こんにちは、LIG代表の大山です。
発信は苦手なほうですが、この連載も今回で3回目になりました。前回の記事では、どんな人と一緒に働きたいかという話をしました。 一緒に働けたらいいなと思う人の話。僕が大事にしている2つのこと|LIG代表・大山智弘
今回は、僕が思う「いい仕事」の話をしようと思います。
「いい仕事とは何か」を考えるとき、僕がいつも思い出すのは、リクルートで求人広告の営業をしていた頃のことです。お客様の期待に応えられず、本当に申し訳ない思いをした経験があって、それがいまの僕の仕事観の原点になっています。
連載第一回目の記事でも少し触れましたが、今回は「お客様のためになる」という角度から振り返ってみようと思います。
「いい仕事」は、2つの柱でできている
僕の中での「いい仕事」は、2つの柱でできています。ひとつは、お客様のためになること。もうひとつは、それをやり続けることです。経営で譲れない一線は何かと聞かれても、同じ答えになります。
こう書くと、「お客様満足は大事」なんて、いまさらきれいごとに聞こえるかもしれません。
それでも僕が、「お客様のためになること」を本気で大事にしているのは、会社をつくってきた経験と、営業時代の苦い記憶があるからです。
お客様がいないと、何も始まらない
まず、会社をつくってきた経験から。僕はゼロから会社をつくったことが何度かあるのですが、そのたびに改めて思うのは、お客様がいないと、事業そのものが成り立たないということです。
従業員の働く環境を整えることと、お客様と真摯に向き合うこと。僕の中で、この2つはどちらが上という話ではなく、「同じくらい大事」で、つながっています。お客様からお仕事をいただき、売上と利益を上げることで、みんなの働く環境も守られる。両方が揃って、初めて会社は回ります。だから、お客様に誠心誠意向き合うことは、どんな仕事でも、どんな事業でも、曲げてはいけない。当たり前なんですけど、その当たり前をやり続けることが、いちばん難しい。
▲僕の中では、この2つはいつもセットです
広告を売って、何も残せなかった話
そして、僕がこの「お客様のためになること」にこだわるようになった、いちばんの原点が、営業時代の記憶です。
僕は起業する前、リクルートで求人広告の営業をやっていました。求人広告を売っているので、お客様の困りごとは当然、採用です。でも、その裏には必ず、経営の葛藤がありました。
「営業担当を採りたい」というお客様の要望の裏には、「売上が足りない」という悩みがある。「マーケティングの人材がほしい」というお客様の要望の裏には、「いい商品だと思っているのに、まったく知られていない」という悩みがある。そういった採用の裏にある課題を聞かせていただき、“採用”という解決方法を通じて会社の成長に関われる。それがすごく勉強になったし、僕がこの仕事を好きだった理由でもあります。
しかし、決して安くない広告を買っていただいても、1人も採用できないことがあるんです。
もちろん、一度でだめなら何度でもの精神で、仕事の内容を打ち出した広告でだめなら、次は会社の雰囲気を打ち出す。それでもだめなら、給与などの待遇を打ち出す。広告の中身や打ち出し方を変えて、角度の違う提案を何度も何度も打ち出しました。それでも採用できないことがある。
経営者と直接やり取りする仕事なので、採れなければ、当然、めちゃくちゃ怒られます。当たり前です。すでに広告を買っていただいているので、営業としての数字は立っています。
でも、お客様には何も残っていない。あのときの「本当に申し訳ない」という感覚は、いまでも覚えています。
この経験が、いまの仕事観をつくった
つまり僕にとって「お客様のためになる」は、道徳ではなく、実体験から来ています。売れたのに、お客様には何も残せなかった。あの申し訳なさは、もう味わいたくないんです。
