「超映画批評」前田氏に聞く!年末年始休暇に観たい2015年傑作映画10選

「超映画批評」前田氏に聞く!年末年始休暇に観たい2015年傑作映画10選

ツベルクリン 良平

ツベルクリン 良平

ナイトクローラー

naihttp://nightcrawler.gaga.ne.jp/

「ナイトクローラー」とは、悲惨な事故や事件現場にいち早く駆けつけるフリーカメラマンのこと。

主人公はたまたま事故に遭遇したことから、この世界に足を踏み込むわけですが、これがある種のお仕事ムービーになっていて面白い。

ジェイク・ギレンホール演じるルイス・ブルームは”ヒトとしての倫理感”が抜けている半グレの青年で、その倫理観なさゆえに同業者では押さえられない特ダネをかっさらうことができる不届き者。でも、それがメキメキと評価されていく。これは、今の時代ならではのサクセスストーリーなのです。

今の世の中では格差が固定されており、のし上がることは難しいと言われます。それを打ち破り成功するためには業界のルールだろうが、法律だろうが守ってなんていられない。そういうメッセージを感じます。冷静に見れば犯罪者なのですが、この主人公とても魅力的なんですよ。今はここまでやるやつじゃないと勝てないというのが分かる。すごく現代的な裏成功物語というイメージ。

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天空の蜂(てんくうのはち)

tenhttp://tenkunohachi.jp/

邦画では東野圭吾原作の『天空の蜂』を一番に推したいです。松竹株式会社配給の映画で『トリック』や『20世紀少年』の監督を務める堤幸彦(つつみ ゆきひこ)さんがその辣腕を振るっております。この映画に関しては、「よく映画化できたね」というのが正直な感想。

同作は原発テロを扱ったクライシスサスペンスであり、反骨精神あふれる意欲作だと言っても良いでしょう。堤幸彦という監督は大衆向けの、いわゆる”テレビ局映画を作る監督”というイメージが強く、こういう政治色の強い社会派の映画を作れるはずがないと思っていたため、驚きました。「日本は、このままで大丈夫なの?」というメッセージが、原作より深刻に描かれています。

堤監督になんでこんな映画を実現できたのかを聞いたことがあるのですが、実は学生時代からそういう活動をしていたらしく牙をひた隠していたらしいです。映画監督としての晩年が見えてきて、その牙がついに剥き出しになった。覚悟が違いますね。

私は、映画こそ社会を変えるコンテンツだと思っているのですが、その可能性が感じられる今年唯一の日本映画。何年に1本もない魂のこもった作品をぜひ見ていただきたいですね。

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イニシエーション・ラブ

inihttp://www.ilovetakkun.com/

同じく、堤監督の『イニシエーション・ラブ』もオススメです。

原作は叙述トリックを使った一発逆転型のミステリー小説なのですが、いわゆる「叙述トリック」って映像化できないじゃないですか。例えば、読者は男だと思っていたのに実は女だったみたいなトリックって、映画だと見てわかってしまうから至難の業なんですよ。

しかし、この映画はその大技を見事に成し遂げてしまった。ネタバレになってしまうので言及を避けますが、観客をどうミスリードするかという作りが非常に巧妙です。原作を知らない人はもとより、知っている人でもこういう見せ方ができるのか!と驚きがあり、面白いですよ。

僕は原作を読んでいない人と観に行ったのですが、全くそのトリックに気づいていなかった。観客や読者の先入観をうまく利用して騙す。あざやかに決まると、これは面白いですよね。『イニシエーション・ラブ』は、新しい映画の一面を感じる良作となっています。

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  • 時間110分

 

PAN ~ネバーランド、夢のはじまり

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ファミリー向け映画を一作。『ピーターパン』の前日譚にあたる物語で、親子で安心して鑑賞できる映画です。

最近の子ども向け映画はテレビアニメの延長的なものが多いのですが、こういったコンテンツは結局”消費物”だと感じてしまう。もっと子供の人生に「いい思い出として残るもの」とか「教養になるもの」を見せる必要があると思うのです。

