暑い日が続いていますね。LIGで編集者として働いているケイ(@yutorination)です。最近はWeb事業部で、クライアント企業のコンテンツ制作や、メディアのコンサルティングなどをしています。
僕は基本的には編集者・ライターなのですが、昔は野良の映像作家として、ドキュメンタリー動画を作ってYouTubeに上げてちょこちょこバズったりしていたため、LIGでは動画コンテンツの監修もしたりしました。
なんですけど、会社として動画マーケティングをやるのってめちゃんこ難しいんですよね……。昔の僕みたいな得体の知れない素人が、テクニックも何もないけれどめちゃくちゃ熱量を持ってなにかを作ると、相当な数の人に観てもらえたりします。
でも、LIGのような企業体がなにか目的を持って動画を作ったとしても、なかなか観てもらえなかったりするんですね。
たとえばLIGでは「Life is Good TV」というYouTubeチャンネルにたくさん動画をUPしているのですが、チャンネル登録者数は現在のところ500人未満。各動画の再生回数もなかなか厳しい数字が並んでいます。(チャンネル登録してくださっている方、ありがとうございますm(_ _)m)
Facebookページでも同じ動画を上げていて、こちらは数千〜1万回程度は見てもらえるんですが、それも自慢できるほど多いというわけではないですし、そもそも最大の動画プラットフォームであるYouTubeの再生回数が上がっていかないことへの悲しみは残ります。
そこで! 今回は、モバーシャル株式会社が主催する初心者向けセミナーが虎ノ門の琴平タワーで行われると聞き、潜入してきました。
- モバーシャル株式会社とは
- 動画マーケティングに定評があり、LIGも運営しているデジタルハリウッドSTUDIOのネット動画クリエイター専攻の動画の講師も担当している。
目次
※本記事は、デジタルハリウッド株式会社の提供でお送りしています。
モバーシャルCMO・山下さんが語る、動画マーケティングの現在
講師は、モバーシャル株式会社取締役CMO(Chief Marketing Officer、最高マーケティング責任者)の山下悟郎さん。Web動画黎明期より映像プロモーション企画・コンテンツ設計を担当してきて、宣伝会議やデジタルハリウッド、バンタンデザイン研究所などにも講師として招かれているそうです。圧倒的な経験があるオーラがすごい。
モバイル動画広告の市場は右肩上がり
山下さんによれば、現在1兆7000億円にのぼるインターネットの広告市場のなかで、動画広告の割合は年々上がっているのだそう。注目すべきは、PC上で閲覧される動画広告は横ばいの一方で、スマートフォン等のモバイル端末で見られる動画広告は右肩上がりとなっていること。
動画だけでなく、あらゆる領域で起こっている「モバイルシフト」というやつですね。
インストリーム広告、アウトストリーム広告とはなにか
みなさんは、動画広告には「インストリーム広告」と「アウトストリーム広告」の2種類があることをご存知でしたか?(僕はあんまりよくわかってませんでした……)
1つ目のインストリーム広告とは、たとえばYouTubeの動画を観ようとするときに最初や中盤に出てくる動画広告のことです。こちらはYouTubeを観ていれば必ず目にするので、わかりやすいですね。
2つ目のアウトストリーム広告とは、FacebookやInstagramなどのSNSなどをスクロールして見ていると、ときおり広告枠として出てくる動画や、Webメディアの記事内に出てくる動画のことです。動画コンテンツのなかに埋め込まれていないタイプのもの。
近年はSNSプラットフォーマーのあいだでも動画へのシフトが起こっており、たとえばInstagramにはストーリー機能、Facebookにもライブ機能が実装されました。YouTube Liveでも去年からフジロックフェスティバルを生中継する試みが行われていたりします。SNSは、動画広告の有力な掲載先となっているわけですね。
どんな長さの動画が観られているの?
