「フリーミアム(ユーザー課金)」で成功した国内Webサービスのビジネスモデルを解説します【4社】

「フリーミアム(ユーザー課金)」で成功した国内Webサービスのビジネスモデルを解説します【4社】

ryou

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はじめまして、日本国内のWebサービスをまとめたサイト「WebFolio」を運営している、ryouと申します。今日からMarkitのライターとして記事を書かせていただくことになりました。よろしくです。

さて、最近ではさまざまなWebサービスがリリースされていますが、今回は「ユーザー課金モデル」で成功を収めたWebサービスが、どうやって課金を成功させたのかをまとめてみました。

そもそも「ユーザー課金モデル」って何?

「ユーザー課金モデル」とは、サービスを利用するユーザー(個人)にお金を払ってもらうことにより、運営が成り立つサービスのことです。

基本的には無料で利用できます。全ての機能を利用する、もしくはスペックの増強などをおこなう際に課金をしてもらう「フリーミアム」というモデルが最近の主流です。海外であれば、「Dropbox」、「Evernote」、「Spotify」といったようなサービスがこれに当たります。

ユーザーに課金してもらうということは、サービス自体に相応の魅力が必要になります。利益率は非常に高いですが、成功させる難易度も高いと言われるほどです。それでは、「ユーザー課金モデル」で成功しているサービスが、どうやって成功したかを見ていきましょう。

「フリーミアム(ユーザー課金)」で成功した国内Webサービスのビジネスモデル

1. クックパッド

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http://cookpad.com/

登録レシピ数日本一のレシピサイト。レシピを投稿するとフィードバックされる仕組みが上手にできており、コミュニティサービスのような側面も持っています。月額280円の有料会員は160万人を超えていると言われており、日本一成功したユーザー課金型サービスとも言われています。

また、有料会員を増やすために、「グロースハック」という、予算を掛けずに集客を最大化する施策が非常に上手です。

ポイント1:2回の7日間の無料体験期間

例えば、7日間限定で有料機能を無料で体験してもらい、無料期間以降も続けて使いたいユーザーには、有料登録後7日以内に解約したら課金発生はしないという、2回7日間無料体験ができるという仕組みがあります。実際に有料機能も体験してもらうことにより、利便性を味わってもらい、決済のハードルを下げることができます。

解約は7日以内におこなう必要があり、解約の申請を忘れるユーザーや、惰性で契約を続けるユーザーなども一定数いると考えられます。有料会員数の増加に一役買ったのではないでしょうか。

ポイント2:レシピの間にバナーを設置

レシピの一覧ページには、各レシピの間に有料会員への導線バナーが設置してあります。レシピを探しているユーザーへ、膨大な量のレシピをスクロールし探している最中に、「有料会員になればストレスなく探せるよ」という案内はとても効果的だと考えられます。いやぁうまいですね。

ポイント3:一捻りしたキャッチコピーを掲載

上記以外にも、「コーヒー1杯分の値段で人気レシピが見放題!」という、思わず目を引くキャッチコピーで有料会員への導線をおこなったことがあります。当時のABテストでは、「100万人が使っている」「9割以上が効果を実感」といった王道なコピーよりも反応率が高かったと言われています。

有料会員数を増やすために、広告を積極的に打つのではなく、コピーライティングなどの細かいABテストにより結果を出し続けています。予算がないときに参考にしたいポイントですね。

2. 食べログ

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http://tabelog.com/

全国の飲食店情報を掲載し、ユーザーの口コミ・写真をもとに、目的や予算に応じたお店が探せるサービス。ユーザー課金だけでなく飲食店側からも課金をしています。また、クチコミやレビューなどのコンテンツは、運営期間が長いほど蓄積されるので、競合の参入障壁が非常に高くなります。そのため、先行者利益を継続できる側面もあります。

ポイント1:需要のあるランキング検索を、モバイルのみ課金

PC上ではレビューのランキング検索が無料ですが、モバイル端末では有料会員(月額300円税抜)限定の機能になります。2015年3月時点での有料会員数が55万人となっており、多くのユーザーからの課金に成功しています。ですが、食べログをモバイルで閲覧するユーザーは、外出先で飲食店を探しているケースが多く、機能の一部に制限があるのは非常に煩わしく感じますよね。

そのためランキング検索は今現時点で困っているユーザーに対してすぐに解決できる機能となっており、キャリア決済でそのまま決済することができるので、モバイルのみ課金というのは非常に上手な仕組みだと言えます。(その分離脱率も高くなるケースがありますが・・・)

ポイント2:割引率の高いクーポン

有料会員になると、「プレミアムクーポン」という初回限定の優待サービスを使えるのですが、これの見せ方がとても上手です。飲食店のクーポンが掲載されているページに、有料会員限定の「プレミアムクーポン」が表示されているのですが、割引率が非常に高いので、これからその飲食店を予約をするユーザーにとっては必ず気になってしまう存在です。

