2022年EC業界のトレンドと今後の展望

2022年EC業界のトレンドと今後の展望

Noriaki Iwata

Noriaki Iwata

こんにちは、CODY COOの岩田です。

ここ数年、新型コロナの影響もあってEC業界は活況と言われています。ですが2022年に入ってからはリモートワークからオフィス出社への切り替え、旅行需要の回復など、オンラインからリアルへの回帰が進みつつあります。そのため「ECの勢いも衰えていくんじゃないか」という声も聞かれます。

そこで今回はEC業界の潮流を振り返りつつ、今後の展望、ECを伸ばしていくために必要なことなどについて考えていきたいと思います。

ECの市場規模は拡大、物販が特に好調


(引用:経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」

多くの方が実感していると思いますが、コロナ禍でECを取り巻く状況は大きく変化しました。

経済産業省によると、日本国内のBtoC-ECの市場規模は、2019年は約19.4兆円。初めて緊急事態宣言が出された2020年には旅行サービスが低迷してサービス系分野の市場規模が減ったこともあり、市場全体では微減の約19.3兆円でした。ですがそんななかでも物販系分野が10兆円から12.2兆円に大幅に増加。EC化率も6.76%から8.08%へと伸長しました。

(引用:経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」

2021年は、全体では20.7兆円と前年比7.35%増。物販系は2020年からさらに伸びて13.2兆円に達しました。EC化率は8.78%となりました。

この調査から、コロナ禍で物販系のECは大きく成長し、2021年も好調を維持していたことがわかります。

中小事業者にチャンス!?2022年のEC業界のトレンド

コロナ禍でECの需要が増えたことで、参入する事業者は増加しました。その一方で、課題も見えてきています。

そこでまずは近年〜2022年前半のEC業界の動きについて確認していきましょう。

モールから自社ECサイトへ

ここ数年で、楽天市場やAmazon、Yahooショッピングなどのネット上のショッピングモールへの出店から自社EC開設へと動く事業者が増えています。

10年ほど前だと、自社ECを構えて本格的に運用できているのはは自社ECを構えられるのは、主にグローバルブランドや大手の事業者だけでした。ですが最近は中小の事業者・ブランドにも広がりつつあります。2022年前半もこの流れは続いていました。

自社ECへの参入障壁が下がった大きな要因としては、以下の2つが考えられます。

  • ECプラットフォームの台頭
  • ソーシャルコマースの拡大

1. ECプラットフォームの台頭

自社ECに取り組む事業者が増えているもっとも大きな理由が、ECプラットフォームの台頭です。

一般的にゼロからECサイトを構築する場合、実装する機能や規模によっても変動はしますが、一般的には300〜500万円程度のコストがかかります。そのため資金力のない小規模事業者などは、楽天市場などの大手ECモール内に出店する傾向がありました。

ところが「Shopify」や「BASE」といったASP型のECプラットフォームの登場により、この状況が変わりつつあります。

少し前まではECサイトを構築する際のオプションとしては、前述のモール出店に加えて、フルスクラッチ、オープンソース、パッケージなどが一般的でしたが、ASP型のプラットフォームを活用すれば、イニシャルコストを大きく抑えて自社ECサイトが構えられます

その結果、楽天市場やAmazonなどに依存していた中小の事業者が、自前のECサイトを持ち、D2C(Direct to Consumer)に挑戦するようになってきました

今後もいわゆるレイトマジョリティの参入により、この流れは加速していくと考えられます。

2. ソーシャルコマースの拡大

参入障壁が下がったもう一つの理由として考えられるのが、ソーシャルコマースの拡大です。

もともとコミュニケーションを主としていたFacebookやInstagram、TikTokなどのSNSでは近年、ショッピング機能が拡充されています。SNSでたまたま目にした広告から買い物をした経験がある人も多いのではないでしょうか。

Yahoo!などの大手ポータルサイトに広告を出す場合、かなりの費用がかかります。ですがSNS広告のプライステーブルは、それに比べるとかなりリーズナブルで、中小事業者でも挑戦しやすいといえます。

ソーシャルコマースを上手に活用すれば、消費者との接触頻度を効果的に増やし、売上アップにつなげることができます。SNSからショッピングをするというカスタマーのトレンドが、中小事業者の自社EC参入を後押ししています。

リアル店舗の役割の変化で重要性を増すOMO

参入障壁が下がったとはいえ、自社ECというハコができれば、それですべてうまくいくわけではありません。ECへの集客、店舗とECとの連携が必要です。

店舗とECとをどう連携させるかは事業会社にとって長年のテーマでしたが、ここ数年で店舗の役割は変わりつつあると感じます。

最近は人が集まるところに絞って出店し、店舗は商品を手に取って見てもらう一種のショールームとして活用。商品の購入はECへ誘導するというブランドも増えてきています。これであればお店に最低限の商品を置けばいいので、在庫リスクは最小限に抑えられます。

顧客とのタッチポイントは維持できるので、そこから生の声などデータも得られます。リアルの店舗を新規出店・継続するコストを減らすため、意図的にリアル店舗を撤退する流れも起きています。

今後もこのトレンドは続いていくと考えられます。そうなると、店頭の接客時に得た情報とECの購買データをどう結びつけてマーケティングに活用していくかという点がより重要になってくるでしょう。つまりOMO(オンラインとオフラインの融合)です。

ここについては、Shopifyが「Shopify POS」というサービスを打ち出しています。ShopifyはそれまではECのプラットフォームのみを提供していましたが、POSの登場によってリアル店舗でもデータを集められるようになり、店舗とECの売上や在庫、顧客データの一括管理が可能となりました。Shopify POSを活用すれば、よりパーソナライズしたアプローチができるでしょう。