私たちはLIGブログをはじめとしたWebメディアを運営しているなかで「どのぐらいの長さのコンテンツであれば飽きずに読んでもらえるか」を日々考えているのですが、動画制作においても「何秒、何分ぐらいのコンテンツであれば観てもらえるのか」が悩みどころです。
ところが山下さんによれば、観られる動画の「長さ」に法則はないとのこと。なんとなく「短い尺のもののほうが観られやすいのでは?」というイメージを持ってしまいがちですが、10分以上のビデオを観る人の割合は14%もいるのだそう。
ただ気をつけるべきは、長尺のコンテンツで観られるものはエンタメ系のコンテンツがほとんどであること。たとえばミュージックビデオ(MV)、ドラマ、アニメや、違法にアップロードされたTV番組が多いらしいです。
企業が自社商品の説明をしたりハウツーを提供するような動画の場合、モバイルに関しては平均して1分未満のものがよく観られている状況だそうです。
ユーザーはモバイルビデオをいつ、どこで観ているのか?
これに関してはテレビのゴールデンタイムとほぼ同じで、19〜21時が一番観られるようです。SNSで動画コンテンツを告知する際には、やはり朝ではなく夕方の時間帯に投下するのがよさそうです。
そして、ユーザーが動画を観るシチュエーション。栄えある第1位はなんと……
ベッド・ふとんの中!!!\(^o^)/
何回調査しても必ず1位になるそうです。おふとん、俺たちのおふとん……。
たしかに思い起こすと、朝起きるのが面倒だったりして、ついついふとんのなかで動画を見てしまったりします。
そして2位は、テレビ視聴中。動画コンテンツを観ているときに別の動画コンテンツを観るなんてちょっと不思議ですが、「家に帰ったときにテレビがついている」というケースと、テレビを観ているタイミングで気になったモノ・コト・ヒトをスマホで検索して、その結果ビデオに行き着くというのも多いそうです。いわゆる「Google急上昇ワード」に近い動きなわけですね。
ひとつ近年の傾向として、外出時の隙間時間に動画コンテンツに接触するケースが増えているのだそう。モバイル通信費が下がったり、2020年東京五輪に向けてWi-fi環境が整備されつつあることが大きいんですね。
今まではユーザーが外にいる時間帯に、ビデオを使ってマーケティングすることは難しかったようですが、今後は位置情報などを活用して最適な時間帯に最適な場所で動画広告を届ける、といった手法も出てきそうです。
山下さんが注目する3つの最新動向
山下さんが今後の発展可能性があるものとして注目しているのが、
(1)ライブ配信
(2)パーソナライズドビデオ
(3)クリエイティブの解析
だそうです。順番にレポートしていきたいと思います。
(1)ライブ配信
スポーツや音楽ライブの生放送はすでに活況を呈していますが、企業主催のわかりやすいものとしては、SNSのライブ機能を活用したセミナーやイベントの生中継などが一般化していく可能性があるそうです。
さらには、まだそこまでハッキリとかたちとして見えているわけではないですが、ライブ配信を活用したeコマースなども今後盛り上がる可能性がありそうだ、とのこと。
(2)パーソナライズドビデオ
これは個人の属性や趣向に合わせて最適なコンテンツを届ける「パーソナライズド」という手法の、動画版ですね。たとえば同じ化粧品のCMでも、ユーザーの年齢に合わせたり、観ている時間帯に合わせて配信するコンテンツを変える、というタイプの動画です。
(3)クリエイティブの解析
2年ほど前にYouTubeで問題になったのが「動画広告を出稿したさいに、制作者の身元が確かでない動画に自社広告が掲載されてしまう」ということでした。一番危惧されたのが、たとえばテロリストの犯行予告などの手前で自社のインストリーム広告が再生されてしまうケース。これには明確に、出稿元企業のイメージを毀損してしまうリスクがあります。
Google側は、こういった危険性を孕む動画に広告が出ないようなルールの厳格化や、自動判別できるよう研究を進めているそうなのですが、映像解析は技術的にかなり難易度が高いとのこと。やっぱり目視によるチェックが一番確実だということで、現在はまだそういったアナログな手法もあわせてチェックしているようです。
現状ではYouTubeやGoogleの動画検索は、まだまだテキスト情報や視聴データに依存していつつ、今後は音声や映像解析も取り入れることによって、精度が上がっていきそうです。
クリエイティブ制作のヒント
さてさて、セミナーのすべての内容をレポートするわけにはいかないので、ここからは山下さんのお話のなかで僕が特に興味深いと思った点をピックアップしてお伝えしていきます。
これからのモバイル動画は縦にすべき?
