「IoTはもうちょっと温かい」ロボットは機能よりもデザインが大切である理由 | ユカイ工学 青木CEO

「IoTはもうちょっと温かい」ロボットは機能よりもデザインが大切である理由 | ユカイ工学 青木CEO

小泉 耕二

小泉 耕二

※本記事はIoTNEWSより転載・編集した記事です

こんにちは。普段は、IoTNEWSというメディアの代表をしております小泉です。
突然ですが、みなさんは「ロボット」というと、どんなイメージを持たれますか? ロボットに温かみを感じる方は少ないかもしれません。
そんな中、お母さんと子供がコミュニケーションを取れるという温かいコミュニケーションロボットがあります。それは「BOCCO」。

そして「BOCCO」を作っているのが、ユカイ工学さんです。昨今のロボットブームの10年ほど前からロボットを作っている会社で、これまでも多くの製品をリリースされています。
そこで今回インタビューさせていただいたのは、ユカイ工学株式会社の青木俊介CEO。やさしく笑顔が素敵な青木さんのお人柄が移ったような「BOCCO」の開発秘話をご覧ください。

IoTはもうちょっと「温かい」寄りですよね

-ユカイ工学をはじめたきっかけを教えてください。

僕は、昔からロボットが作りたかったんです。
2005年にアメリカで「Make:」という雑誌が創刊されたり、Arduinoが登場したりしたんですが、その時僕はWebの開発をやっていました。でもずっと画面の中にいるのが面白くないと思っていたので、もっと実世界に出ることをやりたいなと思っていました。

「Make:」をみて、「これけっこう面白いな、そろそろロボットくるかな」と思って、ロボットの会社をやろうと思い始めたのが10年前です。

-昔からロボット作りはされていたのでしょうか?

会社を辞めてからです。大学院に行って勉強もしました。ようやく最近ビジネスになりはじめてきまして、今は受託が半分ほどです。

ユカイ工学 青木氏

-今年、Maker Faire Tokyoが去年より盛り上がってましたね。現状のロボット作りや、IoTの現状を見てどうお考えですか?

今、一番面白い時期だと思います。
様々な会社さんがトライするようになってきたと思うんですけど、実際にすごく便利だなというのは少なくて、まだ、世の中の人の生活を変えるまでにはなっていないかなと思っています。

これからもっと生活に根差した製品というのが、出てくると思いますし、僕たちも出していきたいです。モノを作りやすくなったというのは、ものすごく歓迎しています。

IoTNEWS 小泉

-私は、今のIoTを取り囲む状況が、インターネット黎明期に似ているなと思っています。関わってくる人が少しずつ増えてきて、ロボットについて語る人も出てきました。はじめはマニアックな世界だったのですが、すそ野が広がっていく兆しがあるなと思っています。

ラズベリーパイみたいなものが出てきたおかげで、BOCCOも作れるようになってきました。スマホの登場で小さいコンピュータみたいなものが早くなったり、安くなってきたおかげで、たくさんのモノが出てくるようになったのかなと思います。

-エンジニアの啓蒙活動などはされていますか?

ワークショップはけっこう実施しています。au未来研究所さんと、konashi(こなし、iPhone/iPadのための、フィジカル・コンピューティングツールキット)というツールを使って、ワークショップを実施しました。

-konashiは何ができるものですか?

これはスマホと連動するデバイスを簡単に作れるというデバイスになります。Bluetoothのモジュールが載っていますので、スマホとBluetoothが無線で繋がって、センサーを繋ぐと簡単に情報を読めるとか、スイッチの制御をアプリから簡単にできるものです。

デバイスの試作だったり、プロトタイピングに非常に便利なツールで、プロトタイピングの用途では個人ユーザーさんにも、様々な企業様にも使っていただいています。

KONASHI

au未来研究所では、「konashiを使ってプロトタイプを作ってみよう」ということで、5~6人で組んだ各チームに僕たちはデバイスを提供したり、講師をやらせてもらったりしてました。結果としては、役に立つようなものから、おバカなものまで幅広いプロトタイプが登場しました。

そのひとつが、FUMMといって、子どもが歩くと「きゅっきゅ」と鳴る靴があると思うのですが、その音をスマホから鳴るようにしています。ジャンプすると違う音にするとか、横断歩道を歩いたときに黒と白で音が変わるとか、「お散歩を楽しくしよう」というデバイスです。

これはプロダクト化の可能性があるということで、KDDIさんがコンセプトモデルにし、一歩進んだデバイスにしました。開発したオリジナルのメンバーも参加しながら、ニューバランスさんに靴を提供していただき、実際の制作は僕たちも関わっています。アプリも力を入れていて、イベントでお子さまに使っていただいたりしています。

-すごく面白いモノですね。まだ販売はされていないのでしょうか。

まだ販売はしていないんですが、製品化に向けたプロジェクトも動いています。

またKDDIさんとは、INFOJAR(インフォ・ジャー)という製品開発の取り組みもしています。「虚構新聞」がINFOJARがauから発売されます、というニュースを出したので、実際に作ってやろうと(笑)

実際の炊飯器にタブレットを仕込んで、ご飯がたけるとTwitterのINFOJARアカウントから、「炊けたなう、ご飯なう」とつぶやかれます。実際にauさんの製品発表会でもネタとしてこの映像が流れました。KDDIさんがFirefox OS を採用した Open Web Boardを作っているので、それを組み込んだものになっています。

-みんなが笑顔になるものばかり作っていらっしゃいますね

そうですね、ユカイ工学という由来もそうでして、「楽しくなれるようなもの、ユカイになれるようなものを作ろうよ」というのをコンセプトにしていますので、あんまり真面目すぎずにいきたいなと思っています。

-ユカイ工学でつくられている、最近の製品を見せていただけますか?

