中国経済の崩壊が叫ばれるなか、なぜ中国市場へ再チャレンジするのか #TGS2015

中国経済の崩壊が叫ばれるなか、なぜ中国市場へ再チャレンジするのか #TGS2015

ひゃくいち

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LIG Copywriterのひゃくいち(@tanabe101)です。

中国のゲーム市場の拡大に期待して、多くの日本のゲーム企業が市場参入に挑戦してきたものの、大成功を収めたといえる企業はほとんどない。そんな問題提起のもとに開催された「アジア・ゲーム・ビジネス・サミット2015@東京ゲームショウ2015」のパネルディスカッションへ先ほど行ってきました。

テーマは「リトライ:中国ゲームマーケット」。「もう一度、中国市場へチャレンジしよう」というわけです。

制度文化やビジネス慣習の違い、政治問題などの要因で「チャイナリスク」とも揶揄される今、どのように中国市場へチャレンジすべきなのか。中国ゲーム市場への展開を強めている注目の日本企業と急成長を遂げる中国企業の方々のやりとりから見えたポイントを速報としてまとめます。


▼ 登壇者一覧

〔日本〕スクウェア・エニックス 取締役 本多 圭司氏
〔日本〕DeNA China CEO 任 宜氏
〔中国〕Shanda Games President 銭 東海氏
〔中国〕Perfect World COO 張 雲帆氏
〔中国〕Perfect World Global BD Director 孫 晗氏
特別ゲスト:立命館大学 映像学部 教授 中村 彰憲氏
モデレータ:日経BP社 日経エンタテインメント! 編集委員 品田 英雄

参照元:TGSフォーラム 2015
http://expo.nikkeibp.co.jp/tgs/2015/business/forum.html

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中国市場へ改めて進出するために大切な3つのポイント

「そもそも、どうして中国市場に再チャレンジしなきゃいけないんだ」。そんな疑問を抱く方もいるかと思います。

ただ、2015年6月時点で中国のインターネット人口は6億6,880万人。ゲーム人口は約3億8,000万人にも達しているといいます。この市場に挑み、パイを広げようとしないのは何とももったいないといえるのではないでしょうか。

「そんなことはわかっている。それでも中国へ進出するのは面倒だから、リスクを冒す必要なんてないと思うんだ」。それもまた、妥当な意見だと思います。

ただ、今後、自国の市場規模を背景に力をつけた中国企業は世界へどんどん出てくるはずです。日本企業のライバルとして。つまり、中国マーケットで勝てないようでは世界でも勝てないことになります。だからこそ、今のうちから、積極的に中国市場へ進出して、世界で戦える企業になろう。そんな意見が、ディスカッションを通して示されていました。

では、具体的にどのようなポイントを重視すべきなのか。以下、3つのポイントに絞って見ていきましょう。

1. 組織の意思決定スピードをもっと高めよう

中国現地企業の登壇者からは「日本の組織における意思決定の速度の遅さ」が問題点として指摘されていました。

中国市場は「作り手」ではなく「買い手」中心のマーケットであり、よりユーザーの意見に即した柔軟な変化が求められる。トレンドが急速に切り替わる市場のなかで、日本の魅力的なコンテンツを中国へ現地展開しようとしたときに、「上長へ確認、上長へ確認、上長へ確認」の繰り返しでは、せっかくのチャンスを逃してしまうというわけです。

たとえば、中国へ進出している欧米企業においては「中国のことは中国で判断したほうがいい」と、中国拠点に多大な権限が譲渡されており、意思決定が単独かつ迅速に完結できるといいます。

中国市場の開発スピードは良くも悪くも早いため、日本企業が悠長に進めているあいだに、同様のコンテンツが現地で制作されてしまえば(著作権的にグレイな範囲で)、中国の膨大なユーザーを奪われることになってしまうでしょう。組織体制を見直して、意思決定の速度を上げることが求められるのです。

2. 中国現地の優秀なパートナー企業を見つけよう

ただ、どんなに意思決定の速度をあげても限界があるのは事実。なぜならば、その意思決定自体が日本的な視点に基づくものであり、中国現地市場に最適なローカライズがなされたものとは言えないからです。

中国のことは中国の企業に任せたほうがいい。登壇した日本企業からはそんな声が聞かれました。現地の商慣習にくわしい優秀なパートナー企業を見つけることで、よりスピーディーかつ効果的に事業を進めることができると言います。

たとえば、中国のゲーム市場においては「Google Play」のシェア率は低く、代わりに現地発のアプリストアが100種類以上も乱立しているそうです。その点だけでも「現地でどうすべきなのか分からない」と戸惑う日本企業は少なくないでしょう。

だからこそ、日本企業としての強みを生かしながらも、中国でやるべきことに精通した現地企業とも手を組んでいく。「マーケットを奪おう」とするのではなく、「マーケットに寄り添う」といったイメージで臨むべきなのかもしれません。

3. 日本市場ではなく世界市場を向いてコンテンツを作ろう

「ゲーム業界に限らず、コンテンツをつくるとき、日本企業はどうしても日本市場をまずは向いてしまう」との懸念も示されました。日本市場でうまくいったコンテンツを世界へ持って行く。そんなスピードでは世界に勝てないと言います。

もっとグローバルマインドをもって、そもそもの段階からグローバルに通用するものづくりを目指せるようになろう。そのためにも各国の違いを熟知した現地のパートナーたちと「製作段階から」手を組み、一緒にグローバルなコンテンツを作っていくのもいいだろう。そんな見解が示されていたのが印象的でした。

たしかに、よく考えたら「日本でうまくいってから世界へ」っておかしいのかもしれません。なぜなら、日本でうまくいったからといって世界でうまくいくとは限らないわけですから。

さいごに

他にも魅力的なお話は多々ありましたが、今回は個人的に最も「熱いな」と感じた部分を自分なりにまとめさせていただきました。

わたしは以前に翻訳会社の中国法人で董事兼総経理として約3年ほど働いていたことがあるのですが、やはり中国市場におけるビジネスの難しさを痛感したのが正直なところでした。ただ、同時に中国市場の熱気を垣間見たのも事実です。そして、今回のディスカッションを聞いて、「もう一度、中国と仕事をしてみたいな」と改めて思うことができました。

みなさんはどう思いましたか? まだまだ東京ゲームショウ2015は開催中ですので、ぜひリアルな熱気に触れてみてくださいね。

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