート」を提供しようと思っています。コンテンツのテーマ、ターゲット、ターゲットがもつ固定観念、その固定観念を壊す提言、今後どう行動すべきかという提案……といった項目が並ぶイメージですね。
もちろんこのシートだけで100%記憶に残るコンテンツが作れるようになるわけではないんですが、少しは理想に近づけると思っています。みんなに自由にコンテンツを作らせると「自分の頭のなかにあるノウハウを10個に分解して書こう!」と安易にやりがちじゃないですか。「このコンテンツは誰の固定観念を壊すんだろう?」と考えながら書く意識をもつだけでも、ちょっとは変わる気がするんですよね。
まこりーぬ:枌谷さんのおっしゃるとおり、意識するだけでも十分記事の印象が変わるように感じます……! いただいたお話を踏まえていますぐいくつかリライトしたい、と思うほどです(涙)。
まこりーぬ:各手順に対して、気になる点をいくつか質問させてください。まずはテーマとターゲット設定についてなんですが、私自身難しさを感じています。メッセージを尖らせるためにターゲットは絞り込むべきと思いつつ、あまりにテーマがニッチ過ぎるとぜんぜん読まれずで……。枌谷さんはふだんどのようにテーマやターゲットを設定されていますか? ポイントがあればぜひ教えていただきたいです!
枌谷:薄まりすぎず多い、っていうバランス感は意識していますね。「このターゲットに刺されば絶対に仕事を依頼してくれる!」と狙いを定められるのであればピンポイントでもいいと思うのですが、そんなケースはあまりないので、少しでも輪を広げられるよう努力しますよね。ただ広げすぎるとどんどん内容が薄まってしまうので、ギリギリのラインを目指す感じです。
……ターゲット設定って、ルール化するのは無理な領域な気がしています。ちょうど先日「どうやったらインサイトって見つけられますか? ってよく聞かれるけど、そんな簡単に答えられるものではない」という話がTwitterで盛り上がっていたんですが、ターゲット設定もこの類のものではないかなと。
これらは商材によってケースバイケース過ぎるし、偶発性に頼らざるを得ない部分もあるので、ルール化して誰でもマネしやすくするのってたぶん不可能なんですよね。ルール化できず再現性がないからこそ人が介在して仕事をする価値がある部分ともいえます。適切なターゲットを見極めることやインサイトを見つけ出すことこそ、マーケターの仕事ですよね。
まこりーぬ:ぐ、ぐうの音もでないありがたいお話……! 精進いたします(涙)。先ほど「バランス感」という言葉がありましたが、枌谷さんご自身が現在のバランス感を身につけられた過程で活きているご経験はなんでしょうか?
枌谷:1つはやはりSNSですね。このテーマでツイートするとこれだけの人がいいねするとか、このブログはバズるかな? と思ったら意外とシェアされないとか。コンテンツの試行錯誤によって「このテーマはこれくらいボリュームがある」となんとなく把握している部分があります。もう1つは、受託のWeb制作会社としてさまざまなお客様から生々しいお話を聞いてきたことです。この商材でこういうターゲットを狙ったけどうまくいかなかったとか、実はこういうターゲットを狙っているとか、日々の会話のなかで勉強させてもらっています。マーケットと対話する活動、マーケットと対話している人と話す活動の蓄積な気がしますね。
まこりーぬ:強いていうなら、枌谷さんのようにマーケットと対話することこそが、よいテーマやターゲットを設定するための唯一の方法論と言えるかもしれませんね……!