しかもあのとき、すり減っていたのは自分自身の気持ちでもありました。お客様のためにならない仕事は、働く側の誇りも削っていく。お客様と真摯に向き合うことと、みんなの働く環境を「同じくらい大事」だと思うのは、あのときの教訓がいまも生きているからだと思います。
同時に、採用難という課題を解決できたら、たとえば、エンジニアが欲しいのに採用できない会社に別の形で人を届けられたら、絶対に喜ばれるだろうな、とも思っていました。それが、のちにベトナムで開発会社を立ち上げる入り口になるんですけど、その話は連載の最初に書いた通りです。
LIGの代表になるまでの道のりと、当時の想いを振り返る|LIG代表・大山智弘
信頼は、積み重ねでしか作れない
そして、「いい仕事」のもうひとつの柱である、「やり続ける」こと。
クライアントワークは、僕らの思った通りには進みません。お客様にはお客様の事情があり、要望が変わることも、厳しいことを言われることもあります。そこで大事になってくるのは、真摯に受け止めて、きちんとやり続けることです。
信頼って、1日頑張っただけでいただけるものではないと思うんです。地道な積み重ねがあって初めて信頼は作られる。長いお付き合いをするためにも、粘り強くやり続けるしかない。
向き合い続けたから生まれた信頼
僕が「やり続ける」ことを大事にしているのは、先ほどのリクルート時代のお客様との出来事があったからです。
採用できなかったとき、お客様から言われたのは、「成果が出なければ意味がない」という話でした。
厳しい言葉ですが、その通りだなと思いました。成果が出ない仕事で、お金をいただいてはいけない。言い訳をしようという気持ちには、なれませんでした。
それでも提案を持っていき続けたのは、どうにかして成果を返したかったからです。いただいた金額に見合う仕事だったと、お客様にどこかで感じていただきたかった。角度を変えた提案を何度も持っていったのも、そのためです。
お客様がどう受け止めていたのか、本当のところは分かりません。ただ、こちらの一生懸命さは感じてくださっていたと思います。
そのときのご担当者の方とは、いまも付き合いが続いています。いまでは一緒にサウナに行ったり、食事をしたりする仲で、僕にとってはメンターのような存在です。
1回の提案で信頼していただけたわけではありません。厳しい言葉を受け止めて、それでも提案を持っていき続けた。今の関係は、何かを速くつくったから生まれたものではなく、向き合い続けたからこそ生まれたものだと思います。
だからこそ、この「続ける」の価値って、AIの時代になって、下がるどころか上がっている気がするんです。成果物を作ること自体は、これからどんどん速く、簡単になっていきます。そうなったときに差がつくのは、たぶん、アウトプットの速さよりも、「この会社は途中で投げ出さない」という信頼のほうではないかと思うんです。
▲僕の思う「いい仕事」を分解すると、こうなります
余談ですが、僕が判断に迷ったときに読み返す本のひとつに、ユニクロの柳井さんの『経営者になるためのノート』(PHP研究所)があります。最近読み返して刺さったのは、「仕事を任せるときは、最初にゴールのイメージを共有する」という部分でした。
ちょうどうまくいかなかった案件があって、振り返ると、僕の任せ方に原因があったんです。著書のページの余白には、日付と一緒に、そのときの反省を書き込んでいます。
いい仕事とは、やり続ける仕事
まとめると、僕の思う「いい仕事」は、こうです。
お客様のためになることを、やり続ける仕事。
前回、素直で粘り強い人と働きたいと書きましたが、理由を突き詰めていくと、この「やり続ける仕事」に行き着きます。クライアントワークの信頼は、粘り強い人たちの積み重ねでしか作れないからです。
AIの時代だからこそ、お客様と向き合い続けることの価値は、むしろ上がっていくのではないかと思っています。
お客様の悩みの裏まで汲み取り、お客様にとって本当に必要なことを考え抜く。うまくいかなかったときも、あきらめずに提案を持っていく。その繰り返しで、お客様と長く一緒に歩ける仕事をしていきたいと思います。