こちらは、僕たちが今一番プッシュしたい、BOCCOというロボットになります。

BOCCO

機能としては、加速度センサーとロボットがセットで販売されていますので、例えばセンサーをドアにつけておいて誰かがお家に帰ってくると、ロボット経由でスマホに通知がくるということができます。

見守り機能と、コミュニケーションの機能がありまして、1人暮らしのおじいちゃん、おばあちゃんなど遠く離れた家族につながるとか、カギっこが1人でお家に帰ってきたときに、仕事をしているパパやママに通知がくる、というような使い方ができます。

遠く離れている家族がいるという場合に、仕事している現役世代というのはなかなか電話で頻繁にコミュニケーションをとるというのは難しいと思うのです。最近では、LINEやメッセージアプリのような手軽なメッセージツールを使ってやりとりするというのは増えていると思うんですが、それをロボットでコミュニケーションをしようというものです。

スマホが使えないおじいちゃん、おばあちゃんだったり、留守番している子どもにスマホ持たせるのは抵抗がある親御さんもいるので、このBOCCOでしたら安心だと思っています。音声のメッセージのやりとりができますし、文字を打つとネット経由でロボットに届きます。

BOCCO

そうするとロボットが読み上げをしてくれます。スマホですぐメッセンジャー感覚で送れるんですけど、スマホを持ってない人でもメッセージを聞くことができます。

私の家もかぎっこなので、すごく活用しています。「宿題ちゃんとやってね」だったり、「冷蔵庫にカレーライスあるから温めて食べてねとか」だったり、夏休み中など、ひとりの時間が長い時なども大活躍です。

ネットがない時代にはテープレコーダーに音を入れたり、冷蔵庫に紙を貼ってたりしてたと思うんですけど、これですと伝言が家の外からでもできます。

-なぜこの形にしようと思われたのですか?

これからどんどんこういう端末がロボットとして進化して、音声を使ったインターフェイスというのは今後もっと出てくるだろうなと思っていました。もちろんBOCCOも中にOS、小さいPCが入っているので、音声認識などどんどん機能をアップデートしていきたいと思っています。そうすると「テレビつけて」とかそういったことがロボットに話しかけるだけでできます。

例えば、家族みんなが集まっている朝ごはんの時にスマホで予定などを確認していると、感じが悪いというか、けっこう怒られるという家も多いと思うんですよね。みんなが自分のスマホをみている世界っていうのは、たぶんあまり幸せじゃないと思うんです。

でもロボットだと、スマホと違って「今日の予定教えて」「今日の天気は?」と聞けばみんなに聞こえるように教えてくれるので、目の前のコミュニケーションを妨げることもなく、非常にいいなと感じています。

-クールなデザインのロボットもありますが、BOCCOみたいに可愛い方がIoTらしいかなと感じました。

今後は機能もですが、デザインの方が大事になってくると思います。今までのロボットというのは割とおもちゃに近いデザインになっているので、遊ぶときだけ出してきて、「遊び終わったらしまっておくもの」というデザインだったんですが、弊社のデザイナーはもともと机やイスなどのインテリアのプロダクトデザインをやっていたこともあり、家の中になじむようなデザインというのをかなり意識してもらっていました。

-ロボットは人っぽくないと話しかけたくならないですし、きちんと話しかけたら反応してくれるものがいいですね。例えばデバイスという括りで見ると、iPhoneのデザインがカッコいいので、その流れでカッコいいデザインのIoTデバイスも多いですが、IoTデバイスは「カッコいい」というより、もう少し温かい方向がいいかなと思っています。

僕もそう思っています。IoTはもうちょっと「温かい」寄りですよね。

-ひとつの製品に開発者は何人くらい関わっていますか?

1つの製品に関わるのは3~4人です。BOCCO出荷直前は10人くらいでやってましたけどね。全員体制で、バグだし、組み立て、アプリ制作など、相当大変です。デバイスドライバーなどOSに近い部分も不具合を直すのも、情報が全くないので大変でした。

最後のモーションはRubyで書いていますが、デバイスドライブなどはすべてC言語です。

-他に見せていただけるものはありますか?

こちらはまだ製品化はしてないので、デモだけなのですが、iDollというアイドルコンビがダンスをします。BOCCOと同じで、インターフェイスとして使ってもらえるように作っていきたいなと思っていて、来年の製品化を目指しています。

最後にBOCCOに見送ってもらった動画がこちら。本当にカワイイ。

-本日は、ありがとうございました。

_____

「ロボットは可愛い方がいい」「片付けるおもちゃじゃなくて、インテリアじゃないと」という考え方にとても共感しました。これから、BOCCOもiDollも、もっと進化するということで、どう進化していくのか楽しみで仕方がありません。

BOCCO(税抜 29,800円)は、DMM.make ROBOTSで購入可能です。


18ffe47ae091488567f5b7bacfbe9db750 のびすけのひと言
裏では技術バリバリ使ってるのに “デザインの方が大事になってくると思います” というコメントがさすがです。
“IoTはカッコよさより、温かさ”と言って、IoTデバイスのコミュニケーション設計をしっかりしているところが “カッコいい” ですね。

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