枌谷:そうかもしれませんね。SNSもやらないし他のマーケターとも一切話さない人がターゲットを見極められるようにする方法って、現状私には思い浮かびません。
まこりーぬ:固定観念を壊す提案についても質問です。そもそも固定観念を壊せるだけのよい提案が自分の中にないとよいコンテンツは作れない、ということにつながりますよね……? 「そんないい提案うちにはできないよ〜!」という悲鳴が聞こえてきそうですが……。
枌谷:たしかにまったく知識がない人はよいコンテンツを作れないと思います。しかし企業であればある程度作れる気がするんですよ。だってWeb制作会社であれば、Web制作をしていない会社が知らない知識って絶対に持っているじゃないですか。そして専門家として「みんなこう思ってるけど実は違うんだよ」と言いたいことっていろいろありますよね。
「コンテンツが作れない」という人に話を聞くと、みんな「業界では当たり前のことしか自分たちはやっていないので発信する情報がありません」という発想なんですが、そうじゃなくて、ターゲットをきちんと業界外の人に設定することが大事ですよね。
まこりーぬ:たしかに、コンテンツのタネはきちんと探せばあるのに、ただ探しきれていないだけなのかもしれませんね。もう一つ質問で、すでにコンテンツを作っている企業様からは「そんなにたくさん固定観念壊せないよ〜! コンテンツ作り続けられないよ〜!」という悲鳴が聞こえてきそうなんですが、この点いかがでしょうか? 私自身の悲鳴でもあります(涙)。
枌谷:前提として、全コンテンツを固定観念壊す系にする必要はなく、おもしろ系やTIPS系もあるなかにときおり混ぜていけばいいんじゃないかなと思います。私自身も、固定観念を壊すべく気合いを入れて書いているのは数本に1本ですよ。
それにターゲットをズラしていけば、いくらでも作り続けられる気はします。たとえば、コンテンツ作りのノウハウでも「既にコンテンツ作りをしているが悩んでいる人」や「これからコンテンツ作りをする人のためのノウハウ」という風に切り口にズラせば、新しい固定観念が出てくると思います。
枌谷:あと、頭のなかにある固定観念だけではなく、コンテンツのフォーマットにおける固定観念を壊す、つまりコンテンツのテンプレートを壊すという方法もある気がします。最初に壊す人しかインパクトを与えられませんし、本質的なエピソード記憶からは少し逸れますが、テンプレートを壊そうとする姿勢をもつこと自体が非常に大事だと思いますね。
まこりーぬ:コンテンツのテンプレートを壊す……!
枌谷:たとえば、まこりーぬさんの活動を否定するわけではまったくないんですが、Twitterでフォロワーの多い人に取材して記事化するっていうのは取材コンテンツのテンプレになっていますよね。語る内容はそれぞれ違っていても、出てくる人はどのメディアも似ている。
まこりーぬ:はっ……! たしかに……!(涙)
枌谷:いろんな情報がすぐに手に入り、すぐに誰かが型を作るので、昔よりも早くテンプレ化するし、楽にマネできるようになりましたよね。TIPS系はいつの頃からか「◯◯の10の方法」みたいなタイトルが王道になりましたし、Twitterでは「◯◯に有益なアカウントです」というプロフィール文のもとビジネス小話がつぶやかれる。これらは陳腐化しているにも関わらず、みんなあまり否定的に捉えることなく、どちらかというと「正攻法だからすぐにマネしよう」とするじゃないですか。
もちろん我々もテンプレに近いコンテンツを作ることはあります。けれども自戒も込めて、テンプレをぶっ壊そう、あえて逆をいこうっていうひねくれ精神みたいなものが大事なんじゃないかなって思うんですよね。いつも他人のマネをしてそこそこの成果を得ることばかりやっている人が、いざターゲットの固定観念を壊し記憶に残すコンテンツなんて作れないんじゃないかなと。予定調和を崩そうとするチャレンジャー精神みたいなものが、やっぱり必要なんですよね。
まこりーぬ:ふだんできていないことをいざ必要なときだけやるって限界がありますもんね。だからこそ日頃から身の回りの固定観念に敏感になり、それを壊しにいこうとするチャレンジャー精神をもつことが、コンテンツの作り手には求められるということですね……!
枌谷:私がときどきTwitterでプロフィール文を逆に書いたり、プロフィール画像で子どものころからの成長記録を辿ったりするのは、まさに型にはまらないための訓練なんですよ。まぁそんなに崇高な意識を持っているわけでもなく、単に「山のようにいるビジネス系アカウントと自分も一緒じゃん」という嫌悪感を感じ、ささやかな抵抗をしているだけ……というのが正直なところですが、そういうくだらない動機でもいいので「人と違ったことをあえてしてみる」という気持ちはあった方がいいと思うんです。
Twitterやnoteくらいライトな場所で、他の人がやっていないようなことにチャレンジしてみるのはおすすめですね。逆をいこう、なにかおもしろいことをやろうとまで意気込まずとも、ただふだんの自分をさらけだすだけでも十分テンプレから抜け出せるのではないでしょうか。なぜなら世の中の人は「自分をさらすこと」をあまりしないので、それをするだけでも個性的と思われる確率が高まると思うんですよね。
まこりーぬ:逆をいこうとするのはたしかに少しハードル高いですが、「さらす」ことは誰でも一歩踏み出しやすいですね。身近なアドバイス、ありがとうございます!
