こんにちは、セールスのYENです。
突然ですが、「集団訴訟」という言葉をご存知ですか?
集団訴訟とは、何か被害に遭った際、自分と同じように被害に遭った方と一緒に訴訟を起こすこと。
実際に「ネットで注文した商品が届かない」「詐欺にあった」など、自分の不注意が原因でなくても、集団訴訟の対象となりうる被害は意外と身近なところにあるようです。
もしも自分がそんな被害に遭ったら「おかしいな」と思っても、どうしたらいいのか、誰に相談したらいいのかもわからない……考えれば考えるほど、不安になってきました……。
そんな悩みを持つ人を救う「enjin(円陣)」というサービスをご紹介します。
- enjinとは
- ClassAction(クラスアクション)株式会社が運営する、日本初の集団訴訟プラットフォーム。同じ被害に遭った人を集めたり、弁護士と繋がることができたりするなど、集団訴訟に必要なフローが揃っている。サービスの利用は無料。
ものすごく端的にいうと、自分と同じ被害者を見つけてチームを組み、さらには弁護士さんとつながって一丸となって集団訴訟に臨めるサービスのようです。
でも、やっぱり「集団訴訟」って字面だけでもかなりハードルが高いですし、お金の面でも不安に思われる方もいらっしゃると思います。実際、僕が一番不安です……。
というわけで、もしも自分が何かしらの被害に遭遇してしまった場合に備えて、このサービスについて担当者の方に詳しいお話をお伺いすることに。
「被害者も弁護士も採算が合わない訴訟を“割り勘”に」enjinができるまで
今回お話を伺ったのは、enjinを運営するClassAction株式会社の代表、伊澤文平さん。
人物紹介:伊澤文平さん明治大学法科大学院卒。司法試験合格後、大手法律事務所にて企業法務を経験。その後独立し、LegalTechベンチャーであるClassAction株式会社を起業。現在、ClassAction株式会社代表取締役CEO兼トップコート国際法律事務所代表弁護士。 |
YEN:今日は被害に遭ったときに備えて「集団訴訟」と御社のサービス「enjin(円陣)」についてお話を聞きにきました。よろしくお願いします。
伊澤:被害に遭う前から集団訴訟の心配をしている人なんて初めて会いました……でも、備えあれば憂いなしですからね。何でも聞いてください!
YEN:enjinは集団訴訟を起こしやすくするためのプラットフォームなんですよね? そもそもどうしてenjinをつくろうと思ったんですか?
伊澤:複合的な背景があるのですが、1つは採算が合わずに訴訟にならない事案があまりに多かったことがあります。独立する前は弁護士事務所に所属して、詐欺事件なども請け負っていたのですが、報酬が見合わない案件が多すぎて断らざるを得ないことが多かったんですね。たとえば、弁護士の先生に依頼すると、どんなに安くても30万円くらいかかります。
YEN: 30万円!! やっぱりそれくらいかかるんですね!
伊澤:はい。でも被害に遭ったのが「5万円の羽毛布団を買わされたのに中身がポリエステルだった」という詐欺事案の場合は、弁護士への依頼費用のほうが高くなってしまう。だから被害者の方が「それなら訴訟をやめます」と言って泣き寝入りしてしまうケースが何百件もあったんですよ。それを何とかできないかと思って、構想を練り始めました。
YEN:なるほど。でも、どうして集団訴訟にしようと思ったんですか?
伊澤:実はenjinのモデルになったのは、クラウドファンディングなんです。もともと“割り勘”をすれば何とかなるんじゃないかと漠然と考えていたときに、クラウドファンディングを見つけて「これだ!」と。
それ以外にも社会的に「みんなで何かをしよう」という村社会的な気運が高まってきた時期だったので、お金を集めるんじゃなくて被害者をたくさん集めれば訴訟費用を割り勘できるじゃないですか。そうすれば、1人あたりの負担額を減らした状態で訴訟のハードルを下げられるんじゃないかなと考えました。
YEN:泣き寝入りしていた人が訴訟を起こす可能性として集団訴訟があり、集団訴訟を起こしやすい環境をつくるために「enjin」が生まれた、というわけですね。
集団訴訟のメリットは「費用」と「一緒に戦える仲間がいること」
YEN:集団訴訟って自分と同じような被害に遭った人と一緒に訴訟する、ということですよね。何となくはわかりましたが、やっぱり難しそうなイメージを持ってしまいますし、ハードルも高そうに感じてしまいます。
いろんな被害があるかと思うのですが、どういったときに集団訴訟をするケースが多いんでしょう?
