こんにちは。コンサルタントの高瀬麻由です。
テクノロジーの発展はビジネスのあり方を大きく変えました。特にスマートフォンが普及してからの10年間は、まさにVUCA(Volatility 変動性・Uncertainty 不確実性・Complexity 複雑性・Ambiguity 曖昧性)と呼ぶのにふさわしい急激な変化を遂げています。
そんな中で注目を集めているのが「データ」です。これまであまりデータを活用してこなかった業界も含め、様々なビジネスで「データ活用」が叫ばれるようになっています。
一方で、データは取得するだけでは意味がありません。ビジネスにデータを活かすためには、一元管理し、連携させ、活用する必要があります。この点については、まだ発展途上という企業も少なくありません。
データのなかでも、顧客データ活用の基盤となる“一元管理”を可能にするのが「CDP」です。今回はCDPの概要と、CDPを活用することでどんなメリットがあるのか、どのように活用を進めればいいのかなどについて説明します。
目次
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは
そもそもCDPとは、「カスタマーデータプラットフォーム」の略称です。日本語だと「顧客データ基盤」。企業の中に蓄積された顧客データを集約し、一元管理するためのプラットフォームと理解してください。
顧客データを集約するプラットフォームが注目されているということは、逆に言えば昔のビジネスではそのようなプラットフォームを持つ企業が多くなかったことを意味しています。
「そんなことはない。顧客のデータは昔から取得していた」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、その顧客データはどのような形で管理されていたでしょうか。
たとえば、ECサイトにおける顧客の購買履歴と実店舗での購買履歴、ECサイトにおける在庫情報と実店舗における在庫情報。これらの情報は一元管理され、しっかり連携されていたでしょうか。もし、それぞれの情報がばらばらの場所で管理され、連携も連動もしていなかったのであれば、それは「データを取得しているだけ」であって、データの連携や活用ができていたとはいえないのです。
データを連携し、最大限に活用するためには、取得したデータを1つのプラットフォームで一元的に管理する必要があります。CDPとは、そのための基盤となる存在なのです。
なお、CDPと似た概念にDMP(データマネジメントプラットフォーム)がありますが、プライベートDMPとCDPは同義と捉えて問題ありません。
なぜCDPが必要なのか?注目されるようになった背景
CDPが注目されるようになったのは、ここ10年ほどのことです。きっかけの1つとして考えられるのは、スマートフォンの普及でしょう。一家に一台ではなく、一人一台スマートフォンを持つのが当たり前になったことで、企業はより消費者の詳細なデータを取得できるようになりました。
企業はスマートフォンから様々な情報を得ることができます。たとえば企業が提供しているアプリで会員登録することで企業は年代や性別などがわかりますし、その情報をスマートフォンから取得できる位置情報と合わせて活用することで、より効果的なキャンペーンの提案につなげられたりします。
このように、様々な情報を組み合わせて、ビジネスの効果をより高めることができるとわかってきたからこそ、データ活用とそのためのCDPが注目を集めるようになったのです。
CDPで一元管理するべきデータとは
では、具体的にCDPで管理すべきデータにはどのようなものがあるのでしょうか。業種やビジネスモデルによってデータの種類は異なりますが、ここでは例として小売業を取り上げます。
たとえば、ECサイトを運営しているのであれば、まず取得すべきなのはサイトのアクセスデータです。どのページへのアクセスが多いのか、ユーザーはどんな検索キーワードで流入しているのかなど重要な情報が詰まっています。
また、会員登録システムがあるなら、登録しているユーザーの年齢、性別、居住地、メールアドレス、購買履歴などが取得できます。ユーザーにメルマガを送っているのであれば、開封率も大事な情報です。
SNSの情報も取得しておくと活用できる可能性があります。SNSのアカウントを使ってログインする仕組みを利用すれば、SNSの行動データやフォロー先の属性データなどを顧客情報と組み合わせることも可能です。