お店側としては、多少広告費をかけてでも新規のお客さんを増やしたい。食べログ側としては、一時的な広告収入より、継続的な収益になる有料会員を増やしたい。こういった両者の問題を上手く解決している仕組みだと思います。クックパッド同様、グルメ系のサービスは「食べる」という人間の本能的な欲望なため、課金しやすい傾向にあるのではないでしょうか。

フリーミアムモデルは、言ってしまえば「機能の一部を制限して、離脱しない程度のストレスをユーザーに与え、それを解決したい人がお金を払う」というモデルなのですが、機能を制限し過ぎればユーザーの離脱率が高まります。食べログはこのあたりのバランスが非常によくできているなぁと感じます。

3. ニコニコ動画

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http://www.nicovideo.jp/

多くの用語や文化を生み出した、動画共有サービス。大きな特徴として、配信される動画の再生時間軸上に、ユーザーがコメントを投稿できる「コメント機能」があります。

動画再生中に、リアルタイムでコメントが流れる機能により、過去の動画を再生したユーザーが「みんなと一緒に見ている」という、テレビやYouTubeでは味わえない一体感が生まれ、ユーザーの集客に成功したと考えられます。

ポイント:無料会員の「追い出し」機能

課金という面では、有料会員(月額500円税抜)が優越感を持てる「追い出し」機能が挙げられます。

生放送をしている動画には視聴制限数がありますが、これがフル(満席)だった場合、自身が有料会員なら、無料会員を追い出して動画を見られる機能です。PC前で待機していた無料会員を有料会員がコメントで煽り、対立させる仕組み作りにより、2015年7月時点では有料会員が250万人を超えています。

通常Webサービスというのは、初期のアーリーアダプターに向けたニッチなサービスを設計し、ユーザー数が増えていくとマジョリティ向けに展開するのが一般的です。ただ、一般ユーザーを取り込もうと思うと大衆向けのサービスになってしまい、広告課金がしやすくなる分、ロイヤリティが下がるのでユーザー課金が難しくなります。

ニコニコ動画はこの点において、初期から一貫して(大変失礼ですが)オタク向けに設計されており、「2ちゃんねる」のような独特の文化をもっています。インターネットの普及により、オタク文化が一般人に浸透して、当初ではごく少数向けだったユーザー層が、時代の流れとともに拡大していったと考えられます。

4. 弁護士ドットコム

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http://www.bengo4.com/

弁護士・法律事務所のポータルサイト。無料法律相談(Q&A)が非常に人気で、運営している弁護士ドットコム株式会社は、昨年末に東証マザーズへ上場をしています。同社が運営する「弁護士ドットコムニュース」もヤフトピにたびたび掲載されるなど、オウンドメディア事業でも成功しています。
主な収益源は弁護士側からの広告掲載費ですが、ユーザー側からも課金をしています。

ポイント:緊急性を要すみんなが「ほしい」情報の公開制限

有料会員(月額300円税抜)になると、モバイル端末からもQ&Aの過去ログを閲覧できたり、他人のQ&Aの回答を見ることができます(PC版では無料で他人の相談の回答を閲覧できます)。2015年6月時点で有料会員数は5万人を超えています。

Q&Aの相談内容は相続・離婚・訴訟など緊急性を要している相談が多く、ユーザー側としてはすぐにでも答えがほしい状態だと考えられます。それらの回答は、有料課金へ登録しないと見られないという流れが上手くできてますね。また、モバイル端末は家族と共有する可能性があるPCと比べて、秘匿性が高いため相性が良いとも考えられます。

2005年にサービスが始まり、単月黒字化までに8年もの期間がかかったとのことで、収益化するまでに並々ならぬ努力があったのではないかと思います。立ち上げ当初は法律に特化したQ&Aサービスがなく、多くの消費者が誰に相談していいかもわからない状態の中、ユーザー同士で解決し合う一般的なQ&Aサービスとは違い、プロが回答してくれるという明確なメリットを打ち出しています。

また、弁護士業界は2000年頃から広告の解禁や報酬の自由化が始まり、新司法試験制度の導入にともなって弁護士数が倍増している背景がありました。経営者が弁護士ということもあり、これらの時代背景や市場状況を考慮した上でサービスを展開したと考えられます。

まとめ

ユーザー課金は一見すると、非常に真似をしたいビジネスモデルではありますが、収益化するまでに数年はかかるとも言われています。逆に、その損益分岐点さえ超えれば一気に成長することができるビジネスモデルです。

ユーザー課金モデルの成功例を見ていると、人間本来の欲求にスポットを当てたサービスは、ニーズが高く、収益化しやすいことがわかりましたね。「あったら便利」という程度のサービスでは、広告費で稼ぐことができても、ユーザーからは課金が難しいのでしょう。

ただ、最初から「なくてはならないモノ」を作るのは簡単ではないと思うので、「あったら便利」なサービスを無償で提供し、毎日使う中で「なくてはならないモノ」にしていければ良いと思います。

今後Webサービスはさらに増えてくると予測されているなかで、どういった視点で収益化するのか、注目していきたいと思います。それでは、また。

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