伊澤:もっとも多いのは詐欺ですね。「仮装通貨」にまつわるものや、先ほどお話ししたような「羽毛布団詐欺」など、同時多発的に起きた被害は集団訴訟に向いています。被害額が少額で「訴訟したら元が取れないけど、何とかしてお金を取り戻したい」というケースです。
YEN:なるほど。ちなみに、個人ではなく「集団」で訴訟をするメリットって、どんなところにあるんでしょう?
伊澤:2つありまして、1つは「費用面」、もう1つは「群集心理」ですね。
費用面のメリットからお伝えすると、弁護士さんへの依頼費用は最低でも30万円かかるんですよ。たとえば、被害額が10万円だったとして30万円払うとマイナス20万円になってしまうので被害者の方は依頼しようと思わないですよね。
YEN:確かに。泣き寝入りしちゃうと思います。
伊澤:ところが被害者が30人集まると、被害者の方1人あたりが支払う金額も30分の1になるので、弁護士費用は1万円で済むじゃないですか。
もしも勝訴して10万円全額が戻ってきたとしたら、弁護士費用として支払った1万円を差し引いても9万円は返ってくるわけです。被害者の方の立場で考えてみると、費用が安くなって、さらにお金も返ってくるから依頼ができるわけですよ。要するに、弁護士費用の“割り勘”です。
YEN:弁護士費用を割り勘できるという発想が新しいですね。2つ目のメリットの「群集心理」というのは?
伊澤:1人だと勇気が出なくても、みんながやると言ったらやってみようかなという気持ちになるじゃないですか。弁護士の先生って学歴が高い方も多いですし、「こんなことを相談したら怒られるんじゃないか」と思って相談できない方も多いそうなんですよ。
YEN:確かに、弁護士事務所に直接電話をかけるのはかなり勇気がいるかもしれません。
伊澤:そうなんです。同じような境遇の人と一緒に戦えるのは心強さがあると思います。
ユーザー側は何をすればいいの?
YEN:では実際に集団訴訟をしようとしたら被害者の方は具体的に何をすればいいんでしょう?
伊澤:弁護士の方が旗振り役になって「被害者の方集まってくださ~い!」と交通整理をするので、被害者の方は書類に署名と捺印をしていただきます。あとは弁護士が書類をまとめて裁判所に持って行くので、それで終了です。
YEN:えっ、じゃあ被害者の方は、書類に署名と捺印をするだけですか?
伊澤:基本的にはそうですね。もちろんどういった事情で被害に遭ったかなどのヒアリングはさせてもらわなければなりませんが、面会は必ずしも必要ありませんし、重要証人以外は裁判所に行く必要もありません。
YEN:つまり署名と捺印とリモートでのヒアリングさえ済ませれば、判決が出るまで何もしなくていいっていうことですか?
伊澤:おっしゃるとおりです。たまに被害者の中でもリーダーシップをとって、被害者の会の会長などを務めてくださる方がいますが、有志の方が自主的にやっているだけでマストではないんですよ。
YEN:被害者側としてはめちゃくちゃ楽ですね。でも、逆に弁護士さんの仕事が増えて大変ですよね? 場合によっては何百人にヒアリングしなくちゃいけないし……。
伊澤:ただ、誤解を恐れずに言えば、被害者が何人増えても、弁護士の労力はそこまで変わらないんですよ。もちろん事案にもよりますが、たとえば詐欺の場合は日時や損害額は違いますよね。でも、詐欺のやり口は基本的に同じなので、共通する部分の書面と個別の部分の書面を用意すればいい、ということになります。
YEN:じゃあ弁護士の先生としても、通常であれば立ち消えてしまう案件が仕事として成立するとなればwin-winですよね。
伊澤:そうなんですよ。もちろんケースバイケースですが、1対1の訴訟と比較して労力がさほど変わらず採算がとれると判断していただけたら弁護士の先生も受任してくれるわけです。そして、その場を提供するのが我々の「enjin」です。
被害者と弁護士をつなぐプラットフォーム「enjin」でできること
仲間を募ることができる
YEN:集団訴訟へのハードルが思っていたよりも低くなって、訴えることはないのに俄然興味が出てきました! enjinを利用して集団訴訟を起こそうと思った場合は、どういったアクションが必要になりますか?