次に実店舗に目を向けてみましょう。ECサイトと同様に、会員情報は重要なデータです。会員登録時にユーザーに記入してもらうことで、年齢や性別、住所といったデータが取得できているはずです。もちろん、店内商品の販売履歴と在庫情報もしっかりと取得しておきたいデータです。
CDPで何ができるのか?導入のメリットとは
データを取得し、CDPで一元管理すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。先ほどの小売業を例に挙げて説明します。
まず、オフラインの消費行動とオンラインの消費行動が紐付くということです。たとえば、ある顧客が実店舗でジャケットを購入したとします。その情報がオンラインの顧客データと紐付いていれば、顧客がECサイトにアクセスした際、実店舗の購買履歴をもとに顧客の好みに合いそうな商品をレコメンドできるというわけです。
逆に、ECサイトで購入した商品データを実店舗で参照できれば、スタッフによる接客の精度も高まります。
こうしたデータ連携は、顧客の満足度を大いに高める効果が期待できます。現在はオンラインとオフラインを切り分けて考える人は少ないです。オンラインとオフラインは地続きであり、だからこそ顧客はオンラインとオフラインをまたいでサービスに一貫性を求めます。
ECサイトではたくさん買い物をしているのに、実店舗で初来店かのように扱われたら、あまり良い気はしないでしょう。CDPでデータを管理し、効果的に活用することで、オンラインとオフライン、あるいは複数店舗をまたいだ接客に一貫性が生まれるのです。
CDPを導入する上で発生しがちな課題
CDPを導入する際、どのような課題があり、どのように解消すればいいのかを説明します。
データの取得方法
導入前の課題として挙げられるのが、「どうやってデータを集めるのか」という取得方法のつまずきです。というのも、多くのデータはばらばらに散らばっているので、何がどこにあるのかをまず可視化しなければならないのです。しかも、データごとに担当部署も異なることもざらにあります。たとえば、ECの会員情報はECサイト運営部署が持っているけれど、在庫情報は別の部署が持っているといった具合です。
このように、CDPを導入するには、どのデータがどこにあり、どの部署が管理しているのかといった「データの現状」を明らかにするところから始める必要があり、非常に手間がかかるのです。できれば、しっかりとタスクフォースを組んで集中的に取り組むべきだといえます。
データの連携
また、データが見つかったとしても、そもそも他のデータと組み合わせて使える状態になっていないことも多々あります。取得内容が中途半端だったり、データが構造化されていなかったりする場合、どのように他のデータと連携させるのかという点にも悩まされるでしょう。
この課題に対処するには、CDPの構想段階からしっかりとゴールを見据える必要があります。何が自社の課題なのか。データを活用して顧客に何を提供したいのか。CDP導入における“戦略”をあらかじめ練っておくことが重要です。
ツールの導入
ここまでをクリアして、CDPの導入にこぎつけても、まだ終わりではありません。CDPを導入したといっても、いきなり現場のメンバーが使いこなせるわけではないからです。BIツールなどを導入し、現場メンバーにトレーニングを行うなどして、しっかりとCDPを活用できる組織体制をつくらなければ、せっかくCDPを構築したのに使われないままになってしまうということも考えられます。
CDPの拡張性
また、できれば将来に備えて、“拡張性”も意識しておくと良いでしょう。世の中は今後もどんどん変化していきます。5年後に、想像もしていなかった非構造化データが登場し、CDPで活用する必要に迫られるかもしれません。その際、CDPに拡張性がないと、また1から構築し直すことになってしまいます。どんなニーズが出てきても現在の延長線上で対応できるように、拡張性を持たせてデータレイクを構築しておきましょう。
CDP導入について、LIGができること
ここまで述べてきたように、CDPの導入は大きく「戦略」と「構築」のフェーズに分かれます。
LIGは戦略と構築、ともに支援するサービスを提供しています。戦略面については、コンサルタントがコンサルティングを行い、構築はエンジニアチームが担います。戦略から構築まで、一気通貫で支援できるのがLIGの強みです。
CDPの導入をお考えの際は、ぜひLIGにお声がけください。