ECとリアルとの連携、カスタマーの可視化についてはShopifyが先んじてサポートを打ち出している印象がありますが、まだまだソリューションが少ないのが実状です。ある意味、ビジネスオポチュニティが眠っているともいえそうですね。

立ちはだかるサードパーティクッキー規制

店舗とECで得た情報を活用することで、顧客に合わせた商品のレコメンデーションなどの効果的なアプローチが可能となります。

ところがここには大きな壁が立ちはだかっています。それがサードパーティクッキー規制です。EUの一般データ保護規則(GDPR)をはじめ、世界的に個人情報保護の流れが強まっていて、サードパーティクッキーの利用は難しくなってきています。

そうなると自社EC内の回遊データは取れても、顧客が自社ECの外でどういった消費行動を取っているのかわからなくなり、レコメンデーションや広告配信のアルゴリズムにも影響してくると考えられます。

今後もこの規制は強化されると予測されるため、サードパーティクッキーに頼るのではなく、できるだけ多くのファーストパーティクッキーの取得、有効活用が重要になっていくでしょう。

決済サービスの選択も検討が必要

EC業界のトレンドとして、もう一つ知っておきたいのが「決済サービスの増加」です。

昔は決済方法といえば、現金・クレジットカード・銀行振込・代引きくらいでした。ですが最近は電子マネーや「○○ペイ」などのQRコード決済が増えて、レジ横にたくさんの決済サービスが掲載されたポップが置かれているのを目にするようになりました。

事業会社としてはランニングコストを下げるために、できるだけ利用手数料の低いペイメントゲートウェイに絞って利用したいと思うでしょう。ですがそうなると顧客の利便性は低下します。

ちなみにどの決済がよく使われているかは、国によって違います。たとえばオーストラリアではPayPalがよく利用されています。出店地域によって決済サービスを考えることも大事です。

決済サービスはCVRにダイレクトに関わる部分でもあるので、どれを導入するか、戦略を策定することもポイントとなってくると思います。

これからのECでやっておきたいこと:王道ルート「モールで成功→自社EC」から始めよう

さてここまで、近年〜2022年のEC業界のトレンドを説明してきました。これをふまえて、「これからECにチャレンジしたい」「ECを伸ばしていきたい」という企業はどう行動するべきなのか、ご提案します。

さきほど、自社ECへの参入障壁が下がっているとお伝えしましたが、ECをこれから始める、またはモールに出店したばかりでさほど売上がないという事業者は、すぐに自社ECを立ち上げるのではなく、まずはECモールで売上を伸ばすことをおすすめします。

ブランド力が弱く、プレゼンスがあまりない状況で自社ECをもっても、まずお客さんは来てくれません。オーガニック検索での流入は期待できない、広告を出そうとしても資金がない、リスティングを活用しようとしてもビッグワードが買えない。そうなるとジリ貧になることは明らかです。

そこでまずはモールにぶら下がり、モール内でプレゼンスを高め、ブランド力をアップさせることに注力しましょう。モール内である程度濃いファンを獲得できたら、そのタイミングで次のステップとして自社ECや直営店舗のオープンへと移行するのがいいと思います。

モール内でのショッピングには、ポイント付与などのベネフィットがあります。そのためモールから自社ECサイトに顧客を呼び込むためには、何らかの特典が必要です。たとえば自社ECでショッピングをした場合にはコスメポーチをプレゼントするなどの、モールとの差分をつくりましょう。

モールから自社ECへの展開に成功したのが、ボタニカルライフスタイルブランドの「BOTANIST(ボタニスト)」です。ボタニストは数年前、一気に有名になりましたが実はそのきっかけは楽天でした。楽天内で売上1位の実績をつくり、ランキング1位の称号をフックにドラッグストアでの扱いを増やすことに成功し、自社ECサイトでの拡大に繋がっていったのです。

数年前に別のヘアケアブランドも同じような手法で有名になりました。ECモールでプレゼンスを高めてリアル店舗、自社ECの展開という流れは王道だと思います。

まとめ:ECはまだまだ伸びる

コロナ禍ですでに2年ほど店頭での買い物や旅行を我慢する状況が続いています。リアルへの回帰というトレンドがあるのは確かです。ですがそれは一時的なもので、僕は今後もECは伸び続けると考えています。

グローバルで見ると、上がったとはいえ日本のEC化率はまだまだ低いのが実状です。コロナ禍では、今までネットで買い物をした経験がない人が、初めて利用してその便利さを実感したケースが少なくありません。

特に高齢者は、車の免許を返納したり脚や腰が痛かったりして買い物に行けない人もいます。そういった層への継続的なアプローチなどを考えると、ECのポテンシャルはまだまだ高く、今後も成長が期待できます。

ECに力を入れたいと思っているものの、データが取得できていない、活用できていないという企業はLIGがご相談にのりますので、お気軽にご連絡ください。
 

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Noriaki Iwata
Noriaki Iwata 海外事業部 部長 / Cody Web Development Inc., / COO / 岩田 憲昭

楽天株式会社に入社後、広告事業にて営業を担当。全社MVPを3度受賞する等して、当時事業史上最年少でリーダー・マネージャーへ昇格。2017年にメディア事業へ異動し事業責任者に就任、シンガポールに渡星した後アドロール株式会社とのJV立ち上げを機に帰国。 その後株式会社ファーストリテイリングに入社、グローバルECに関するPMとして様々なプロジェクトの担当を経て、2021年株式会社LIGに参画。

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