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移動を変革する「MaaS」とは?社会に与える影響について解説

ミキ

コンサルタントのミキです。

アクセンチュア株式会社で、製造・流通・小売業界のコンサルティングに従事した後、LIGに入社しました。現在はクライアントへの新規事業提案、業務課題抽出、システム構成見直しなど幅広くサポートを行っています。

現在、注目を集めている「MaaS」というキーワード。MaaSとは、自動車やバス、飛行機や船といった「人々の移動手段」を革新する概念であり、交通事業者以外の事業者にとっても大きなビジネスの可能性を秘めた領域です。

今回はそんなMaaSの基本的な考え方から、世界に与える影響、事業者にとってどんなビジネスチャンスがあるのかという点についてお伝えします。

移動手段における「所有から利用へ」という革新

まず、MaaSとは何なのかという点から説明します。

MaaSとは「Mobility as a Service」の略語です。モビリティとは「移動手段」という意味ですから、全体としては「サービスとしての移動手段」という意味です。

ちなみにMobilityと表現する場合、移動するのは「人」に限定して考えます。物が移動する「物流」に関しては「Transportation」と表現するので、「Mobility as a Service」とはまた違う話です。

MaaS(サービスとしての移動手段)について理解するためには、別の領域における似た概念を考えるとわかりやすいでしょう。

それは、SaaSやPaaS、IaaSといった考え方です。SaaSは「Software as a Service」、PaaSは「Platform as a Service」、IaaSは「Infrastructure as a Service」の略語です。こうした概念を総称して「XaaS」(Xは任意の文字)と呼ぶこともあります。

ここでは、わかりやすく「SaaS(サービスとしてのソフトウェア)」を例にとって説明しましょう。

かつて企業が自社に何らかのシステムを導入する場合、サーバを購入し、開発会社に開発を依頼するなどして(あるいは自社で開発して)、自社専用のシステムを構築することが一般的でした。システムが動作するサーバを自社内に設置し、自社内でのみ動作するシステムのことを「オンプレミス」と呼びます。

オンプレミスのシステムにはメリットもありますが、一方で開発コストや維持コストが高額になったり、システムの改修をする場合にさらに多額のコストがかかったりといったデメリットがあります。

そこで、2010年代ごろから増えてきたのが、Software as a Service(SaaS)、すなわち必要な「機能」だけをサービスとして提供する企業です。オンプレミスからSaaSに移行することにより、サーバを購入・維持するコストも、自社専用のシステムをゼロから開発するコストも、システムが古くなった際に改修するコストも不要です。SaaSの登場により、企業はシステム面でのコストダウンやビジネスのスピードアップが可能になったのです。

もっと身近な例で言うなら、音楽の楽しみ方の変化が挙げられます。以前は音楽を楽しもうと思ったら、CDを購入することが一般的でした。しかし、現在では音楽配信サービスで視聴することが一般的になっています。つまり、音楽配信サービスは「音楽を聴く」という機能だけをサービスとして提供しているといえます。

同じことが、MaaSについても言えます。これまで、自動車で移動しようとすると、多くの場合、自家用車を持つことが必要でした。好きなときに自動車に乗って移動できるというメリットと引き換えに、自動車を購入・維持するコストを支払っていたわけです。

一方で、MaaSが浸透した社会では、自動車を所有することなく「自動車での移動」という機能だけをサービスとして低コストで受けられます。たとえば、近年利用者が増えているカーシェアサービスも、MaaSの一端を担う可能性があるサービスといえるでしょう。あるいは、自動運転が普及すれば、自動運転のタクシーを低コストで利用できるようになるかもしれません。

このように、「所有」から「(サービスとしての)利用」への転換が、MaaSを含むXaaSの基本的な概念なのです。

MaaSとCASEの違い

MaaSについて考える際、はずせないのが「CASE」という概念です。しばしばMaaSと混同されがちな考え方なので、ここで説明しておきます。

CASEとは「Connected」「Automation」「Shared/Service」「Electric」の4つの頭文字をとった言葉です。これらは、今後の自動車における進化の方向性を表しています。

たとえば、現代の自動車は様々なセンサーを搭載しており、IoT技術により運転中もデータを収集して、センターに送信しています。そうすることで、交通情報の通知などをフィードバックしてくれるのです。つまり、現代の自動車はセンターや他の自動車とConnected——つながっているといえます。

また、Automationは言うまでもなく、自動運転が可能になる未来を示しています。自動運転に関する技術革新は目覚ましいものがあり、いずれ当たり前の光景になることでしょう。

Shared/Serviceは、カーシェアやライドシェアなどのシェアサービスの広がりを示しています。すでに多くのシェアリングサービスが登場しており、先ほどの「所有から利用へ」という流れは今後も止まらないことでしょう。

最後にElectricは電気自動車のことです。現在、特に環境問題が注目されていることから、電気自動車の需要は高まり続けています。

ここまでの説明で、MaaSとCASEとで関連している部分が多いことがお判りいただけたのではないでしょうか。例えばどちらにおいても「所有から利用へ」という流れなどはどちらにおいて共通です。ただCASEについてはあくまで「自動車」に限定した考え方である、という点はMaaSとの違いで注意が必要です。

MaaSの実現度を示す5段階の統合レベル

ここで、MaaSの全体像を「MaaSの統合レベル」をもとに見ていきましょう。国土交通政策研究所は、MaaSの統合レベルを5段階に分けて整理しています。


引用元:国土交通省のMaaS推進に関する取組について

まず、レベル0はMaaSのベースになるデジタル自体がまだ移動に活用されていなかった頃の社会です。この段階では移動手段は分断されており、人々は複数の移動手段をばらばらに捉えていました。たとえば、飛行機で飛び、電車で移動し、さらに船に乗る場合、どのように移動すれば乗り換えがスムーズにいくのかは、自分自身で時刻表をめくって考えなければならなかったのです。