書くことにどう向き合うか
まこりーぬ:さいごに、コンテンツの作り手・文章の書き手として枌谷さんにお聞きしたいことをぶつけていこうと思います。枌谷さんのようによいコンテンツを作るためには、どんなトレーニングからスタートするとよいでしょうか?
枌谷:テーマはなんでもいいので、人に読ませる文章を毎日書くっていうのがいいと思いますね。まずは思っていることをひたすら言語化する。そしてnoteやTwitterで公開して周囲からの評価をみる。これを何度も繰り返していけば、言語化が磨かれないってことはまずない気がします。ベイジには日報ルールがあるんですが、入社したころあまり文章が得意ではなかった社員も2〜3年経つと読んで感心するような文章を書けるようになりますよ。
まこりーぬ:やはり書き続けること以外に道はなし、ですね……! 私自身周りからよく「どうやったら文章を書くモチベーションって上げられるの?」と聞かれるんですが、なにかいい方法はございますか?
枌谷:まこりーぬさんはふだんなんとお答えしているんですか?
まこりーぬ:私の場合は、本日のように諸先輩方を巻き込んで取材させてもらっている以上「文章を書きたい!」というよりは「いま書かねばならない! この貴重な話を早くみんなに届けなければならない!」という気持ちで毎回原稿に臨んでいるんですよね。自分1人で完結するコンテンツだったら、きっとここまで書けないんじゃないかなと思います。
枌谷:なるほど。たしかにまず誰かが関わっているっていうのはポイントですよね。失敗しても誰にも影響がないような、自分だけの安全地帯で書いちゃうとモチベーションを維持しにくいかもしれません。
あとは「書くモチベーション」と言いながらも、書くこと自体にモチベーションを置いていないんでしょうね。実現したいなにかがあって、その手段として文章を書いている。ただ痩せたいだとがんばれないダイエットが、今度好きな人とデートがあるとなるとがんばれる……っていう話と近い気がしますよね。
まこりーぬ:たしかに、「誰か巻き込む」「別の場所に目的を設定する」って、書くことに限らずあらゆる物事を継続させたいときにも同様ですね!
最後のさいごに、これは私の純粋な興味なんですが……枌谷さんはこれからどんなコンテンツを作っていきたいですか?
枌谷:究極は、自分の脳みそにあるものすべてを言語化してコンテンツにしたいです。枌谷力.com的なサイトで(笑)。自分が作ったコンテンツはオンライン上に半永久的に残るわけですよね。となると、自分の頭の中にあるものをできるだけ残しておけば、歴史上の人物にはなれなくとも、自分本体の影響力を超えて世の中に価値を発揮できる可能性があるわけですよね。まぁぜんぶは無理なので、現実的な範囲で言語化しているんですけどね(笑)。
まこりーぬ:枌谷力.com……! いつかのぞいてみたいです(笑)。枌谷さんは言語化したいという欲求が強いんですね……!
枌谷:そうですね。思ったことすべて言葉にしたくなっちゃうんですよ。思っていることをきれいに言語化できたときの快感を求めているともいえます。どうせ言葉にしたならついでにつぶやこうという発想なので、私はツイート量が多いのかもしれません(笑)。
まこりーぬ:たしかに、毎日ネタが尽きずすごいなと思いながらツイートを拝見しておりました(笑)。枌谷さん、本日はよいコンテンツの極意を教えていただき、本当にありがとうございました!!!
さいごに
記憶に残るコンテンツとは、読み手の固定観念を壊しエピソード記憶化させるもの……ということで、この記事自体も少しでもその理想に近づけられるよう、企画段階から枌谷さん全面協力のもと作成しました。この記事が明日からのコンテンツ作りのヒントとなれば幸いです(枌谷さん、本当にありがとうございました!!!)。
コンバージョン直結型のコンテンツは企業のマーケティング活動においてめちゃめちゃ大事で、まずはそこしっかりやれよっていう話は重々承知の上なんですが……誰かの記憶に残り続けるコンテンツが作れたら、それって作り手としてシンプルにめちゃくちゃ嬉しいことですよね……!
これからも目的は見失わず、記憶に残るコンテンツを1本でも2本でも、身の回りのステキな方々と一緒に作っていけたら最高だなぁ、なんてしみじみ思いました。
以上、まこりーぬがお届けしました!