また、個人的にハイファンタジー(すべてが絵空事のファンタジー作品)ばかりを見せるべきではないと思っていて、本作はローファンタジー(現実世界の中にちょっとおとぎ話が入っている作品)であることも好ましい。単なる空想に逃げるのではなく、現実をベースとした舞台にファンタジー要素が入りこむため、想像力を刺激してくれるのです。

大人が観ても普通に楽しめるし、子どもが見てもストーリーに迷わない。なかなかないんですよ。こういうバランス良い映画って。オススメです。

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クリード チャンプを継ぐ男

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『ロッキー』の新章である本作は、お正月映画としてイチオシです。

宣伝が追いついていないので知名度的には”宇宙のやつ”に負けているものの、男性にとってはこれ以上ない作品でしょう。ロッキーの面白いところはスタローン自身の人生と、作品自体がシンクロしていることにあるのですが、本作は久々に彼の人生とシンクロしているのです。ロッキーはチャンピオンとして全てを手中に収めたのですが、たった一つだけ手に入れられなかったものがあります。そう、後継者です。『クリード チャンプを継ぐ男』は、その後継者に出会う物語。

それを演じるスタローンは、2012年に息子のセイジを亡くしているんですよ。サーシャ(元妻)がいなくなりセイジを失って、天涯孤独になったスタローン。その事実が、この映画を何倍も何十倍も奥深いものにしております。

映画の妙というか、「こういう奇跡に出会えるからやめられない」そう言いたくなる名作。「1」や「ファイナル」に匹敵する完成度だと思います。

「クリード チャンプを継ぐ男」オリジナル・サウンドトラック(スコア)

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2015年の振り返り〜洋画が盛り上がった1年〜

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今年は、例年にないくらいリブート・続編によって洋画が盛り上がりました。また、『007』や『ミッションインポッシブル』の両横綱が揃い踏みするなど、スパイ映画が多い珍しい1年でしたね。スパイ映画というのは、成年男性向け娯楽映画の定番。ある程度、国内情勢が反映されるため大人の男にとっては面白いし、夢とロマンの塊なんですよ。

中高年以降の方で、今年のスパイ映画をまだ観ていない方は公開作品をぜひチェックしてほしいです。そのほか、リブート作品も70〜80年代のものが復活しているため、お父さん世代にとっては今年観ないでいつ観るの?というくらい目移りする当たり年だと思います。子どもと一緒に映画を観るきっかけになれば嬉しいです。

2016年の展望〜来年はアメリカ映画に注目〜

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話題作をチェックする限り、2016年もリブート・続編作品が隆盛を極めると思います。特にヒーローものが強いですね。

ディズニー傘下のマーベル・エンタテインメントは、『ハルク』『アイアンマン』など”同じ世界観で別作品を展開する”手法でヒットを生み出しているのですが、それを来年、ワーナー・ブラザースが『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『スーサイド・スクワッド』というDCコミックスのヒーロー映画大作2本で追撃するのです。きっと、アメコミものが活気づいてくると思います。

また、来年はアメリカ大統領選が始まります。大統領選というのはいつおこなわれるかが決まっているので、その年の作品は深い意味合いが含まれるケースも多いのです。「大統領選の年は、アメリカ映画に注目しろ」が映画界の通説なので、私のように深読み派の人間には見応えがありそう。

単純に作品としても期待できそうなものも多いです。2016年を楽しみにしましょう。

というわけでガッツリお話をお伺いさせていただいたのですが、年末年始休暇で「映画が観たい!」と思っているかたは、ぜひ参考にしてみてくださいね。以上です。

 
■前田有一の超映画批評
http://movie.maeda-y.com/

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ツベルクリン 良平
ツベルクリン 良平 メディアディレクター / ツベルクリン 良平

テキトーな感じで始めたブログのお陰で、LIGに入社できました。「企業寄生型ブロガー」として、新しい働き方を模索しています。 「ツベルクリン良平」って呼ぶのが恥ずかしい方は、「ツベ」にすれば割とマイルドになりますよ。

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