レベル1は、情報が統合された社会です。具体的には1つのアプリやサービス内で複数の交通手段をまとめて調べられる世界です。どんな交通手段を使って、どのように乗り換えればスムーズに目的地に着けるのか、皆さんも1つのアプリ内で調べたことがあるのではないでしょうか。現在、日本はこのレベル1の段階にあるといえます。

レベル2は、1つのアプリやサービス内で、すべての移動の予約と決裁まで可能になる世界です。目的地を入力して、乗り換えのルートを選んだら、そのまま予約と決済までアプリ内で完了する社会がMaaSレベル2です。

レベル3は、予約決済に加えて、実際のサービスまで統合された社会です。1つのアプリ内であらゆる交通手段の利用が可能になり、複数の移動手段がそれぞれ連携したサービスを提供します。

レベル4は、国の政策としてMaaSをレベル3まで実現した社会です。MaaSの最終目標であり、この段階まで達している国は未だに存在しません。

このように、MaaSは自動車に限らず、すべての移動手段を統合していくことを目指す考え方です。レベルが1つ上がるだけでも社会に大きなインパクトがあり、人々の生活を根本的に変える可能性を秘めているといえます。

MaaSが社会に与える3つの影響

では、MaaSが社会にどのような影響を及ぼすのかについて、詳しく説明します。

1. 技術の革新

まず、「技術の革新」です。

MaaSを実現するには、様々な技術を活用する必要があります。CASEの説明でも触れた自動運転技術やIoTはもちろん、異なる移動手段が連携するためにはCDP(カスタマーデータプラットフォーム)による顧客情報の一元管理も必要です。5G技術による通信の高速化も重要ですし、システム負荷を減らすためのエッジコンピューティングも必要になるでしょう。

このように、MaaSの進化はあらゆる技術の進化と並行して進んでいくといえるのです。

2. サービスの革新

次に「サービスの革新」です。これまで移動手段に関するサービス提供者といえば、交通機関を運営する事業者や、乗換案内アプリなどの関連サービス事業者のみに閉じていました。

しかし、MaaSが発達することにより、新たなビジネスチャンスが生まれ、これまで関連のなかった様々な業種の事業者が参入する可能性があります。たとえば、移動に関連づけてホテルやレストランのリコメンドまたは予約を提供するサービスなどです。

そうした事業者が提供するサービスは、外部連携が前提になったものも多くなるでしょう。

3. 消費者行動の変化

3つめに「消費者行動の変化」です。ライフスタイルの変化といってもいいでしょう。たとえば、前述したように、これまでは自家用車を所有していたものの、カーシェアリングサービスや自動運転による安価なタクシーサービスが定着したことで、自家用車を手放すという選択肢もとれます。さらに、移動手段が充実し、快適に移動できるようになれば、都心に住む必要もなくなるかもしれません。

このように、MaaSの発展は多くの人のライフスタイルに影響を与える可能性を秘めているといえるのです。

MaaSビジネスの壁となる課題

ここまで、MaaSが持つ可能性についてお話してきました。MaaSは社会を変革する可能性を秘めた考え方ですが、一方でまだまだ実現には障壁が多いのも事実です。

大きな課題となるのが、MaaSに関連する新たな事業をどのように生み出すのかという点です。MaaSに関連する事業を生み出すには、DX(デジタルトランスフォーメーション)が欠かせません。

現在、多くの企業がDXに取り組んでいると思いますが、実際にはDXには3つの段階があり、最終段階までたどり着いている企業は一握りかと思います。

最初の段階は「デジタイゼーション」です。これは社内の情報をデータにして管理したり、業務をソフトウェアで置き換えたりすることであり、デジタル化やデータ化と呼ぶべき段階です。

デジタイゼーションの次は、「デジタライゼーション」の段階へと進みます。これは、情報の連携と統合の段階です。デジタイゼーションでデジタル化・データ化した情報を統合し、連携することで新たな価値の創出を目指す段階です。

最後に「デジタルトランスフォーメーション」の段階へと進みます。ここではデジタイゼーションで統合した情報をもとに、新たなビジネスモデルを構築します。ビジネスとデジタルが密接に繋がり融合した形であり、多くの企業にとって目指すべき姿といえます。

インターネットやスマートフォンの登場がそうであったように、これまで大きな変革があったときには、必ず大きなビジネスチャンスが生まれてきました。

同様に、MaaSは多くの企業にとって新たなビジネスを生み出す好機となるでしょう。しかし、革新的な世界でビジネスを構築するためには、自社の体制を変革する必要があります。なぜなら、MaaSのような新たな領域でビジネスを生み出すには、自社内の他事業部との連携や、ときには他社との連携も必要になるからです。

事業の構想を描くことはできても、具体的に取り組むとなった場合に、他社や他事業部との壁を超えられるでしょうか。少なくとも、伝統的な日本企業にありがちな縦割り構造のままでは難しいと言わざるを得ないでしょう。

MaaSというチャンスをつかむためにも、まずは自社の変革から動き出しましょう。

まとめ

LIGにはMaaSに関する知見があり、デザイン思考で新たなビジネスの構築を支援するノウハウがあります。これらの知見を活かし、MaaSに関するコンサルティングも可能です。

MaaS領域でのビジネスをお考えの際は、ぜひお声がけいただければと思います。

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