伊澤:クラウドファンディングのサイトをイメージしていただければわかりやすいかと思いますが、まず“プロジェクト”を立ち上げます。アカウント登録をして、フォーマットに沿って事件の概要を記入していきます。
YEN:堅い書類だと書けるか不安ですが、フォーマットが決まっていると安心ですね。
伊澤:そうですよね。とはいえ、ほとんどの方は訴訟未経験の方なので、なかなか書けないユーザーさんもいらっしゃると思うんですよ。なので、今後はカスタマーサポートを配置してサポートをしていくことも検討しています。
きちんとした体裁に整えた状態で公開したほうが仲間も集まりやすいですし、弁護士さんにも正しい内容が伝わり、よりマッチングしやすくなりますからね。
そうしてプロジェクトができあがったら、あとはほかの被害者の方が「私も訴訟したい」と相乗りしてくるのを待つだけです。
YEN:文章のサポートがつくのは心強いですね。
弁護士と繋がれる
YEN:プロジェクトをアップロードして人を集めたら、次に何をしたらよいでしょうか?
伊澤:仲間を募ることができたら、次に弁護士の先生を決めます。弁護士の先生がプロジェクトを見て「Wantedly」のスカウトメールのように、向こうからアプローチしてきてくれる場合もありますし、「弁護士検索機能」を使って、登録している弁護士の先生の中から自分で検索することも可能です。
YEN:弁護士検索機能、ですか?
伊澤:サイト内にもSEO概念が導入されているので、ユーザーの評価が高い先生が上に出てくるんです。弁護士の先生が決まったら、弁護士の先生と被害者たちのチャットグループがつくられて、そこでヒアリングや書面のやりとりを済ませれば完了します。
YEN:思っていたよりもだいぶ簡単でびっくりしました! 弁護士の先生のユーザー評価がわかるというのも安心ですね。
伊澤:そうなんです。実は今まで日本には弁護士のユーザー評価をしてくれるようなアルゴリズムは存在しなかったんですよ。もちろんユーザー評価がすべてではありませんが、法律に詳しくない方が弁護士を選びやすくなる1つの指標にはなると思うんですよね。
YEN:訴訟経験がなくて不安を抱いている方が多いと思うので、そういった指標はありがたいですね。
訴訟で負けた場合は?
YEN:ちなみに、聞きにくいことで恐縮なのですが、訴訟で負けたらどうなってしまうんでしょうか?
伊澤:敗訴してしまった場合は、もちろんお金は一銭も入ってきません。ただ、現状はenjinにおいて、まだ敗訴したことはないんですよ。ほとんどが「和解」もしくは訴訟中です。
もしも敗訴するのが心配でしたら、敗訴してもダメージが少ない金額の訴訟に参加するといいと思います。とはいえ、被害者の方が負担するのは弁護士費用の1~5万円くらいなので、そもそも負担になることはないかなと思います。enjinの利用自体は基本的に無料ですし。
YEN:ありがとうございます。最後に、このサービスをどんな方に使ってほしいか、改めてメッセージをいただいても良いですか?
伊澤:労力の面でもそうですし、訴訟への心理的恐怖やさまざまな理由で弁護士にアクセスできなかった被害者の方にこそ、enjinを利用してほしいですね。
まとめ「被害に遭ったらenjinで仲間を集めよう」
これまでは、たとえば詐欺に遭ってしまった場合も、高額な訴訟費用を負担しなければいけなかったり、弁護士との直接交渉がネックになったりして、泣き寝入りせざるをえなかったケースが多かったことでしょう。
しかしenjinを活用すれば「集団訴訟」というかたちで、費用を抑えつつも失ったお金を取り戻すことが可能になります。もちろん被害に遭わないことが一番ですが、もしそうなったとしても、このサービスの存在を知っていれば安心ですよね。
ちなみに気になる訴訟額ですが、1人あたりおよそ1~5万円程度で訴訟にジョインできている状況だそう。被害額にもよりますが、万が一敗訴してしまい訴訟費用が取り戻せなくても、リスクは小さくて済みます。
困ったことがあったら、泣き寝入りをする前に、enjinでの集団訴訟を検討してみてもいいかもしれないですね。