まずは「スマホに最適化すべき」というお話。これはマストで取り組むべき課題なわけですけど、スマホって縦長なのに、横長の動画を作り続けていることにはどうも違和感があります。
ただ、たとえばInstagramの動画アプリ「IGTV」は縦動画に対応しているわけですが、なんか全画面が縦だとちょっと見づらいんですよね。
そもそも人間の両目は横についているので、これまで映画でも写真でもなんでも、横長のスクリーンが採用されてきたのではないでしょうか? 一方、スマホが縦になっているのは片手で操作がしやすいからだと思われます。こと「視る」という行為においては、縦動画はあまり分が良くないように思うわけです。
じゃあ山下さんは縦動画についてどういうことを言っていたかというと、「縦画面を上手く使ってクリエイティブが作れていればよいが、無理に縦型にする必要はない」とのことでした。
なんとなく「今は縦動画が来ているから、縦に対応しなければいけないのでは?」と思ってしまいそうになりますが、必ずしもそんなことはないんですね。むしろ縦にするのであれば「縦動画であることの必然性」がコンテンツのなかに入っていないといけないのかもしれません。
事例として紹介されていたSNSのインフィード型動画広告のなかでも、ほぼ正方形からやや縦長で、スマホ画面を5〜6割程度しか専有しないタイプの動画広告であれば、UIとしても比較的見やすいのではないかと感じました。
外出先での視聴が増える今後、無音対応は必要だ……
あとはやはり、外出先(電車など)でSNSにインフィードされている動画を観る際、もしイヤホンをしていなかったらイヤホンをつけるのがひと手間になってしまうという問題。
実はFacebook動画広告の85%は音なしで視聴されているとのこと。場合によっては無音対応はしておいたほうがよく、モバイルだと必ず考えたほうがいいそうです。
具体的には字幕をつける、非言語的な表現にするなどが考えられます。マンガ的なフキダシをつけて表現する、などの事例も紹介されていました。そういった対応をするにはクリエイティブがかなり面倒になってしまうのですが、それが時代の流れなのであれば受け入れるしかないか……。
いずれにしても「ユーザーがスマホで動画を見るシーンを思い浮かべてクリエイティブをつくる」ということが重要、というお話でした。
VSEOとは?
VSEOというのはその名のとおり、Video Search Engine Optimization(ビデオ検索エンジン最適化)、つまりYouTubeで言えばYouTube内検索や関連動画の自社動画表示率を上げ、能動的に動画を視聴しようとしているユーザーにリーチしてもらうための施策をさします。
Google検索において「画像」タブを用いた検索はかなりメジャーになりましたが、最近は「動画」タブも表示される確率が上がってきています。山下さん曰く、動画に親和的な検索キーワードであれば「動画」タブがトップ近くに表示される確率が上がるのだそう。
現状、動画検索における検索順位の決定は、主にタイトルや概要文のテキスト情報、視聴データをアルゴリズムで処理することによって行われているようですが、今後は音声や、動画素材そのものを自動的に解析して、順位が決められていく可能性も高いようです。
それゆえ、タイトルにキーワードを入れ、スマホ対応を見据え27字以内(※YouTubeの場合)にタイトル文字数を収める、タグをきちんと入れる、という基本的な対策はもちろん重要ではあるものの、コンテンツにこだわらずただ単にハックするやり方はだんだん通用しなくなる――これはWebのテキストコンテンツとまったく同じ流れのようです。ちなみに、YouTubeのコメント欄は開放しておくほうが、今のところVSEO的にはよいとのことでした。
まとめ
「企業活動のなかで動画を活用するって難しい……」そんなことを思っていたのですが、まずは今の動画市場の概況をきちんとインプットし、その上で「企業体として可能な表現は何なのか」を、もっと突き詰めて考えておかないといけないんですね。
次回セミナーは、9/5(木)14:30~17:00@虎ノ門琴平タワーで開催!
モバーシャル株式会社の次回セミナー開催日は9/5(木)だそうです。
「企業活動における動画コンテンツ活用」にご興味をお持ちの方は、ぜひ一度、セミナーに参加してみてはいかがでしょうか。